表題作群青の写真

岩泉一
及川徹

あらすじ

唐突に南米に旅に出る阿吽本。旅と写真を通してゆりかごから大人までの同性同士の二人の関係の行き着く先について考えました。直接描写はありませんが絡みがあります。

作品情報

作品名
群青の写真
著者
ぐさり(キヅナツキ) 
媒体
漫画(コミック)
サークル
刺傷<サークル>
ジャンル
ハイキュー!!
発売日
4.8

(5)

(4)

萌々

(1)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
24
評価数
5
平均
4.8 / 5
神率
80%

レビュー投稿数2

世界ののぞむうつくしい形になれなくても。

大人になった岩ちゃんと及川サンが
初めて海外旅行します。
行く先はボリビアの首都ラパス。
及川の流暢な英語が通じず、
岩ちゃんのカタコトなスペイン語の方が通じるという地域ですw
南米最貧地のようで、首から一眼レフを下げている及川を
心配する岩ちゃんですが
及川は盗られたとしても、写真を残しておきたいと言うのです。

及川が生まれた時、すでに岩ちゃんは一か月先に生まれていて
家が近所で出産時期が近い母親同士、
しかも生まれた子が男ともあれば
家族ぐるみで仲良くなるのも不自然な事は何ひとつない環境。
二人並んで泣き疲れて眠る写真も
岩ちゃんのカバーオールを掴んで
離さず寝てしまう及川の写真等も数多く残されていて
当時の記憶は無いにしても、そこに事実はあるのです。

5歳の時のささいな噛み合わないケンカは覚えていて
及川は岩ちゃんの一番になりたいのになれない、
岩ちゃんは一番って言ってくれるけど何かが違う、
そのもどかしさは幼心にも既に恋であり愛であり…。

ラパスを出て12時間以上揺られるバスの中で
及川はそんな事を思い出し、
襲いかかってくるかのような怒涛の星空を
寝ていた岩ちゃんと眺めるのでした。

英語が話せるドライバーの車に乗って目指すのはウユニ塩湖。
“巨大な天空の鏡”と言われるそこは
雨期になると湖面に水が溜まり
まさに空を鏡に映したような奇跡の絶景を眺められる場所です。
マイアミから来たというノリの良いアメリカ人男性二人と共に
英語で会話を楽しむ中
「なんで来たんだ」という素朴な疑問に対して
言いよどんだ及川とは正反対に
真顔で「かけおち」と答える岩ちゃああああああああ!!
偏見の無い彼らに祝福されます。

今こうして二人でいても
過去は決して幸せな日々ばかりではありませんでした。
関係を持って一度別れ、岩ちゃんに彼女が出来ても
及川がすぐ胃潰瘍と拒食症になって
救急車で運ばれてしまうという事態にもなり
また別れる事があったとしても側にいることを選んだのです。

マッキ―は結婚して
まっつんは第一子が2歳になって
それはごく当たり前の世間一般でいう幸せの形。
そうはもうなれない二人は不幸でしょうか。
否。

ガラでもなくラパスでこっそり買った銀の指輪を手に
(しかもサイズが合わない)
ありふれた愛の言葉を告げ口づける岩ちゃんの
誰より愛する人は、
ほぼ地球の裏側の地で
天国みたいに信じられないほど美しい景色の中
もう二度と会う事も無いマイアミからの旅人と
スペイン人のドライバーに少し離れたところから見守られ
照れ隠しの岩ちゃんの言葉を聞きながら
これ以上ない幸福に涙を落とすのでした。

数年後、甥の猛にも子供が生まれているようです。
叔父の銀の指輪を疑問視する猛。
あの時撮った写真は勿論残っていて
ウユニで指輪を受け取った後の一枚には
裏ピースでも薬指を見せ笑顔全開の及川と
恥ずかしそうに顔を強張らせながらも
普通にピースする岩ちゃんの姿…。

奥付の『群青の写真』のタイトルには
『しゅくふくのしゃしん』とルビがふられていて
“二人で写る写真は もう一人の誰かがいないと撮れない”
とも記されています。
セルフタイマーとか…なんて野暮な事言ってはいかんのです。
これはきっと、
いくつになってもその時々の彼らを見守り、愛し、
祝福してくれる第三者がいるという事なのではないかなと
私は解釈させていただきました。
家族はもちろんのこと、
それが偶然出会った旅人とドライバーだったとしても
確かにそこで
二人だけにしか紡げないただひとつの愛を見てもらったんだと。

ありふれていても、
他の誰かからでは全く意味を成さない「愛してる」の言葉が
これほどまでに甘くて苦しくて泣かずにいられないものだっただろうかと
こちらの作品を読み返すたびに思い知らされます。
お互いの存在無くして成り立たない一生の阿吽尊い!!!

キヅナツキさん凄い。
改めてホントに凄い。
神評価じゃたりない…。

本誌ではキツイ思いをしましたが
きっと彼らはこの先いつだって傍にいて
人生を共に歩んでいくんだと信じてやまないのです。

3

東雲月虹

Nasumiさん、初めまして、こんにちは!
すみません、私はラストを書いていませんでしたが
及川さんが甥っ子の猛にとても幸せそうに話すシーンで
過去の恋愛を語ったようには思えませんでした。
なので進行形という意味でハッピーエンドだと思います♪

Nasumi

こんにちわ!
これって最後は及川と岩泉は離れてしまったってゆうことなのでしょうか??

Nasumi

こんにちわ!
これって最後は及川と岩泉は離れてしまったってゆうことなのでしょうか??

東雲月虹

ありがとうございます!

いえいえいえ!(>_<)
あの解釈で合ってないかもです;;
そうだったらいいなーと言うことでw

確かに堂々と言える関係性ではないですものね…。
だからこそ、岩ちゃんは海外旅行で
あんなふうに頑張ってぶちかましてくれたんでしょうね!!!
あの表情とセリフと…あああかっこいい……!!

ウユニ塩湖を検索したら本当に美しすぎて
この中で二人が…って想像すると尚更涙が出ます!

公式では“小学生頃からの幼馴染”となっていますが
生まれた時から一緒でも全然違和感ないというか
むしろそちらを希望してしまいますw

おおっと私も長くなってしまいました☆
レビューお待ちしておりますwww

江名

最後のページにあった、
“二人で写る写真は もう一人の誰かがいないと撮れない”
この言葉、どういう意味だろう~って思っていたんですよ。
月虹さんの解釈で納得&さらなる感動です~~!!

なんで来たんだと聞かれて、
すぐに答えられなかった及川さんも、
かけおち、って言った岩ちゃんも、
他の人とは違う自分たちのカタチに、後悔はしていなくても心を痛めている部分があったのかもしれませんね。
それが地球の裏側であった人達の愛情で緩和されていったのかなと思うと、なんとも言えないあたたかい気持ちにさせられましたよ。

それに、岩ちゃん、
あんな素敵な場所で指輪なんて、意外とロマンチスト!?
いやいや、及川さんを喜ばせるためかぁ。
ああいうこと、ものすっっごい苦手そうですもんね。
ああ、愛だなぁ~~

このふたりのキヅナツキさんの同人誌では、
わたしはこの本が一番好きだなぁと思いましたよ。
ほんと、素敵でしたね。

って、なんか長く書きすぎてすみません~
これじゃ、レビューしろよ!って感じかも (;´・ω・)

原作知らずとも、オリジナル感覚で読めます

キヅナツキさんのオリジナルのような雰囲気で読めました。
なんだろ、じわーっと染み渡りました。

岩泉×及川のカップリング。
ちなみに及川の方が背が高いという(苦笑
生まれた時から一緒で、一緒にいるのが自然で当たり前で…
でもその当たり前が、本当は当たり前ではなかった二人のお話。

英語よりもカタコトのスペイン語の方が通じるという辺りが妙にリアル(笑
確かに英語以外に習うならスペイン語だよと、言われるだけのことはあります。
そんなボリビアへ二人で旅行へ。

旅のスタート時、写真さえあれば覚えていられるからと言う及川の表情がなんとも切なくて…
なぜかと思っていたら、一度二人は別れているんですね。
その時岩泉は彼女を作っていたらしいのですが、及川が拒食症&潰瘍で病院へ搬送されたために、三ヶ月もしないで結局また歪な形へと戻ったのです。
この『世界ののぞむうつくしい形にはなれなかった』という及川のモノローグがすごい、本当に(涙

男女が対で、子孫を残して…
そんな形がやはり天が望むもので、そこからほんの少しはみ出した自分たちは、かけおちのように地球の裏側まで逃れ、そしてそんな天国のようなところでも多分及川は負い目を感じているんでしょうね。
自分のせいで、岩泉がうつくしい形になれる機会を潰したと。
だから旅先で訪れた理由を問われても、スルリと言葉が出ない。
岩泉がどういうつもりでここへ来たのかも、及川にはわかっていなかったから。
だから『かけおち』という岩泉の返答が、最初罪悪感を深くしたと思うのですよ。
顔を上げられないくらいに。

でも岩泉は自分たちの間柄に答えをくれ、約束をくれたんですね。
及川が諦め、見て見ぬ振りをしてきた言葉と約束を、この美しい世界で岩泉は及川へ与えるのです。
こういう見る人によっては『ポエム』だと感じるであろう作品も、読み手が違えば心にガツンと響いて泣ける。
わたしは大泣きはしないけど、でも、心に何かを残してくれた作品でした。

現地ガイドの「俺はドライバーのホセだ」という自己紹介が「ホモだ」に見え、二人にぴったり!と思ってしまったのは内緒…
そして『生まれた時から〜』の部分はキヅナツキさんのオリジナル設定のようで、wikiなどで調べましたら『小学校から幼馴染み』となっております。
なので原作を知らなくても構わないと思います。
わたしも知りませんから、ほとんど(苦笑

3

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