Renta!限定特典付き
表題作シリーズと、他に読み切り2編。計3つの作品が収録されています。
【僕のかわいいストーカー】
「かわいい」とタイトルにあるように、ほんとに可愛いストーカーです。
健ちゃん大好きで「健ちゃん爪切った、チョココロネ食べてた」だの些細なことを日記に綴ったり、ナイスショットを撮ってはへにゃ〜と喜んでて、罪がない感じがかわいい。
ストーカーされてる健太郎はそんな池田の様子に最初ドン引きしてたんだけど、いちいち些細な事でも喜んでいる姿がかわいくて邪険にできず公認ストーカーとして認めちゃいます。
池田が健太郎のお宅へ遊びに行く様子が好き。健太郎のお家が様子がいいんです。窓辺のキャビネットの上の花瓶に綺麗にいけられたお花、ポーセリンの置物、家族写真がきちんと写真立てに入って幾つも飾ってある室内。そして二階に至る階段にもたくさんの家族写真。
あぁ、素敵なご家族に囲まれてすくすく育ったいい子なんだなぁ、だから池田のことも一蹴せずちゃんと対応してあげられるんだなぁって育ちがわかるところが。
最初は影から見つめてるだけで満足していたのに、一緒に並んで健太郎の部屋の窓から健太郎がいつも見ている景色を見たときの感慨や、健太郎が元カノから呼び出された時今までだったら迷わず盗み聞きしてたはずなのに…今は怖い…とポツンと一人で佇む様子。
色々な感情に揺れはじめるストーカーくんが健気でその恋をついつい応援したくなってしまう作品です。
【はなむけのうたを、】
これは読むたびに何とも切ない気分に襲われます。泣きたくなるけど、嫌いじゃない、大好きな話。
理科室にある水槽の餌やり当番。せっせと真面目に毎日通う二年生の三谷と、きたりこなかったり…の小深山先輩。
段々卒業の日が近づいてくるある日。三谷が、小深山先輩しか3年生の中で知り合いがいないのを知って、「卒業式の歌は俺のためだけに歌うんだ」とニッと笑う先輩。
三谷は先輩のことが実は好きなんだけど、先輩のそういう他意はない言動にいちいち心動かされる三谷。
先輩は人気者で人と接するのがうまくて、ただのコミュニケーションの一環でしかないのだけど三谷にとってはそうではない…。そこの差が、読んでるとあぁ…って。
卒業式の前に告白した三谷。先輩は三谷からの突然の告白に慌てるけど「もしかしたら俺もお前のこと好きになるかもしんないじゃん。」と言ってくれる。だけど、それを拒絶する三谷。
先輩と気持ちが重なることはないと自ら終止符を打った恋心、だけど完全に忘れ切ることができない様子。それが「卒業式の歌」というものに絡めて描かれているところが最高だと思います。
別れの季節と新たな旅立ちを歌う「卒業式の歌」って、聞くだけで色んなことを思い出して心揺れるじゃないですか。なんとも切ない青春の感傷たっぷりで大好きな作品です。神作品!
【短い通学路】
小学生同士の淡〜い恋愛未満のお話でかわいい。
評価は神よりの萌萌なんですが、金魚鉢でめさんの3冊の中では一番好き(他2冊は萌萌)なので、他2冊と差をつけるために神評価です。
最近よく身の回りのものがなくなる高校生の健太郎。現場を押さえてみると、犯人は同じクラスの地味な生徒・池田だった。健太郎のストーカーだという池田が、あまりにオドオドとパニクるので気の毒になってしまった健太郎は、物さえ取らないのなら、とストーカー行為を容認してしまう。
喜んで健太郎の写真を撮りまくる池田と、それを許してポーズまで取る健太郎。その関係がおかしいと別の友人に言われ、池田を意識するようになった健太郎だったが…。
キュートなストーカーにロックオンされちゃったDKの話です。
ストーカー受けといえば、なんでこの攻めはこんな変態を受け入れられるんだろう、と首をひねってしまうものも多いですが、こちらの受けはすごく可愛い人でした。健気で控えめ、なのにストーキングしてるときはイキイキしてて、つい応援したくなるような感じ。攻めも鷹揚で、ストーキング⁉︎ …まぁいいか…、みたいな、懐の大きい人でした。一歩間違えば流され系×卑屈みたいな萌えないカプになりそうだけど、ちゃんと萌えられました。
受け攻めと書きましたが、エッチシーンはなし。それどころかエロいシーンすらなく、チュー止まりでした。これ単独での評価は萌×2。
同時収録作が2編、どちらもエッチなしで、それどころか恋愛以前、というような話でした。
高校生ものの、チャラい先輩×真面目な後輩、という作品に至っては、ハッピーエンドですらない…。かと言ってバッドエンドというわけでもないんですけれど。恋愛シミュレーションゲームでいえばノーマルエンドといった感じ?
この話は、やはりBLは2人がくっつくか、くっつくだろうと思わせてナンボ、と思うので評価的には萌〜中立くらいです。でも雰囲気はとても素敵な作品でした。
あと一作は小学生同士。こちらはすごく微笑ましいというか、このまま2人が高校生くらいになった話を読みたいなと思いました。関係はこれもチュー止まりですが、小学生だから仕方ないかな…。でも個人的にはこれがいちばん好きでした。
絵柄はちょっと小鳩めばるさんを崩したような雰囲気です。クセはあるけど可愛い絵柄でした。
「もっといろんな作品を読んでみたいと思わせる作家発見!」という感じでした。実はもうかなり読み返しているお気に入りの一冊です。画数がよかったのでこのペンネームにされたそうですよ(前袖より)。
表題作以外に2つのお話が収録されています。
どれも違ったタイプの作品で、ほのぼの可愛いくて笑えて...と思えばせつなかったり…共通して感じたのは「心地よい温度」、私にはそんな一冊でした。印象的だったのは、サブキャラや女の子(一応、ライバルかな)がいい具合に主人公たちを引き立たせていたのと、どの作品にも年配の人が登場すること、でしょうか。主人公の片方が祖父母と暮らしていたりすると、一瞬のやりとりなどでその子の日常や人との距離が想像できる...そんな描写が心に残っています(それはほんのちょっとなのですが)。
そして作者のイラスト、表情の変化がとても魅力的でした。
表題作のストーカーくんなんて、ずっと見ていたいな~。
■『僕のかわいいストーカー』(表題作)p.003-
表紙の子がストーカーなんですが、これは明るく楽しめるストーカーでしたね。すぐに見つかっちゃうので、そこから相手はどう受け止めるのか、ふたりの関係はどうなっていくのか…。真っ赤になったり、泣いたり笑ったりする池田の表情、セリフとともに飽きさせません。やわらかそうな髪も。
■『はなむけのうたを、』p.095-
理科委員は魚に餌やりをするのだけれど、高3の先輩はあまり来てくれない。目立つタイプのその先輩は自分と正反対で、実は苦手だった…はずなのに、いつからか……。もうすぐ卒業してしまうのに。
■『短い通学路』p.129-
こちらはまだ小学生の子たちなんですが、これすごくいいなぁ。言葉なんかも私の感覚ではとても自然に思えて。前の作品の余韻から、すぐに切り替えられる面白さでした。女の子の存在もあるのですが、三角関係が裏でうっすら展開している感じがよかったです。先のレビューではるぽんさんも書かれていますが、この子たちが高校生ぐらい~というの、ぜひ読んでみたい。
■『another take』(表題作描き下ろし)pp.161-173
今度はうちに遊びにきてください!と言っていた池田の家へ、健ちゃんが遊びに行くお話。これは★★★★★です!健ちゃんっ!
あとがきには、おそらく各作品の「受け」になるのか?と予想したくなる3人が、ストーブの前で暖をとる様子のイラスト。カバー下には表題作ふたりのカバンの中身、それぞれ1頁ずつ。初回封入ペーパーでは、両方のセーラー服姿が見られますよ、一応…健ちゃんのも(笑)。
詩雪さん。
小学生カプよかったですよね〜。育ったら、幼なじみの、すごく仲の良いカップルになりそうな気がします。あと高校生になった2人のビジュアルが見たくてたまりません。
次回作も楽しみです。メインが小学生カプのその後だったら飛び上がって喜ぶんですが。(笑)
表題作はピュアで可愛らしい二人でした。ストーカーの池田がとっても健気で可愛かった!他の作品もピュアでガラスのようにキラキラしてて、ふとしたことで壊れてしまいそうな儚さがあって、とても雰囲気のある作品たちでした。「はなむけのうたを、」のなんとも言えない切なさを含んだ余韻がたまらなかったです。
題名のままです。題名のままに、可愛いのです。ストーカーの池田くんが可愛いのもそうですが、それを流されがちな性格ゆえに気持ち悪がったりせず受け入れちゃう健ちゃんもイイコなのです。
優しい気持ちになる、何度か読み返してしまう素敵な1冊でした。