イラスト入り
「小説b-Boy2009年12月号」掲載作品を電子化したものになります。
10年近く前の作品になりますが、古さと言うのは全然感じませんでした。
で、こちら「弟と兄、禁忌の妄執愛」と、兄弟もの好きとしては何とも惹かれて仕方ない内容紹介なんですけど。
強い背徳感に、背筋が寒くなるほどの執着、そして、それでもなお抑えきれない、もう情念とも言うべき思い。
内容としてはかなりシリアスなのですが、強く求め合う二人の姿に、すごく心を打たれて。
そう、例え神罰が下ってもですよ!!
100Pちょっとと少ないページ数ながら、大変読み応えがありました。
内容ですが、村での儀式で元服を迎える弟・悠河×東京でパラリーガルとして働く兄・朝人による義兄弟ものです。
閉鎖的な村で神事を司る家系に生まれた朝人。
同性愛で勘当された彼は、現在東京でパラリーガルとして働いています。
そんな中、元服の儀式で身内として重要な役割を担当して欲しいと、17才になった弟・悠河が突然訪ねて来ます。
上司まで巻き込んで周到にお膳立てされた実家への帰省に、様々な想いを抱く朝人ですがー・・・と言ったものです。
元々、長男として神社を継ぐ事を疑っても無かった朝人。
しかし、好きな同級生に抱かれている所を見られ、更にその相手にも裏切られた事から、故郷での居場所を無くしてしまったー。
そんな彼が8年ぶりに会った弟・遥河。
一途に自分を慕い、また離れていた事を寂しがる彼に、兄として愛しさと救いを感じるんですよね。
しかし、遥河が自身に向ける想いは、弟としての範疇を越えているように感じ始め、恐怖を覚えるようになり・・・と言った流れなんですけど。
で、こちら、舞台設定がお上手なんですよね。
古い因習が残る閉鎖的な村ー。
こう、より背徳感だったり、罪悪感が盛り上がると言いますか。
遥河がですね、とにかく一途なのです。
こう、強すぎる想いから、執着ぶりが暴走しちゃう部分はあるのですけど。
ただただ朝人を求め続けるその姿に、何だか胸が締め付けられるんですよね。
また、そんな遥河の強すぎる想いに、恐れと同時に愛しさを感じる朝人。
拒みきれず寝てしまった彼が感じる、強い罪悪感。
そして、遥河の事を思うが故の、後悔ー。
このへんがかなりしっかり書き込まれてまして、もう兄弟もの好きとしては滾って仕方なかったりする。
で、更に萌えさせてくれるのが、読み進めるうちに分かる意外などんでん返しだったりします。
終始、弟に追い詰められてゆく朝人の視点で書かれているのです。
当然、読者としては弟の強い執着ぶりが印象付けられる。
が、終盤で分かってくる、とある事実。
あれ、よりヤバいのはこっちじゃないの・・・?みたいな。
個人的に、こういうオチが好きで好きで仕方ないんですけど!!
ラストがですね、ハッピーエンドとは言えないのですが、二人にとっては幸せだと思うんですよね。
辛くても、共に居られる事が彼等にとっては重要なんじゃないかなぁと。
例え神様に背いても、止まれないのが愛なんだろうなぁ。
朝人が気の毒ではありますが、背徳感に悶えながらも、この愛を貫いて欲しいです。
梨とりこ先生の挿絵目当てで購入(ho〇toさん)。挿絵はカラーの表紙1とモノクロ3でした。2009年の作品当時のものではないかと推測しています(今の梨とりこ先生のとりこ絵より鋭い感じの顔なので)。兄弟もの王道!と思ったので萌にしました。ho〇toさんでは挿絵コミで本文90Pほど。
丸の内のオフィス街でパラリーガルをしている朝人。ある日出勤すると、奈良の吉野の山奥、天隠村に住む叔父から電話があり「弟が18歳になり、元服式を迎える。ついては烏帽子親になってほしい」と言われます。8年前に村を出て断絶状態だった朝人は一旦断ったのですが、数日後に突然その弟が村から訪ねてきて・・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
受けの同級生(くず)、叔父、村人少々。
**以下は内容に触れる感想
天女みたいな顔しているらしい受けさんに攻めさんが執着する様子を「安珍と清姫」を引き合いに出して書かれていました。あの鐘に巻き付いて焼き殺しちゃうってやつ。
異母兄弟とは言え、神社の神職を継ぐ予定の弟ちゃんだし、閉鎖的な村だし、もう大変、無理無理って感じです。そんな様子だったので清姫よろしく必死に執着してきた弟の姿で、兄が自分の気持ちに目覚めていくところは、ちょっとホッとしました。これ以上二人が離れていてもロクな事ないだろうなと思うので。
兄弟ものがお好きな方にはたまらないだろうと思うセツない路線のお話でした。