イラスト入り
高校時代、家が裕福で適当にしていても大人同士の繋がりで成績や進路も融通してもらえて、悪いことをしても無かったことになるなど、完全な勝ち組だった西崎は、つるんでいる仲間とのノリで、クラスで浮いている生真面目な優等生長野を落とすことになる。
というところから始まり、高校を卒業してから12年後、すっかり状況の変わった西崎が長野と再会してからのあれやこれやが綴られます。
ジェットコースター的な展開でまったく目が離せませんでした。
主人公の西崎が典型的なクズ男で、しかも心の芯の部分までもが完全にひねくれているので、周りがやさしくしても改心することはないし、口から出任せばかりだし(息をするように嘘を吐く)、悪い方にどんどん転がってもうこの人は今後どうなってしまうのかとページを捲る手を止められなかったです。
かたや長野は苦労人で真面目でひどくまっとうな人間なので、西崎を好きになったことも本当だし、なんなら初恋でしょうし、再会してからも、北尾のみならず読んでいる私も、「だまされてる!!!」と肩を叩きたい(北尾は口酸っぱく忠告している様子)のに、惚れた弱みというか、おそらく可哀相という気持ちが先に立って、親身になって世話をするのです。
長野の善良なところは、読んでいて分かるので、最後のあの仕打ちも、彼自身がとにかく傷ついているのだろうと想像できます。
そんなことをしても西崎が西崎である以上、長野には隙があるように思うので、今後のお話があるのならそれはもう、ほだされてしまう一択だろうと思います。この世が搾取する側とされる側に別れているとすれば、西崎は、自分は本当は搾取する側なのになんでこんな目にと世間を恨みながら隙あらば搾取する側に舞い戻ろうとすると思うので、惚れた弱みの長野は全部許してしまうんだろうという構図が浮かびます。
本書は、ここで終わるんかい!とツッコミを入れたくなるような場面で終わりますが、読みながら、残りページ数がこれで逆にラブラブ展開になったらそれは嘘だと思いましたので、納得のメリバです。
なんならメリバで胸が空くくらいあります。
楽しい読書でした。また、あとがきが面白くて声を上げて笑ってしまいました。木原先生大好き。
番外編集を読むのが楽しみです。
いや〜受けはひたすらにクズいなぁ笑
最後に懇親の「俺も好きだから、お前のことちゃんと好きだからっ」ってね。
"お前が好きだって目をする、そういう顔見てると安心した。なんにも持ってないしなんにもならないのに、自分なんかのどこがいいんだろうってずっと思ってた。"
って心理描写に受けの全てが詰まってると思う。
SDカードのデータ盗み出した時は、これでもうここには戻らなくなるって長野と縁を切ろうとしてたのに、自分がピンチになってヤクザに暴行されたり警察に駆け込んだりした時は、長野に助けを求めてる。終いには見捨てないでくれと言わんばかりに長野に縋りよる。
西崎は自分の人生の延長でしか長野を見れないのかもしれない。
最後に長野の事が好きだと言っているけれど、それは長野が本当に好きなのか、それとも自分を好いてくれる、自分に価値を見出してくれる長野が好きなのか。
本当に切羽詰って助けて欲しかったんだろうね。
でもそれは長野じゃなくても良かったのかもしれない。
そのあたり西崎っていう男の人間性を丁寧に書き表していてとても素敵でした。
こういう人間味のあるクズさは大好きです。
萌えないんだけど、やっぱり良いんですよねぇ。
何が?って木原音瀬さんが〜。でも、他の作品のように、痛さや切なさ、重さは感じませんでした。さらっと読めちゃった。
重くて辛いものでも再読しようと思う作品多いですけど、コレはもう多分読まない。
ネタバレさせようにもネタってネタがない(笑)
もう最初っから受けがクズなだけで…えぇ、最後までクズです!
普通のBLのように、攻めの愛情で心を入れ替えたり、周囲の方々のお陰で目覚めたりしません!
そしてこの本編では結ばれませんのです。体の関係はあったとしても。
もう、受けに関しては因果応報的な感じで全く同情の余地がないのですが、攻め君は好きなんだろうなぁ、このクズを。って読めました。
攻めは普通なんですよ、至って。
こんなクズにハマらなきゃ良かったのにね、って。でもそれが恋愛感情、ってやつなのかも知れません。ダメンズにハマる女子的な。。。ぁ、それだと受け攻め逆か。クズな女子にハマる男子作品てあるかなぁ。
そう思うと、これも受けが女子だと作品にはならないんじゃないかなと。そこら辺が木原さんの上手いとこかな。
ラストもお尻ムズムズな感じで終わるのですが、同人誌で続きが読めるようなので探してみます。で、探したらまとめ売りは法外な値段で(3万超えとる〜)諦めました。むぅ。
最っ高に面白かったー!
今作はクラス内でのイケメンリア充が真面目秀才をオトす賭けをするお話、正反対の人間同士の掛け合いが好きな人には堪らないです。その上、木原さんの描く清々しいクズキャラ!
そして「夜はともだち」井戸ぎほうさんの挿絵もドラマチックで美しかったです。
足が速く、とにかく勉強、貧乏な長野
親の金、良いツラで楽勝モードな西崎
余裕ぶったエリートが純朴労働階級に次第に惹かれズブズブに…はNOW HERE他でもあります。今作でも貧乏で生真面目でそっけない長野に西崎は(レアスニーカーゲットの為)距離を縮めていき、魅力を拾っていきます。背筋や背中が綺麗だとか、自分にはない面白さだとか。外見平凡な人が読んでいく内にどんどん惹きつけられていく木原さんの筆力が、クズキャラ同様今作も吹き荒れています。
見た目の良い西崎は他人の判断基準も見た目になりがちなのですが、それ以外の長野の良さを見つけて惹かれていくし、長野の心を掴むタイミングも上手いので読んでて面白い。
長野が育ちの違いや人との関わり合いの薄さから、西崎の軽い冗談に対応出来なかったりダサいと思われるのは二人の違いとして読んでいて面白いです。だけど私は明らかに長野側の人間なので、上手く切り返せなかったなぁ、とかモタモタしてダサいなぁ、と思う事がよくあるので西崎側の視点は理解出来るけど「そうなんだけどさぁ…」と非常に身につまされました。
西崎はもともと会話のセンスもあり、一人称での語りも面白いし、ヤクをやってからの心理が凄くて読み応えあります。木原先生ほんとにやったのかなと思うくらい(「罪の名前」では本当に虫食ったのかなって思っちゃいましたよね。露伴みある)
そして大人になった二人の立場はクッキリと入れ替わる、ここが痛快です。
西崎は何もかも無くし暴力に怯えボロボロ、
長野は良いスーツを着た弁護士。
そして少年期と同じく、西崎は長野を思うままにしようとする。なんて面白い展開…
大人になっても破廉恥話を避けるような長野を馬鹿にしつつ、身体を重ねるのも自分が誘い込もうとしたら逆にあれよあれよと迫られ隅々まで愛されてしまう。なんて美味しいBL展開…
その時の西崎の台詞
「むっちゃ気持ちいい。お前とするの」
が爆発的でした…!!
長野も次第に西崎との会話に慣れ「色っぽかった」と口にしてみたり、小さい影響が垣間見えるのも良いです。こういうところいくらでも読みたい…
長野も様々な思いを抱えつつ側から見て西崎に盲目的になっているのも最高です。長野の心情は全編で台詞以外で語られることがなく、それがラストに効いてくるのですが、こういった甘いシーンや後書きでのところまで、この素敵キャラの内面を覗いてみたかったなと思いました。
長野はあれだけの仕打ちを高校生の時に受けたのにまた西崎を匿うなんて、初恋の力というか、やはり抗い難い特別な想いがどうしようもなかったのでしょうね。
ラストもスッキリしつつも人によって好きにその後を解釈出来る良い終わり方でした!
あれだけ人を弄び真剣に取り合わなかった西崎に少し情けをかけ過ぎな気もしますが。
やたら評価いいですけど、木原音瀬先生信者向けだと思います。
普通の人ならなんだこりゃ?となるのでは?
生まれて初めて本を読んだ後、すぐに捨てました。
私は近年の木原先生の作品がどうにも合わず…昔の有名な作品は好きです。
灰の月もダメでした。灰の月よりはこちらの方がマシでしたが。
ハッピー☆みたいなのを求めてる訳ではないんですが、読んだ後とても疲れます。
ダークな小説やバッドエンドの小説って書く方は説得力が求められるし、読む方もそれなりに覚悟と気合を求められると思うんです。
特に小説なんか少なくとも2時間くらいかけて読むので、それだけ時間かけさせといてこのラストだと辛いんですよね…同じこと書くんなら短編でまとめてくれ…と思います。
木原先生が天才…と言われるのは分かります。他に書ける人はいないでしょう。
ですが、木原先生の才能に震えたいんじゃなくて、真っ当に感動して萌えるBL小説を読みたいんだよ〜って方には本作はオススメしません。
暗くて救いがないのが好きならオススメです。