心(ここ)には、一人入れる空きがある…ってこと?

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表題作シャングリラの鳥II

アポロ,34歳,男娼をケアするための試情夫
フィー,26歳,男娼館シャングリラの小鳥=男娼

その他の収録作品

  • Day time 4

あらすじ

性を謳歌する男娼達の楽園シャングリラに、試情夫として雇われたノンケのアポロ。
専属となった男娼のフィーに仕込まれるが──奔放な彼が抱える暗い過去。
どこか不安定な様を見せるフィーが気になり始める。
「一度だけ、好きな女にするように触って」
縋るように乞われたアポロは……。


変わりつつある、フィーとアポロの関係。
試情夫のルールである
「イかせないこと、挿入しないこと、絶対に恋に堕ちないこと」
この3つのうち、犯してしまったのは──?

作品情報

作品名
シャングリラの鳥II
著者
座裏屋蘭丸 
媒体
漫画(コミック)
出版社
プランタン出版
レーベル
Cannaコミックス
発売日
電子発売日
ISBN
9784829686430
4.7

(366)

(291)

萌々

(60)

(14)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
26
得点
1738
評価数
366
平均
4.7 / 5
神率
79.5%

レビュー投稿数26

きっと最初の「転換点」はオーナーにアポロの理想が重なったあの瞬間。

1巻も興奮気味に神評価を入れたのですが、それでもまだ全然過小評価だった気すらしてくる2巻の内容でした。

2巻を読んで真っ先に思ったのは、男娼の「心のケア」をする試情夫、という設定を1巻の時点での私はまだ十分に汲み取れていなかったなということ。
1巻をレビューした際に物語冒頭に出てくるアポロとオーナーの会話に言及しておきながら私はその部分を「感性」という一言で終えてしまっていたのですが、2巻の冒頭で再度繰り広げられる2人の対話を読んだ時にようやく、もしかしてこれってオーナーがアポロの何を買って試情夫に雇ったのか、つまりはアポロの人物像を分かりやすく伝えんとするために導入されてるのかなと、そんなふうに思いました。
オーナーはきっとアポロのずば抜けて優れている察しの良さや、相手の言葉の奥にあるものをしっかりと汲み取れるところを「試情夫」に相応しいスキルとして買ったんだろうな。
もっと言えば、フィーが抱えている何かにだってオーナーレベルの人ならとっくに気付いているだろうし、それをこの男(アポロ)なら解放できるんじゃないかと考えてフィーをアポロの教育係にしたのかもしれないな。

そしてもうひとつ2巻を読みながら思ったことは、朴訥なアポロの「目」が印象的に描かれているなということ。
これはアポロが言葉は少ないけど人をよく見ていることを表している以外に、フィーが「口」と「目」は嘘をつくと考えていることに対して、実直な視線がくれる安らぎだったり、ちゃんと自分を見てくれる相手の目の心地よさのようなものを伝えているんだろうなと思うのですよね。
それは確実に少しずつフィーに伝わっているように思います。
アポロを見る時のフィーの表情がすごく穏やかだから。
「満たされる」って気持ちを少しずつ知り始めているんじゃないかなぁ。

2人の関係性は中盤から少しずつ進展を見せ始めるのですが、アポロに最初のきっかけを与えたのはオーナーが同性の恋人と20年以上連れ添っていることを知ったあのシーンなのだろうなと思いました。
仲睦まじい2人の姿をじっと見つめるアポロの目のコマ。
アポロの目に小さな光が灯ったように見えたんですよね。
愛する1人と一生添い遂げたいと考えるタイプのアポロに、オーナー達の姿はきっとハッとするような何かをもたらしたんじゃないかな。
で、そんなアポロに、少ししてフィーが言う“帯のセリフ”。
アポロがまたハッとした目でフィーを見て、そんなアポロの表情にフィーもまた…( ´艸`)
静かな水面にゆっくりと波紋が広がっていくような始まりにドキドキしました。

はぁぁぁぁぁぁ〜〜〜すごい良かった。
なんだろうこのゆっくりと満ちていく心地良さ。
そして思っていた以上にじっくり読ませてもらえるのかもしれない!
読むと分かりますが、2人の心の変化がものすごい丁寧に描かれていくんですよ。
言葉で語りすぎない良さ。読み飛ばさないようにと、めちゃくちゃ時間かけて一コマ一コマを読みました。
最後まで読んでもう一度最初に戻った時、オーナーの「楽園」論が心に響きます。

座裏屋さんの画力がまたシャングリラのユートピア感に凄まじい説得力を持たせてくれるのよね。
こんな楽園に1週間でも滞在できたらほんと命の洗濯が出来るだろうなぁ。

40

絵柄の綺麗さとストーリーの緻密さに圧倒されます

作家買い。
座裏屋作品の『シャングリラの鳥』の2巻目。続きものなので1巻未読だと理解できません。未読の方は1巻から読まれることをお勧めします。

1巻の表紙はフィーでしたが2巻の表紙はアポロ。
どっちも素敵。
でも、どちらも一人のイラストなんですよね。いつか、二人並んでる表紙になるといいなあ…。

座裏屋さん作品と言えば麗しすぎる絵柄が大きな魅力の一つですが、綺麗なだけじゃないんですよね。とっても丁寧なんです。背景、衣服、筋肉、表情。などなど。どれ一つとっても、丁寧に描かれているのがよく分かります。芸術の域に達してるなーといつもしげしげと眺めてしまいます。

もうね、フィーの肌なんて質感まで分かるよう。褐色の、つやつやで、しっとりした感じ。あー、触りたい!アポロ、よく手を出さずに我慢できるね、アンタ…、と褒めてあげたいです。

というところでレビューを。






高級娼館「シャングリラ」を舞台に繰り広げられる人間模様を描いた作品。

オーナー・ジャンの美学によって形成されている娼館「シャングリラ」は小鳥(シャングリラでは男娼を小鳥と呼んでいる)たちが心地よく働けるように運用されていて、その一環として小鳥たちの精神面、肉体面をサポートする「試情夫」がいる。

とある事情により金銭が必要になったアポロがシャングリラで試情夫として働くことになり、ノンケの彼の教育係としてついたのが小鳥のフィー。快楽至上主義で、短気で、陽気で。そんなフィーと、訳アリのノンケさんのアポロが出会い―。

というところまでが1巻で描かれていたストーリー。

2巻に入り、二人の内面に焦点が当たった内容になりました。

フォーの過酷な過去。
アポロの、指輪の跡の理由。

座裏屋さんの絵柄が綺麗なだけに、より一層圧倒的な質量で読者に訴えかけてきます。

フィーは大切に抱かれることに慣れていない。
そんなフィーが出会った、アポロという男性。行為の時は電気を消し、優しく、壊れ物を扱うように、フィーに触れる。

それは、男との性的な接触に慣れていたフィーが初めて感じた「何か」なのかも。
まだ自覚していないのかな?けれど、心の奥底で、すでにアポロに気持ちが傾きかけているのが、ちょっとしたしぐさとかで見て取れる。

可愛い…。
尊い…。

一方のアポロも。
快楽のために人と接触をする男性ではない彼にとって、男娼という存在はある意味不可思議な存在。どう接していいのかわからずに右往左往するものの、いろいろな顔を見せるフィーに少しずつ惹かれていく。ほだされていく、と言ってもいいかも。けれど彼は「自分」がしっかりしている男性なので、嫌ならフィーを受け入れることはないはずで、うんうん、距離が縮まりつつある二人に萌えが滾ります。

アポロとフィー。
二人の「関係」という点においてサクサク進むことはないんです。が、これがじれったいとか、中弛みしている、といったネガティブな感想にはならない。

緻密で美麗な絵柄で、彼らの内面、過去。そういったものが実に繊細に描かれていて、じんわりと、でも確実に読者に染みわたってくる。ゆえに、このじれったささえも今作品の真骨頂だと感じるのです。これぞ座裏屋マジックか。

そして2巻に入り、ある不穏な出来事が起きます。

これが、過去を話し始めたフィーと、フィーを大切に思い始めたアポロとの心情面と相俟って、ミステリアスさが増してきます。この展開の仕方がとっても秀逸です。ドシリアスに振り切った作品でも、コミカルなだけな作品でも、エロメインな作品でもありません。そのすべてが、とてもいいバランスでミックスされている作品なのです。

明るさの裏に隠したフィーの孤独や闇に、心鷲掴みにされて仕方ありません。

すでに続きが気になって仕方ない。
次巻を、正座してお待ちしております。

26

縮まる距離感とルール

2巻もすっごい良かった…(∩´///`∩)

2人の関係を少しずつ形を変えながら過去が明らかになっていく2巻。ピリリとした空気にドキドキ緊張しながら読み進めると、巻の終わりにグワッと一気に捲り上げてく高揚感が堪らない。めっっっっっちゃ興奮した!!!

そして相変わらずシャングリラの景観は素晴らしいですね。2020年は簡単に旅行すらできないような情勢になってしまいましたが、シャングリラを読んでいると常夏の楽園にいる気分になれるのも癒やしになります。波音な聞こえてくるような背景がとても好き…!


さてさて。
2巻は過去が更に掘り下げられていきます。

ある日フィーを盗撮する不審者の陰が…。不審なメールがまた届き、フィーのトラウマの原因が蘇ってきます。シャングリラを潰そうとする輩の存在も強くなってきました。(オーナーの頼もしさがカッコイイ)

フィーの過去が明らかになると同時に、アポロ自身の口からも夫婦間で揉めている理由や奥さんを受け容れられない気持ちなども語られます。少しずつ少しずつ距離が縮まって変化をみせる関係。ある日とうとう1つのルールを犯してしまってーーーと展開します。


ストーリーが進むスピードは緩やかでした。けれど、心理描写や2人の距離感・シャングリラを取り巻く環境など丁寧に掬い取って進むので読み応えがありますね。この緊張感の中でフィー&アポロが寄り添う図はとてもキュンキュンしました。

で!!!

(あらすじや帯にも書いてる情報ですが) えーーー?そういうこと?(´⊙ω⊙`)?? 3つのルールがどう物語に関与するのか楽しみだったんですが、1冊につき1つのルールを犯していく構成だとしたらめっっちゃワクワクしますね!(大興奮)

ふと思うんですが、シャングリラは小鳥ちゃん達が絶対的優位で、小鳥ちゃん達を守る為にオーナーはルールを設けたと思う反面、もし小鳥ちゃん達自身が望んだ場合はどうなるんでしょうね…?それでもルールは絶対なのか。けれどルールによって小鳥ちゃん達がストレスを溜めることになったら、それはオーナーが目指す楽園とは矛盾しちゃうわけで。。。

1巻の印象だとオーナーはルールは絶対で厳しく罰しそうなイメージもあったんですが、2巻の印象だともっと柔軟な人なのかもしれないなーと思いました。その辺りの矛盾も思慮した上で決めたルールな気がする…ぞ?どうかな。ちがうかな。

というのも、ルールを破った後のフィーを見るとそんな気が少しするんですよね。フィーにとってシャングリラは唯一の居場所で心の拠り所なんだと感じるシーンがあったんですが、その時の怯えた表情とは全く違ってたので…。この辺りが物語にどう作用していくかも今後が楽しみです。

また、アポロとフィーの変化もすっごい良かった。

フィーが不安に揺れる展開の中で、まるで安心を求めるようにアポロの寝床に潜り込んでいるのが可愛くて可愛くて。アポロが起きると腕の中にスッポリくるまっているのですよ(∩´///`∩)アポロはフィーが起きるまで本を読みながら腕枕ずっとしてあげてるとことかニヤニヤしました////同衾萌えです!!!

肌と肌を擦り合わせる描写がとても艶めかしくてエロティック。あと試情夫としての仕事(客とエッチする前に盛り上げるヤツ)の時に、穴を攻めながら口ん中に指入れてニュルニュルするのとかね。挿入してないのに挿入並みにエロすぎて眼福でした(∩´///`∩)座裏屋さんのこういう生っぽいトコすごいですね…!大好き!!(嗚呼…求・語彙力)

アポロが1巻では拒否したキス。今度は素直に応じるのが大興奮の極み。まだハッキリと「恋」が始まってはいないけれど、無意識下で受け容れちゃってるのが萌えて萌えて。アポロのような不器用な人間は分かりやすいですねぇ…( ´艸`) フフフ。

あとあとフィーの本気のおねだり…というか、本気の甘えというか、演技ではなく心からアポロを欲したであろうセリフが健気で切ない気持ちになりました。誘いに応じたアポロは「フィー」を「フィー」として大切に扱ったはず。けれどそれにフィー自身が気付いているかどうか…という曖昧さも切なキュンキュンでした(;///;)

周囲は不穏だし、恋の行方は未知数。
うあーーー3巻が待ち遠しい…!!!

18

シャングリラ。美しく甘く。性愛を、人生を、享受する楽園。

新刊を読むにあたって、前作を読み直したら、これは。やっぱり「神」評価に値するな、と反省。以前私はコレを「萌×2」評価に留めておいたのだ。理由はもちろんある。
しかし、本作の導入部に過ぎなかった1巻は、物語が進むに連れて神がかって行くのだ。

表紙の緑が美しい。この絵を見て、既視感を憶えて画像検索すると。これは1974年の映画「エマニュエル夫人」に似ている。藤製の椅子にしどけなく座る夫人の構図。詳しくは知らないので、さらに検索すると。初心な若妻がどんどん性愛に目覚め、解放されて行くというお話だという。当時の女性たちにとって、性愛を自由に楽しむという理念は無く、その憧れと共に映画は世界中で大ヒットしたのだと。ザックリ言うとそんな風に書かれていた。
アポロの心はこのシャングリラで自由になるのか。開放されて行くのか。

1巻で「匂わせ」程度だったフィーの過去とトラウマは、不穏な影となってヒタヒタと迫って来る。フィーを性玩具の様に客に売っていた毒親。親から逃れたのも束の間、仲間で、恋人だと思っていた男からも同様に扱われ、裏切られていたという絶望。
そんな腐った街から拾い上げてくれたオーナー。
オーナーが大切に作り上げ、守って来たシャングリラは、自治体から目を付けられている。
営業を続け、彼が「小鳥たち」と呼んで大切にしている男娼たちを守る為に。彼は弁護士を雇い、金を使い、これまでは上手くやり抜けていた。けれど、今度はそう上手く事は運ばないかも知れないという。フィーの過去に起こった「事故」(だと私は信じてる。)は、引き金になってしまうのか。
地上の楽園は瓦解し、霧散してしまうのか。桃源郷は幻となってしまうのか。
緊迫したまま次巻へと続く。

一方で離婚調停中で、鬱屈とした憂いを見せるアポロは、いけないと思いながらも多分フィーに惹かれている。フィーの一方的な誘いや時に見せる寂しさにも。放って置けない気持ちが募る。フィーの不安そうな、爪を噛む癖は、読み返すと1巻から描かれていて。その細やかさには今更ながら感嘆する。

この緊張感を強いる物語の中で。同じ男娼で、同僚、ツン過多のカルナの優しさにホッと一息。
「小鳥たち」である男娼に手を出せないルールの当て馬たち同士が、実は文字通り、突きあっていたり。
客の中にはレイモンの様にイケメンで優しい者もいたり。
甘くてエロい、濡れ場シーンもみっちり。
後半にはルールを一つ、破ってしまうアポロとフィーのエロくて切ないシーンも。
アポロの心の穴を塞ぐのはフィー?シャングリラの終わりは来るの?アポロはフィーを連れて下界へ戻るの?その時こそが2人が真の意味で「自由」を謳歌するときになるのか。
美しい絵に溜め息。ただ続きを待ちます。

16

オーナーが素敵過ぎる♡

『シャングリラの鳥』の2巻です。
今回も表紙が素晴らしい!
人物だけではなく、繊細なタッチで描かれた背景もまた美しい。
何かを語りかけてくるようなアポロに目を奪われます。

映画のように美しく幻想的な娼館「シャングリラ」を舞台に描かれた本作。
朴訥としたアポロがシャングリラに来た理由が明かされた前作でしたが、今作ではフィーの過去が明らかになります。

不審な男に写真を撮られるようになったフィー。
そして、送られてくる意味深な写真。
過去のトラウマがフィーを怯えさせ、不安を掻き立てます。 
1巻で、なぜ背中を押されたフィーがキレたのか……
フィーの地雷の理由がハッキリしました。これは重いなぁ。

ストレスで爪を噛むフィーを気にかけるアポロ。
アポロがフィーに緩やかに絆されていくのが分かります。
ひとりで眠れなくなったフィーが、アポロのベッドに潜り込んでスヨスヨ眠る姿にキュンとしました♡

水面下で育っている信頼感。
形の見えない恋心。
仕事との境界線が不明瞭な甘えと甘やかし。
ーーここに、ものすごく萌えました♡

アポロに自分の過去を語ったのもそう。
あっさり話したなと思ったけど、これはアポロへの信頼の証だと思う。
 
フィーの情緒を心配するアポロとアポロに安心を求めるフィー。
フィーが「嫁さんにするように触って」と、アポロにせがむ場面は切なくて扇情的です。 
変わりゆく関係を予感させる前戯で、初めて交わされたキスに胸が高鳴りました。

そして、ついに試情夫のルールが破られます。

「男娼をイかせないこと、挿入行為はしないこと、絶対に恋に堕ちないこと」
このうち、2人はどのルールを破ったのかーー…?

心の機微や関係の機微が丁寧に描かれていて、切なくほろ苦い気持ちにさせられながらも、その圧巻の表現力には感動しかありません。 
得も言われぬ感情を抱かせてくれる、稀有な作家さんだと思う。
局部を描かなくてもこれだけエロさを感じさせるって凄いよ‼︎
これも表現力ゆえですね。

秘密を共有した2人は他のルールも破ってしまうのか?
フィーを付け狙う男の正体は?
条例改正によるシャングリラの存続は?

と、すでに次巻が楽しみで待ちきれません。
恋愛に能動的に動くアポロが見たくて堪らなーい!

今回も描き下ろしが可愛くて癒されました^^

11

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