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老いもせず、死にもしない。 そんな死神の恋―― 切なさが美しく心に響く、連作落語シリーズ。
déraciné
根無し草。転じて、故郷や祖国から切り離された人。
年々歳々、来る年も来る年も淡々と時間が流れていく。
古今東西、人が望んで止まぬ長寿。
でも、知る人が皆死んでゆき、一人生き続けて行く事は苦しいだろう。
落語の「貧乏神」と「寿限無」を題材にした作品。
最後に関係ない小品と、寿限無の書き下ろしが加えられている。
サラリと描かれた、深くて物悲しく、そして暖かな物語。
『金魚すくい』
時は江戸時代。
貧乏神(びんちゃん)は、取り付いたグータラ男・与平になんだか振り回されている。
甲斐甲斐しく生活を支えながら暮していたびんちゃんだが、
やがて与平に愛想を尽かし彼のもとを離れる。
時は巡り、桜の候、死神に転職したびんちゃんは与平の最期の時に訪れるが……
『デラシネの花』は、「寿限無」の名を付けられて200年も生きている男の話。
子や孫は勿論知っている人は皆死に、特攻隊で命を散らそうとするが失敗し、
山奥で暮したり街中で暮したり、名を変え転々としながらいつしか時は平成。
ホストとして刹那的に生きる寿限無。
実際の落語では「貧乏神」同様、前座噺として扱われる事が多い「寿限無」だが
この本の中では、落語に秀流オチをつけた『金魚すくい』を前座としながら
続く『デラシネの花』では斬新な発想で、
切なくも優しく愛おしい世界を描き出している。
平成版死神(びんちゃんのその後)は、長髪でクールななかなかのイケメンだが
昔出会ったダメな男の優しさを心の隅で引きずって、またこんな男に引っかかり……
浮世離れしたちょっとずれた淡々さと(そりゃ神様だしね!)
妙に人間臭い死神がいい。
年々彩々……
淡く色がついた彼らの時間は、今後どんな風に描かれていくのだろうか?
最後の短編『小向家の事情』は、短いが読み応えがあり読後感のいい話。
回想されるエピソードの挟み方が秀逸。
ラストシーンの「ざまぁ」が、落語のオチに似た味わいか。
本自体も細部まで何気なく世界観に彩られ、読むたびに静かに沁みる一冊でした。
表題作のベースになった『寿限無』と言うのは元々が滑稽話で
話す時のテンポ維持がさりげなく難しい事から落語を高座で
語る際の課題噺になっているとかいないとか。
その寿限無をこう肉付するかと舌を巻き、更に落ちでなんとまあと
あごを撫でたのが表題作でございまして。
表題作丸々元の寿限無も含めて噺に仕立てて高座にかけて欲しいと
言う感じですね。難しいとすれば男同士の艶もどうやって独りで
演じるかと言う辺りになるでしょうか。
巻頭作があるから表題作も光ります。
元々落語の中に生きてる人達ってのは綺麗事で生きてる人ばかり
ではありませんので、傍からみりゃなんてェろくでなしだと
言いたくなる人だっています。
誰からも愛される与太郎ばかりなら角も立たないのでしょうが。
ま、この受けの神様の前では人間は皆与太郎なのかも知れません。
だからこそ攻めは愛されてしまうのかも知れません。
「小向家の事情」、現代ものの筈なのに落語の匂いを感じて
しまうのは何故なんでしょうね。
ぐるぐる回りつ続けた何かを一気に回収してしまう様な落ちに
小気味良さを感じてしまいます。
読んで初めて落語からの作品なのだと気がつきました。
初めの金魚すくい、これって落語作家の小佐田定雄さんの作品なんですよね。
知り合いが落語をこよなく愛しているので、桂枝雀さんのテープを聞いたことがあり、
秀良子さんの手によってコミックスになるとまた違う味わいがあると
かなり心惹かれてしまう最高な作品に仕上がっていますね。
落語でも貧乏神の可愛らしさを感じたのですが、画でみると一段とですね。
内容的にはミイラ取りがミイラになったような話ですが、これが心に染み入ります。
落語家さんの話で感動もしたのですが、この作品でも視覚から感動を得ました。
これも画力と作家さんの解釈のたまものですよね。
是非皆様におススメしたい1冊だと思います。
表題作は寿限無寿限無でおなじみですが、長生きしすぎて現代ではこうなりました!
とんでもなく奇想天外であり面白くも切なくもありでしょうか。
200年生きたらどうなるのか?長寿を願う親子愛の落語がこんな風になるのだから
面白い、それに出てくる死神も心惹かれます。
この作品は取りあえず騙されてもいいやのつもりで読んで下さい。
高確率で面白いと思えるはずです。
落語の「貧乏神」と「寿限無」をモチーフとしたお話。
まさか落語がBLのモチーフとなるとは…!驚きです。
「寿限無」は知っていましたが、「貧乏神」は今回初めて知りました。
ちなみにデラシネとは、根なし草のことだそう。
転じて、故郷や祖国から切り離された人のことをいうそうです。
今回特に落語を下敷きとしているからか、単なる萌えではなく、情とか色気とか侘しさとか、そんなものがたくさん織り込まれているように感じました。
秀さんの作品はセリフも少なくさらっと読めてしまうから、物語の行間や表情を味わえるか味わえないかで、作品への評価が分かれてしまう気がします。何度も読み返して味あわないと、本当のおいしさはわからないのかも、と秀作品はいつも思っています。
正直、私個人的にも、一度読んだだけの状態ではあまり好みではなかったのですが、本作の「金魚すくい」を読んだ後に落語の「貧乏神」を読んだら、一層物語がわかりやすく、そして味わい深くなったような気がしました。
今回は、「リンゴと蜂蜜」シリーズのような、わかりやすい萌えで万人受けするタイプではなかったのですが、最後に収録された「小日向家の事情」は唯一万人受け。
個人的には、お父さんカップルの過去に妄想が膨らみました(笑)
たとえば、二人の関係を息子へ隠す日々なんかを読みたいなーと思ってしまいました。
onBLUEさんの本、すべて読んでいるわけではないですが、新たな試みのある作品や難解な作品が非常に多いなぁという印象です。
自分の心に余裕があるときに、じっくり味わって読みたい本です。
■【金魚すくい】
まさか秀良子さんでタイムリーに精神的負荷のかかる作品をひいちゃうとは思わなんだ。
数日経ってから読んだらそうでもなかったですが、ちょうど…って日に読んだその日は号泣きでした。
人によっては攻めのダメンズタイプ(ぷー太郎)が苦手な方もいると思うのですが、
いやホントねぇ…。
あぁ世の中ままならねぇです。
情はあっても腹は立つ。腹は立つけど情はある。
どうして理想と現実ってこんなに違うのかなぁ(遠い目)
貧乏は嫌ですね~
BL貧乏みたいに好きなものに投資する貧乏はツラくても楽しいですけれども。
それとは別に、私みたいにしがらみ貧乏はキツイでございますよ。
宝くじ1等とまでは言わないから当たらないかな~w
ビンちゃんが家を出て行く時も切なかったです。
私が一緒にいたらあなたのためにならないから…。
ビンちゃんに感情移入MAX!
ビンちゃんが死神になって再び与平の前に現れた時、
「金魚を買ってきてくださってありがとうございました」という死神の言葉に、
じんわりとこみ上げるものがありました。
純粋に愛するって難しいと思うのですが…えぇ、しがらみがありますからねぇ…
でもこの二人にはそういう純粋なものを感じて、貴い人たちだなぁと思いました。
■【デラシネの花】
名前のおかげで長寿(200歳)になってしまった寿限無(中略)長助のお話です。
時は流れてホストになった寿限無(中略)長助は、
大戦時見かけた死神に偶然にも出会い、
今度は死神とメル友に。
寿限無は200年も生きてしまったからでしょうか、
何もかもが面倒臭いと思うような人になっていました。
そんな寿限無を振り切ることができない死神の、これまたその気持がよく分かる。
腹は立つけど情はある。うっちゃる(投げ捨てる)ことは…できない。
一つ気になっているセリフがあるのですが。
寿限無が死神を押し倒した場面で、
死神が「どうしてあなたたちはいつもそう…」と言うセリフです。
なぜ「あなた」じゃなくて「あなたたち」なんだろう。
死神さんの心の中に、寿限無以外の誰かがもう一人いる…?
その人は今どこにいるんだろう?
寿限無の中にいる?
それは誰?
ところでビンちゃん(死神)のキャラに萌えました。和装も洋装も両方好きでした。黒髪ロングの美人さんできゅん。健気さんなところもきゅん☆
笑いどころもあり、深い部分もあり。
こちらの作品は個人的にはアルバム的な作品として心に残りそうです。
◆描き下ろしの寿限無と死神がソファに座っているところ、自然なキスをするところが良かったです。流れた涙も描き下ろしに癒されました。怒っている死神さんにきゅん。
■【小向家の事情】
父親と父親の友達が一緒に住んでいる小向家。
その父親の友達というのは実は父親の彼氏で、そしてお父さんは受だった…
子供(颯太)は父親の彼氏(蓮司)のことが好きだったのですが…ショックな事実を知り・・・
数年後、彼氏を連れて実家に帰ってくる颯太。ビックリしている父親と蓮司を見て、心の中で『ざまぁ』と言っている颯太が愉快でした。