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表題作累る-kasaneru-

及川奏人
異母弟,大学1年生
及川七緒
大学3年生

同時収録作品累る(昭和4年)

四郎
16才,行商人夫婦の捨て子,口が利けない
オワタリさま
山中のお堂で監禁されている

その他の収録作品

  • Harmony
  • あとがき

あらすじ

気持ちも身体も、もう離れられないと訴えている。

異母弟の奏人を母の虐待から庇い、夢に魘されると共に眠り宥めてきた七緒。ふたりが大学生となった頃、奏人から恋情を告げられ戸惑うが、七緒もまた彼が愛おしかった。けれど、夢を見た。奏人の夢と共通点があるようだが、徐々におぞましく苦痛に満ちていく夢。奏人に抱かれている時だけは、それから逃れられた。なのに夢が進むにつれ、恐ろしい疑念がこみ上げてきて……。

作品情報

作品名
累る-kasaneru-
著者
凪良ゆう 
イラスト
笠井あゆみ 
媒体
小説
出版社
プランタン出版
レーベル
プラチナ文庫
発売日
ISBN
9784829626016
4

(215)

(108)

萌々

(56)

(21)

中立

(14)

趣味じゃない

(16)

レビュー数
36
得点
841
評価数
215
平均
4 / 5
神率
50.2%

レビュー投稿数36

因習村パートが鮮烈でメインの現代が霞む

こういうお話だったのか!と読書中に何度か衝撃を受けました。
実の兄弟のBLだとは知っていたのですが、前世、生まれ変わり、因習村、といった要素が色濃く反映されていて、ちょっと珍しいタイプの作品と思います。
好き嫌いが分かれそう、と思いましたが、ちるちるでは概ね高評価なんですね。
メインは4人です。現代の兄弟、七緒と奏人。七緒が兄で、奏人が弟。お父さんが浮気性なので二人のお母さんは違う人です。それから昭和初期の関西の山奥の村でオワタリさまと呼ばれて隔離され村人達の慰み者になっていた美貌の青年(渡り巫女の子か孫)と、彼をお世話していた少年、四郎。四郎は口がきけず村中から蔑まれています。
七緒と奏人は彼らの生まれ変わりで、奏人は子供の頃から、七緒は大学生になってから、彼らのことを夢にみるようになって断片的に知り、悩まされています。
難しいなと思ったのは、オワタリさまと四郎の因習村の話がかなりのウェイトを占めている(全体の半分近く)ことと、その話と現代の七緒・奏人との繋がりが夢でしかないこと(つまり断片的過ぎて全貌を知るのは読者のみ)、前半で子供の奏人や大学生の七緒が悪夢に苦しんでいますが、因習村のことが語られる前なので、何に苦しんでいるのか分からないまま結構なページ数をもやもやしながら読むことになること、終盤に二人(ともう一人)が現在の因習村を訪れても、それで何かが解消するわけでもないこと(寧ろ変な人に襲われたし)、ですかね。
悪夢の正体がわかって、生まれ変わりだと因果関係がわかっても、七緒・奏人の兄弟がお互い惹かれ合う気持ちを運命の二人だと感じるか、逆に恋愛感情に水を差された気にもなるか、捉え方次第で大きく変わりそうです。
私は生まれ変わり云々があるから二人は恋愛関係なんだ、と思いたくないなと。いまの二人が二人でいるからお互いを大切なんだと思いたい。なのでラピュタパンのくだりとか、二人でわちゃわちゃしている場面がもっと欲しかったなと思いました。
因習村パートが残酷で美しければ美しいほど現代の兄弟が霞むといいますか。それほど因習村パートが鮮烈でした。
この違和感、逆転現象は全体の構成によるもの? でも現代→過去→現代、これ以上ないと思うんですよね。強いて言えば視点が現代に戻った後(まとめとその後)の分量が少なすぎることでしょうか。もしくはBLではなくて一般文芸でリライトしたらまた違うのかな。(控えたという残虐描写も盛り込めるかも? そしたら更に因習村パートが長くなりますね。難しい)
オワタリさまと四郎が二人だけの知る子守歌をたいせつにしていたように、七緒・奏人にも何かあると良かったのかな。それがジブリなのはちょっと大衆的なので他に何かあればなあ。

0

ページを捲る手が止まらない。

ホラーテイストもので、気になって気になって、ページを捲る手が止まりませんでした。
こんなに辛くて苦しかったのに、ラストまで行く頃にはホッとする読後感。
あぁ、よかったねぇ。
凪良先生のお話をもっと読んでいきたいものですよ。


受け様は大学生の七緒。
攻め様は異母兄弟の弟、奏人。

奏人の母が亡くなり、七緒の家に引き取られるも、七緒の母からは露骨に嫌がられ。
どんな時でも、七緒は優しくて守ってくれて、奏人にとって七緒は唯一の救いであり癒しであり全てになった。

奏人と恋人となった頃から、七緒は夢とは思えない程生々しい夢を見るように。
「オワタリさま」と呼ばれ、凌辱され続けた挙げ句、最後には殺される。
どうやら奏人も同じような夢を見ているようで。

どんどん自分と累ねる、悲惨で悲愴な、追体験をさせられる夢。
こんな夢見続けてたら、自我がどうにかなりそう。
幽霊とかは出てこないけど、凄く怖い。

夢で見る過去の「オワタリさま」と四郎。
2人の魂が再び見えて、飛んで行けて本当によかった。
涙腺にきました。

そして、今を生きる七緒と奏人。
2人の何気ない穏やかな日常を見れて、それがとても嬉しいです。

1

しばらく後を引きました

皆さんのレビューを読んで、ホラー色強めだったらどうしようと思って悩んだのですが、いざ読んでみると平気でした。確かにゾクっとする描写はありましたが、それよりも謎が気になり、早く先を見たい一心で読み耽りました。

不憫受けが好きでこの小説を手に取ったのですが、想像以上に2人の前世が壮絶でした。
オワタリ様よりも四郎に感情移入してしまい涙が止まらなかったです。
四郎のオワタリ様を想う気持ちがただただ辛かった。どうにもならない境遇の2人、不幸を不幸と知らずに生きていけたら良かったのだろうか。例え、四郎が告げ口しなくとも、川藤が現れなくとも、どう転んでも前世の2人に幸せな未来はなかったのではないかと思うと、なんともやるせなさを感じます。

川藤の自分本位な偽善的な優しさも、間違っているのですが、ある意味人間らしい。村人たちもどうしようもないクズばかりなのですが、きっとこういう風習って昔はあったんだろうなと妙に現実味があって恐ろしくもなりました。

来世で巡り会えた2人の幸せを願わずにはいられない。
素晴らしい純愛ストーリーでした。

1

夢で過去世を累ねて、遂げた祈り

八墓村のBL版のような和風ホラー要素を盛り込んだ、
虐げられ自由が無い底辺で生きるマイノリティ二人と、生れ変り?の異母兄弟二人、
この四人が主役の凄く切ない因縁物語。

「累」と書いて「カサネル」と讀む。
夢で見た過去世と同じことを、無意識に累ねる=辿るように生きる七緒と奏の兄弟。
七緒は天気の予知ができる、優しい少年。
奏人は、烏の雛のようなカクシゴの異母弟。

二人が見る夢は同じ内容だった、
座敷牢のオワタリ様と世話役の四朗の生涯は哀しすぎて、悪夢に近い。
夢と似た伝承を持つ村の存在を知り、二人は廃村に訪れる。そこで全てを思い出す七緒。

赤とんぼが飛ぶ時期に死んだオワタリ様の最期の呟き
「四朗、今度会ったら ずっと一緒に居よな」
「好きなとこ 一緒に飛んでいこな」
・・この言葉を七緒が「罪の意識を抱えて熊に生きたまま喰われた四朗」の生まれ変わり;奏人に告げる。
(何故二人を「熊」の餌に??著者が熊に拘る訳が謎。)

オワタリ様の「四朗を罪から解放して、一緒に居たい」という呟きは強い祈りになり、
時空を超えてオワタリ様の祈りにシンクロするように、オワタリ様達の夢を見る。
そして、オワタリ様と四朗によく似た今世の二人は、今生で過去世を累ねるように恋をする。
そして夢で過去で果たせなかった、オワタリ様と四朗の想いを成就する。
時空を超えた「オワタリ様の祈り」。オワタリ様は、実は凄い異能力者でした。

過去世と同じ人を好きになる=前世と変わらない今世を送るという意味を含む物語なら哀しすぎる、今生で幸せを掴んで欲しい。
マイノリティに視点を向ける凪良先生が本当に書きたかったのは、
差別されて自由を制限されて生きた「戸籍が無い人達」が実際に居たのだ、という告発じゃないのかな?

---
渡り巫女:オワタリ様
歩き巫女(あるきみこ)は、かつて日本に多く存在した巫女の一形態。
戦国時代に武田家に仕えていた忍者集団のひとつ「信玄の歩き巫女」は、アニメで有名。

0

良質なホラー映画を観た後のような余韻

凪良先生の作品はこれが初めてでしたが、面白くて一気読み。
怖くて悲しいのに、話に引っ張られ、ページをめくる手が止められなかった。
前世パートの痛々しさについてはたくさんの方が触れられているので、現世パートの感想を。

いいホラーものって、「後引き」がうまいんですよね。「リ○グ」のラストの主人公の行動なんて、めちゃめちゃ後味が悪くてゾクゾク…って来て終わる。このお話にも、似たような感情を覚えました。
ふたりが現世で想いを確かめ合って、感動のラスト。でもまだページがある。
で、明らかになる「秘密」。

もうね、予想していたとは言え、なんか、もう…。
正直このエピソード、なくていいんじゃないのかと、兄弟で愛し合っていくための代償としてはこれ、重すぎないか?って最初は思った。
前世での四郎の犯した罪との対比として必要な、兄側の罪のエピソードだというのはわかる。
けど、それにしたって、「もう終わった過去の話」としてではなく、現在のふたりが生きていく上でこれから一生背負っていくものなんだと思うと、救いの無さ、やりきれない気持ちをそこに感じてしまった。
虐待してたとは言え兄にとっては実の母。弟を引き取るまでは普通の優しかった母なのに。しかも虐待のそもそもの原因はクズ父なのに…と。
「愛するが故に犯してしまった罪」はBL的にはオイシイけど、前世があまりにも辛くて救いようのない悲恋でしかなかったがために、現世では一点の曇りもなくラブラブハッピーでよかったんじゃないかな?なんて思ってしまったのだ。
ラスト「Harmony」では一緒に暮らすふたりの、なにげない日常風景が綴られている。月日が流れ、父や再婚相手との折り合いは、どうにかついているらしいことがわかる。けれど、母のことにはまるで触れられていない。
奏人がひと言だけ「ああ、お盆だし」と、「どうでもよさそうに」言うのだ。そしてふたりは夕飯の相談をして、ベッドで愛し合う。まるで、なにごともなかったかのように…。

ここでゾクッときた。めっちゃ怖いよこれ。なにげない普通のシーンに見えるのに、いや、普通っぽいからこそ怖い。ここでこのお話が、ただの兄弟BLじゃなくて、禁忌を扱ったホラー小説だったんだって思わされた。
この据わりの悪いような、なんとも言えない後味の悪さがいつまでも尾を引く。

最後に気になっていたことがひとつ。
前世で赤の他人だったのに、転生後は異母兄弟っていうのはなんでなん?ってのは疑問が残る。どうせなら前世でも「実は生き別れの兄弟でした~」ってオチがよかった。なら兄弟BLとして二度美味しかったな…って思って読み返していたら、「あれ?もしかしてそうなのかな?」ってエピソードがあるんですよね。子守唄の。
あれは伏線ぽいけど、回収されてないところをみると、ただの偶然なのでしょうか? それとも…。

2

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