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「蛇のような男よの」
「equus」でケンタウロスBLという斜め上からのカテゴリにおける、とんでもない名作を生み出したえすとえむさん。
そちら同様、本作もレビュワーさんから個人的に薦めてもらいました。
と言いますのも、私自身 偶然が重なってトルコにまつわる仕事をする機会に恵まれまして、その話の流れでした。
「BLACK SUN 奴隷王」に引き続き、こうやってまたトルコ(オスマン帝国)関係の作品に出会えたのも本当に不思議な運命を感じます。
なんと宦官(というか、役職関係なく去勢された人)にまつわる短編集ですか…!珍しい!
短髪率がめちゃくちゃ高くて嬉しいし、バーラマも弾いてる!(嬉しい
3~5作目はオスマン帝国ではなく、去勢関係ない現代トルコBLです(いやそれでもかなり珍しいんだけど)。
5作目で不意に挿入されるベンツのコマのなんと秀逸なこと!本当にすごい作家さんですね…。
そう、ドイツにはトルコ人移民が非常に多いうえ、同性婚が合法なので、この4作目の展開が大いに納得がいくのです…。
本作の登場人物は皆それぞれ様々な しがらみという名の鳥かごに入れられていて、外へ羽ばたきたがっていますね。
ある者は愛する者のところへ、またある者は安住の地を見つけるために彷徨い…。
本当に読んで良かったです。大満足。
<トルコ語の用語について>
・タイトル「クシュラル」:鳥「kuş」の複数形「kuşlar」
・イェニチェリ:オスマン帝国の常備歩兵軍団「yeniçeri」
・スルタン:イスラム世界における聖俗の支配者の称号「sultan」
・チョチェク:トルコ語ではなくセルビア・クロアチア語の「čoček」、バルカン半島で19世紀頃に興った音楽のジャンル、およびダンス
・ファーレ:ネズミ「fare」
これすごいなって思ったのが、鳥はタイトルや作中で複数形や単数形を使い分けてらっしゃって、ネズミは単数形だけが用いられています(複数形は「fareler」)。
やっぱり えすとえむさん、素晴らしい作家さんです。
<注意点>
・暴力描写・刃傷沙汰あり
・巻末旅行記にある腕組み男子は、性的指向(※性的 "嗜好" ではありません)に関わらず、アラブにも手つなぎ男子として知られているごく普通の習慣であって、全員がゲイとは限らないので(というかノンケが大多数)誤解のなきよう。
絵が繊細になり更に洗練されましたね。美しい〜。
先生の作品は全てそうですが、本作も全コマの構図がすばらしい。
本作はトルコを舞台にした短編集。
帯にあるように、住む世界がちがう恋、がテーマですかね。
ユラン、クシュ、まさにそんなお話でした。
切ない。
ファーレも全く立場の異なる2人の話。
交わることはなさげだったけど、再会後泣いちゃうアミルがかわいかったです。
カルンジャは、離れ離れになってしまったかと思いきや、次の1800でまだ2人は続いていて、ゆくゆくはドイツで一種になれたらいいなと思えるラストがよかった。
クシュラルは、薄墨のような絵がこれまたステキでした。
あとがきのトルコ取材エッセイも楽しいですね。
完全に好みですが(5☆満点)
すごい ☆☆☆
面白い ☆☆☆
内容が好き ☆☆☆
絵が好き ☆☆☆☆☆
キャラが好き ☆☆
萌える ☆☆☆
巻末にトルコへの旅エッセイが収録されています。先生はいかにも旅行がお好きそうですよね。絵柄もお話も海外がよく似合う。むしろ日本が似合わないとすら思える。
作品は異国情緒に溢れるえすとえむ先生らしい短編集です。どこもかしこも悲しい未来に辿り着きそうでもあり、希望を残す終わり方をしているとも言え、読み手がどこまでポジティブでいられるかにかかっている…自分は悲観的なんでどれもこれもバッドエンドに見えてしまいます。
先達のレビュー通り萌えて楽しいBL漫画って感じではないですが、先生の作風がお好きなら予想通りかと。他の作品にあるようなコメディ要素は少ない。
萌〜萌2
ハッピーエンドが好きなんだ…
オスマン帝国時代〜現代までのトルコを舞台にした、短編集。
まずは何はともあれ絵が美しい。
ほりが深く目鼻立ちがくっきりと美しい絵柄とトルコという舞台の相性が最高です。
その上で各短編ともままならない恋の切なさを切り取っています。
どれも美しい絵柄と合った雰囲気、情緒をしみじみ味わえる佳品でした。
一応以下簡単なあらすじを。
・ユラン
若きスルタンは年上の宦官に恋しているが、立場上それは受け入れてもらえない恋だった。
狂わんばかりの恋心に耐えきれなくなったスルタンは…。
・クシュ
奴隷としてイスタンブールに連れてこられ、その地で女装して春をひさいでいたが、鳥を愛するセルビア出身の男と出会い…。
・ファーレ
現代物。
お坊ちゃんのケマルは学校の裏手でウリをしている男アミルと出会って関係を持つようになるが、級友たちはアミルのことを見下しており…。
・カルンジャ
ミマールとカルンジャは幼馴染。
ある日ろくでなしのミマールの父親が出所して…。
・1800
「カルンジャ」のその後。
ドイツで暮らしいているカルンジャをミマールは訪問するが…。
・クシュラル
「クシュラル」アフターストーリー。
インドからイスラムのちょっと昔の背景
読むと、御香の香りがしてきそうな、なんとなくなつかしいような異文化世界に引き込まれます。
どれもこれも耽美で、結論が無い短編。
不思議な作品でした。
著者のブログ、この世界感なんですね。シルクロード情緒というか。。
http://estemviaje.blog133.fc2.com/blog-entry-38.html
この作品の読後に、福永武彦の『草の花』を思い出しました。