「蛇のような男よの」

クシュラル

クシュラル
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神9
  • 萌×27
  • 萌10
  • 中立3
  • しゅみじゃない3

--

レビュー数
9
得点
106
評価数
32
平均
3.5 / 5
神率
28.1%
著者
えすとえむ 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

媒体
漫画(コミック)
出版社
祥伝社
レーベル
on BLUE comics
発売日
ISBN
9784396783259

あらすじ

強大な権力を持つ、オスマン帝国の若き皇帝には     
ただ1人、思い通りにならぬ男がいた。小姓の教育係の宦官・ユランである。
女を抱かない皇帝はただひとりユランに恋い焦がれるが、彼は決して皇帝の身に触れようとしなかった。
しかしある日、ユランが小姓を裸に剥いているところを見てしまいーーー!?
中世から現代まで、宦官×皇帝、兵士×踊り子、高校生×男娼、片恋青年×幼なじみ、の4つの恋を描くトルコ恋情作品集。

(出版社より)

表題作クシュラル

同時収録作品クシュ

スルタンの兵士 ハカン
女装の踊り子

同時収録作品ファーレ

学生 ケマル
道端で稼ぐ男娼 アミル

同時収録作品カルンジャ

カルンジャ
ミマール

同時収録作品1800

カルンジャ
ミマール

その他の収録作品

  • ユラン
  • ファーレ
  • カルンジャ
  • 1800
  • クシュラル bonus track
  • トルコ取材こぼれ話エッセイ

レビュー投稿数9

トルコという籠の鳥たち

トルコを舞台に、帝国時代から現代までのオムニバス短編集。
表題は、【ユラン】のその後日談のお話。
全てを読んで感じたのは、多分共通しているのは、ただトルコが舞台というだけではありません。
トルコという国に囚われている者たちの物語ではなかったのかな?と。
ただ簡単に舞台をそこへ据えただけなら誰でもできる異国もの。
そこに民族性を感じることができる部分が素晴らしのです!
どの話も胸にジーンときます。中には涙さえ誘うものもあり、その余韻がいつまでたっても抜けないのです。
これが、えすとえむさんの感じたトルコなのかな?と。。。

【ユラン】【クシュラル】
オスマントルコのスルタンは宦官で教育係りのユランにかなわぬ恋をしている。
強大な力を持っていて、望めば何でも手に入るのに欲しいものだけはどうしても手に入れることができない。
しかし、ユランもまた囚われて自分の思うままにできないという、両者不自由な立場なのです。
一言で言ってしまえば身分差の恋ではありますが、二人共帝国という国に縛られた籠の鳥。

【クシュ】
帝国は征服した国の子供たちを奴隷としてイスタンブールに集め、改宗させ教育し、それぞれに適した配置をし、人種が違えど採用する制度をとっていました。
それによって、セルビアから連れてこられ王の兵となったハカンが都で出会ったキョチェクの男子。
彼等は想いを募らせるのですが、彼等もまた、国に事情に囚われて自由でないのです。
ハカンの故郷を想う気持ちが、鳥を集めるというそれに現れているきがして、キョチェクもまた鳥であったような・・・
最後に鳥を放つシーンに涙がとまりませんでした。

【ファーレ】
現代に移り、これも貧富の差もある、身分差の物語では?
かたや高校に通い、大学はイギリスに行くという多分いい生活をしている男子。
かたや、人々に蔑まれる日銭稼ぎの仕事をしながら男性に奉仕して稼いでいる男性。
国の事情がつきまといます。
でも、、、明るく結んでいて、希望を持ちたいと願う話でした。

【カルンジャ】
アパートが隣同士で幼馴染のカルンジャとミマール。
ミマールには暴力をふるう父親がいて、そしてカルンジャを好きなのだと思われます。
刑務所にいる父親が帰ってくると、怯えるミマールはカルンジャと二人でバイクにて逃避行をしますが、金もガソリンも尽きて国境を越えることはできませんでした。
その後訪れる別れ・・・
そしてドイツへ移住したカルンジャをミマールが訪れるのが【1800】
イスタンブールとドイツの距離ですね。
一方は別れを告げるため、一方はこれからも一緒にいるため。
彼等こそは、羽ばたいたのだと未来を予想したくなります!!

表紙カバーを外した本体は、一面アラベスク模様で覆われています。これがくすんだゴールドだったらよかったのに、とも思わなくもないのですが、トルコブルーを意識したのでしょうか?
毎度ながら装丁が素敵です。
異国情緒に浸るならえすとえむさん!!
素敵な一冊でした。

4

トルコを舞台にした切なさ漂う短編集

トルコを舞台にした短編集なんだけど、どれも味わい深くて切なさ漂う逸品ばかりだと思います。
表紙だけ見ると長い髪の人物が女性のようにも見えますが、これはキョチェクと呼ばれた女装した少年の踊り子(売春もする)でして、女性は一切登場しません。

【ユラン】
スルタンと教育係の宦官ユランのお話。
この世界の目に入るものすべてはスルタンのものだとされているのに、自分の目の前に立つ男、たった一人を手にいれることができない…という絶望感にとらわれるスルタンが切ない身分差のお話だけどハッピーエンドです。

【クシュ】
このお話が好きです。
各地方から子供を集めて軍人として育て上げ、スルタンを守るために作られた軍隊・イエニチェリ。そのイエニチェリに属するハカンと去勢されて女装の踊り子として生きる少年クシュのお話。
ハサンは遠征のたびにその土地の小鳥を連れて帰り自宅で愛でるのが趣味で、一羽をクシュにプレゼントします。その小鳥を可愛がり束の間の逢瀬に安らぎを見出していく二人。
しかしイエニチェリに属しているハカンは、スルタンに遠征同行しなくてはいけない。
そしてクシュは元締めから逃げ出すこともできない。どっちも籠の中に囚われた鳥のようで、気持ちを隠して突き放すクシュの姿が切なかった。
そして空に放たれて自由になった小鳥たちが二羽寄り添って巣にいる姿は、自由になれなかった飼い主達二人のこうありたかったであろう姿といったものに感じられてジワリ…。

【ファーレ】
現代物。おぼっちゃん学生と学校の裏道で客のをしゃぶってる男娼とのお話。
他の客のしゃぶっている様子を見かけた学生はその姿が忘れられなくなり、意を決して近づきます。
名前は?1リラ、髪に触るのは?1リラ…となんでも1リラを要求する男娼。キスは?の問いかけに…考えたことなかったな というのがたまらなくいいです。
その後、再会したときのキスの法外な値段のやり取りも好き。

【カルンジャ】【1800】
幼馴染み同士のカルンジャとミマール。
ミマールのDV親父が刑務所から出てくるので、イスタンブールから逃げ出してあてもなく逃避行する二人だけど、金もガソリンも尽きて家に戻らざるを得なかった…。
カルンジャとミマールはアパートのお隣さん同士でお互いの部屋も壁一枚で隣なんです。小さい頃から、一人が怖い時はこの壁たたけ むこうからたたき返してやる 俺がいつも一緒だからとカルンジャに勇気付けられてきたミマール。

ミマール父との暴力で警察沙汰になった夜、お互い壁一枚挟んでコンコンと存在を確かめる二人、そして壁の向こうにいるカルンジャを想って壁に向かって自慰をするミマールの姿が切ないです。
そしてカルンジャは母親とドイツへ行くことになり一人残されたミマール。壁の向こうにはもう誰もいないことを知りつつもノックする姿が…。

次の【1800】はドイツへ移民として行ったカルンジャの元を訪ねるミマールのお話。
カルンジャ、君に会うために1800kmを来たよ 君に触れたくて1800kmを来たよ 君にさよならを言うためにーというところが最高に切ないです。

3

どれも切ないお話

えすとえむさん、絵は本当とてつもなく大好きなんです。
でも何だかいつも話がちょっと好みから外れるというか、合わない事が多くて。

今回、大好きなトルコが題材という非常に珍しい短編集でした。私が知ってる限りでは他にトルコが舞台のBLってない気が。(あったらすみません)
紹介のあらすじにあった王様の話よりも、踊り子と軍人さんの話が好みでした。
とてつもなく切ないです。
ちょっと気になったんですが、「キョチェク」とか単語に一切注釈がないのですが読んでいて何となく分かるからいいのかしら?
キョチェクは女装の踊り子で、売春もしていました。トルコはないと思いますが、他の中東では未だ呼び名は違えど残っています。
検索すると、男性のベリーダンスの動画が見られたりしますので、ご興味のある方是非。

どれも切ないお話で、最近こういう話少ないなあと思っていたので嬉しいです。
ああ、トルコ行きたいです!

1

切なく美しい異国の物語たち

表紙の青の鮮やかさがまず眼を惹く。
カバーを外すと、それはそれでまたきれいな唐草模様。
とにかく服装も建物も素晴らしく、モノクロなのに色が強く瞼を刺激する、
そういう意味では、えすとえむさんの面目躍如という感じがする作品。

クシュラル(kuşlar)とは、トルコ語で「鳥たち」という意味だそう。
実際には鳥は出て来ない話もあるのだが、
鳥籠に囚われ、そこから羽ばたき、番うイメージなのだろう。
on Blue誌では、カルンジャ(karınca=蟻)、クシュ(kus=鳥)、ファーレ(fare=鼠)
ユラン(yılan=蛇)、1800、の順で掲載されたのが、
今回単行本化にあたって順番が変わっている。
古い順、だと思うが、最後に再び冒頭の「ユラン」の続編の短編が書き下ろされている。

その「ユラン」、今は昔トルコの王宮での物語。
確かに宦官に髭があるのはおかしい。攻めですか?という場面もあり。
これは巷で噂の、偽宦官やら幼児期に去勢されて再生されたという奴だろうか?
(って、どういう巷だよっw!)

いやいや、おかしいのだが、それはさておき、蛇に飲み込まれたいと願う兎の皇帝の話。
世界中の何もかもが叶うのに、触れたい男に触れられない不幸。
首に、他には代え難く愛した男の手がかかった時こそが、望んでいた幸せ…

巻末のトルコ取材(こぼれ話)エッセイが、また楽しい。
「萌え」というのと違うのだが、絵もセリフも美しく、登場人物は歌い、涙を流す。
ボスポラスの風を感じながら、切なさに身を委ねてみるのもまたよし。


※オマケ
筆者のブログにあった、『クシュラル』発売記念 トルコ写真お蔵出し。
http://estemviaje.blog133.fc2.com/blog-entry-38.html

4

異邦人になった気分

インドからイスラムのちょっと昔の背景
読むと、御香の香りがしてきそうな、なんとなくなつかしいような異文化世界に引き込まれます。
どれもこれも耽美で、結論が無い短編。
不思議な作品でした。

著者のブログ、この世界感なんですね。シルクロード情緒というか。。
http://estemviaje.blog133.fc2.com/blog-entry-38.html

この作品の読後に、福永武彦の『草の花』を思い出しました。

0

異国情緒を堪能

オスマン帝国時代〜現代までのトルコを舞台にした、短編集。
まずは何はともあれ絵が美しい。
ほりが深く目鼻立ちがくっきりと美しい絵柄とトルコという舞台の相性が最高です。
その上で各短編ともままならない恋の切なさを切り取っています。
どれも美しい絵柄と合った雰囲気、情緒をしみじみ味わえる佳品でした。

一応以下簡単なあらすじを。
・ユラン
若きスルタンは年上の宦官に恋しているが、立場上それは受け入れてもらえない恋だった。
狂わんばかりの恋心に耐えきれなくなったスルタンは…。

・クシュ
奴隷としてイスタンブールに連れてこられ、その地で女装して春をひさいでいたが、鳥を愛するセルビア出身の男と出会い…。

・ファーレ
現代物。
お坊ちゃんのケマルは学校の裏手でウリをしている男アミルと出会って関係を持つようになるが、級友たちはアミルのことを見下しており…。

・カルンジャ
ミマールとカルンジャは幼馴染。
ある日ろくでなしのミマールの父親が出所して…。

・1800
「カルンジャ」のその後。
ドイツで暮らしいているカルンジャをミマールは訪問するが…。

・クシュラル
「クシュラル」アフターストーリー。

0

トルコへ行く前と行ったあと

たまたま、イスタンブールへ行くことになり、腐友から借りた一冊。
【渡航前】
ふーん……。ま、トルコったって政教分離国だしなぁ。
ふむふむふむ、とフツーに読んで終了。
【渡航後】
いや、これめっちゃわかるわー!!!!!w
広大すぎるほど広大なトプカプ宮殿、幻想的なブルーモスク、
坂道だらけで迷路のような街をさまよっていくと、
この作品の深い味わいがよくわかります。
作者のイスタンブール愛がジワジワと身に迫る本。
ガス欠になって気のいいおばさんに一晩泊めてもらうあたり、
いかにもトルコです。

これ読んで「うはw イスタンブール行きたい~」となるかどうかはわかりませんが、
イスタンブールの街は歩けば歩くほどに不思議な味わいがある、
その空気感や、光と影はよく写し取っています。

4

この本はむずかしい。

バリバリのイスラム教国でありながらヨーロッパのテイストもそこはかとなく感じるトルコという国を素材に置いた勉強量を感じます。

感じますけど・・・この本、私には難しかったです。
どういう本として読めばいいのか、読みながら戸惑った次第。

細かい所を例にとるようですが、たとえば宦官のユラン。
この本を手に取った時は表紙のスカートの子がユランなのだろうと思ったのです。

でも実際のユランは明らかにヒゲオヤジで、どう見ても宦官には見えません。
トルコの宦官は髭が残るのだろうか・・・?いや、自分が読み間違えてるのか?とか思ったら、唯一しっかり性交要素のある「クシュ」の宦官は中性的なのです。
(表紙の子はクシュに出てくる子)
「どういう文化背景なのだろうか?」とか本当に細かい事に迷い込んだりします。
背景などは完全にリアルなので、きっとそのあたりも計算づくなはずですが、それが私にはよく分からない。

舞台も王族がいたころの過去の話から現代に飛び、そこからまた過去に戻る構成。
この順番の並べ方には意図があるのか、ないのか?
あるようにしか思えないのですが、私にはよく分からない。

「分からないからダメ」な本なのかというと、ダメと言わせるにはあまりにも完成度が高いのです。多分読み手の自分が悪いんだろうな・・・と思ってしまうのです。

単純にBLに対して「萌えたい」とか「感動したい」とかストレートな要求をぶつけるにはこの本は謎の深みがありすぎて、難解すぎなのです。
今日の所は「理解不能なので普通」として置いたうえで遠くに旅にでも出て、1冊だけBL持っていくような時でもあれば、じっくり咀嚼してみようと思います。

3

イスタンブールの情緒に乗せて

◆ユラン
 私は冒頭を飾るこの作品が一番お気に入り。宦官と皇帝の、身分違いの恋。絶大な権力を手にしても、たった1人の男を手に入れられないもどかしさ。私はあなたのものだと言うくせに、位の高いあなたには触れられないとも言うユラン。彼に殺されるなら本望だとまで潔い愛を見せつけた皇帝が、終始美しかったです。一旦バドエンかと思わせて、ハピエンだったところも憎い演出でした。

◆クシュ
 兵士のハカンと、踊り子の恋。遊郭とか娼館とか、それらを経営する者は娼婦達に客のうわ言には乗るなとよく注意しますよね。もちろん稼ぎ手を手放したくないという気持ちもあれど、半分は本当でもあるのだろうなと思います。一時の熱に浮かされた言葉ほど儚いものはないし、自由な世界と格段に狭い世界との間の溝は深い。それでもやはり、踊り子も読者も、ハカンの誠実さを信じたくなる、これはどうしようもないことなのです。故郷を想い、鳥を愛でるその真心は、わずかの間でも確かに踊り子の心と繋がっていたのだなと感じました。

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