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表題作猫、22歳

昇平
志朗

同時収録作品皿の上の明くる日

三田村晴海
尾張創

同時収録作品男と男と蚊帳の中

睦郎

同時収録作品戦争は平和

『人間』
『戦争』

あらすじ

「これは、躾だからな?」ある日やってきたのは、ひとりの『猫』。

彼は、「にゃあ」と鳴き、床に手をついてミルクをすする。
甥の志朗はなんの前触れもなく突然そうなった。
志朗を預かることになったポルノ小説家の昇平は、『猫』としての彼と暮らしはじめる―…。

表題作ほか、殺人犯×ゲイの教師『皿の上の明くる日。』
『戦争』の擬人を描いた『戦争は平和』など、4本を収録。

決して真っ当ではない。けれど、まごうことなき、愛の短編集。

※この作品には、死を想起させる表現が含まれています。

作品情報

作品名
猫、22歳
著者
柳沢ゆきお 
媒体
漫画(コミック)
出版社
KADOKAWA(メディアファクトリー)
レーベル
フルールコミックス
発売日
ISBN
9784040687148
3.9

(42)

(16)

萌々

(13)

(8)

中立

(4)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
10
得点
160
評価数
42
平均
3.9 / 5
神率
38.1%

レビュー投稿数10

感じるもよし、考えるもよし

こちらは4つの話が収録された短編集で、記憶が薄くなった頃合いを見て読み返してしまう作品です。

●「猫、22歳」「猫、35歳」
ポルノ作家で志朗の叔父の昇平(攻め)と、猫のようになってしまった昇平の甥の相田志朗(受け)の、手にした愛の行く末を見守るラブストーリーでした。ガチの叔父と甥です。冒頭のインパクトでもうつかみはOKでした。

●「皿の上の明くる日」
ゲイがばれて学校を辞めた元教師の尾張創(おわりはじめ・受け)とふらふらしていたら創にナンパされたシリアルキラーの三田村晴美(攻め)の、とある冬に二人の男が出会って別れた話です。
こちらはBLとして楽しむというのもありましたが、それ以上に自分の中の倫理観や正義感と何度も照らし合わせて考えさせられた作品でした。確かに、どれくらいの日数を過ごしたかはわからないけれど、2人で過ごした時間というのは幸せがあって愛もあって、癒しがあったと思う。けど、三田村はサイコパスなシリアルキラー。当事者じゃないから想像するしかないですが、遺族にとっては犯人なんて胸糞以外の何物でもないだろうし、世論ももちろん「とんでもない奴、許しちゃいけない、死刑だ」的な流れになるんだろうな、と想像する中で、「自分だけはあなたのことを愛している」って気持ちを否定することは私はできないな、と思ってしまいました。

●「男と男と蚊帳の中」
ケガで引退して現在引きこもり中の元プロサッカー選手の睦郎(攻め)と、睦郎の部屋に通って世話をしているプロサッカー選手の奥村圭の、ライト共依存ラブストーリー。攻めも受けもガタイがいいです。引き込もってひたすら筋トレに勤しむ理由、かいがいしくお世話をする理由。お互いに対する感情がむき出しで、体当たりで。しっかり伝わってきました。

●「戦争は平和」
こちらはBLというか哲学として面白かった作品。「なぜ戦争は無くならないのか?」という百人いれば百通りあるような命題の解答例の一つですよね。擬人化ってパワーすごい。皮肉が効いてる。最後の1コマは誰がウマいことを言えと、とツッこまざるを得ませんでした。


インパクトのある描写、表情、セリフ、ストーリー。表題作は2話ありましたが、他は1話完結。どの話も一冊まるっとで作るのは無謀なお話だなと思いました。

もちろん「考えるな、感じるんだ」で読んでもいいし、とことん突き詰めて考察するのもアリだと思います。

とても面白い作品集でした。

0

衝撃的な始まりに、ゾンゾンする!!!!(褒め言葉)

柳沢先生ということで、少し読む前に構えるまりあげは。

強烈なお表紙が、その構えを肯定しているような気が、、、


はい。
読み始めましたら、その予感は間違っておりませんでした。

「猫、22歳」冒頭は、メンタルやられて猫になっちゃった青年のお話かと思ったら、
そうではなかった大どんでん返し??
というか、その結末に「さすがすぎる……柳沢先生の描かれる愛のカタチだ……」と、その場でスタオベしました。


その次の、
「猫、35歳」は前の世界観からの続編かと思ったら、別のテイストすぎて泣かせられました。
年の差のお話。
オチが分かると、なんとも言えない感情が胸にこみあげてきます。


それから、
「皿の上の明くる日」
ゲイで仕事を実質クビになった男と、その帰りに偶然すれ違って落し物を拾って手渡した男とのお話。
奇妙な縁から、しばしふたりは共同生活を送るのですが、
まさかの攻めの正体が、、、
伏線回収したときのゾワリ感は、いまだに忘れません。
お見事です。



で、
「男と男と蚊帳の中」
俺だけのヒーローとは、、、
俺だけに依存させたい、存在理由にさせたい男の策略にハマってしまう?!!


「戦争は平和」
なかなか小難しい話なのかなあ、、、
と冒頭の印象。
けれど、オチにクスリと笑える短編でした!


個人的に、伏線バンバン張られた予想外回収展開な柳沢先生の作品がむちゃ(←めっちゃじゃなく)好きです!!(熱弁)




0

短編集とは思えない深さです(*´Д`*)

一癖も二癖もある短編集です。日常の中に毒をはらんでいるといった感じ。「真っ当ではない。けれど、まごうことなき愛の短編集」となってますが、本当にその通りなんですね。ごくごく一般的な愛の形では無いのだけど、確かに愛なのです。読み終えた後は、泣きたいような切ないような。自分の気持ちを上手く整理出来ない程衝撃を受けました。
そして、帯に「*死ネタ注意」とありますが、直接的なものではありません。しかし「ああ、これは…。」と、想起させます。苦手な方は注意して下さい。

「猫、22歳」「猫、35歳」
22歳の方をフルールで読んで、面白かったので購入したのですが…。突然「にゃあ」と鳴き、猫のようになってしまった甥(受け)を預かる事になったポルノ小説家(攻め)の話。「猫」になってしまった受けと暮らしますが、猫の為トイレも一人で出来ない受けを戸惑いながら面倒をみます。そんな時に「猫」に発情期が来て…という展開です。
厭世的で、雪深い田舎で暮らしている攻めが臆病な印象を受けます。そして受けはかなりしたたか。攻めを手に入れる為に一芝居打ちましたって所です。絡みが結構濃厚で、エッチの時も「にゃああ」と声を出す受けが、なんだか妙に嗜虐心をそそります。そのせいか、攻めもちょいSが入ってます。エッチの翌日の受けの言動が、「ええー!」と見物です。
これだけなら、ちょっと毒があるけど面白いで終わりなのですが、続く「35歳」の方で、この話を非凡な物にしてます。受けが35歳になっていて、攻めと静かに暮らしています。50歳になる攻めは、自分の死を意識し始めるのですね。まだ若い受けを置いて逝く事に、深い悲しみを感じています。そんな攻めに、受けがかける言葉がとても深くて素敵です。ここはネタバレなしにしときますが、全て受け入れるというのが究極の愛かもなぁと感慨深く思いました。そして窓の外を流れる景色が、時の流れを意識させて、切なさを増してくれます。本当にいい話です!! それにしても、50歳ってまだまだこれからでしょう!!

「皿の上の明くる日」
殺人犯×ゲイの教師。毒が強めです。逃亡中の殺人犯と、ゲイが噂になりクビになった教師が、一緒に刹那的な時間を過ごす話です。メリーバッドエンドで、読んだ後は気分が沈む…。ちょっと私には荷が重い話でした。

「男と男と蚊帳の中」
怪我で選手生命を絶たれて、引きこもりになった元プロレスラー?の攻めと、現役のプロレスラー?で攻めの世話を焼く受けの話。自分一人だけのヒーローになったと無邪気に笑う受けが印象的です。しかし、これも毒が入ってる…。エンディングが明るいので、後味は悪くないです。

「戦争は平和」
戦争が擬人化されてます。「戦争(受け)」のセリフが深い!! そして、こちらも擬人化された「正義」がちょっとカワイイです。「友愛」だけぽっちゃりなのもプッときますね。意見を聞く為に呼び出された「人類代表(攻め)」と「戦争」がエッチを始めちゃうのですが、背中の引っかき傷を「戦争の爪痕」という攻めのセリフが秀逸でした。最後のこの話が、作品全体の重苦しさを緩和してくれてます。

甘さやさわやかさとは程遠い作品ですが、一つ一つが胸にグサッと来る作品集でした。

*「猫、22歳」ちょっとだけ補足です。
なんで50歳という若さで、そこまで悲観的なんだ?と腑に落ちなかったのですが…。
結婚とか、子どもとか…、確かな形が何も残らない状態で一人残していくのが辛かったのだろうなぁと。
私も自分に置き換えたら、心が引き裂かれそうな哀しさですね。

11

猫萌え、筋肉、擬人化、考え応えのあるストーリー

面白い!
でもレビューしにくい作品。
読む人やタイミングによって解釈がガラリと変わりそうだから。
「皿の上の明くる日」なんかは特にどう読んだらいいのか迷います。
でも面白い!
面白いというかテーマが深い。
萌え目当てに軽く読むのもあり、じっくり深く考え込むのもありな1冊だと思います。

「猫、22歳」「猫、35歳」
叔父×甥。
猫になった甥をポルノ小説家の叔父が引き取る話。
「にゃー」しか言わない黒猫みたいな甥がとにかく可愛い!これに尽きます。
萌えエロもたっぷり♡
でも単なる萌えBLでは終わりません。
ライトな「猫、22歳」に対して、描き下ろしの「猫、35歳」が凄いインパクト。
絵柄も違うし、なんだかもう全く別のお話みたいになってるんですけど、ガツンときました。
人生の終わりを見据えた男の深い愛情の物語。
作中の台詞が哀歌のようにずしりと沁みます。
SHOOWAさんの「逃げ水」を読んだ時の読後感に似てるかも。

「皿の上の明くる日」(全2話)
ゲイを理由に解雇された教師〔はじめ〕と殺人犯〔晴海〕の束の間の幸福を描いた話。
冒頭でも書いたように正直どう読んだらいいのか迷うんだけど、自分なりの解釈でレビュー残します。
このお話の何が悲しいかって、殺人犯に恋してしまったことが悲しいんじゃなくて、はじめと晴海が思い描く愛と幸せの形が重なり合わなかったところが悲しい。
はじめの寂しい人生の中で晴海に出会えたことは幸せ以外のなにものでもなかっただろうし、「幸せ」が覚束ない夢のようなものでしかないはじめにとっては叶いようもない未来の約束よりも確かな体温の方に飢えていただろうと思う。もっと言えば、晴海に殺してもらえたら幸せだとすら思ったかもしれない。
でも晴海の方は訪れない「いつか」に想いを託そうとする。自分が死んだ後もはじめに生きててもらうことがロクでもなかった人生の中でただ一つ遺せる自分の生きた証になると思ったんだろうか。
んー難しいな…(T_T)
晴海が殺していた被害者達はどんな人達だったんだろう。そこが読後なんだか凄く気になりました。
はじめのその後のプロットがあるとちるちるのインタビューで書かれているので、ぜひ読めますように!

先の「猫、35歳」と「皿の上の明くる日」は上手い具合に対比になっている気がします。
今の自分の年齢・現状的に普段の自分がグルグルと考えていることと重なって、読み終わってからずっとこの二つの話が頭を離れないです。色々考えてしまいました。

「男と男と蚊帳の中」
筋肉×筋肉。
これは分かりやすいヤンデレもの。
怪我で選手生命を絶たれて引きこもりになった男と、今も現役の元チームメイトのお話。
作品情報にプロレスラーと登録されているけど、正しくはサッカー選手じゃないかな?
どちらも凄い筋肉で、みっちりと重そうな肉のぶつかり合いがむさ苦しいやら眼福やら。

「戦争は平和」
概念の擬人化です。
自分の倫理や正義を振りかざす人々への皮肉とブラックユーモア。
この作品は今まるっとフルールのサイトで読むことができるので、気になった方はまずは読んでみてください!

この作家様の作品は私にはいまひとつ難解で、これまでのも読みはするもののレビューとしてはまとめられず…といった中で、今回は比較的解りやすくグサグサと刺さってきた1冊でした。
BLとして万人受けは難しいでしょうけど、ハマる人にはガツンとハマりそう。

5

実にえぐい

この方の商業単行本も、これで4冊目となりました。
短編集→長編→連作集、そして今般の中編集+αと言う変遷が
ある訳ですが、ここへ来てデビュー単行本で魅せた様な
えぐみをサラッと持ち出してくるとは、と驚いています。
でもそれを旨味と感じ取ってしまうのは、長編と連作集で
会得したであろう部分と熟成の為せる業なのやも知れません。

そして、手法の取り込み方にもまだまだ余念がない様で。
江戸時代の手法を平成の世のBLで観るなんざ予測して
いなかっただけに不意打ちを喰らった気分です。
いいぞもっとやれな気分ではござんすが。

3

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