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いじわる狐とハートの猫又

ijiwaru kitsune to heart no nekomata

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表題作いじわる狐とハートの猫又

尾房清綱、つむぎの住む地を調べに来た調査員
つむぎ、亡き主人の家を守って暮らす猫又

その他の収録作品

  • 誘われ狐と猫の言いぶん
  • あとがき

あらすじ

町外れの廃屋に棲むはちわれ猫のつむぎ。可愛がってくれたご主人様の家を主亡き後もずっと守り続けているうちに尻尾が割れ、人の姿をとれる猫又になった。
けれどその尻尾は短くて、猫又界では半端者とつま弾き。ある日のこと、山を切り崩すための調査で尾房と名乗る男がやってきた。大切な家が壊される!
――あの手この手で威嚇するつむぎだったが、尾房は少しも動じないばかりか「何か思い出すことはないか」とつむぎに迫り…。

作品情報

作品名
いじわる狐とハートの猫又
著者
野原滋 
イラスト
山田シロ 
媒体
小説
出版社
三交社
レーベル
ラルーナ文庫
発売日
ISBN
9784879190079
3.9

(64)

(27)

萌々

(20)

(9)

中立

(3)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
8
得点
245
評価数
64
平均
3.9 / 5
神率
42.2%

レビュー投稿数8

一冊泣き通し、号泣です。

最初からなぜか泣けてしまって、1ページ読むにも何度も涙をぬぐい鼻をかんでなかなか読み進めませんでした。

自分を拾って可愛がってくれた主人と奥さんをいつまでも偲び思い出を大切に家を守りぬくうちに猫又になったつむぎ。

都市開発が進みいよいよ大切な住処にも取り壊しに人がやってきて…。

もうつむぎの孤独と亡き主人夫婦との思い出に心があたたまりつつも泣けて。必死で家を守ってるところも。

謎の青年が家に住み着いてなぜか家を修復し、つむぎを知ってるような…。

青年尾房は美味しいごはんを用意してくれ、添い寝して。
好きだっただろって、何で知ってるの?何があったの?でも泣けてくる。後で理由がわかるとさらに号泣です。

そしてつむぎがやっと思い出したところで出会い編へ。

二人にそんな過去があったのね、でもどうやってつむぎと尾房が?と思っていると偶然満開の桜の木の下で出会い。

長年討伐隊を組んでは逃げられてきた猫又のはづき。じつは素直で天真爛漫で悪気があんまりなくて。
ただ善悪や自然と人間の暮らしの仕組みやことわりを知らないだけで。

二人が少しずつ仲良くなり、尾房が神の使いなのに二人きりでどこか遠くでひっそり暮らせたらとか思うように。泣ける。
そうです、絶対に許されない仲なのです。そしてはづきもいつ退治されるかわからない状況で。泣ける。

その後の展開ももう書いてると字数がオーバーしそうで。とにかく必死に求め合う二人が泣けて泣けて。
尾房がはづきといつかどこかで会えるように、どんな姿でもいつになろうとも絶対に見つけ出すって号泣ですよ。
それがわかってから転生して再会してからの尾房の行動や台詞を考えると号泣です。

ただ、全てを思い出してからがなんかさらっとしてるかなあ。エッチも、え?したいの?ま、そりゃBLだしなあ。なんですけど。あの頃はお互いを想うと胸が痛んだりあたたかくなったりしてただけだったよね?
尾房は舐め回したいくらいだったよね?

それが、ハートの尻尾の下のサクランボに気軽に触ってくるし、勝手に誘われたってズブっと行くし。

タイトルがいじわる狐ですからね。号泣した分平和な最後でした。
目がショボショボで鼻血が出るほど泣けるお話です。

0

一途な狐と猫の物語

普段あまり小説を読む習慣がないので少し文章の読みにくさを感じましたが、ストーリーがよかったです。最初はつむぎのこと、あまり好きじゃないなと思っていたのですが、段々と甘えているときの可愛さがクセになるなと思いました。
やはり一番好きなのははづきだった時の話です。どうして二人は出会って力を与えることになったのかという経緯の部分なのですが、そりゃあ惹かれあうわな!!という気持ちになりました。はづきは素直で悪気なくやってるからかわいいし、きよは優しくてはづきの全部を包み込んであげるようなそんな存在なのがとてもいい。
そして私はケモケモセックス大好きなので少しだけでもそういう描写があったのがとっても嬉しかったです。
かわいくて切ないお話で読んでよかったと思えたので、読むのが遅くて話を覚えていられないという心配があって苦手意識がありましたが、また何か小説を読んでみたいと思えました。

0

わたしもモッフリしてみたい

特にモフモフ好きってわけでもないし、イジワル狐って底意地悪そうで嫌だなぁと敬遠してたけど、全然問題なかった。
それどころか、一番心に残ったのが「モッフリ」という。
仕えのものであるチビ狐たちが、「事態は逼迫しています!一刻の猶予もないのです!」と叫び「モッフリを!」「モッフリを!」と迫るので、何のことやら?と読み進めていったら、「モッフリ」とは狐に変身した攻めの見事な毛並みでモフモフすることらしくて、存分にモッフリを堪能しているチビ狐描写と挿絵がめっちゃくちゃかわいくて和んだ。
ほんとモッフリかわいすぎ。

そして攻めは意地悪なんかじゃなく、超一途で健気な溺愛攻めでした。
(いじわるといっても受けのことが可愛すぎてちょっとイジワルしたくなっちゃう程度で、これを「いじわる」だとするなら、他の数多くの攻めは「鬼畜」に改めないといけないレベル)

輪廻転生もので、自分を残してこの世から消えた猫又(受け)が生まれ変わってこの世に再び現れるまで500年ひたすら待ち続けた攻め。
まぁ神様に仕える狐なので、悠久のときをもつ彼らからすれば500年って人間が思うよりは短いのかなぁとも思うのですが、それでも500年。
「今日までの500年、お前と会えることだけを楽しみにして過ごしてきたんだよ」というセリフで落涙。

そして現在の彼らが仲良くいなり寿司を作るシーンがほのぼのして可愛いなぁと読んでいたんだけど、さらに読み進めていくと、攻めにとってそれがどれだけ幸せと切なさをもたらしていたのかわかってホロリときました。

ただ前世の受けの悪戯っぷりがちょっと度を超えてた感があって、ちょっぴり残念。
本当に邪気はないし確かにイノセントなんだけど、可愛いいたずらで済むレベルではなく、悪戯が原因で結果として人々が命を落としたり、村が廃れてしまったり……という、もはや災厄でしかないことを200年以上もやっていたというところにちょいモヤモヤしました。
まぁ、だから討伐の対象になってしまったし、妖なので善悪はないし罪の意識も微塵もないとあったけど。
ただ現在の受けなら前世と同じ猫又と言えども、善悪はありそうだし、悲しむ心も持ち合わせているはずなので、それは夫婦に子供同然に大事にされていたおかげなのかなとも思います。

2

溺愛狐の神様とはねっかえり猫又の大恋愛

溺愛狐の神様とはねっかえりで可愛い猫又との大恋愛のお話しです。

尻尾の形のせいで、猫社会にも猫又社会にも受け入れてもらえない、ひとりぼっちの猫又つむぎ(受け)
優しい夫婦に飼われ夫婦が亡くなった後に、猫又になりながら夫婦と一緒に住んだ家を長い時間守っています。

そこに山を崩して住宅地を作る為に、調査員としてやってくるのが、攻めのきよ(清綱)です。
きよは実は狐の神様で、つむぎと前世で引き離された恋人同士でした。

しかし、つむぎは前世の記憶がなくきよの事も忘れてしまっています。
優しいきよはつむぎが思い出すのを待ってくれます。

猫又で少年の姿になれるも、猫の耳や尻尾がでるつむぎ。気が強い性格も仔猫が毛を逆立ててシャーシャー言ってるようで、とても可愛らしいです。

一方狐のきよは美丈夫な大人の男の容姿で、狐になると銀色の豊かな毛並み。
モフモフいいなと思いました。

お互いが動物の姿でまぐわう所もあるので、獣姦もありますがお話しが可愛いらしいので、エロ要素というより動物同士がイチャイチャしてるような感じがしました。

4

思慮深く、優しい一途な攻め

本編はほとんどが受け視点。途中、過去話のみ攻め視点。
その後のSSは攻め視点で書かれています。


山のすぐそばの廃屋に長らく一人で住み、亡くなった主人夫婦の墓を守ってきた猫又のつむぎ(受け)。
つむぎを拾い溺愛してくれた夫婦の墓を作り、墓と家を守ってきましたが、つむぎの脅しに動じない男・御房清綱(攻め)が現れます。御房は自分のことを覚えてないかと問い、思い出すように迫ってきます。主人夫
婦以外の人と会ったこともないつむぎは混乱するのです。なんとか追い出そうとするのですが、のらりくらりと言いくれてうまくいきません。

つむぎはとても素直で無邪気ですごく可愛い子ですが、考えなしなので追い出し作戦もことごとく失敗します。これがとても面白いのです。
夜中に「で~て~い~け~」と脅しても普通に返答され、「どんな酷いことをする?」「い~ろ~い~ろ~」」と間抜けな回答をするし、「きよと呼んで、親しい人にはそう呼ばれてる」と言われれば「し~ら~ん~が~な~」と知らない間に漫才のような会話になってるのです。思わず笑ってしまいました。
次の日には色仕掛けをしようとして、逆に襲われてしまうし。なんともまぬけでかわいいです。

御房にボロボロだった家を修繕してもらい、すっかり餌付けされ、つむぎは楽しくてこのままでいられないものかと思うのです。お稲荷さんを作っている時には御房がとても楽しそうに嬉しそうにでも泣きそうな顔をしているのですが、再読するとこの時の御房の気持ちが痛いほどわかって胸が痛くなります。

御房を追いかけてきたと思われる二人の子供が現れたことで、御房の目的を勘違いし誤解が生じます。そのすれ違いの途中、つむぎの中にあった奉玉が発動し、つむぎは自分の前世を思い出すのです。


前世のつむぎははづきといい、とても力の強い猫又でいたずらが大好きな困った妖でした。
善悪の区別のつかない子供が強大な力を持ってしまった状態で、ただただ無邪気で楽しいからと人々を困らせる。
御房は神社の神使で、いたずらの過ぎるはづきを捕まえるため日々奮闘していま
した。そんな御房とはづきが偶然出会い、何故かはづきは御房に懐き、逢瀬を繰り返すうちに二人は恋に落ちるのです。
善悪の区別がつかないため罪を犯し続けるはづきは、人間やそれを守る神社側からみるとすごく悪い妖なのに、はづきと親しくなった御房目線だととても無邪気でかわいい妖なのです。
御房が言い聞かせて悪事を働かないよう教育していくのですが、長い間の悪行に怒り狂っていた他の神使たちは話を聞かず、二人は悲劇的な別れをしなければならなくなるのです。
二人が楽しく過ごしているこの過去話は作者様があとがきで書かれていますが、本当に民話を読んでいるようでした。
その後の、御房がはづきを見つけるまでの長い長い謹慎や周りの神使たちへの説得はいつはづきがいつ転生するかもわからない中、本当に気が遠くなるような時間だったと思います。
二人が一緒にいたのはほんの半年ほどの短い間だけだったのに、ゆうに500年も待ち続けた御房の一途さには感動します。


彼らの結末はとても幸せなものになり、良かったと思わせてくれるものでした。
あんなに憎んでいたのに、よく他の神使たちが受け入れてくれたものだとは思いますが、転生し、主人夫婦に愛されて育ったおかげでちゃんと教育されめおり前世のような考えなし行動を取ることもなく育ったこともよかったんじゃないかと思います。
御房が見つけるまでの500年の御房が頑張った甲斐があったと思うと彼の努力が実ってよかったと思いました。

実に本編の‪1/4‬強にあたる過去話はかなり悲しい結末でしたが、初めから御房はつむぎに甘々なので、ちょっとしたいじわる風なかわいがりに過去を知らないつむぎは地団太踏で悔しがっていましたが、それも含めて甘くてかわいい話だったと思います。

3

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