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6編のオムニバス。
表題作「あの日、制服で」、卒業式で好きだと告白された同級生と5年後に飲み会で再会すると、アイツの指には結婚指輪が…。
お互いに好きなのに遅すぎたすれ違い。時を戻せない切なさと後悔で、胸が締めつけられる…。
残り5編全て学生の制服姿でのお話なのだけど、10代の危うさと煌めきとそれぞれの持つ苦しさや愛おしさが、どれもとっても胸に刺さる。
描き下ろしの「あの日、制服で」の後日譚に涙〜!短い中に詰め込まれた想いに、これはもうたまらなかった。。。
◾️あの日、制服で
「同級生」の2人とは違う道筋を辿った過去"同じ制服だった2人"のお話です。この短さで、ありきたりとも言える設定で、中村明日美子をここまで押し出してくる先生の力がすごい。タイトルの勝利。
救いがない沼のように見えて、収録作どれにも優しさを見出せるところが不思議です。剃毛や女性下着/女装が収録されていても、ただのフェチシズム集とは違う一貫した空気がある。
「裸の僕」の優しさなんてすごい。報われなかったものと、報われなかったものの間にある共鳴。共感とまではいかなかったかもしれないけれど。
表題作の「あの日制服で」と、書き下ろし作品である「今夜、あの日に」が二つ合わせて一つのストーリーがようやく完成するような構成になっていてとても良かったです。
また、「裸の僕」では受けちゃんが攻めの先輩のことが大好きだけど結局ダメになっちゃうお話で、攻めの先輩はあきらかに受けちゃんのことを遊び目的でからかっていただけな様子だったけれど、別れを繰り出す時にキスをして「ごめんな」と一言だけ言うのが切なかったです。
もしかして先輩は、順従な受けちゃんのことを本気で好きになりかけてしまっていたけれど、学校という閉鎖空間でホモというレッテルを貼られることを恐れて別れを切り出したのかもしれない...と思いました。読む人によって感想が違うと思うので、腐女子友達と本作品について語り合っても楽しいかもしれません。
そのほかにも、余韻の残るような素晴らしいお話がたくさん詰まったとても良い短編集でした。
表題作以外もすべて学生もので、どれも異なる背徳感や若いからこそ感じられるいやらしさがありました(厳密には表題作では回想として学生時代が描かれています)。すべての短編に濡れ場があるにも関わらず、けっしてエロエロなんていう安直な言葉が思い浮かんでこないのはさすが、中村先生といったところですね。10代のキャラばかりなのに、どれも儚く官能的という言葉がぴったりでした。
ハピエンと悲恋が混ざっていますが、やはり前者である『中学3年生』と『ニコイチ』が好きです。『中学3年生』は大人ぶって誘い受けのような真似をし攻めに一線を引いていた受けが、攻めに強く諭されてようやく中学生らしい幼い表情を見せたのが堪りませんでした。『ニコイチ』は硬派なビジュアルの攻めがぶっきらぼうながらも真っ直ぐに受けに想いを伝えるところに萌えました。
悲恋ではありますが、『裸の僕』も余韻が残りましたね。先輩に悪気があったわけではないと思いますが、必死の思いで告白し、何でも先輩に言われた通りにそういうことも行ってきた後輩が振られるところは切なかったです。引き止めようとする表情がとても印象的でした。『A先輩』は、受けが本当に好きだったB先輩に手酷い仕打ちをされてから初めて、今まで自分がいいように利用してきたA先輩の顔がちゃんと描かれるという演出が良かったです。人の本質を見抜くって難しいよなぁと思いました。
神、です。
中村先生の作品が人気なのは知っていたのですが絵柄がいまいち受け入れられず読まずにいたのを、ふと手を出してみたのがO.B.シリーズでした。そこからあれよあれよと中村ワールドのファンになっていき、こちらの作品も読んでおかねばと購入した次第です。
中村先生がお好きな受けなのであろう、O.B.シリーズの佐条タイプ(黒髪切れ目眼鏡三白眼受け)が私も好きなのでこの短編集はとても眼福でした。
私自身が学生生活から離れたためか近頃は学生モノは敬遠気味だったのですが、そうではなかったようです。作品の雰囲気が自分の嗜好にハマるかハマらないかという問題でした。とてもとても好みです。
それと短編集というスタイルも、もともと私は短い話がまとまりなく集められたものには少し嫌悪感というか不完全燃焼感というか、物足りなさを感じていました。もちろん素晴らしい短編集がたくさんあるであろうことはわかっているのですがどうしても食わず嫌い気味で…。同時収録がより少ないものを選ぶ傾向にあったのですが、この「あの日、制服で」に出会ってその認識は覆されました。
「学生・学ラン・10代の曖昧で煮え切らない無垢で歪な気持ち」というテーマ(あくまで私が感じた主観的なテーマ)に沿って描かれるこの短編集はそれはそれは素晴らしい短編集です。
素晴らしいだの素敵なだのしか出てこない自分の文章力が憎いほど。
学校生活という社会とは全く違う、隔離された世界に生きる男子学生たち。良くも悪くもそのひとつの世界しか知らない彼らの、まっすぐで、歪で、美しくて、残酷で、無垢なお話。
「エロ度:エロエロ」が半数を占めるこちらの作品ですがエロエロというよりはそこかしこに溢れる色気です。致している描写は多いもののそれを上回るストーリーの良さ、構図や間の使い方から溢れ出る色気がすごい。これは中村先生のどの作品にも言えますね。短編集でこの満足感は神評価に値します。
同性愛者であることを蔑む人物がいたり女装をする人物がいたりレイ○されたり気持ちがないまま抱いたくせに捨てる人物がいたりと、なかなか読む人を選ぶと思います。地雷だのなんだのとうるさい近頃のこの界隈ですがもともと個々人の趣味ですから好きも嫌いも当然あります。なのでここのレビューを読んでいる不特定多数の日とに無作為に「この漫画めっちゃいいよ読んで!」とは言いません。あくまで読書感想文という体で。
バッドエンドのような、ハッピーエンドのような、読む人の捉え方や気分でどちらにも転がるお話がはちゃめちゃに好きなので、中村ワールドのこの作品に出会えてとても嬉しいです。
表題作はバッドエンドですが最後のシーンが美しく、「○○していたら」が叶っていた場合の「あの日」が2ページ(見開き)だけ描かれるので後味は悪くないです。描き下ろしもあり、そちらはバッドエンドとは言い切れず「その先」を読者に託す形です。(たぶんハッピーエンドです)
バッドエンドが割と好きな私は描き下ろしがないままでもありかな~とは思いますね。
それぞれの「その先」を描いて長いお話にしてしまうとバッドエンドなのかハッピーエンドなのかに決着がついてしまうのでそういう点では短編で良かったんだなと。
カバー下もみなさん言っている通りとても素敵です。普通の少年少女青年漫画ではカバー下はあまりないのでこの楽しみはBLの醍醐味と言っても過言ではないと思います。
中盤の「中学3年生」がダントツに好きです。ずっと澄ました顔で、クラスで噂の「男子トイレに出る男のチカン」が自分(相手をしているのが自分?)だと鳥海にバレた時でさえ澄ました顔だった二戸部が、一枚も使ってないという今まで鳥海に渡したお札を投げつけられ怒鳴られて、やっと眉をゆがめ悲痛な表情で静かに泣き出すさまが心を締め付けられるようでした。
描き下ろしがあったせいか表題作の続きを望む声が多いですが私はこのお話で1冊、ぜひ読みたいですね。続きではなく途中途中をもっと描き込んだものを。
長くなりましたすみません。