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私の中の一穂先生の作品は、すっごくハマって大好きになる作品と、ぜんっぜんハマらず琴線に一箇所も触れない、みたいな作品の両極端なんです。
それもこれも私の価値観の中のことなので良い悪い、という訳ではなくただただ相性の問題なのだと思います。
キス、ラブはもうどっぷり浸かって心に刺さりまくっている物語である一方、藍より甘いは全然掠らなかった作品でして。
かくいうこちら、キス、ラブ、藍より甘い、に続いての4作品目なのですが、大当たり。
一穂先生の作品全体に漂う、夕暮れ時の淋しい感じ、けれど明日が待ち遠しい、みたいな不安で不思議で温かいような感覚、わかりますかね。
それがじんわりと伝わって、一穂先生独特のセンスで紡がれる文章が心に刺さりまくって大変でした。
内容は他の方も書かれているので割愛しますが、
キス、ラブが好きな方は好きなんじゃないかなぁ。
キス、ラブのような苦しさは少し和らいでいますけれども、主人公のなんかしらの生きづらさというのがもしかしたら、共通して心になんかしら訴えかけられる要因なのかなと思います。
現実のように痛い気持ちを、物語のようなちょっと現実感の薄い奇跡や運命で紡いでいく一穂先生の物語は、とってもとっても美しいですね。
作中、カズが言っていた言葉で、
目が見えてからは地獄だった。のくだり。
24時間起きても寝てもくたくただった、って言葉。
すごくわかるなぁって思います。
そういうの、抱える苦しさ、そこから日常に紛れてどうにかこうにかやっていく日々。
縁が、叔父さんに向けて「日常に支障がないからそんなこと言えるんだ」って怒った場面。
叔父さんが縁の為にサングラスをかけ続ける理由。
それを知っていて優しいと言いきれる関係性。
空白の期間を感じさせないカズと縁の会話。
どれをとっても切ないのに優しい、すごく幸せなお話でした。
一穂先生もムク先生も好きなので買わねば!と購入してたのですが、
長らく積んでて、やっと読了しました。
文芸み強い一穂作品でした。攻と受が抱えているものがしんどいですが、ラストに向かってそのしんどさが解消されていく、優しい作品だなと思いました。
あれ?BLだった?と確認するほど、情報量が多くて…勉強になりました。世の中には様々な苦しみがあるんだなと。特に、縁(受)が抱えている問題がシリアスで胸が痛みました。(切ないというか辛いです。)彼が長年抱えている苦しみを、早く手離して(数真(攻)に打ち明けて)、楽になればいいのに(そしてラブラブになればいいのに)と、何度となくじれったさを感じてしまいました。人を信頼するということは、なかなか勇気のいることなんですよね。
「ときめきとは、胸の中に温泉が湧くようなこと」とか「見えても見えてなくても、世の中の不確かさは変わらない」とか、心に残る素敵な表現と出会えることは、一穂先生の作品を読む楽しみの一つです。
人の気持ちも、世の中も不確かなのは仕方ないので、せめて、見ているものだけじゃなくて、感じていることに正直でありたいものだと思わせる作品でした。
一穂ミチさん5作品目
「ふったら~」「ハートの~」「さみしさの~」「ぼくのスター」
今まで読んで全部ハズレなし。鉄板作家さん認定しちゃう!
凄いですね。どの作品も全部キャラクターが生きてる。
BLの決まったオチに向かって似たようなキャラクターが似たような出来事を経ていく。
別にそれはそれでOKですが、一穂先生のキャラクター…というか人物設定なのかな?どれも具体的でリアルで個性がある。
それこそBL界ではモブ扱いが定番の「女の子」でも、本当に実在しているかのようにそれぞれに個性があって生き生きとしている。
一人の人物が何でこんな多彩な個性を一人一人生き生きと表現できるんだろう、と本当に不思議に思います。
今回の受けさんは人の顔を覚えられない人。
初めてこういう人がいるんだ、、と知ったのは京極夏彦先生の「狂骨の夢」を読んだ時。読んで「そんな人いたら多変だな、、」と思い、また別の本で「顔を覚えられない」系を読んで「本当にいるんだ、、」と知り、今回この作品を読んで、なんだかもう受けさんの痛みとか恐れ・怯えみたいなのが伝わってきて、プラス初恋が実ってもう、、よかったねぇ、、と感激してしまいました。良かったです。
この攻めさんなら受けさんを受け止めて、末永く続いていけそうです。
表紙に惹かれて購入した、初めての一穂ミチさんの作品。
仕事の飲み会で仁科縁は岩崎数真に出会います。
その席で数真は、目が見えなかった幼い頃に出会った初恋の「ゆかりちゃん」の話をし、縁は目の前にいるのが「かず」たど知ります。
でも、縁は自分が「ゆかりちゃん」だとは名乗り出れない訳がありました。
実は、縁は相貌失認で人の顔を顔として認識できないんです。パーツの違いは分かるけど、「顔」の違いが分からないから、個人を特定するのが苦手で、そのことを知られたくないと思っていて・・・
縁と数真が「ゆかりちゃん」と「かず」だということも、縁が相貌失認だということも、小説の早い段階で読者に明かされます。
縁が待ち合わせには必ず早く行く理由とか、この時点で分かってしまう。なるほど、このせいかーって、伏線が回収された気になるんですが、そこからが、一穂さんのすごいところだと思います。
大きな事件が起こるわけじゃないのに、ページを捲る手が止まらなくなるんです。
「ゆかりちゃん」と「かず」の過去の話も、縁と数真の会話のテンポも、縁の心理描写も、すごく良くて!!むしろ、いつもの私がBLで楽しむエロが邪魔だと思ってしまうくらいに。(苦笑)
そしてラストに明かされる「ゆかりちゃん」と「かず」が過ごした最後の一日と、「かず」のその日の続き・・・もう、せつなくてせつなくて!!!
縁は数真に嫌われたくなくて、数真は縁に心を開いて欲しくて、互いに一生懸命だったんだなぁって思うと、読んでいて泣けました。
あと忘れちゃいけない、縁の叔父の訓さん!
皆様レビューで書いていらっしゃる通り、訓さんが本当に優しい、いい人です。
訓さんの優しさがこの話に溢れてるから、読み終わってこんな優しい気持ちになれるのかも・・・って思ううぐらいに、訓さんがいいです。
小椋さんの優しい絵が似合う素敵な話だったと思います。
あああ。やっぱり一穂さんの作品はいいなあ。綺麗な文章だなあ。好きだなあ。
子供のころ目が見えなかった岩崎数馬と人の顔が識別できない仁科縁の話。縁が、数馬に病気のことを知られたくなくて逃げる逃げる。本当は、数馬のこと好きなのに。好きな人の顔さえ覚えられない自分など、人から好かれる資格がないという心理。あああ、切ない。そんなゆかりの魂胆に、結構初期から気づいていた数馬がすごい。今回は、数馬が最初から覚悟を決めて、縁にモーレツアタックしてくれてたから、ものすごい安心して読めた。サトシさんという味方もいてくれた。私は、このサトシさんが本当にいてくれてよかったと心から思う。サングラスを貸してくれてありがとう!!
アイズオンリーとは、「見るだけの重要機密」の意。転じて、プライベートという意味になる。この作品を読むと、この言葉がなぜタイトルになったのかが分かります。
とても異色な話でした。
子供の頃に目が見えなかったが手術により完治した編集者と相貌失認という症例で人の顔が認知できない在宅ワーカーのCGオペレーター
登場人物の身分や職業が変わった設定は数あるけれど、生かされていない場合薄っぺらでとってつけたようで面白みがないけれど、この作品の場合はとてもうまく背景が生かされていると思います。
幼い頃の目の見えない数馬と人の顔がわからない縁との出会いにほのぼのとして、子供らしい純粋で残酷な思いが溢れて会うことができなくなってしまった別れが辛かったです。
台風のせいで会えないかもしれないと思った時、無理しないでと言いながら、来ないと言われたら腹をたてるだろうと思いわがままな自分にあきれるシーンでわかるわーと思いました。
恋をするとわがままになったり自己中な気持ちにもなりますね。
初めてのことに戸惑う縁の気持ちがよく表れていると思います。
縁の叔父がとてもいい人なんです。
夜でも室内でもサングラスをしている理由。
それを優しさだと言い切る縁。
幼い縁に安らぎと大人になった縁に居場所を与えてくれる優しい人です。
可愛がっていた甥に友人になれればと自分が紹介した仕事仲間に掻っ攫われて、花嫁の父状態でした。
はやく縁に自分のことを伝えて欲しいと思いながら読みました。
でも、好きな人に顔を忘れられるというのはどんな気持ちなのか想像ができません。
そしてそれを人に知られることが恥ずかしく死ぬほど辛いことなのですね。
あとがき代わりのSSがよかったです。
本編終了直後。
最後に協力してくれた叔父さんに報告の電話を入れた数馬との会話。
伯父さんも数馬も縁を大切に思っていることが伝わるおまけのエピソードでした。
最近の一穂さんの作品はちょっと苦手になってきて、買っても読まずに積んであったりするのですが、この辺りまでは本当に好きでした。
この作品くらいの時期が、自分の中のボーダーラインなのかなと思っています。
積み本を実際読んだらイメージとは変わるかもしれませんが…
*********************
受けは人の顔の認識、識別が出来ない縁、28歳。
叔父に見守られながら、在宅でCG関係の仕事をしています。
攻めの数馬は26歳の出版社編集者。
幼い頃は目が見えず今でもその時の癖で、何でも触って確かめてしまいます。
********************
20年前、ほんの一時道が交わっていたふたり。
目が不自由な数馬と人の顔の認識が出来ない縁。
そんな欠けたもののあったふたりが、まるでお互いを補うような時間。
数馬は目の不自由な自分に本の読み聞かせをしてくれた『ゆかりちゃん』が、実は『縁』だったということは知りません。
女の子だと思っていたんですね、見えませんでしたから。
でも、縁の方は気づいてしまいます。
数馬はあの『かず』だったのだと。
そして、最後に会った日の出来事によって、よけい縁は本当のことを言えないわけです。
縁はグルグルネガティヴ思考の持ち主で数馬とはまるで正反対なわけですが、縁の他人に自分の弱点を知られたくない、知られて奇異な目で見られたくないという必死さが共感できます。
もちろん、同じ問題を抱えた人にしか本当の意味での理解は出来ないのでしょうが、わたしたちにも想像することは出来て、それを共感しやすく書いてくださったと思います。
個人的にはこういう身体の特殊設定は苦手。
でも子供の頃のエピソードが、なるほどそういうふたりだからこそ起こった偶然なんだねと納得させられて、スッと読むことができました。
それに脇役である縁の叔父・訓の縁に対しての労りがすごく心地良いのです。
つねにサングラスをかけている理由が泣けます。
彼の存在がこの作品のお気に入りな点でした。
一穂作品はあまり嫌な脇役が出ないので、その辺りは安心ですね。
作家買いです。
一穂さんは文章の運びや言葉のセンスがとてもお上手で、個人的に読み始めると一気に引き込まれてしまう作家さまです。
内容は皆さま書いてくださっているので感想を。
人付き合いを避けて、閉じこもるように生活している縁。なのに出会ったばかりの女の子をお持ち帰りしてしまう。すごく違和感があって、でもどうしてそうなのかすごく不思議で、縁が抱えるモノが一体何なのか知りたくてページをめくる手を止められませんでした。
対して攻めの数真は人当たりも良くするりと人の懐に入り込んできて、それでいて相手に不快感を与えないというタイプの人。全く真逆の二人は、実は子どもの頃に出会っています。
数真は子どもの頃目が見えないというハンディキャップを持っていて、縁は「相貌失認」という障害を持っている。目が不自由だけれど、その代り聴覚や触覚が発達しているカズくんと、目は見えるのに人の顔は覚えられないゆかりちゃん。お互い、自分が他の子とは違っていることを理解していて、世間から一歩引いた生活をしている。そんな中で出会った二人はお互いが唯一の光で。まだ子どもだった二人が健気で、頑張れ、って応援したくなりました。
縁は大切な人は作れないし、作ってはいけないと思ってるんですね。だから人と深く関わるつもりがない。そういう雰囲気になれば女性をお持ち帰りすることもあるけれど、決して自分から誘うことはないし、誰でもいい、っていう感覚なんだと納得しました。一穂作品にしてはエチシーンが多めで、かつ唐突に始まる気がしました。でもそれも、縁が人とセックスするのなんて大したことない、別に誰としても変わりないし、と自分に言い聞かせているからなんじゃないかなって思いました。
その上で、大切な人になりそうな数真を切り離そうとする縁が可哀想で涙が出ました。
「見える」ってどういうことだろう、って改めて思いました。見えても理解できないことってあると思うし、見えなくても大切なこともある。目で見るだけではなくて、触って見えることもあると思うし、感覚で見えることもあると思うし…。なかなかに奥が深いなと。
あと縁の叔父さんの訓さんがとても好き。いつでもサングラスをかけている理由を知った時、思わず萌えてしまった…。縁を恋愛感情のように大切に思っていたら個人的にちょっと…って感じだけれど、本当に甥っ子と伯父さんの愛情で繋がれていて良かった。縁を甘やかすだけではないし、ナイスガイでした。
小椋先生のほんわかとやさしい絵柄も、とてもよかったです。
元々、一穂ミチさんの作品が好きなんですが、
この作品は設定も好きなのでかなりツボです。
盲目の少年・数馬と、一夏の間、親しくしていた縁。
縁は相貌失認(人の顔を判別できない)の障害をあることを数馬に隠していたんですが、とあることをきっかけに別れ、再会する。
数馬は目の手術を受け、目が見えるようになったものの、「ゆかりちゃん」のことは女の子との思い出だと思ってる。縁は数馬のことを気付いてるけど…
というストーリーです。
相手のわからない初恋の人との再会ものといったら王道ですが、やはり盲目と相貌失認っていう設定は特殊ですね。
ただ、それが”設定だけ”、になっておらず、数馬の目が見えなかった時、目が見えるようになってから感じたこと、相貌失認の縁が普段不安に思ってること、気にしていることの描写がとても良いです。
それから訓さん(縁の理解者である叔父)の「その話、最後まで聞いたら俺は鼻からそば出しそうか?」のシーンのやりとりみたいな、軽快な会話があったり、
数馬の好青年でありながら、以外としたたかなとことか、縁の障害があってコミュ症みたいな生活してるのにあっさり女の子と寝てたりするギャップもお気に入りポイントでした。
どこかおとぎ話のような素敵なお話でした。
設定があまり得意なお話ではなかったので、
「ハマらないぞ!」と、天の邪鬼な気持ちがもくもくと持ちあがって、
物語に入り込むことを敢えて拒否していたのですが、
終盤で、引きづられてしまいました。
最後、ウルっとしてしまいました。
一穂さんのお話は、
その世界に2人しかいないような空気があるように感じます。
2人だけの世界観だからこそ、情緒的だし、きれいな言葉遊びも
とても大切に感じます。
しかし、今回は、その一穂さんの素晴らしい点が
逆に、あざといと感じてしまいました。理由は、何故かは分かりません。
キャラクターにもう一癖あると、より入れたのではないかと思います。
初めての他社からの小説出版。
一体どんな違いがあるんだろう?また違った一穂作品が見られるんだろうか?
そんな期待で手に取った本。
切なげな展開、綺麗なイメージを湧き立てる言葉を使ったセリフ。
こうして思ったのは、この作者さんはストーリーは何も突飛でハラハラするような事件や何かはないのだけど、言葉のマジックでぐいぐいと引き込んでいく部分、それを改めて思ったのでした。
しかし、ここに登場する数真という男。
彼は子供の頃目が見えないという障害を持っており、手術により見えるようになったという経緯を持つためか、そのイメージを伝える言葉はとても説得力があるのですが、
反面、とても軽そうな性格とキャラクターがどうにも、どうしてこうやって想像力が豊かそうな人なのに、薄っぺらい感じがするんだろうと違和感が。
縁については一環していたと思います。
ある障害を持つ為に、ネガティブになり執着をしない誰にも理解されなくても伯父の訓だけでいいやという姿勢。
最後まで自分で告白することができなくて、一人でショックを抱え込んでしまう最後まで、彼の性格は貫き通されていたのですが、
エッチシーンが興ざめで。
すぐに、あんあん、、言うの・・・余り好きじゃありません。
ノンケ×ノンケだからと、こだわるわけじゃないのですが、このエッチシーンがもしその瞬間は数真を信じられる瞬間なら、縁の言葉と気持ちの描写が欲しかったような。
数真がしゃべりすぎるような気がしたのです。
あと、自分がかなりこだわる点は彼等の口調の変化です。
始まりは初対面で他人行儀だからかもしれないですが、”お、珍しく一穂さんにしては少年口調じゃない!”と、そこが苦手な自分は喜んだのですが、数真が縁と関係を勧めるにつれて、甘えん坊の少年のような口調になるのが・・・
親しみの表現かもしれないのですが、何か自分的に背中がかゆくなる口調なのです。
彼等はこのエンドで解決したことになるんだろうか?
本当はこれからですよね?
それまでの事がこの話になるのですよね?
子供の頃のエピソードはとてもよかったのですが、一見こだわっているようで、真実が最後まで見えない為にそこまでの説得力がタネあかしがされるまでの不安要素になってしまったことはいなめませんでした。
悪くはない。
障害が二つリンクすることもあるでしょう。
なのに大仰にならない、お涙ちょうだいにならないのはよかったと思うのですが
やはり、言葉を見せる話であって、二人の関係に萌えを、キャラクターに萌えを感じることはできなかったのです。
唯一、訓はとても好きなキャラクターでした。
あまり一般には馴染みのない特殊な障害を持っているため、
他人に興味を持たずに生きてきた28歳の主人公・縁(受け)と、
子供のころ全く目が見えなかったけれど、
手術により視力を得た、縁より2つ年下の数真(攻め)。
このふたりの、再会の物語。
まだ、小学生1年生と3年生だった頃のふたり、
全盲の「かず」に本を読み聞かせた「ゆかりちゃん」の話が、間に語られます。
この「かず」が賢くてしっかりしているのにとっても愛らしくて、
話す言葉とか、もう堪らなかったです。
子供時代のみで一冊読みたくなるくらい。
でも、そんな「かず」に愛情を持てば持つほど、
大人になった「数真」とのギャップにはムムム・・・となってしまう自分がいました。
26歳になった数真は一見、自分がかっこいいのをちゃんと分かっているようなタイプで、
言葉を口から淀みなく出せる、優しいけれどちょっと軽めな人。
彼があと10歳くらい年がいっていたらタイプだったかもしれないのだけれど
(その違いは自分でもよく分からない・・・)、
なんかどーーにも好意を持てないまま話が進んでいってしまって、ちょっと困りました。
最初の方で女性のカラダについてどうだこうだと熱っぽく語る数真が、生理的に嫌で、
そのよくないイメージをずっと引きずってしまったのかな・・・。
(まぁ、その繋がらない感じを縁と読者に感じさせたくて、
きっと敢えてあの「数真」が一穂さんによって創られたのだとも思うのですけれど・・・)
そして後半は後半で、
障害故に数真を切り離そうとする縁に気持ちを乗せられなくて、またまたムムム・・・。
いや、
縁の障害をちゃんと認識できないでいるのがそもそもの原因なのだと思うのですが
(顔はダメだけど、首や服は分かって・・・とか、う~??となってしまう・・・)。
縁が頑なになればなるほど、
じゃあ、全盲の人はどうなるの?という思いが頭をもたげてしまいました。
人はだれでも世界は自分が中心だし、
比べて解決しないことなんて山ほどあるし、自分だってそうなのだけど、
全盲でも「かず」はかわいそうじゃなかった、尊敬していた、大好きだった、
という気持ちも縁には確かにあるに。。。
その想いよりも、縁の弱さや脆さの方が勝ってしまうのが、ちょっと悲しかったのかな。
そういうところこそが生身の人としての魅力かな、とも思うのですけれど・・・。
色々言ってしまいましたが、
上記以外のところは読みやすかったですし、好きなところも沢山ありました。
子供時代のお話と、
停電のところ、数真が見えるようになった最初の頃のことを語る場面は特に好きです。
叔父である訓さんに、サラッと数真との夜を話してしまう縁の一面も好き。
もちろん、訓さんはもっと好き。
もうちょっと細かな(エッチじゃなくて普通の)エピソードがあって、
お互いに惹かれ合うのも十分納得だなぁ~ともっと強く思えたら嬉しかったし、
最後のエッチは、一度区切って後日談としてくれた方がいい気持ちで本を閉じられたかも、
とも思います。
でも、完璧っ!と思わないからこそ次に期待、楽しみ~~なのかなと。
登場人物の微細な心の変化を抜群な文章、構成で描いている切なくてどこかほのぼの
心にじんわり臆病な恋心と切なさが染み入ってくる作品だと思います。
それにイラストは小椋ムクさんとくれば、まさに最強タッグなのでしょうが、
個人的にはじんわり&もしかしたら涙もじんわりくるかもしれないこの手の繊細な
それも、障害をテーマにした作品は苦手かも知れません。
なんだろうね、どこか素直に作品の良さを受け止められないと言うか、目が見えないとか
人の顔を認識できない記憶できない主人公たちの幼い日の出会いから、
大人になって20年も過ぎて再び再会してからのストーリー。
この最強タッグの作品はとても素敵だと第三者的には思うけれど個人的には左程惹かれない
待ちに待った、ミチさんのスピンオフ作品ではないお話!
どんなキャラが出てくるのか
またどんな素晴らしいエピソードの数々が!?と
心躍らせながら読み進めました。
(気持ちを落ち着かせようとしてもそんなの無理)
会話・感覚等、抜群のセンスで
やっぱりぐいぐい惹きこまれて行くのですが
縁の病気、私はこれが想像出来なくて
縁の苦しさがわからなかったのです;
とても丁寧に例えを用いて説明して下さってるんですけども。
ここをしっかり捉えられていたら
どっぷりハマれた気がします(泣)
あくまでも私の場合ですが…。
普段のそつのない社会人からかけ離れた
好きなものを楽しそうに熱く語る姿、
縁に関係を迫る時なのに「寂しい顔したから」と
微妙な変化にも気が付くところ、
そんなに高価じゃなくても、縁に毎日使うものをプレゼントしたくなるとか
泣く縁を気遣って気持ちを尊重して
後は黙って抱き締めてくれるところとか、すごく数真が好きだー!!!
ベタかもしれないけど私は優しい男が好みなのです…。
これだから、縁も惹かれたんだと思う。
病気の事で臆病になり、今まで人に執着する事も無く
関係する人間は誰だってどうでも良かったから
さらっと女とも寝てしまえたのに。
自分自身で変えようとも思わなかった変化に気づき
(宅配にちゃんと応対するようなったとか)
叔父の訓からも指摘されるほどに…。
この訓が良い味出してて、縁への愛情が非常に伝わりました。
すべてわかった後
二読目、三読目でまたこのカップルが好きになりました!
素知らぬ顔をして話していた数真が
本当はどう思っていたのかとか、ぎゅっとくるのです。
本編後、ミチさんのブログに掲載されているSS
『ノットオンリーミー』を読むと
数真をいびる(?)訓が素敵なんですよ☆
ムクさんの優しい挿絵が合っていたのですが
一か所、後半バスルームでのフ○ラシーンは
もう数真がシャワー止めてるはずじゃないかな…??
違うかな;
なんにしても、塗れたシャツから透けるティクビも
恥じらいながらゆっくりたくし上げる扇情的な姿もたまりません!
昔の事もあっての気持ちの盛り上がりだと思えたので
私はあんまり心情描写に物足りなさは感じませんでした。
Hシーンがいつもより多目なのも
「ミチさんの作品でこんなに読めるとは贅沢かも!?」と。
…単純過ぎですね;
というわけで神寄りの萌×2です!!
江名さん
早速読んでいただけましたか♪嬉しいです!
たぶんまたブログにアップして下さったり
同人誌でお目にかかれるかと思います!
とてもマメに書いて下さって、ファンにはたまらないのですよー。
そしてどのお話のSSでも、どのキャラでも
絶対にその人物像がブレないというのが素晴らしすぎます!!
ミチさんは“SSの女王”だと私は思っておりますw
短くても満足させてくれて、
でもまたもっと読みたいと貪欲になってしまいます。
ミチさんのそういう才能が枯渇する事はないんだろうなーと
またうっとりしてしまうんですよ☆
コメントいただきまして、誠にありがとうございました!
東雲月虹さん、こんにちは~
『ノットオンリーミー』読みました!
教えてくれてありがとうございます。
ああ~好きでした、すごく!!
ああいうエピソードが後半いくつもこの本にプラスされていたら、
嬉しかったのになぁ~
ムムム・・・と思ってしまった事も過去の話と流してしまえると思うのに~~
もっとラブラブなふたりが読みたい(*゚▽゚*)
って、こうやって、一穂ファンの方々はおウチに同人誌が増えていくのですねw
わたしもそのうち増えて、置き場に困るようになったりするかな~~
なんにしても、教えてくださってありがとうございました♪
まず受けの設定、人と関わりを持つのを避けているのに、常習で女をお持ち帰りしてヤってるのが矛盾してる気もしたし…加えて攻めの最初の誘いが 試してみない?的な言い方で(あとから理由があったと説明されるのですが)それでヤっちゃってるのが、わたしにとっての苦手に感じました。
Hシーンに多くページが割かれてるせいか、常の一穂作品に比べ人物の心情やその変化してゆく過程などが掘り下げられてない感がしました。
Hシーンが多いといっても妄想的?BL的?というよりは、BLの範疇ではあるけどリアルを志向している気もして…そこがハンパな気もして…もやもやしてしまい、わたしは、ですが、あまり萌えなくって。
光る描写やぎゅっと気持ちがもってゆかれる箇所もあり(子供時代のやりとりが良かった…)思いが通じ合った箇所では泣けたのに。続いてHシーンが展開したところでさーっと気持ちが冷めてしまいました;
流れ的にもBL的にも、両思いになってのHシーンは必要なんだろうと思うけど、わたしとしてはその箇所のHはもっと心情重視の描写にして欲しかった。「どうしてほしいの」とか「あっ…」とかいう、その、喘ぐとかいらないっていうか。(う、上手く書けません、すいません。もっとこう、精神的なこう…(うまく書けません;
せっかくの新書でしたが…「それなり」ではある、でも攻めにもこと受けにはさほど魅力を感じず再読しないだろう、また一穂作品にしては、という気持ちもしたのでこの評価にしました。
ハイ爺さま
いつもお世話になっております、snowblackです。
レビュー拝見して、そうだ!と膝を打ちました。
今までの一穂作品のH描写は、心で交わるような描写だったのが、随分趣が違いましたね。
煽る言葉や喘ぎがあるのはいいのですが、例えば林檎の同人誌でのそれとは大分違う。
挿絵にもそれは現れているように感じました。
これは、レーベルのカラーなのかなぁ、と漠然と考えておりますが、きっと二作目三作目になれば
その辺一穂先生らしい落ち着きどころが見つかるのかもしれないなーと期待しております。
評価は、私も実は迷いましたが(一穂作品の萌×2は通常神に近いのですが)、初新書ということでw
それでは、失礼致しますm(_ _)m
一穂ミチ先生、初の新書判ノベルズ。
新鮮な感覚というか、下ろし立ての糊の効いたワイシャツのような、
肌に馴染まなさというか、そんな微妙な違和感を感じながら読み終わった。
ただし、これは私という1人の一穂ファンの個人的な感覚であって、
相変わらずエピソードやちょっとした小道具を積み重ねて作られる世界や、
繊細に心情が掬い取られた文章は魅力的で、良作だとは思うのだが…
んー、結構初めの方にH場面が出て来たのが意外だったのもあるのかな?
一穂作品にしてはH場面率は高いです。
:
再会もの…と言えるのだろう。
出来るだけ人と関わらないようにして暮している、グラフィックオペレーターの仁科縁。
ある日彼は、叔父であり上司であり数少ない理解者である訓の誘いで、編集者の岩崎数真と出会う。
飲みの席で数真が語った、目が見えなかった子どもの頃のエピソードを聞いて縁は…
見えなかった子ども時代を過ごしていた数真と、見えているのに分からない縁(ゆかり)。
ふたつの夏を共に過ごした、小さなカズくんとゆかりちゃん。
ちょっと人と異なる感覚を持たざるを得ない二人の世界と、
今の話と過去の話の二つの世界、それらが縦軸横軸になって絡み合って、話が織られていく。
人は誰でもその人それぞれの苦手さやコンプレックスを抱いているものだと思うが、
そういうものが、特徴的な生きにくさを通して浮き彫りになる様は見事だ。
色彩感覚や触覚を大事にしたイメージが、テーマと相まって素敵だし、
「ときめきって温泉が湧くことなんだ」
「見えていても見えていなくても自分の世界の不確かさってあまり変わらない」
「触る、というのはひどく単純な喜びだ」とか、
そうなんだよな~と思って頷いたりハッとする表現が散りばめられている。
縁の叔父の訓も、後書きのエピソードも含めて暖かくてすごくいい。
縁の怖くて閉じている自分の世界が、数真との触れ合いを通して開かれて行くのが物語の核だが、
最後はちょっとドタバタと巻いた感じが否めない。
それがちょっとトリッキーな面白さとも言えるが、もう一章あってもよかったかなとも。
…と、全体に悪くないんだけれど、なんだろう?
個人的に不満なのは、痛みと切なさの心理描写が不足か。
比較的キャラクターにあくがないというか、普通にいい人な感じで思い入れが持ちにくい?
H描写にとってつけた感が否めないこともあるか……
…うん、まぁ、すごく甘いカップルになりそうな予感ではあります。
<おまけ>
*出会いの場面で数真が語っている貧乏な男と盲目の少女の映画は、チャップリンの名作「街の灯(City Lights)」。
*待ち合わせで縁が読んでいたのは、ノーベル賞作家のドリス・レッシングの本だろう。
*作中の暗闇体験はこれだと思う、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」。
http://www.dialoginthedark.com/did/
*相貌失認は、発達障害との合併をよく言われますが、意外に多い症状で人口の2%とも。
かのルイス=キャロルがそうであったと言われています。
<さらに、ちょこっと…w>
*二回目の時、二回立て続けにいかされて、連続で出したことがないのでビックリしたー
と言って、ものすごくビックリされる…というシーンがある。
こういうのって、すごく伝わっていいな〜♪ こんなところで実は萌えた私でしたww