• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作はるのうららの

大沢春介
中学生・家庭環境に難あり
矢河春希
中学生・いじめられっ子

その他の収録作品

  • あのとき
  • あれから
  • あとがき

あらすじ

「春希の普通と俺の普通は、
たまにちょっと違ってるよな」

「これからもっと違っていくんだろうな」



家庭の事情で転校した大沢春介(おおさわしゅんすけ)は、
クラスでひとり浮いている矢河春希(やがわはるき)と
行動を共にするようになる。
友達以上に互いが特別な存在となっていたが、
幼いふたりは周囲の環境に振りまわされていって……
濃密なネームと心の奥底に触れるような描写で話題をさらった、
三崎汐の連載作がついに単行本化! !

作品情報

作品名
はるのうららの
著者
三崎汐 
媒体
漫画(コミック)
出版社
茜新社
レーベル
EDGE COMIX
発売日
ISBN
9784863493797
4.6

(70)

(52)

萌々

(12)

(4)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
13
得点
321
評価数
70
平均
4.6 / 5
神率
74.3%

レビュー投稿数13

「普通」が、儚い自己の世界だと知る。

「普通」っていうのは、
すごく危ういものだよな、と。
読みながらジクジクとずっと考えてました。
初めて同性への恋心を自覚し、
そんな自分を認めるまでが
ゆっくりと暗さと切なさを纏って描かれてる。
男の子の性的欲求やスキンシップ、
キスシーンも描かれるけれど、
私にとっては「萌えよりツボ」な作品だった。
読んでよかった。
心を突かれました。泣いた。


「普通」というキーワードがずっと、
主人公春希の心の中にある。
この思い込み・刷り込みの様な
春希の「普通」には、少しイラッとして
なかなか好きになれなかったけれど、
その心がゆっくり動いていく様子には、
ひどく息苦しい切なさを感じました。
自分の内面というのは、
どうしても外的環境に左右されて形成されてく。
私もきっと、そうなんだろうなと思う。
『スメルズライクグリーンスピリット』を
読んだ時も、こんな風に「普通」について
考えたなというのを思い出しました。
設定や全体の印象が似てるとか
そういうことは無いのだけれど、
個人的に似た感想を抱いた部分があるな、と。

そして春希と春介の心情だけではなく、
脇キャラもよかった。
何より、同級生美山の想いが端々から感じられて
春希・春介のふたりとはまた違う切なさが痛くて
個人的にとても印象深かった。
BL的当て馬萌えではなく、
もっと瑞々しくて青くて痛みのある感じ…。


全編通して切なさが
根底に漂っているような物語です。
心の中の葛藤というか思い込みが
けっこう読者を苦しく・苛々もさせるので、
日常で恋心に気付くお話が好きでも
苦手だと思う方がいるかもしれない。
仄暗さや息苦しさがツボな方は
好きな作品だと思います。
モノローグや登場人物の言葉にも、
はっとする部分が多い。
ただ、こんな風にシリアスな分、
ハッピーで甘いBLが好きな方は
好みではないと思うのでオススメしません。
また、子どものイジメや
大人の心無いからかいの描写が含まれるので、
無自覚な攻撃に嫌悪感を覚える方は
少しご注意ください。

ノスタルジックで独特な絵柄は
ちょっと好き嫌いが分かれるかなと思います。
ただ、私は表紙カラーを見て、
「あんまり好きな絵じゃないかも…」
と思ってましたが、実際に本編を読む際は
全く気になりませんでした。
だから、あらすじ気になってるけど
絵で躊躇してる…って方がいらしたら、
読んでみてほしいな。
小学生から話は始まるし、
ほのぼの絵なんだけれども
切なさの度合いはかなりのものです。


作者の三崎汐さん、
次作も確実にチェックします。

11

恋を知るまで

小学校の6年生の春、春希のクラスに東京から転校してきた春介。
二人の出会いの小学生から、中学生、中学卒業後まで、一番心も身体も変化する中学生時代を中心に、
自分を受け入れること、
他者の違いを認めること、
そして、恋を知ることを、丁寧に綴った作品。

この作品に登場するキャラクター達は、一見、不安定でひょろよろした絵だけど、
それが、この年頃の子どもの、心や身体の未熟さや不安定さとすごく合っていて、
このストーリーには、この絵しかないって思えます。

9

追いつめるのは誰か

手書き文字の帯が、とにかく鮮烈でした。
だから手に取るのを一瞬躊躇して、読むまで
少し時間がかかったのです。

そして一読した内容は、煌めいていながらも
重い内容でした。
口の悪い登場人物にも恐らく積極的な悪意の
持ち合わせはないのです。
ただ、自分が理解出来ないものに対して放置も
許容も出来ない。それ故に拒絶に走るしかない。
しかしその拒絶が他者を傷つけると言う事には
意識が至らない、と言う閉鎖空間故の悪循環が
物語の大きな要素になっていると言うのも
皮肉なものです。
だから繊細過ぎる人にはこの物語は真っ直ぐに
届かないかも知れない、と老婆心ながら一寸
恐れています。
そのハードルさえ乗り越えればきっと見えるかも
知れないのです。
この物語はゴールに着けば終わりと言うのではなく、
関門を幾つも二人で抜け乍ら確かめて行こうと言う
出発点を描いたものなのでしょうから。

8

言葉を失う傑作

大好きな1冊です。
読み返すたび何度でも涙腺をやられてしまう三崎汐さんの傑作。
ポカポカ陽気に誘われて朝から読み返して感動しておりました。
デビューコミックに対してこういう風に言うのは作家様からしたらあんまり喜ばしい言われ方ではないのかもしれないけれど、読み返せば読み返すほどやっぱりすごい傑作だと思うし、こういう作家様に1人出逢う毎に、BLって尊いジャンルだなって噛み締めてしまいます。

子供から少しずつ子供じゃなくなっていく10代前半を、息苦しく思いながらも挫けず生きている少年達のお話です。
パッと見はブルーが綺麗で青春BLっぽさを感じる表紙のイラストですが、よくよく眺めると少し不思議。
2人が立っている場所がどこかと言うと「冷たい水の底」なんです。
だけど天上からはしっかりと光が射し込んでいるから暗くはない。
あの頃(10代前半)を例えるなら、確かにこんなイメージかもしれないなと思いました。
そしてページをめくって読めるのは、まさにそんな、暗いけれど煌めきが常に共にあるようなお話です。

主人公の〔春希〕は周りより少し成長の遅い子なのだけれど、小学6年生の春、〔春介〕との出会いでそれまでの自分の世界にほんの僅かにヒビが入ります。
そこから少しずつ始まる春希の心の成長が高校入学までの約5年間のスパンでじっくりと丁寧に描かれていくのですが、女装して家を出ていってしまった兄の存在もあり、なかなか遠回りな大人への道のりです。
枷は「まっとうに育ってほしい」と願う親心を裏切りたくない子供心。
世の中の「まっとう」から外れる事柄は色々あるけれど、それでもやっぱりセクシャリティの問題は10代特有のあの閉鎖的な環境で受け止めるには一番キツいものだと思うし、自分を守るために別の誰かを傷付けてしまうような発言をついしてしまうのも、それがあとから重くのしかかってくる感じもリアルでチクチク痛い。
「僕の『普通』はいつも僕の大事な人を傷つける」というモノローグのズシリとくる感じ。
10代のめまぐるしい季節の中に自分だけが置いていかれてしまうような春希の焦燥感は、読んでいるこちらまで胃がキリキリとしました。

「冷たい水の底」から浮上したあとも良かったなぁ。
最後のモノローグがすごく好きです。
思わず一緒に目を閉じて、同じように息苦しかった自分のあの頃を思い返しました。
青春の尊さというのは、自分の頭上には光があることを暗い場所からでも信じ抜ける強さなのでしょうね。

本編のラストページはもちろんのこと、描き下ろしの最後の1ページがまた良いんですよね。
子供じゃなくなっていくけど、でもやっぱりまだまだ子供だよね10代は。
頑張れ!って思います。

三崎汐さんは最初は絵から受ける印象と中身のトーンにギャップを感じるかもしれませんが、この繊細で刺さる感じ、ちょっとチクチクする感じが大好きです。

【電子】ひかりTVブック版:修正-、カバー下なし、裏表紙なし

7

よくできた青春映画のような

思春期のキリキリした切なさが、すごく伝わってくる作品です。絵に癖のある作家さんだと思いますが、私はこの絵と、エピソードを淡々と連ねていく感じがたまらなく好きす。エロはかなり薄めですが、最終的に幸せな感じがあればエロが薄くても満足です。欲をいえば、もう少し、いちゃついてるところが見たい…かな…。

3

この作品が収納されている本棚

ちるちる評価ランキング(コミック)一覧を見る>>

PAGE TOP