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表題作名前も知らず恋に落ちた話

渋谷昌宗・建築現場監理技術者・34歳
宮脇克実・建築設計事務所チーフアシスタント・31歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

週末になったら、名前しか知らないあの男にまた会える――若き建築デザイナーの宮脇克実(みやわきかつみ)の趣味は、誰ともつるまず独りバイクで山を走ること。ある日、同じスクランブラーに乗る男・マサムネと出会い意気投合! 一緒に山を疾走できれば、本名も仕事も知らなくていい――逢瀬にも似た週末のツーリングに、克実は夢中になっていく。ところが、克実が手掛ける建設現場で偶然再会してしまい!? ※口絵・イラスト収録あり

作品情報

作品名
名前も知らず恋に落ちた話
著者
水原とほる 
イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
ISBN
9784199009143
4

(74)

(32)

萌々

(20)

(17)

中立

(2)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
15
得点
293
評価数
74
平均
4 / 5
神率
43.2%

レビュー投稿数15

一周回って超王道

読み終えた後、とても幸せな気持ちになりました。
思いを寄せる相手に同じ思いを返してもらえる幸せを、二人からおすそ分けしてもらったみたいな感じ。

これは仕事に打ち込み余暇も楽しむ大人の男たちのお話です。
30代同士、かたやガテン系、共にバイカー。男臭い要素しかないにもかかわらず、二人の関係は単なる友情と表現するには不似合いなほどとてもピュアで綺麗。 透明感のあるyocoさんのイラストがぴったりでした。

共通の趣味のバイクで顔見知りになったマサムネとカツミ。
出会うまで一人で走ることをポリシーとしてきた二人は、流れで一緒に走ってみると存外相性が良いことがわかって、週末ごとに山麓にあるカフェで落ち合うようになります。お互い下の名前しか知らず、相手の仕事も家族のことすらも知らない間柄であっても、充実した時間が共有できればいい。ある週末、マサムネの誘いでキャンプに出たカツミは、その日を境にマサムネを本格的に意識し始めるようになっていきます。

30年ちょっと生きてきて、初めて同性に恋に似た感情を抱き、それを素直に受け入れていくカツミが純真すぎて、可愛かったです。風貌はワイルドなのに紳士的で包容力のあるマサムネの言動にもキュンキュンさせられて、二人が意識して恋情を抑制しているのが明らかになってくるほど、当事者以上にトキメキが炸裂…。

マサムネとカツミが信頼を少しずつ与え合っていく一つ一つのシーンが印象的でした。
カフェ「レッド・フォックス」で朝食を摂るシーン、
キャンプでの夕食のシーン、
バイクショップで買い物をしたあとのトルコ料理と夜景、
マサムネがつくるキノコのパスタや高野山の宿坊での精進料理、
その夜の一コマなどなど。
食べるシーンばかりですね笑
エッチじゃないのにドキドキした入浴シーンもあったり、他にもたくさん好きなシーンがありました。

もちろん、彼らの仕事に対する姿勢、将来のヴィジョンを見据えていくところも、恋愛とはまた別の軸として描かれています。恋と仕事、ほぼ均等に配分された描写のバランスに大人を感じました。

過去に恋愛で辛い思いをしてきた二人が自然に惹かれ合った相手がたまたま同性だっただけ。人を好きになるのに性別は関係ないなんて、散々語り尽くされてきたのに、このお話の二人からはそんな今さらなメッセージがストレートに届きました。これまでたくさんのBL作品を描いてこられた作家さんだからこそ説得力があるのだと思います。

穏やかで希望を感じさせてくれる素敵なストーリーなので、落ち着いた大人の恋を愛でたい時にぜひおすすめしたいです。

17

今年度初の神評価作品★

作家さん&タイトル買い。
水原とほるワールドにどっぷりハマってしまい今作もワクワクと読み始め。
あとがきにもありましたが、今年のテイストは少し違うようで
人間じゃないものは出てこず、仕事の話を深く掘り下げてあったりと
そういうのが全くなく。
大人の。男性同士の。純粋な恋物語でした。
本当に小さな映画館で上映される映画を観た気分です。

下調べを入念にされるのか、作品の主体となるものを凄く詳しく書かれるので
今作のバイクに関するお話もしっかりと描写されていて
本当にリアルな2人の関係を盗み見してるような気分でした笑。
受けさんの克実の仕事に対する誠実さ・バイクにかける情熱・男としてのプライド
どれもこれも好感が持てるキャラで。
対する攻めさんの昌宗のキャラも、硬派で真っ直ぐで男らしい野性味溢れるかっこよさで。
だからこそ、克実のような一見スパダリにもなれそうなキャラを
それはもう、すんごい包容力で包むことが出来るんですよね~。
そして最後の最後、めっちゃ幸せそうな2人にやられ…。

強いて言えば、もう少し昌宗側の心理描写が欲しかったな…と。
片方視点のみだと、どうしても相手側の気持ちが分からないので
少しモヤモヤですが…
それでも心からオススメしたい満足出来る1冊でした★

13

もっと二人の物語を読みたい。水原先生お願いします。

読みながら何度も何度も悶えました。ただ、惜しいのはドイツに研修に行ってからが駆け足だったような気がします。まあ、行く前に良く話し合った大人な二人だから心配なかったんでしょうけれども。出来るなら帰国してからの2人の甘々な生活が読みたかった。続編望むのは野暮かもしれないけど、ぜひぜひまた読みたいです。また、読みながらニヤニヤしたい。yaco先生のイラストも素敵でした。けして厚い本じゃないのに、何度も同じ場面を読み直して楽しみました。

7

男性同士というツボ

男同士じゃないとできない距離の縮め方があると思うんです。
この作品には「それ、女性でもいいよね」となり得ない「男性だから」という必然性が散りばめられています。そこが好きな人にはたまらなく魅力的な、いわゆるツボを気持ちよく押してくれるような心地良い作品でした。

まず、改造バイクというテーマが男性的です。「スクランブラーはオンロードバイクを改造したオフロードにも対応できるバイクだ」という序盤の一文からは主人公である克己君のバイクへの愛がだくだくと流れ込んできます。趣味を超えて自分のライフワークとしてのバイクを大切にしている姿がとても自然体です。一人でも十分楽しく過ごしているし、知らず知らず30代の落ち着きも出てきてしまった。そんな彼が大好きなバイクを通して同じくらい大切な人を見つけていくこの1冊の過程には、派手さは無いけれども、彼にしか描けない人生の感動があります。

克己くんの視点で物語は進みます。それを通して見ていくと彼はとてもアンテナが鋭くて、小さなことに感動できる心豊かな人なんだなーと気付かされます。キーポイントとなるカフェ「レッド・フォックス」の描写もそう。男性客が多いワイルドな雰囲気のお店なんですが、はっきり言って女性が好む場所ではなさそうなんです。でも彼の視点からはそこの居心地の良さや、アットホームな雰囲気がたくさん伝わってくる。良いものを良いと感じられる心を持つカツミくんが、マサムネくんに対して高評価を重ねていき、憧れが滴っていく感じも癖になります。

さらに、好きなシーンの一つが、二人でキャンプへ行くところです。これも友達の段階で二人きりでキャンプへ行って一つ屋根の下で一夜を過ごすって、男女ではハードルが高いと思います。でも、男同士のバイク友達であればすごく自然なことのように思えてくる。そうして自然的に発するイベントの中で、恋愛感情に発するイレギュラーなイベントが重なり、二人の関係性が複雑で彩り豊かなものになっていく。最終的に一冊を通してどこまで行っても「この二人だからこうなった」という必然性を貫き通しているところが最高に気持ち良いんです。

仕事が上手くいかない所も、それだけ彼らが一生懸命に仕事をしているからこそ抱える葛藤だと感じました。そうした人間の弱さは、一見格好悪そうでも、実はすごく格好良いと思いますし、きちんと自分たちで乗り越えていく姿には男らしさも感じます。

会話はそれほど多くなく、物語は淡々と進んでいくように思えますが、そこからもお互いへの信頼感や安心感がじんわり伝わってきて、飽きることはありませんでした。yocoさんの挿絵も素敵。ライダースジャケット姿が最高です。シンプルだけど、上質で洗練されていて気付けばとても充足感を感じさせてくれる良作でした。

6

男同士ならではの素敵な恋

イラスト買いしてしまった作品です。
カバー絵も口絵も透明感のある美しさで飾っておきたいようなイラストでした。

大人の男二人の恋愛がとても素敵に思いました。

趣味が同じというだけで名前も背景も知らない人とだんだん親しくなり
恋愛感情を持つようになる二人の男たちの仕事や日常が描かれています。

気の合う仲間から友情そして恋愛に変化していく二人の感情の変化が丁寧に描かれていてどんどん引き込まれていきました。

仕事で失敗して落ち込むことがあっても頑張って立ち上がり、趣味で憂さを晴らし、好きな人ができて悩んだり迷ったりしながら、たまにおいしいものを食べてほっとする。
そんなところは男も女も変わらないなと思いました。
そして、同性愛者ではないのにいつしか同性に想いを抱き、男が好きなんじゃなくてたまたま好きになったのが男だったという気持ちが伝わってくるお話でした。

バイクには興味がありませんでしたがツーリングにちょっと憧れました。

3

この作品が収納されている本棚

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