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久我さんの大阪芸能史もの。
今回は更に時代が上がって、明治時代の落語家さんのお話。
私自身、もともと関西ネイティブじゃないので、大阪弁の細かいニュアンスまではわからないけど、ここまで古い大阪弁だと、場所も時代も超越した、物語の中の言語として、その響きの美しさに感嘆。
久我さんの小説の登場人物はおしなべて人生に肯定的で、前向きですが、この作品の主人公の椿丸はその中でも特に素直でかわいらしい。
真吾の気持ちと、自分の真吾への気持ち、それを理解し受け入れると、快楽も素直に積極的に迎え入れる。
ほんとに爛漫と咲く桜を思わせる、仄々と味わい深いお話でした。
久しぶりに、脳みそが湧くような萌えを感じる作品に巡り会えました。関西弁と時代劇(明治後期)に抵抗がない方には是非とも手にとって欲しい作品です。
タイプは違えど上方落語界屈指の人気若手噺家である椿丸と真吾。実力のある二人が、噺家としてそれぞれ研鑽しつつ、相手の芸、そして人間性に惚れ込み、虜になっていく様子がとても艶っぽく、切なく、温かく描かれています。
会話劇としての面白さもありました。100年ほど昔の大阪を舞台にしているので現在耳にする言葉とは違うのですが、とてもテンポがよく、この作品自体、落語のように聴いて楽しむことができる作品のように思います。落語っていいですよね~。佐々木久美子さんのイラストがなんともいえない素敵な雰囲気です。
半分ほどは現代人の勝手なノスタルジーでしょうが、この時代は現代よりも色んなことがシンプルで、小賢しい駆け引きなしに惚れた腫れたと言えちゃう(そういう展開でも無理を感じない)魅力があり、それがとても上手く効いているなぁと感じました。
あとがきによると、この作品の一年半ほど前に出版された「頬にしたたる恋の雨」(イラストは志水ゆきさん)とゆるくリンクしているそうなので、いつか読んでみたいと思います。というか、椿丸と真吾のお話がまた読みたいです。それにしても、同じレーベルの関連作品でもイラストが違うことってあるんですね…。
「めんどくさ!」
関わらずには済まされない、関わらずにはいられない…。(心の中の身内)すねっこオヤジの山川藤之助師匠の地雷ボタンを把握し、ひらひらと生きている椿丸(恵二郎)。
その対局にあるかの様な芸風の真吾、お互いに引き込まれるように魅せられて…。彼らを取り巻く時代とそして人々も丹念に描かれていて、今作のまったり感がたまりません♪久我先生のお噺家のシリーズ?!の中で、上位に入る珠玉作品だと思ってます!!栗梅亭真寿市の若かりし頃とリンクしてる、とあったので以前購入した『頬にしたたる恋の雨』を読み返し中です♪ホント今作いい味出していらっしゃいます!(*^。^*)!
明治中期の日本を舞台とした落語BL。
『頬にしたたる恋の雨』のリンク作(過去編?)ですが、
単独でも読める内容となっています。
若き日の真寿市(前作受の師匠!)の登場には思わずニヤリと。
華と愛嬌がウリの人気落語家・椿丸(受)は
敵対流派の人気落語家・真吾(攻)の噺に惚れ込み、
師匠に内緒で逢瀬を重ねる。
明るい芸風とざっくばらんな性格で皆に好かれる椿丸(受)。
卓越した技術を持つが、普段は大人しく礼儀正しい真吾(攻)。
正反対な二人だが、落語家として尊敬し合っていて
大好きな落語のことを熱く語り合ううちに
いつのまにか人としても惹かれ、恋仲に。
もっとも真吾(攻)の方は一目惚れだったようで、
あけっぴろげな椿丸の前でひとり赤くなっているのが
(椿丸はその理由に気づかないw)なんとも可愛い。
真吾視点の後日談【解語の桜】では、美人で年上の恋人に
振り回される真吾の幸せな気苦労が描かれていますv
ほのぼのした雰囲気ながら、
兵役、子別れなど時代故の悲しさも少し描写され、
それでも笑って助け合って生きている人々の輝きが良い。
当時の街並みや風俗もいきいきと描かれ、
読んでいると眼前に当時の大阪が広がるようです。
明治中期は落語を文字に起こす「速記」が盛んになった時代だそうですが
この作品自体、まるで人情落語を文字で読んでいるように
テンポが良く、読後はほっこり心温まる。
椿丸と真吾の、それぞれの師匠との絆。
藝妓「まめ貞」の、椿丸への母のような優しさ。
出てくる老若男女が皆とても粋で魅力的です。
上方落語の大阪弁の、まろやかで柔らかい言葉遣いは
落語の場面では格好よく、濡れ場では格別に色っぽい!
「一人称が『わたい』のBLなんて…」と思っている方にも
騙されたと思って読んでほしい作品ですv
挿絵は佐々木久美子さん。
一つ一つの絵がとても素敵な額縁イラストで囲まれ
まるで芝居絵を見ているような気分になりました☆
『頬にしたたる恋の雨』に出て来て魅力的だった師匠の若き日の話。
時代は大分遡り、明治中期、
古く柔らかな関西弁で綴られる、上方落語の世界。
華がある椿丸としっとりと上手い真吾はともに若手の人気落語家。
元は同門でありながら、師匠同士が対立しているため接点がなかった二人だが
席亭の瀬島の取り持ちで初めて顔を合わせ、最初から互いの芸に惹きつけられる。
椿丸の師匠が機嫌を損ねるのが必至な為
隠れて会っているうちに、ますます惹かれ……
気難しいけれど可愛げのある師匠にバレての一騒動や、
椿丸が馴染みの芸者に自分では分からない真吾への思いを相談する下りなど、
周囲の人々に味があって、それが物語の膨らみになっているが
二人の恋愛自体は直球。
芸に関しては真摯に互いに高め合う二人だが、恋愛はかなりのベタ甘。
時代の雰囲気や、生き生きとした登場人物、人情味溢れる物語……と
手堅く面白く満足度も高かったけれど、
真寿市師匠の若き日、ということで期待した切ない感じとはちょっと違ったかも。
※
久我さんのブログで、本作の番外編『甘味処』が公開されています。
情報通の近所の甘味屋のご主人が、真吾の弟弟子・真太相手にお喋りするというもの。
久我有加先生のブログ「腹八分目」
http://kugaarika.blog.fc2.com/blog-entry-112.html