イラスト入り
傍にいられること以上に、もう何も望まない――。
COLDシリーズが大好きで、発売日を指折り数えて待っていました。
フェア小冊子やペーパーなど、今では手に入らないものもたくさん盛り込まれていて、本当に嬉しいです。
「COLD HEART in NEW YORK」の秋沢・楠田のその後をメインに、透と藤島の短編、久萬が秋沢のマネージャーになったいきさつなど、COLDシリーズの登場人物たちの日常のエピソードも描かれ、彼らの世界にたっぷり浸ることができました。
秋沢とやり直そうと決めたときの楠田の心の内が丁寧に描かれています。楠田が自分から秋沢に指先だけ触れてきたのは、秋沢を許したからと思っていたのですが、そんな簡単なものではありませんでした。関係を終わりにするつもりでいたのに、秋沢に会い、また抱き合えるようになりたいと思ってしまったなんて。ごめんと言ってくる秋沢を切り捨てられない楠田は、お人好しで愚かで可愛いと思いました。
長い月日をかけて恋人同士になる過程をやり直す二人が、切なく、微笑ましいです。
そして二人が公私とも良きパートナーになっていく数々のエピソードが、読んでいて楽しかったです。
久萬が秋沢のマネージャーになったいきさつも、とても面白かったです。
若いのに秋沢のわがままにひるまず、直球な助言ができる久萬はただ者ではないと思っていましたが、苦労人だったのですね。秋沢の父・沼田がイラストで初めて出てきたのですが、渋くて素敵で驚きました。
透と藤島の話が、やはり一番好きです。
楠田のブルックリンの新居を訪ねた帰り道、透と夕暮れの橋を渡りながら藤島が心の中でつぶやく言葉が強く心に響きました。「どれだけ体を重ねても、交わりあったように見えても理解し合えない部分がある。違う人間なんだと思わされる。」完全には理解しえないその寂しさがあるから恋愛は続いていくのだと、あらためて気づかされます。相手を自分の体の延長のように錯覚し、思い通りにしようとすれば、昔の秋沢のように相手を傷つけてしまうのでしょう。恋愛の機微を繊細にすくい取る藤島をとても美しいと思いました。
書下ろしでは、透が仕事の忙しい藤島を心配して、自分より長生きしないといけないんだから体は大事にしろ、という場面があるのですが、透の寂しさが滲んでいて切なくなりました。
藤島はたぶん10歳以上秋沢より年上なので、二組のカップルは恋愛の形も見える景色も違うのでしょう。そんな違いも感じながら、これからの4人を想像するのが楽しいような寂しいような気がします。
愛することについていろいろと考えさせてくれたCOLDシリーズ。FINALの余韻からしばらく離れられそうにもありません。
ここの所、木原さんのお話は「怖い怖い」と戦くか「残酷……でもこれがリアル」と打ちのめされるかのどちらかでした。今日、このお話を読み終えて「あたしが読みたかったのはこれだーっ!」と狂喜乱舞しております。やはり私は救済が欲しい。私も含めてダメな奴でも、今の状況も含めて困った状況でも変えることが出来ると思いたい。
COLDシリーズの総集編。透と藤島は各巻の間の番外編、秋沢と楠田は本編終了後に楠田が秋沢と再び関係を結べる様になるまでの同人誌掲載作、それと麻生ミツ晃さんの『あとがきマンガ』も収録されています。物語自体は、今までこのお話に振り回されて来た姐さま方がご存じの通り。未読の方は第一作『COLD SLEEP』からお読みください(長いですが、夢中になってしまうこと請け合います)。
この本の帯に『すべての人が幸せになるCOLDシリーズ感動の最終巻!』とあるんですが、これを読んで「幸せって何だろうな」と考えてしまいました。藤島も楠田も、あんな事やこんな事が起きる前にだって幸せがあったはず。で、物語終了時の幸せには、ものすごい『苦さ』が含まれている様に思うのですよ。
それでも「どちらかを選べ」と言われたら「『苦い幸せ』を選びたいなぁ」と思っている自分がいます。決定的な失敗をしてしまっても、それは回復出来るものだと思いますし(思いたいですし)、もしも過去がフラッシュバックしても、回復できた記憶があれば再びそれに立ち向かえると思うので。
そういう私の思いを肯定してくれるお話でした。
最後に、冒頭に書いたことをもう少し。
木原さんの書くお話は、私のマイノリティ意識を大層突くのですが、ここの所、登場人物達がその異端さ故に失意のまま終わってしまうお話を続けて読んでしまっていたんですね。
でも、私が木原さんのお話の醍醐味だと思っているのは、異端な人々が、あるいは絶対這い上がれない様な不幸のどん底にいる人達が、あるいはKing of カス野郎が、木原さんのとんでもない筆力で「えいっ!」とばかりに、幸せを見出したり愛すべき人になってしまう所なのです。
木原さんは物語世界の無慈悲な『運命の女神』であるのと同時に、星の光を振りまく魔法の杖を持った『良い魔法使い』だと思っています。
今回のご本は、そういう木原さんの本領を発揮したシリーズのまとめ編で、私の様な読者に対するとても素敵なプレゼントでした。
『COLD』シリーズの完結編。
今まで刊行されていた同人誌や特典をまとめた1冊なので既読の作品もあったりしましたが、木原先生もインタビューで答えていらっしゃいましたが時系列通りに並べての収録になっているので非常に読みやすく、また手に入れていなかった部分もまとめて読めてとても嬉しかった。その分、本の厚さもすごい。非常に読み応えのある1冊でした。
内容としては『COLD SLEEP』、『COLD LIGHT』そして『COLD FEVER』の小話が収録されていたりしますが、基本的には『COLD HEART』のその後の秋沢と楠田の話がベースになっています。本編とは異なった視点で描かれているシーンも多く、本編の補足という面も備えている1冊かと思います。
さて。
秋沢という男は、個人的にすごく嫌いな男性です。
自分の思い通りにならないと癇癪を起こし、仕事はドタキャンする、挙句の果ての楠田へのあの外道な仕打ち。彼は、人として大切な「何か」を持ち合わせていない。
そんな秋沢が、楠田の想いを通して、やっと人として成長を始めた、という感じ。
そして、そんな秋沢の変化を知り、彼への想いをきちんと再認識した、秋沢×楠田の恋のやり直し、が描かれていました。
正直、楠田が秋沢を受け入れ始めたとき、ジェシカと同じ気持ちになった。
なぜ、そんな男を受け入れるのか。
けれどそれが恋というものなんだろうな。
正しいことだけがすべてではないし、感情論だけで片付けられるものでもない。
秋沢に触れることすらできなかった楠田が、長い時間をかけて秋沢を受け入れていった過程も、そしてあの粗暴な男が楠田を優先し、大切にし続けた、という過程も非常に良かった。
『COLD』シリーズは、萌える・萌えない、というレベルをはるかに超越している。
愛するということは。
そんな壮大なテーマを、時にきつい描写で、けれど細やかで繊細な描写で綴られている。
シリーズを通してずっと痛い展開に終始した『COLD』シリーズですが、『COLD THE FINAL』は痛い展開はなし。甘い空気で満ちている。過去の壮絶な彼らを知っているからこそ、この作品に漂うこの甘い空気に非常に癒されました。
甘いだけではない。
優しいだけではない。
人の持つ、「ブラック」な面をきちんと描き切るからこそ見えてくる「人のやさしさ」とか「愛情」というものの本質がくっきりと、そして鮮やかに魅せる。そんな木原先生の魅力がたっぷり詰まった作品でした。
完結編、というタイトル通り、この作品を読まなければ『COLD』シリーズは完結しない。麻生さんの描かれた挿絵も含めて、非常に素晴らしい、神作品でした。
秋沢~( ;∀;)
私は彼にどうしても肩入れしてしまうのです。
だから、思いが通じてやり直せて良かったね( ;∀;)と。
彼の成長物語でもあり、ラスト本当にアカデミー賞授賞式実際に観ている臨場感がありました。
もう一人で(;・∀・)スタンディングオベーションです。
透と藤島さんの二人にも安心です。
温泉旅行含めてまた二人の想いでアルバムが綴られていくんだな~と。
色々余韻に浸ってます。
こうやってまとめて下さるの本当にありがたいです!
まだまだ柿の木になってでもずっと彼らを見守っていたいくらいです。
あ~これで本当に彼らとお別れなんですね・・・名残惜しい。
いうまでもなく麻生ミツ晃先生のイラストも素敵でした。
素敵な物語をありがとうございました!
透と藤島はともかく、秋沢と楠田のその後が気になってました。
が、同人誌等集めるのも難しく諦めていたところの今作。
読めて嬉しすぎる…( ;∀;)
木原先生と出版社に感謝です!!
「COLD HEART in NEW YORK」で一応秋沢を受け入れたとはいえあの状態からどう進めていくのか、季節が変わりつつじっくりと描かれていくんです。
楠田の秋沢への気持ちが変化し、秋沢を受け入れようとしてもフラッシュバックしたりと、受けた傷の深さから簡単にはいかない。
そんな楠田の様子を見た秋沢の反応が、以前の秋沢だったら無い反応だろうなと思い、そんな秋沢の成長が嬉しいが切なく悲しく痛々しかったです。
2人が身体をまた繋げられるようなる場面では、涙ぐみそうになりました。
秋沢×楠田のお話が殆どですが、透×藤島のお話もあります。
そして2cp揃って、楠田宅でバーベキューするお話もあります。
このお話で、あ〜秋沢はやっぱり秋沢かと、ある意味安心した感じでした(笑)
COLDシリーズは好きだけどモヤモヤが残っていたのが、今作で見事に無くなりました。
同人誌等再録ですが、お話の流れに無理は無いし非常に綺麗にまとまっていると思います。
個人的に、神評価を連打したい作品でした。