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小中先生のファンタジーは、どれもおもしろい。
この作品のモデルは、アニメ化された「かいぶつくん」なのだそう。
天界と魔界のエージェントが人間界で仕事を請け負う。
仕事内容は、ポイント制評価で、1ポイント1円。
頭が少々悪い魔界のプリンスは、顔だけは凄くいい。
黒い仔猫のようで可愛らしい。
顔だけはいいけど、奥手で、仕事は客から中途解約されて、いつも貧乏。
ライバルの天使に色仕掛けをかけて、仕事の邪魔をしようと目論んだら、
読みが甘いというか、頭が悪くて、ターゲット選択に失敗している。
仕掛けたつもりが、逆に腹黒天使の手管に落ちて、恋に嵌ってしまうおばかちゃん。
課題の「天使堕天」なんて、とっても無理。
一応王族のルカが更生したら、2億ポイント。
中級天使の亜門が墜ちたら、1億ポイント。
双方最初は打算ずくめだったけれど、恋をしてしまう。
結末は、ハピエン。
ルカは、天使のような悪魔。
そんなルカを母親は、期待はしていないけど、愛してはいたみたい。
亜門は悪魔のような天使で、生活力が高い。
こういう笑えるパターン、小中先生は凄く上手。
始めは軽いお話かと思ってました。
天使を落としてポイント獲得して魔界へ帰ると。
まあ失敗するだろうけどと。
だけど最後まで読んだら…。
泣けて泣けて何度鼻をかんだか。
生きることや生きる意味、誰かを愛すること、その人の役に立ちたいと思えること、本当の幸せとは何か?
亜門の彼氏ぶりがわざとらしいのに、流可がどんどん惚れちゃって。たまに剥がれる亜門の仮面。
流可は最初のうちは素直になれずツンツンしてたのが、本当に亜門に会うのが楽しくて、会いたくなって。
亜門が本当はどんな目的でいたか、自分のことをどう思ってるか聞いてしまい…。
そこからが流可の成長の見どころというか、全然軽い話じゃなかった。
家族同然の執事たちをどうやって守るか。亜門のためにどう生きるか。
嫌われてるのにそこまで考えて、泣けるよ〜。
そして最後だと決めて亜門に会いに行き、最後まで告げる流可。これでもうお終い。
そしたら亜門は…。
少しは予想してたけど、予想以上でした!
そうして人間界でずっと一緒に生きることになりました。めでたしめでたし。
にゃんこの流可も普段の素直で天然なのもとっても良かったです。
腹黒天使に夢だったとか、これが普通だと言われたら何でもしちゃうおバカな可愛い元魔族の王子でした。
ワケあって人間界にいる悪魔王子の流可。
1億ポイント貯めれば魔界に戻れるけれど、2年間で溜まったのはたったの95万……。
そこで付き人達に「天使の亜門を惚れさせ堕天させたら8500万ポイントが稼げる!」とそそのかされ、一発奮起することになるのだけど……というやつです。
このポイントの稼ぎ方というのが、まず面白かった。
天使は人間を更生させればポイントが貯まり、対する悪魔は人間を堕落させればポイントが貯まるんです。
魔界では引きこもりで、付き人三人に甘やかされて育ったので、流可は対人スキルがゼロ。
だから人間を堕落させるといっても、バイトを無断欠勤させるとか、子供達に放課後買い食いさせるとかそんな程度。
おまけに「キス」という言葉すら口ごもってしまうようなおぼこい子。
だから亜門をメロメロにし堕天させろ!と言われても、近所の裏山すら登った事がない人にエベレスト単独登頂目指せ!と言うようなもんで……。
案の定、ド直球で交際を申し込んでしまい、鼻であしらわれるかと思いきやすんなり交際OK、おまけに恋人となった亜門は超〜優しい。
着々とポイントがたまって最初は流可も喜んでいたけれど、いつしか亜門を好きになってしまい、亜門が堕天したら良くて天界追放、最悪死刑になってしまうという事に改めて気づき……
「好き」とか「愛してる」と言った時点で負け確定・勝負終わりなので、これは両思い確定でしょ!という状況なのに、必死で愛の言葉を言うまい、言わせまいとしてるところがキュンとしました。
私は流可と付き人達とのやり取りがすっごく好き。
「流可様は、顔しか良く無いですけど、腹芸のできないアホっ子キャラが魅力なんです!」と励ましてみたり、「ケツを掘ったり掘られたりする日も、そう遠くはありませんよ!」と喜んでみたり……
………言い方!!
亜門はさほど腹黒策士には思えなかったなぁ。
(タイトルで腹黒予告をされていたこともあり、心構えをして読んだせいか予想範囲内の腹黒で済んでホッ。)
そして流可のピュアっぷりときたら……!
なんなの、この子、かわいすぎる……!
結果的には無自覚小悪魔みたいになってるんだけど、そのせいで亜門がちょいちょいペースを狂わされているところに萌えました。
腹黒中級天使である攻め様と、魔界の女王を母に猫妖精を父とする、魔力や階級としては微妙な立ち位置だけど、第一子ではある魔界の第一王子の受け様。
攻め様亜門は更正保護官としてポイントを貯め出世して上級天使を目指していて、受け様の琉可は次期王として母親に認められるポイントを貯める為、人間界で出会う訳で。
流可は天使である亜門を落とすことができれば高ポイントゲットになるので、落とす気満々で恋人として付き合いだすのですが、ここですぐに私は思いましたよ。
コレ、亜門だって同じ事考えてるよね…。どうして気付かないの、流可ちゃん。
しっかり者の執事であるダミアン達まで、ホントに思いつかなかったの?
流可ちゃんかわいさの親バカ加減でまわらなかったのかしら。
ともかく、まったくの初心で素直で相手を疑うって事を知らない流可ちゃんは、おバカではあるのですが、それがどんどんかわいくいじらしくみえてきてとってもかわいい。
亜門は初めは本当に顔はにっこり笑顔でも、心の中じゃせせら笑ってんだろうなぁ、と思わせてくれる一筋縄ではいかないいけ好かない野郎だったんですが、流可ちゃんの素直さやかわいらしさに触れていくにつれ、どんどん本当に落とされていきながらも、でも認めたくない、と葛藤してるのであろう様がみれて、にまにまでした。
流可に嫌われる為だろうけど、亜門が流可ちゃんに悪態をついてるところでは、いくらなんでも言い過ぎじゃない?とグーパンチを繰り出したくなりました。
それでも、初めて恋を知る事ができて楽しい時間をくれた亜門の為にって流可ちゃんが出した結論は、潔くてアッパレ。
相手が自分を好きじゃなくても自分の好きな気持ちは変わりないし大事にしたいっていうのはなかなかに難しい事でもあると思うので、流可ちゃんって本当に自分を偽らないいい子だなぁ。
2度目の、想いを通じ合った後でのえっち。
何にも知らない流可に嘘八百な事を吹き込んで、それを「知ってるし」とやろうと頑張っちゃう流可のかわいらしさを堪能しちゃう亜門に、コイツめー、と腹黒天使ぶりを見ました!!
腹黒な天使×素直でおバカな悪魔という珍しい組み合わせ。
受けのことを騙すつもりが逆に本気になっちゃう攻めという展開は大好きなのですが、もうちょっと攻めザマァな展開が良かったです。
嘘だとは分かりましたが、傷付けられた受けが可哀想で、攻めにムカムカしました。
受けは素直で可愛いですが、悪魔なのに猫耳尻尾で発言までニャァニャァ言ってたのはちょっと。。
好みが分かれそうですね。
ハッピーエンドで良かったのに、なんだか釈然としないような不思議な読後感です。