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狗神様と恋知らずの花嫁

inugamisama to koishirazu na hanayome

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表題作狗神様と恋知らずの花嫁

一葉、一葉神社に祀られている狗神様
森本雪弥、稲荷神社の跡取り息子25歳

その他の収録作品

  • 狗神様とベイビーパニック
  • お狐様の悩みごと
  • あとがき

あらすじ

神社の跡取り息子・森本雪弥は鞄の中で寝ていた小犬を田舎からうっかり連れてきてしまった。翌朝、台所で朝食を作る見知らぬ和装のイケメン(わんこ耳とふさふさ尻尾付き)の姿が…。
戸惑う雪弥に彼は言った。「お前に二度も助けられた恩返しだ。婿になってやる」―!!
恋愛経験皆無の雪弥なのに、突如現れた狗神様・一葉に求婚されて押し倒されて!?

作品情報

作品名
狗神様と恋知らずの花嫁
著者
榛名悠 
イラスト
のあ子 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344834736
3.5

(11)

(0)

萌々

(7)

(3)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
7
得点
38
評価数
11
平均
3.5 / 5
神率
0%

レビュー投稿数7

とても良き記憶喪失。

この作品は「忘れられてしまう」「忘れてしまう」というのが、形を変えて何度も出てきます。
忘れられてしまった側、忘れてしまっていた側、それぞれの気持ちが丁寧に描かれていて、キューっとさせられます。


八年前に罠にはまった仔犬(狗神の一葉が化けた姿)に、「絶対にまた会いに来るから」と言い残して別れた雪弥。
その言葉を胸に、長い間、雪弥が来るのを待ってた一葉。
雪弥の婿になることを夢見ては、人に化けて料理を習いにいったりと、なかなかアクティブで健気。
そして、祖父の葬儀で八年ぶりにやってきた雪弥のバッグにもぐりこんで(仔犬に変身して)、雪弥の家に来ちゃう。
そこからは、婿入り志願のワンコ攻めによる猛プッシュ。

ちなみに雪弥には育ての母みたいなコン(狐神)がいて「このエロイヌ!」「馬鹿イヌ!」と言えば、一葉も負けずに言い返すんです。
このモフモフな二人のやりとりも面白い。

雪弥が好きな女性に化けた一葉と、それを知らぬ雪弥がデートするシーンがあるんだけど、なんか切ないんですよねぇ。
攻め視点なんで、一葉の切ない心中が堪能できてここが好きです。

そして途中で一葉が記憶喪失になっちゃうところが良かったですねー。
記憶喪失ものが割と好きで、詳細検索してはヒットしたものを読んだりしてますが、この作品に記憶喪失があるとは知らなかったので思わぬ拾い物というか。

仔犬姿だった一葉との約束を忘れてしまっていた雪弥が、今度は忘れられてしまった立場となってその辛さを思い知る。
そして、昭和初期の記憶でストップしている一葉が、自分の山に戻って知った現状……。
ここにも「人から忘れられてしまった存在」の哀しみが詰まっていて、凄く良かった。

妊娠出産は別に無くても良かったような……と思うのは、妊娠出産ものは基本的に好まない人間だからだと思います。
(事前に妊娠出産シーンがあると知ったうえで買った)
たったの九週間で出産、しかも穴から出てくるのではなくこの世に出現!みたいなことごとくファンタジー描写で生々しさとかもないので読めたけど。

それよりも寿命問題がまったく触れてもいなかったけど、どうなんだろ?
雪弥が神様との子を孕んじゃうくらいなんだから、雪弥もやがて神様に近づいていくのかしら??



0

ひとつの家族ができあがるまで

健気攻め×素直受け。狗神様が予想以上に健気で一途でした。

押しかけ女房ならぬ、押しかけ婿な攻め。
途中、少し切ない展開はあるものの、それ以外は基本的には攻め(押しかけ婿)が受け(嫁)の世話を焼いている。
受けの家が代々神職を務める神社のお狐様(赤ん坊の頃から受けのことを知っている)は、攻め(婿)にとっては姑役。
……ということで、婿vs姑争いがしょっちゅう繰り広げられている。そんなお話でした。

恋人同士になるのが目標なのではなく、あくまで夫婦(つがい)になるのが最終目的なんだなぁと感じさせる受けと攻め。
そのため、ラブ要素は少なめかな?と感じました。

また本作は、
「狗神様と恋知らずの花嫁」
「狗神様とベイビーパニック」
「お狐様の悩みごと」
の三編を収録。
(電子版には「狗神様の愛しい花嫁」も)
「ベイビーパニック」は他の方が書いておられるように、出産編。
また「お狐様の悩みごと」は、「ベイビーパニック」で産まれた子が少し成長してからのお話(幼稚園くらい?)。

そんな構成なので、本当に“家族”というものができるまでの一部始終を見守った気持ちです。
とても面白かった。けれどいわゆる擬似恋愛的な(読んでいてキュン死したというような)“萌え”は少なかったかなと思い、「萌」評価。
でも攻めと受けが家族になる、という展開が大好きな方にはオススメだと思います。

0

外来語がうまく発音できない一葉がかわいい

狗神様と恋知ら神職にある雪弥(受け)は祖父が亡くなり、葬式のために長らく訪れていなかった山中にある祖父の家を訪ねます。諸々の片付けが終わり実家の神社に帰ってくると、何故か鞄の中に荷物の代わりに黒犬が入っており、知らずに連れ帰ってきてしまいます。
驚いたことに、その黒犬は人に変化し、自分は一葉(攻め)という狗神で祖父の家の近くにある社に祀られていたのですが、人々に忘れられ社も朽ちてしまって力もなくなってきたところ、雪弥のおかげで力が蘇ったと、昔助けられたことも合わせてお礼に婿になってやると言い出します。

雪弥は稲荷神社の一人息子で神職についてまだ3年目です。
8年前に祖父の家の納屋で怪我をしている黒犬を助けとても仲良くなりますが、また会いに来ると約束しながら日々の忙しかにかまけてすっかり忘れてしまっていました。

一葉は人々に忘れられ禍津神に堕ちそうになっていたところ、雪弥と出会い救われます。雪弥の願いが伴侶を娶って家族を作ると知り、自分がその伴侶になろうと決意します。婿入りするために、村人に料理を習い、村人たちと交流しながら健気に待ち続けたとても一途な神です。
雪弥の長年の想い人が結婚する時聞いた時は、ライバルがいなくなると喜ぶでもなく、いかに雪弥が悲しまないかを苦心する優しい一面もあります。

婿になると言われても、はじめは冗談だと思っていた雪弥でしたが、改めて求婚され戸惑いながらも、毎日好きだ好きだといわれ、料理上手な一葉に胃袋を捕まれ、この時点であとは覚悟を決めるだけなくらい絆されていたように思います。ただ、急ぐことはないとのんびり構えていました。
ところが、雪弥を守るために一葉が記憶を無くして状況は一変します。両方の視点で読めたので両者ともがとても切なかったです。

雪弥はずっと続くと思っていたこの日々が突然壊れ、自分のこと忘れた一葉が故郷へ帰ってしまうのではないかと怯えます。少しでも思い出すきっかけになるのではと、鬱陶しがる一葉を構い、神社での一葉の思い出を語っては辛い気持ちになってしまうのがかわいそうでした。以前一葉から聞いた人々から忘れられていく悲哀を、奇しくも一葉に忘れられてを実感することになります。

一葉の方も辛くて、何も覚えていないのに身体は神社での日々を覚えていて、雪弥をいい匂いだと思って戸惑い、苦手な料理をしている雪弥をみると身体が勝手に動いて料理を作っていくしで、心と身体がばらばらでおかしくなってしまいそうになります。
このあたりは読んでいて胸が痛かったです。この決着はあまりにあっさりで拍子抜けでした。あまりにさらっとしていたので気がつかず一回戻って確認してしまいました。でも、雪弥がちゃんと告白できたときはほっとしました。そして、いきなり身ごもってしまったのには驚きました。

雪弥の実家には紫紺丸という狐神が神社を守っています。500年もの間神社を守っている紫紺丸は雪弥を過保護なくらいかわいがっているので、求婚してくる一葉とは仲が悪いです。馬鹿イヌ、阿呆ギツネと罵り合うこの二人の掛け合いは面白いです。ただ、ずっと神社を守っている紫紺丸の方がどうしても分が良いので知らないことでからかわれる一葉がちょっと気の毒でした。とは言いながら、なんだかんだで雪弥が悲しまないように二人で協力したり、記憶を無くした一葉がふらふらどこかに行ってしまわないように枷をつけて見張ったり、雪弥が身ごもったときは色々と調べたり、子供が生まれたら子守をしてくれたり、口は悪いけどとても面倒見のいい狐神でした。

速攻子供ができてしまうくらい相性の良い二人にはこれからもたくさん子供ができるのでしょうか。一葉が来るまでは親子二人の寂しい食卓が、紫紺丸も含めて5人の賑やかで幸せな家族になれてとても幸せか読了感でした。
一葉の血を引いてしつこそうな息子の一弥はこれから紫紺丸に求婚する日々が続くのでしょうか。一葉に似た子ばかりたくさん生まれたら紫紺丸はさぞかし大変な日々を過ごすことになるんじゃないかと想像するだけでも楽しいです。

二人の寿命が違うということと、神様とハーフの神様でいっぱいになりそうなこの神社の将来がちょっとだけ心配です。

イラストもすごくお話に合っていて、できれば紫紺丸の人の姿もみたかったです。
一番のお気に入りは口絵のバイクゴーグルをつけたチビイヌ一葉です。雪弥との自転車でえとへの一葉のワクワクした気持ちがすごく表れていてとても可愛いかったです。

後、出産シーンはありますが、一葉の力でポンっと出てくるだけで生々しくないので苦手な方も大丈夫だと思います。

1

カタカナを無駄に使いたがる一葉が可愛すぎる

どの登場人物も個性があって、読む度に愛着が湧いて、読み終える頃にはみんなを好きになれるほっこりした素敵なお話でした。

攻めさんの狗神様にあたる一葉(クロスケ)が健気な一途神様で、頑張って!と応援したくなるくらい一生懸命な姿に微笑ましく思いながら読んでいました。
途中とある事がきっかけで記憶喪失になるのですが、その時の一葉とのギャップが凄く、何度うるっときたか分からないくらい切なくもなりました。
「忘れられる」ことがどんなに辛いことなのか、読んでるだけでも辛かったので、忘れられていく一葉や一途に求愛していた一葉から忘れられた雪弥は本当に苦しかったんだろうなあ‥と感情移入してしまうくらい、気付けばそんなストーリー展開にがっつり惹き込まれていました。
受けさんの雪弥は、本当に純粋でいい子(25歳ですが笑)。
初恋の相手には何年も片思いのまま動けないヘタレっぷりを発揮してましたが、女々しく弱々しいわけではなく、かっこよくも可愛いとこもあり好感のもてる設定でした。
そんな雪弥を長年影から支えていた、コン(狐神)がツンデレ過保護で可愛い!!
なんだかんだ言いつつも一葉と馬が合ってる感が好きで、迷惑そうなフリをしなからも弥一にデレデレなコンが可愛くて、最後の描き下ろしは数ページしかないにも関わらず特に好きなシーンです。

改めて振り返っても、キャラクターが好きで、ストーリーが単調ではないので飽きる事もなく、癒された素適な1冊でした。
いつか、弥一とコンの未来のお話が読めるのかな?と、楽しみです。

2

キスは三回目のデートでするのがルール

稲荷神社の一人息子のところに狗神様が婿入りする話。
一葉の、とにかく雪弥が好きというワンコっぷりが微笑ましいです。尻尾をふりふりしながら料理とか、もうかわいくて…。世間知らずで、慣れない横文字がひらがなになるところとかもかわいいです。
稲荷神社の狐神と「馬鹿イヌ」「阿保ギツネ」と言い合いながらも仲良くしてるし、雪哉も一葉も同じくらい純情で、海での「でえと」とかも、ほのぼのとかわいらしいくてよかったです。
全体的にほのぼのとした話なので、一葉が記憶をなくしてしまったところが、スパイスになっていて、冷たい一葉、禍神に陥りそうになる一葉、そんな一葉をひっぱりあげるのが雪弥の存在で、ちょっと切なくなりつつも、一葉の雪弥好きっぷりを感じるところがよいです。
子どもまでできちゃうんですが、弥一がかわいくて、狐神の箒尻尾にくるまって眠る黒い仔犬とか、もふもふが堪能できてよかったです。

0

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