イラスト入り
元々除霊ファンタジーものは大好きなのだが、今回お気に入りの一冊がまた増えてしまった。
この話で悪霊退治を生業とするのは、高級クラブや会員制バー等を経営している紅大路グループのオーナーにして、平安の世から続く陰陽師の能力を引き継ぐ紅大路公威(べにおおじきみたか)。
気品があるなかで迂闊に近寄りがたい雰囲気を漂わせている。
ゴシップ雑誌の新人カメラマン・航介が彼と出逢ったのは、大物政治家の不倫スキャンダルを追って高級クラブに潜入した際に悪霊の邪気に巻き込まれそうになったのを助けてもらったのがきっかけだ。
航介は平凡な一青年ではあるものの真っ直ぐな性格で、霊感ゼロながらも周りの精霊や清らかな気に敬意を払える所が紅大路にとって好ましいのだなってのが分かる。
強い霊力を持つ故になかなか理解を得られず、どこかしら寂しい想いを抱えている紅大路の気持ちを汲める航介の思慮深さには、読んでいてほだされる。
紅大路の霊力を分け与える方法はキス+αの身体の接触が有効なのだが、エロっぽいイヤらしさはなかった。
紅大路邸は太刀の精霊や式神の爺さま他、人のように具現した住人で賑わっているのだが、その様子はちるちる作家インタビューにあった通り、『美女と野獣』の姿を変えられた家臣や召使い達が城内を動き回るシーンをイメージできる光景だった。
でもそんな精霊達以上に活躍したのが、航介を慕うあまりに霊体となっても現世に留まっていた忠犬・コロだ。
当然、紅大路もここぞという所で格好良かったし彼が従えている精霊さんキャラも頑張っていたけれど、コロの活躍ぶりは可愛すぎてワンコ好きとして堪らなかった。
でも、コロの大好きな航介が心身共に紅大路と結ばれた事に焼きもちを焼かないのだろうか?ってのが気になる。
紅大路と航介が交流を深めていくのをコロがどう見届けるのか、二人を取り巻く精霊達が他にどんな一面を見せるのかもっと読んでみたいので、是非続巻が出てほしいな。