電子限定おまけマンガ4P付
中学生の攻めと、高校生の受けの、受験勉強と恋愛にまみれた青春のお話です。
大手の学習塾の殺伐とした競争世界が嫌で逃げ出した中学3年生の攻め。小さな学習塾に入り直したのですが、そこには名門高校に首席入学を果たした伝説の天才がいました。
その高校2年生の天才が受け。顔は綺麗で頭脳は明晰、なのに性格がキツく毒舌な女王様タイプです。攻めは受けに憧れ、ワンコのように付きまとうようになります。
孤高の毒舌美人に、最初はコテンパンにされる攻めですが、だんだん受けにも気を許してもらえるようになり、自他共に認める「お気に入り」になっていきます。相変わらず扱いはひどいけれど特別な立ち位置。でも、いつしかその「お気に入り」の立場だけでは満足できなくなってきます。
天才の受けほどではなくても攻めも頭の良い子です。受けの通う名門校に易々と合格し、同じ学校の高3と高1になります。
何が素晴らしいって、初登場の攻めが幼くニコニコした少年だったのに、だんだん背が伸び体格が良くなり、いつしか受けの身長を抜き…という成長や、憧れだったはずの感情に肉欲が混ざってくる、というのが一冊の本の中で目に見えること。少年がだんだん「男」になっていく過程が、はやりやまいさんの硬質な絵柄で表されるのが萌え以外の何物でもない。受けといるときは「お気に入りのワンコ」みたいな攻めが、自分の部屋へ戻った途端に受けを想って自慰する、その色気にクラクラしました。
受けもかわいい人でした。ツンデレで意地っ張りで、攻めをいつも虐げているのに、攻めのすることを拒まない。あー大好きなんだね、と思えて微笑ましいです。
脇役の学習塾の先生とかも気になるキャラでした。隠れた顔がありそうな、元の職場の塾とかにお相手がいたりしそうな…。
唯一気になったのは、受けのお母さんの天然さ。あまりのお気楽さにええ、いいの? と思ってしまったりしました。まあ、反対されても後味悪いから、良かったといえばそうなんですけど。
それを含めても、前作の『あさはらたそかれ』に続き、文句なしの神です。絵がもうちょっと、と思われる方もいらっしゃるかもですが、私個人としてはこのままの画力画風で問題なし。
じんわりじっとり、湿度高めの1冊。と言っても、不快感のある湿度ではありません。前作「あさはらたそかれ」が早春から盛夏の早朝という、湿度の低いカラッとした空気の中で進むのに対して、こちらは受験にからめた、秋から冬、そして、春に向かう湿気を含んだ空気感の中で、物語が進行します。舞台設定の問題だけではなく、これは、攻めのキャラクターに由来するところも大きいですね。じっとり、執着攻めです。
とは言え、最初から執着していたわけではありません。最初は、小賢しくうじうじと余計なことを考えてしまう、自分の小ささを粉砕してくれるような圧倒的な存在に対する、単なる憧れだった。その憧れの存在が、ちょっと見ないほどの美人。しかも、どんなに邪険にされても気にせずついてまわっていたら、側にいることを許してくれるようになった。ちょっとずつ自分に隙を見せてくれるようになった。……執着しないほうが嘘でしょう、これは。そんなわけで執着までは、すんなり話が進むのですが。
そこからが、この作品の本題。これは憧れか、恋か。中学から高校への過渡期って、ちょうど成長期と第二次性徴がダブルパンチでやって来る時期ですよね。性的欲望を抱くことで、これは恋だと自覚する、その過程の描写が、とてもいいです。前作でも思ったんですけれど、はやりやまいさん、成長期男子の成長をさらりと描写するのが、とてもお上手ですね。フィジカルメンタル両面の成長が、わざとらしくなく、しかし目に見える形でしっかり描き込まれているのはポイント高いな〜、と思います。今作はそのあたりに、じっとりとした欲望の所在も描き込まれているわけでして。
個人的には、攻めの次郎はこの性格でいいと思います。小賢しいタイプであることを自覚しているからこそ、天上天下唯我独尊の秋春に惹かれたのだし、天才の影を踏める程度の賢さがない人間には、秋春は全く引っ掛かりを覚えないと思われるので。
毎度、タイトルネーミングセンスも秀逸です。きっちり内容と呼応していて、ここぞとばかりにフレーズを活かしてくれているあたり、結末でちょっと震えがきます。お見事。
あとは口絵が、吹き出し入りで口絵というより1ページ漫画なんですが、それがすごく好きです。男子高校生の日常ですね(笑)。
どピンクのインパクト大な表紙が好きです。
従順わんこな次郎と分かりにくそうで分かりやすい秋春の関係がよくて、秋春節にハマります。次郎の憧れから恋がはじまる、近くて遠い存在である2人のお話です。
中3次郎から見た秋春の存在は、憧れ(目標・なりたい存在)。
高1次郎から見た秋春の存在は、恋(隣にいたい・触れたい・独り占めしたい)。
物語の途中で、次郎が秋春への恋を自覚するとともに変化する2人の関係性が、まさに帯に書かれている言葉なのかなと思いました。
次郎がいるから秋春は無敵になれる。でも、次郎がいるから秋春が無敵じゃなくなる瞬間がある。その全てを知っている次郎。従順わんこそうでグイグイくる次郎の図が好きです。
そして俺様タイプである秋春の「俺は一人でも生きていける それでも だって お前がいた」という言葉。「この青春を誰も呪うな」で締めるところが最高です。大好きです。
はやりやまい先生らしいお話で、読み返せば読み返すほど物語の良さが見えてきて面白かったです。
☆「あさはらたそかれ」(通称:あさたそ)で私的骨太新人ランキング1位を獲得したはやりやまい先生の新刊ということでワクワク!
☆人当たりの良い次郎×頭が良すぎて周りから浮いている先輩アキの年下攻めモノです。
小さな塾を舞台に青春が繰り広げられます。
☆受験戦争と恋愛を両立している2人が羨ましいと思いました。しかし、この作品を読んで私自身の受験時代もただの灰色の時代ではなくあの中に青春があったと振り返ることができました。そんな妙なリアルさをなぜか感じました。
☆台詞回しが本当に巧い作家さんだと思います。最後のページで鳥肌が立ちました。
☆アキのピュアさに萌えつつ、帯の煽り通り成長していく次郎に期待を寄せていました。年下攻めの醍醐味(?)、攻めの成長が時間を追って描かれていて、あさたそと同様に季節がしっかり流れていて流石だなと思いました。
☆カバー下も必見です!!欲を言えばアキ大学編も読みたいです。あと、塾長の過去も気になります。
青春!無敵!痺れる!!
台詞回しが上手いこと上手いこと。
憧れから恋に変わり、悩みながらグイグイ距離詰めるのが良い。
年下攻めの醍醐味!!
ここぞって時に「イヤですか?」
断らないの分かってて聞いてくるの!
ずるい~好きだ!
俺様アキ様のケンケンした中の可愛さ素晴らしかった。