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小林典雅作品は再読率が非常に高いのに、こちらは一度読んだきりだった作品。
何かもやっとするところがあった気がするけれど、思い出せず状態での再読。
あぁそうだった……
受けが、女形で陰間茶屋で客をとる色子なので、育ってきた背景が悲惨だったんだわ……。
しかも時代が時代なので、精通も声変わりもまだの頃から客を取らされる。
受けが来るのを部屋で待つ間に、隣の客間からヒヒジジイと声変わり前の少年がまぐわう様子が聞こえてきて、受けもそうやって育ってきた……ということに攻めが改めて気づかされるシーン。
ショタ地雷からすると、ここのヒヒジジイのキモさと少年の哀れさがまさに地雷そのもので、ぎゃぁああああ!!となるのだったわ……。
攻めは真面目で品行方正なお侍さんで好感度が高いし、受けも悲惨な育ちだけどジメジメしておらず芯がしっかりしてる魅力的なキャラで、その二人の交流はとても楽しく読めるのだけど、陰間茶屋パート部分が私にはダメージがでかすぎるのだった……。
面白かったです!
以下、長文となってしまい、すみません(>_<)
始めは、時代物って想像力が追いつかないかな?と心配していましたが、
この作品では、時代物のハードルより、逆にその時代の恋愛の艶っぽさにはっとさせられます。
「…お月さんも、もう寝やしゃんした…」など、歌舞伎のセリフの入れ方が良いんです!
堅物武士の榊さんが、音弥の顔に化粧を施す場面も、素晴らしい…(>ω<)
音弥は陰間茶屋に身を置いているので、拭いきれない辛さもありますが、それでもお話が暗くならないのは、彼自身の明るさ、彼を取り巻く登場人物の魅力あってこそだと思います。
そして、典雅先生は心に残る場面を書かれるのが本当にお上手です。
音弥がゆで卵を欲しがるシーンや、他の人への身請けが決まってしまった後、榊さんとの喧嘩腰の思い出を回想するシーンなど、切ないんです…。
先生のお話では、皆さんとても饒舌で、その台詞の面白さも最大の魅力ですが、大切な人が辛い目にあった時には、言葉をつぐんで、ただ見つめたり、抱きしめたりして心を通わすんですよね。
武家の初恋では、そういう繊細な心の交流に改めて感動しました。
時代の面白さあり、名場面あり、登場人物の魅力あり!
いつもと違うお話が読みたいな、と思われる方におすすめしたい名作です。
小林典雅さんの江戸時代もの。
主人公はお堅いお武家さま。だから口調がとっても凛々しくて生真面目なのです。
『榊鉄之丞には嫁がいない。』
からはじまる物語、しかも榊には人に知られると気まずい嗜好があるという。
これは「男色」の事かと思いきや、設定は全然違うのです。
嫁がいないのは、まとまった縁談の相手が祝言前に必ず病気や不慮の事故で命を落としてしまうから。その数、何と4人!おかげで榊は「呪われた男」という流言が広まって縁談が来なくなりました。
人に言えない趣味は「化粧」。それも、人に化粧をしたい、という願望を隠し持っているのです。
そんな榊が、ご家老のお供で見た芝居に出ていた大部屋役者・音弥と知り合って…という展開。
音弥は、陰間がすべて舞台子というのが売りの朧屋という見世で色も売っていますが、自分の境遇に対して達観しているようで淡々と客を取っています。
榊は音弥が気になってたまらず、客になって音弥の時間を買いますが決して寝たりはしません。一緒に芝居の台本を読んだりして、客はスケベな奴ばかりと思っていた音弥もすっかり榊が好きに。
しかし榊は自分が音弥を好きになって「呪い」で音弥が死んだら大変、と距離を置き続けます。
そんなつかず離れずの情緒ある2人なのに、いざHシーンは初めてのはずの榊がテクの飲み込みが早いとか、身受けの大金をポンと出したりとか、バタバタと大団円になってしまうのが少々残念な気がしました。
お堅い武家なのに周りも陰間上がりの音弥を家に入れるのを賛成してるとか、かなり都合のいい終わり方ですが、完全ハッピーエンドになっています。
挿絵は松本花さん。真面目な素敵武士・榊の印象はぴったり。音弥の方は、女形だから仕方ないけど女の子すぎるかもしれません。
独り身で堅物な武家・榊が、大部屋役者の音弥に一目惚れしてしまうお話し。
音弥も優しく親切な榊に好意を抱いていますが、身分の違いや堅物な榊の態度に、
自分に好意を抱くはずがないとあきらめています。
一方の榊も、自分の周りで不幸が続くことから、音弥を失うことを恐れ、
あくまで贔屓としての距離を保とうとします。
お互いを思い、勝手に誤解し、気持ちが噛み合ていない様子が面白いです。
特に真面目な顔して口説いたり、性交の手順を本で学ぶ榊の天然っぷりが最高です。
可愛いお話しで、さらっと楽しく読めました。
ただ、萌要素は少なかったです。