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表題作催眠術入門

安藤龍彦,親のスネかじり
林周,友人の英語教師

その他の収録作品

  • 三月怪談
  • 円城寺伯爵の犯罪
  • 淡雪事変
  • あとがき

あらすじ

催眠術をかけた友人が、淫らな姿を見せ――!?

大正はじめ――。

高等学校時代からの友人・林周に会いに、彼が勤める大学に足しげく通っている龍彦。
その日も周の研究室を訪れ、世間で大流行している「催眠術」の話をすると、周はインチキに決まっていると言う。
そこで、彼を実験体として、龍彦が催眠術をかけてみることになる。

――すると、龍彦が予想もしなかった姿を周が見せ……。

作品情報

作品名
催眠術入門
著者
カシオ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
KADOKAWA(エンターブレイン)
レーベル
B's‐LOVEY COMICS
発売日
ISBN
9784047296541
4.1

(163)

(78)

萌々

(47)

(28)

中立

(4)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
19
得点
666
評価数
163
平均
4.1 / 5
神率
47.9%

レビュー投稿数19

いつまでも浸っていたい

明治〜大正時代って、どうしてこんなに惹かれるのでしょう。
「大正ロマン」という言葉の通り、合理的なものより情緒に重きが置かれるようになった時代のせいなのか、日本であって日本でないような独特な雰囲気に胸が躍ります。

この作品の舞台は大正初期。第一次大戦の頃。
大学で英語を教える周(あまね)と高級遊民の龍彦は、高校時代からの友人。
暇にあかせて周の研究室に日参する龍彦はその日、ある小説を持参してきて…。

不思議な雰囲気の中、テーマとなっているのが催眠術に幽霊、怪しい薬。
暇潰しの戯れにかけた催眠術が重いもよらないことを暴いたり、未練の残る幽霊に取り憑かれたり、周に目をつけた伯爵に怪しい薬を飲まされたりして、えろすの割合は少なくありません。
ただストーリーもしっかりしているので、中盤からぐいぐい引き込まれます。

カシオさんの絵は個人的に清潔な草食系のイメージなので、催眠術にかかった周乱れっぷりがそぐわなくて、ちょっと引いてしまう。
だけど幽霊に乗り移られたときの表情は、息を呑む妖艶さ。
伯爵の屋敷からの帰り道の馬車では、またちょっと引いてしまうし、結構えろすの度に作品とこころの距離が離れるのですが、中盤からの吸引力の強さよ。

まずは言葉にやられます。
長く友人だったから、素面では言えない気持ちを催眠術にかかったふりで吐き出したものの、その後何事もなかったかのように振る舞う周に、龍彦もあやふやなまま。
そのあやふやさを吹っ切るきっかけになるのが、伯爵の家で周が朗読したシェイクスピアのソネットというところも素敵だけど、その詩が持つ意味を理解した龍彦のモノローグが素晴らしいんです。
畳み掛けるように、自分を奮い立たせるように、重ねられる言葉の力強さが、フォントサイズのせいだけじゃなく、しっかり伝わってくる。
そこから志願兵になるよう親に言い渡される龍彦の「時間」を思うモノローグも良い。
挙げればキリがないほど、良い言葉が溢れています。

前半の軽薄な感じから一転してシリアスになる後半。
切なさで胸を千切られそうになること請け合いです。

カシオさんの時代ものは、いつもBBS制作の『名探偵ポワロ』や『シャーロック・ホームズ』のような雰囲気を感じます。
この作品でも伯爵のパーティはポワロが招かれていてもおかしくない感じだし、龍彦と周の友人関係はシャーロックとワトソンくんのよう。
趣があって、ずっと浸っていたい世界です。
欲を言えば、えろすが…。
個人的には匂わせるくらいで場面転換していただけたら、確実に「神」でした。

0

タイトルからは想像もできなかった切ない恋のお話

〖DMM電子書籍〗
修正 : トーン、白抜き(汁あり)
カバー折り返し : なし
カバー下 : なし
帯 : なし
裏表紙 : なし
カバーデザイン : 橋本清香さん
電子限定特典 : なし
備考 :
ひと言 : 周の刈り上げられた襟足にムラッとします。

〖紙媒体〗
未読

0

お互いのどんなところに惹かれたのか、もう少し聞きたかったかも

 催眠術という面白いテーマで軽快に進んでいくのと同時に、大正という時代ならではのシリアスさも時折混ざっている、このバランスがいいなぁと思いました。もっと薄暗い話かとイメージしていたけれど、最後まで明るい気分で読めました。催眠術って素人がそんなに簡単にかけられるものなの?という疑問はさておいた方が良さそう。実際、周のように暗示にかかりやすい人間というのは存在しますし、催眠術に関わらず、他人の影響を受け入れてしまいやすい彼の無防備な体質を楽しんだもん勝ちの作品だと思います。時代やテーマこそ特殊ではあれど、両片想い(時差はありますが)から気持ちを伝え合ったり、周がモブに襲われたところを龍彦が助けたり、割と王道なストーリーでもありました。

0

軍服と和服が最高。

ネットにて表紙を見て、絵がとても好みで購入したのですが内容もとてもよかった。軍服に和服に、色っぽくて本当によかった。受け攻めどちらとも美形なので、眼福とはこういうものか、と思ってしまいました。今私が腐女子の友人に一番勧めたい本です。

2

軍服万歳

大正時代の物語は重そうだし、暗そうだしで正直敬遠してたのですがどなたかのレビューで上位に入っていたので読んでみました。

最初は催眠術というきっかけですがお互いを意識していくあたりや受けの周が一体どう思ってるのかなど細かく読んでいくとなかなか面白くて、かつ、このへにゃへにゃした絵がなんとも色っぽいです。

でも一番の萌えどころはやはり軍服姿の龍彦!短髪のキリッとした髪型も、帽子を目深に被った顎のラインもとにかく凛々しくて素敵です。最後の最後、物語としての感動と見た目の美しさの感動二つを楽しめます。

1

最高です

大正時代のお話。
現代以外のお話をあまり好んで読むことはなかったのですが、この本は催眠術というところに惹かれて読んでみました。
素晴らしく、とても感動しました。

終わり方がとてもよかったです。
見開きが素敵で、余韻がすごく良い。
キャラの設定も素敵でした。
そして受けがえっちです・・・(笑)
総合的にすごくよかった。ストーリーも感動してエロ度もまあまあ。ツンとした受けが自分の気持ちをさらけ出してえっちになるのは本当に好みです(笑)

1

ʚゆɞ

【補足】
最後の4ページの催眠術の話は本当にによかったです。
本当に素晴らしい…すごく素敵な終わり方です…
切ない。でもハッピーエンドでよかった…

テーマもキャラもストーリーもよかった

想像していたお話とはだいぶ違って、すごくせつなくて、でもすごくよかったです!

個人的にちょっと苦手な展開もあるのですが、ちゃんと一貫したテーマを貫きつつ、すれ違いから成就までを綺麗にきちんと完結して描いていて、BL的なお約束のシーンや萌えもある。舞台もとても素敵です。
完成度の高い作品だと思いました。

大正時代が舞台で、長年の友人同士のお話です。
学者先生であると周と遊び人の龍彦は、恋愛部分に関しては見ていてどっちもへたれです。
それがもどかしく、バカバカしくもあり、とても可愛い。

遊び心から周に催眠術をかけた龍彦は、そのせいで欲情した周に迫られてなし崩しに体の関係を持ってしまいます。
周は実は龍彦がずっと好きだったと告白するのですが、それで恋人になったかというとそうでなく、2人は微妙な距離をあけたまま、普段どおりの、悪口を利きあう友人して接します。

周のツンデレぷりと潔癖ぷりはかわいく維持らしく、龍彦もカッコイイのかおバカなのかわからないまま、すれ違いを重ね、でもずっとこんな日々が続くのかという日常が最後に展開が大きく変わるまで続きます。

基本的に1話完結で、事件に巻き込まれたりホラーチックだったり、大正という舞台の雰囲気もとてもよく出ていて面白い。
タイトルになっている催眠術を用いたお話は最初だけなのですが、その後も幽霊に憑依される、阿片で催眠状態になる、など自分の意思で自由にならない行為という、催眠的なテーマを毎回継いでいてよくできていると思いました。

最後はとてもせつない展開です。周は自分から好きと言ったのに、龍彦も周が好きなのに、どうしても気持ちが通じ合わない2人。
恋人にはなりたくないという周の真意がどこにあるのか、わからなかったです。でも最後に、周が見せる執着に、ガツンと殴られたような衝撃でした。
恋愛ものとしてでなく、最初単純にお話が面白いなあと思って読んでいたので、恋愛部分がこんなに狂おしく情熱的だったことに驚き、とても感動でした。

私は、あんまり昭和以前の作品は読まないのですが、なぜかというと社会情勢が不安定で、災害や戦争などどうにもならない事で引きはがされるお話がたま~にあって、それが辛い!このお話も、そんなせつないラストです。
これは苦手な展開だなぁと思ったのですが…やはり催眠術というテーマを上手く使っていることと、何よりせつない2人の恋の行き着く先から目が離せなくなってしまい、高い評価をつけたいと思いました。

幸せになるまでが本当にハラハラなのですが、是非オススメしたい作品です。

6

我慢しない。

これは、「催眠術入門」「三月怪談」「円城寺伯爵の犯罪」「淡雪事変」の四つに分かれていますが、いずれも催眠術入門の派生作品で、主人公は同じです。
物語の舞台は、大正初め・東京。
美人で有名だが、言葉がとても厳しい(毒舌というわけではない)英文教師・周と、お金持ちでフラフラと日々過ごしている龍彦のおはなし。龍彦が攻め。
二人の関係性は、学生時代からの付き合いで、十年来の友人です。
大まかなあらすじは、
ひょんなことから、龍彦が周に催眠術をかけることになり、催眠術なんて全く信じていなかった周だったが、見事にかかってしまう。そして、龍彦は友人だと思っていた周の本音を聞くことになる。そんなお話。
催眠術がかけられているため、色んなエロが見れて(マニアックなプレイとかはありません)とても、よかったです。
この時、周は、催眠術をかけられた「振り」をしているだけ?のような描写がありますが、そこを個人で想像してみるのも楽しいかもしれません。
「三月怪談」は、女の幽霊が乗り移ってしまい、龍彦といたしてしまうお話です。
「円城寺伯爵の犯罪」は、タイトル通りです。円城寺伯爵に薬を盛られ、行為を…まではされませんが、薬を盛られて、脱がされます。円城寺伯爵とのキス描写はほんの2コマほどあります。が、未遂です。
帰りの馬車で、行為をされていないか不安な龍彦が、周を襲ってしまうシーンがあります。
円城寺伯爵の犯罪は一話完結なんですが、最後に、龍彦が、周への恋心を自覚して、次の話(淡恋事変)になります。
「淡恋事変」は、少し切ないお話です。龍彦が父に徴兵を志願するように言われ、戦争に行ってしまいます。その前日まで、周に会えずにいた龍彦は、前日になって周に会いに行きます。そこで初めて徴兵を知った周が少し暴走してしまいます。その暴走の仕方が可愛いのなんのって…
やっと素直になった二人の結末がとても見所です。ちなみに、バッドエンドではないので、徴兵と聞いて構えた方でもきっと満足だと思います。
エロが標準となってますが、標準よりは確実に多いかと思われます。

7

レトロ物増えないかなあ。

実は全然興味なくて、タイトルは知っていましたが表紙すらちゃんと見てませんでした(すみません)
冬コミで通りすがりでレトロ表紙を見付けて購入したのですが、え?あのマンガの番外編?って時代物だったの?と、昨日慌てて買ってきました(笑)
あああ、表紙からレトロでした。
色々きちんと目を通さないと、好みの話も逃しますね(反省)

ラフな画風の方なのか、背景とか「え?この超フリーハンドなお屋敷は!?」と思うところはあれど、雰囲気はとても良かったです。
受けがちょっと苦手なツンデレというか、流されやすくなくてもう少し素直な方が好みかなあと思うのですが、まあ、あのラストに向けてならいいですかね。
本当に催眠術だったのか色々怪しい感じですが、時代の雰囲気は出ていたので好感が持てる一冊でした。
そういえば不自然ではないですが、ゲイである事に確執や軋轢は全くなく、ハッピーエンドです。

レトロ物、もっと増えて欲しいですねえ。

2

キリヱ

>>藍華918さん
コメント有難うございます!
おおー!あの本よかったですよね。
同人誌を見付けなかったら、本編は読まないままだったと思います。
たまたま通りかかった偶然に感謝ですー。

藍華918

こんにちは!私も冬コミで見つけて番外編買ってしまいました(^ ^)
私の場合冬コミの数日前に読んでいていい作品だな〜と思っていたので冬コミ参加してらっしゃるの知らなかったので驚いたのが記憶にあります。
突然のコメント失礼しました><

催眠術にかかる

表情から漂うお互いを信頼してる感じと大人なエロい雰囲気が伝わってきますね( ´ ▽ ` )ノ
そしたまた大正モノです。玉響といい憂鬱な朝といい私のイメージでは大正モノは外れがないと思っています。

話の冒頭のシーンから周の性格と男に好かれやすい容姿をしていることがわかります^ ^ さぞ生徒やら何やらにモテていたんでしょうね、黒髪短髪で少し刈り上げているところも可愛らしいし体格もがっちりしていなくて細身なのでよりそそりますね笑

面白半分に始めた催眠術ですが、周はかかってしまいねこになりますがそのにゃあという言葉がとても可愛い。そのまま龍彦がまたたびに称した手を近づけるとトロンとした目で見つめてきてすり寄ってきます。もう龍彦くんドキドキですね(^o^)
またたびにムラムラしてイキそうになった周に龍彦は俺がいいのいうまでいくな!と言い
ますがそれが大変なことになってしまうなんて…何かあるなとは思いましたが笑

私は催眠術に詳しくはないのですが、一度かけられたものは解かれるまでかかっているものなんですかね?周は催眠術にかかったまま解かれていなかったのでいくことができずずっと我慢してたんですね…それは男性の射精と尿が同じ場所から出ることが関係しているのですかね?笑 私はスカ系が苦手なので少しOH…でしたが笑 我慢して体を捩る姿は大変そそります(^。^)

そしてちゃんと催眠術を解いたと思いきやまた龍彦が余計なことを言ってしまい、我慢しなくなった周はビッチモードに そのまま自分のしたいがままに動かせているのは読んでいて気持ちが良かったです。自分の言葉に相手が服従(意思に関係なく)させているのは自分の中に征服感を感じているんでしょうね。
そのまま行為に持ち込んだのは2人が元々思いを伝えてなかっただけで相思相愛だから許せました♡

作中では催眠術を周が自分自身で解いたのかかかったままなのかは明かされませんでした。私は勝手に催眠術だと龍彦に思わせて本音を言おうとしているものだと解釈しています。
この作品は元々1話完結の予定だったからなのかは分かりませんが1話以降催眠術が出てくるのとは無いです。まあ催眠術を使わなくても2人の愛を確かめられたということなんですかね♡ 後半は色々と展開が多いので是非読んでいただきたいと思います。

1

大正浪漫もっと増えて!

受はツンツン女王様キャラで可愛げがないです。致命的なのは抜きんでた美青年に見えないこと
攻は(時代が時代とはいえ)無職ってやっぱりかっこよくないですよーw

前半はあまり時代を生かせてないのですが
『円城寺伯爵の犯罪』は読みごたえがありました。このエピソードで終わってもよかったな~

1

カシオ先生流メランコリーいっぱいのデカダンス

カシオ先生は、ほぼ全作品読ませていただいていますが、いつも絵を見ずモノローグや台詞だけを読んでも充分楽しめるくらい、文章にセンスのある方だと、思っています。漫画が巧い作家さんはいますが、カシオ先生のように文章の美しさが心に染み渡るような個性は稀有なように思います。第1話は、エロとろからの収録だということで、エロさ多めで浮いているような気もしますが(勿論、私も人の子、エロも大歓迎ですが)、その後はカシオ節が冴え渡っていました。
周が朗読したシェイクスピアのソネットを、龍彦が後日翻訳してやっとその意味と周の気持ちを汲み取れた箇所から、「震える蚤の心臓よ〜」までのくだりは、本当にこちらの気持ちも高揚しました。最も心に残った場面のひとつです。

この作品は大正時代のお話ですが、独特の華美さ、退廃的な雰囲気は大正時代ならではで、カシオ先生の文学的な文章にぴったりです。第一次世界大戦、そして関東大震災、最終的には昭和初期に華族制度も廃止されることを知っている私達には、やはり忍び寄る時代の足音を感じてしまい、どうしてもなんだか切なくなってしまいますね。物語の最後では、龍彦は無事に大戦から帰還し周と再会しますが、心配性の私は二人はこのあとどうなるのかと空恐ろしくなります。しかし、元すねかじり、今でいうニートだった龍彦がかなりしっかりとした頼もしい顔つきになって戦地から帰ってきたので、彼なら頼りにしてもいいかも、周くん、頑張れ!

これは本当に私個人の萌ポイントというか純粋な趣味なのですが、男性の燕尾服が 大好きなので、二人のお出掛け姿には萌転がりました。龍彦のハットなんて、今ではオーソドックスジューが時々飛行機に乗っているのしか見る機会ないのですが、色男が被っている姿を是非拝んでみたひ。
そしてそして! 龍彦の色々な髪型!
オールバックに七三、そして軍帽と、めくるめくファションショーで堪りませんでした。BLだと前髪長いほうがお好きな方が多いような気がしますが、私は二次でも三次でもポマード上等! 七三オールバックカムカムなので‥。同じ趣味の方に出会ったことはまだありません。お友達ほしひ!
後は、周くんの伏目の色っぽさも罪だなぁと。皆エクステだのつけまだの必死になって目元を演出しているのに、君はナチュラルになんて誘うような色気を出しているのか! 熱気のこもる馬車の窓に押しつけられる二人の手形も秀逸でした。心に残る絵です。

絵にクセはありますが、お薦めしたい漫画です。

8

物語は導入部分が大事

 カシオさんが森鴎外の小説をモチーフにしたのを目にするのはこれで2作目です。
1作目は元の小説と同名の「ヰタ・セクスアリス」。ストーリーだけでなく、文体にも寄り添った現代劇でした。
2作目であるこの「催眠術入門」は、森鴎外が生きていた時代と社会情勢を共有しています。

[催眠術入門]
 大正浪漫、気取った言葉遣い、眉目秀麗な青年と高等遊民、そして催眠術。
18禁の「エロとろR18」に掲載されただけあって、最初から最後まで、やらしい、やらしい、やらしい展開。これでもかと扇情的な演出を繰り出してきます。
 一話目を読み終えるころにはすっかり二人に魅了され、続きが気になって仕方なくなりました。

[三月怪談]
 こちらは「よみきりCitron」の作品。
 怪談としてはごくごく一般的な展開。定番といっても構わないくらい。
しかし催眠術入門のあとだけに、はたして何処まで信じていいのか迷うのです。ありきたりだと判断した自分を。
 結局は翌朝に庭師から屋敷にまつわるいわくを聞くまで待たなければならず、また聞いた後もなんとも狐につままれたような感覚で、満足気に納得したのは一晩役得にありつけた龍彦だけだったというお話。

[円城寺伯爵の犯罪]
 ここからは重く切ないトーンへと様変わりします。
 伯爵の晩餐会に招待された周(あまね)と龍彦。
 龍彦が令嬢の相手をしてる間に、周は英語の朗読を頼まれます。彼が朗読に選んだのはシェイクスピアの十四行詩の第18番。
伯爵は直ぐに周の真意を察したようですが、肝心の龍彦はというと・・・無念、気づきません。このせいで伯爵に出抜かれる隙を作ってしまいました。

 伯爵が周に盛ったアヘンチンキは、酒と一緒に服用すると龍彦が作中で述べた副作用が特に出やすくなる薬物です。
しかしそれを知っていてもなお龍彦は、誤解と嫉妬から帰路の馬車の中で周に乱暴してしまいます。まさかこれが淡雪事変まで尾を引くとも知らずに。

 ところで、周が朗読したシェイクスピアの詩はある美青年へ向けられた愛と賞賛を綴ったものです。
 もし龍彦が事前に詩の内容を知っていたら?そしてすぐに周のメッセージに気がついていたら?伯爵の企みはむしろ二人の絆を強める結果となっていたかもしれません。
 しかし結局、伯爵が「大げさな」と一蹴した彼の犯罪は一夜の出来事に留まらず、その後の周と龍彦の長い年月に影響を及ぼすものとなりました。

[淡雪事変]
 淡雪事変とは、何をもってつけた題名なのでしょうか。
「不意打ちで告げた別れに対する周(あまね)の咄嗟の抵抗」なのか、「不確実な約束を残し淡雪の朝に消えた龍彦の行動」を指しているのか。

 陸軍に入隊する龍彦は [催眠術入門] で使用したあの懐中時計を残していきました。
戦地に向かう前提での入隊ですから、万が一のときの形見とみるのが普通です。
しかし周は帰りを待ち続けるようにと、龍彦が自分にかけた最後の催眠術なのだと信じることを選んだようでした。

 龍彦が入隊したのが大正三年の師走の時期。
ならば出征した戦争とは第一次世界大戦。少なくとも五年以上は会えなかったはず。
終戦後も相変わらずの生活が続いたなら、更に一年、二年と過ぎてるとも考えられます。

 終盤のモノローグでは、龍彦の死の可能性を認めなければならない周の心中をうかがわせます。
それでも引き揚げ船がくるたびに港へ足を運ぶのは、周にとってそれが"生きた龍彦"と自分を繋ぐ最後の細い糸であるとの思いがあったのかもしれません。
淡雪の日に貴方がかけた催眠術が薄れて解けるまえに、どうぞ帰ってきてくださいと。


 まったく、物語は導入部でいかに読者を引き付けるかが肝だと諭された気分です。
エロエロホイホイに掛かり易い私は、この作品には格好の獲物でした。

12

催眠術おそるべし笑

時代物はあまり得意ではなく、買うかどうか迷っていたんですがついに買ってしまいました笑
初カシオさんコミック!!予想以上に面白かったです。

どちらかというと連載というよりはシリーズもので一話一話読める感じでしたね。読みやすかったです\( 'ω')/

ことの発端は龍彦が周に催眠術をかけたこと。はじめは軽いノリというか、売り言葉に買い言葉みたいな感じで催眠術をかけたんですが予想外の反応を周がとり、ふたりの関係が少しずつ変わっていきます。

周は催眠術にかかったときに龍彦につい告白してしまうんですが、そのページまでツンケンしていたのでまるで人が変わったように好きと龍彦にすがる姿はギャップで可愛かったです。

いつもと違い、本音を心の底から思っていたことを泣きながら乞う姿を見せられたら誰だって落ちますよね笑
催眠術が解けたあと、龍彦は周を抱きます。

ほんとに催眠術にかけられたのは周なのか龍彦なのか…
一度知った蜜からはなかなか離れ難い、もうこの時には龍彦は周の虜となるのです笑

とはいっても催眠術で繋げた体ですから恋人になるわけでもなく、普段と同じように過ぎていく日々。
表題作の他に収録されている話で少しずつ少しずつ変わっていくふたりの関係。

そしてやはり時代が時代なので戦争という壁が二人を待ち受けてます。果たしてどのように二人は想いを繋げるのか!!そこはぜひ読んで貴方の目で確かめてください♪

エロいシーンもありますが、とても惹かれる内容ですので読んでみてください!

3

色物かと思いきや!

時は大正初頭、所は帝都。
英語教師の周の研究室に、一高帝大時代からの友人龍彦が訪ねてくる。
龍彦は裕福な実業家の次男坊にして、高等遊民。
そんな彼は、ちょっとしたおふざけのつもりで周に催眠術をかけるのだが……

普段クールで知的な周の中に抑圧されていたエロスと欲望が露になり、
二人の関係は少しずつ変わっていく。

最初の方は、催眠術、憑依といった色物めいた仕掛けの
ちょっとコミカルでエロい話が、オムニバスのように続いていくのだけれど、
段々そこに別なトーンが重なっていく。

三話目、伯爵邸で周がシェイクスピアのソネットを暗誦する場面は
英語が画面に流れる視覚的な効果もあって
それまでのトーンが塗り替えられていき、非常に印象的。

そして、時代の渦に巻き込まれた二人の抱擁と別離、
大戦を挟んでの再会という、切ない歴史ロマンに
いつの間にやら引込まれているのだ!

後半は、もっと詳しく描いてくれればという気分もあるが、
軽く読み始めてみて、複雑な味わいで読み終わる
なんとも面白く心地よい読後感だった。



※ そして豆知識

冒頭に出て来る小説は、森鴎外の『魔睡』(明治42年発表)だが、
作中で語られているように、催眠術は明治中期から大正時代にかけて大流行し、
書物も多く出版されている。
明治半ばの「こっくりさん」のブームに始まり、
その後何度か流行を繰り返しながら明治36年以降熱狂的なブームを迎える。
あまりの流行ぶりに、明治41年に公布された「警察犯処罰令」(軽犯罪の取締法)では
「みだりに催眠術を施した者」も対象になってしまい、
実際に罰金刑などに処せられた事例も出ている。


※ 最後に、どうでもいい連想。

主人公たちの名前は、林周と安藤龍彦。
私にとっては周と言えば西周、
龍彦と言えば澁澤龍彦、
個人的にはそんな既にあるイメージを喚起させられた命名だった。
(いや、西周の見栄えは似ても似つかないんだけれど……知的なイメージとして?w)

6

大正時代×催眠術なのですよ。

表紙買い&設定萌でした。
まずローマ数字の文字盤の時計がひっそり描かれて表紙買い&衝動買い
とにかく綺麗な絵に惹かれました。

また大正時代が舞台で書生さんのような格好の人が出てきたり、
服装、家具など文明開化したころの日本、という舞台が好きな方は
買って損は全くありません。

さらに催眠術が絡んできてなにも起きないわけがない(笑)
普段抑えている心が爆発するところ、いつもはツンツンしてるのに催眠術で従順に
なるところなんかもう…

とにかく、何もかもツボな一冊でした。

3

催眠術こわい(笑)

舞台は大正です。時代モノ大好き…!
軍服も少しだけ見れます、和服エロもw

高校からの友人同士が催眠術をきっかけに一線を
超えてしまうというお話。
龍彦はスネかじりでチャラい感じのお坊ちゃん、周はストイックな雰囲気を
持つ美形英語教師。

龍彦がひょんな事から周に催眠術をかけ、周がエロエロになってしまう
という話ですが、実は周は龍彦が好きだったという展開です。

周がとてもエロいw普段の厳しいストイックさとのギャップが凄くて
かわいいです。
でもただエロいだけではなく、2人の表情や会話がなんとも
いい雰囲気を出しています。和風情緒があるのも関係しているかな?

性格や時代もあってか、あまり自分の感情をストレートに言葉にしない
ので作中モノローグが濃密で切実でとても効いていると思います。龍彦の…

「俺はもういいなりになるしかなかった 黒い瞳に覗きこまれると
俺は 気が狂いそうだった」

というモノローグとシーンがとてもよかったです!

ただ少し残念なとこは、学生時代のエピソードがもう少し
あったらよかったんじゃないかなーと思いました。

11

いのち短し 恋せよ青年

大正はじめの東京を舞台とした、
なかなかに意表を突かれる作りの作品。

ほのぼの幻想文学テイストかと思いきや
時代故の哀しい別離や、すれ違いといった切なさも
どんどん出てきて・・・
二人の行く末に最後まで目が離せません!


■「催眠術入門」
遊び好きのお坊っちゃん・龍彦(攻)と、
カタブツ英文学者の林(受)は、高等学校からの友人。

龍彦は、森鴎外の『魔睡』に影響され
戯れに林に催眠術をかけてみる。
すると、いつも無愛想な林がエロエロ誘い受に豹変!!
こんな涙目でずっと好きだったと告白されたら
龍彦でなくともオチるというものです!
(術が解けたら、元に戻ってしまうのですがw)
エロコメ+奇妙な味系のお話。


■「三月怪談」
芝居観賞の帰りに雨に降られ、
二人は龍彦の別荘で一夜を過ごす。
誰もいないはずの屋敷で、林は和装の美女と出会い…。
ちょっと怪談めいたエロコメ。


■「円城寺伯爵の犯罪」
円城寺伯爵のサロンに招待された二人。
女性といる龍彦を見て傷ついた林は、伯爵につけこまれ…。

互いに嫉妬し、すれ違う二人が切ない。
帰りの馬車にての激しい情事のシーンは、
窓の指紋と指の絡みだけで
車内の様子を雄弁に語る一コマが秀逸。


■「淡雪事変」
ようやく林の気持ちに気づいた龍彦。
だが、龍彦を信じるのが怖い林は
龍彦の告白を拒む。
気長に口説く覚悟の龍彦だが…。

回り道の末、ようやく向き合えた二人。
すっかり大人の男の顔になった龍彦と、
林(こちらは漱石気取り?)の抱擁に胸が熱くなり
読み終わるのが心底惜しいと思いました。


三月の雨夜、夏を歌ったシェイクスピアの詩、
そして淡雪の舞う十二月―――

若き二人の日々は、移り変わる四季のように
いつの間にか過ぎ去り、過去のものとなる。
幸せなラストに安堵しつつも、
どこか甘酸っぱい切なさがあとを引く
なんとも言えない読後感。

短く、儚いからこそ愛おしい。
青春や、大正という時代そのものへの
ノスタルジーを喚起させる作品でした。

15

スズキ27

Krovopizza様、コメントありがとうございました(__)

>いつも無愛想な林がエロエロ誘い受に豹変!!
>互いに嫉妬し、すれ違う二人
>気長に口説く覚悟の龍彦

私も、そこここで悶えました。
昨日は他にも新刊を読む予定だったのですが、この本を何度も読んでいるうちに1日が終わってしまいました(/- -)/
本当に、目が離せない二人でしたよね!

大正ロマン入門

 近代モノというと、第一に雰囲気萌え、その次に近代ならではのストーリーやキャラクターに萌えるものだと思っておりました。その時代の魅力を知っている人でなければ完全燃焼できないような壁を感じていて、どんなに萌えても心乱されることはない、不得意分野だったのでございます。それがもう、乱されっぱなしでした。

 あとがきによると、まず決まったのは「こんなエロが描きたい」という事で、そのためには大正時代が適していたとのお話。そういう訳でしたか。「ほら大正だぜ、咥えろよ」的な流れではなく、ただ純粋にエロを楽しんでいただければ幸いです、という方向性。

 第一にエロに萌え、主人公2人の眼差しや言葉少なに語られる台詞に萌え、そうしていつの間にか大正という時代を知ってストーリーに萌える、そんな作品でした。
 新しい時代への理想と希望に満ちあふれていた時代。華やかに見えますが、それでもまだまだ不自由で。そんな時代に生きた2人の青年の物語。エロく甘く切なく、最後はハッピーエンドです。

 高等遊民(お金持ち高学歴のニート)である龍彦と、大学教員の周(あまね)。お互いに対する「好き」という言葉では表せない感情が生々しく描かれていてゾクゾクでした。
 世間で騒がれている催眠術。試してみようじゃないかということになり。どこからどこまでが催眠術だったのか。
「俺がいいと言うまでいくな」「もう我慢をしない」
 ずっと達することができていなかった周の乱れる姿に、読んでいる側まで切羽詰まってきます。

「待ち焦がれた相手に抱かれる喜びを 俺は肌で感じたような気がしたから…」
 普段はクールなやりとりをしている2人ですが、布団の中では乱れに乱れ。日常に戻ってまたお互いの気持ちを密やかに探り合う様子が妖しく美しいです。
 周がシェイクスピアの詩を英文で朗読するシーンは、意味も分からないのに胸が痺れました。後に意味を知ってまたジンジンと痺れます。

 ゴーンと胸に響く台詞、笑える台詞も多くて、名台詞集を企画したら100では足りないぐらいですが、第5位ぐらいの台詞を紹介して終わります。

「君に聞かせたくない事は英語で言おう」「ひでっ」

13

スズキ27

Krovopizza様、
朝っぱらから咥えてくださりありがとうございます。
気持ちいいです(笑)

Krovopizza

スズキ27さん お早うございます★

>「ほら大正だぜ、咥えろよ」
この例えがツボすぎて、思わずコメントしてしまいました!!
エロやセリフに萌えている間に、小難しい話もいつの間にかパクっとイけちゃうところが本書の魅力ですよね★

スズキ27さんのレビューを拝見して、本編で萌えた・感動したセリフや場面が次々よみがえってきて、よしもう一回読もう!となりましたw

素敵なレビューをありがとうございますv(・∀・*)

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