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表題作富士見二丁目交響楽団シリーズ第4部 ブザンソンにて

桐ノ院圭
天才オレサマ指揮者
守村悠季
ヘタレ天才バイオリニスト

その他の収録作品

  • ノクターン
  • 証言編「二月十一日」その後
  • 冬のうらら

あらすじ

それは、圭から僕へのライバル宣言だった…! 大人気シリーズの待望の新刊エミリオ先生の別荘で圭とともに過ごしていた悠季は、8月のある日突然圭から帰る、と宣告される。しかもそれは二人が住むローマではなく、ウイーンだった。第4部完結編!

作品情報

作品名
富士見二丁目交響楽団シリーズ第4部 ブザンソンにて
著者
秋月こお 
イラスト
後藤星 
媒体
小説
出版社
角川書店
レーベル
角川ルビー文庫
シリーズ
寒冷前線コンダクター 富士見二丁目交響楽団シリーズ
発売日
ISBN
9784044346393
4.2

(5)

(2)

萌々

(2)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
21
評価数
5
平均
4.2 / 5
神率
40%

レビュー投稿数2

実力に見合わない夢は破綻するしかありません

シリーズ第4部終幕となる6冊目。通しで22冊目になります。

《出版社あらすじ》
国際指揮者コンクールに出場する圭に会うため、フランスの地方都市ブザンソンにやってきた悠季。二週間ぶりに再会した圭は相変わらず激しく悠季を求めてきて……。だが、他人を全く寄せ付けなかった圭が、夕食の席では意外なほどライバル連中と打ち解け合っていた。いったい圭にどんな心境の変化が?そしてコンクールの結果は!?イタリア留学編ついにクライマックス!!

収録作
・ノクターン
・ブザンソンにて
・証言編『二月十一日』その後
・冬のうらら

「ノクターン」は、悠季のヴィオッティ国際バイオリンコンクール挑戦の話です。圭がパルマからコモ湖の別荘に戻った翌日いきなりウィーンに戻ったことでエミリオ先生は2人が喧嘩したと誤解して、悠季は先生と圭の話をします。マリオくんにも懐かれている圭はすっかりロスマッティ家の一員みたいです。
 先生はべべ(圭)は蛾でユウキはランプの灯だと言います。孤独で心に深い闇を持ち固くて狭い世界にいる天才で音楽は寂しさを埋めるためのものだと言います。 そんな圭と自分の相互依存状態に気付いた悠季は圭から音沙汰がないことでグルグルして不眠症になり、エミリオ先生の助言で圭や生島さんと対等に遣り合える演奏家になると決意します。
 けれど悠季は一向にバッハを捕まえられず、ベートーベンを捕まえられない圭からのライバル宣言にも気付きません。
 その後、バッハを捕まえられないコモからヴェルチェルリ入りした悠季は、栖本さんとの再会で「バッハの呼吸」というヒントを得て、本選前日にやっとバッハを理解し《無伴奏ソナタ一番》で優勝者なしの同点2位入賞を果たします。輝かしく美しいハーモニーに感動して滂沱の涙となる悠季は圭とエミリオ先生に抱き締められます。パルニーニさんには良いバッハ弾きになると言われます。

「ブザンソンにて」は、圭のブザンソン国際青年指揮者コンクールの話です。
 今回の圭は悠季に色々な打ち明け話をしています。コンクールでは勝負ではなく純粋に音楽を味わうスタンスを目指していること。悠季を驚かせた参加者たちとの愛想良い付き合いは、パパ・エミリオと色々な話をする中で気付いた自分の幼児性と頑なさを改革する第一歩として、ポーカーフェイスを休業した結果であること。その挙げ句に疲れていますが・・・。悠季に対して今まで理解ある寛容な恋人であろうと努力してきたのは本音をぶつけて三行半を突き付けられるのが恐かったからだということ。
 コンクール本選では、圭は絶賛されて優勝。渾身の指揮によるベートーベンの《第七》に感激したオケ楽員たちは涙涙で、聴衆は万雷の拍手とブラヴォーの嵐、審査委員長は圭が主賓のPartyまでひらきます。悠季は圭の指揮で弾きたいという野心を覚えます。またParty会場ではパルニーニさんにサムソン副社長と彼ががゲイだと教えられます。ちなみに今回、都留島さん(パルニーニさんの知り合い)と延原さんも聴きに来ています。

「証言編『二月十一日』その後」は、「天国と地獄」(『アクシデント・イン・ブルー』収録)に既出の三橋鈴香ちゃん視点です。圭がボッヘの代振りをしたM響の神戸ツアーの時に、圭が倒れたと勘違いして駆けつけようとした悠季に空港で空席待ちの順番を譲ってくれた、あの女性です。悠季から御礼としてもらったスコア『二月十一日』が縁で桐ノ院様を知ることになり、ウォッチングのため偶然入った喫茶サフランで悠季と再会して、桐ノ院様のアップ写真と悠季とのツーショット写真をGETする話です。友人の静江ちゃん(悠季派)と共に今後も桐ノ院様のコンサートの追っかけを続けるようです。
 なお、彼女の目から見た圭は凄く背が高くて理想を完璧に具現化した顔立ちでモデルみたいな脚の長さで痺れるバリトンで信じられないくらいに格好イイ人で、悠季はスラリと背が高いかなりの美形で演奏姿は綺麗な人で、飯田さんと延原さんはオジさんだそうです。

「冬のうらら」は、桐院堯宗氏と伊沢重三郎の話で伊沢さん視点です。自分のところへ卵料理を習いに来ている圭を見て回想する伊沢さん、という形の内容になっています。時系列的に『アレグロ・アジタート』あたりの話でしょうか。
 伊沢は、兄の光一郎が夢枕に立ち堯宗氏のことを頼んで逝ったことから、秘書として仕えるようになります。21歳の時に兄と堯宗の関係を知らされ望んで彼と結ばれますが、彼の妻の貴子には見抜かれてしまい夫婦関係は破綻。けれど2人の絆は深まり、以後、貴子と彼女付きの女中ハツからの陰湿なイジメを受け続けることになります。堯宗57歳の時に圭が生まれ、60歳で会長職に退く時に46歳の伊沢も桐院家執事となり桐院家に住むことになります。同時に、幼少期の育ち方が大切だと考える堯宗に圭の養育係も任されます。さらに圭が高3の時には、自分と似ている圭が自分で選んだ人生を生きられるよう味方してやって欲しいと頼まれます。そして現在、恋人のために料理を作る圭の幸せそうな姿を目にして、安堵感を覚える伊沢さんです。なお、幼稚園時代の可愛らしい圭の描写もあります。

1

悪あがきの圭が見れます

ブザンソン国際青年指揮者コンクールにエントリーした桐ノ院圭。
前回のヤノーシュ・フィレンチク記念コンクールで、圭は1位なしの銀賞を受賞していました。
悔しさをばねに、雪辱を晴らすためにがんばっている(だろう)と応援に駆けつけた、恋人の守村悠季が見たものは…!

自分の幼い見栄が、悠季に知られてしまうことを恐れて恐々とする圭。
それでも好きで好きで、悠季を求めてしまう圭。
前回のコンクールの失敗を冷静に分析する指揮者としての圭。

いつもは傍若無人で、オレサマな指揮者(と思われている)圭の
さまざまの苦しみや迷いが前面に出てくる「ブザンソンにて」が収録されています。

圭は、本当はまっすぐで純粋で、傷つきやすい繊細さを持っているのに、それを「オレサマ」の仮面でねじ伏せていたという素直な告白が悠季に告げられます。

でも、悠季は慰めてあげません。
「知ってたよ」
と、やさしく受け止めてあげるんです。
でも、エッチはしてあげません。
そういう慰め方じゃだめみたいです。

大人だなあ、ライバルなんだなあ、でも恋人なんだなあ、とうらやましくニヤニヤしてしまいました。

ひとつの壁を乗り越えて、成長する圭の物語です。
あ、もちろん悠季とはラブラブです。

同時収録作品に、悠季のヴィオッティ国際バイオリンコンクールでの奮闘を描く「ノクターン」/圭が悠季のために作曲した「二月十一日」のコピーが生んだ騒動を描く「証言編『二月十一日』その後」/桐ノ院家の秘書・伊沢重三郎と幼少期の圭との邂逅を描いた「冬のうらら」があります。


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