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エキスパートレビューアー2025

女性renachiさん

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ある意味現実的なファンタジー

設定が興味深い作品だった。霊獣の性質や生死に関する思想が独特。ファンタジーだけど、勧善懲悪でなくままならなさに現実味があり、良く言えば地に足がついてる感じ。終盤の先祖たちには泣かされた。あの二人の物語も読んでみたい。

主人公は国を追放されたミフル。といっても偽の許可証で国内に住み、家族のような存在もいるし、毎年母の命日にはイザークが会いに来る。精神的な辛さはあっても、それなりの生活はできており、悲壮感はあまりない。

追放に関しては、ミフルが自己完結的に仕方ないと言い聞かせているだけで、国側の扱いは軽い。元凶である王は、今までもこれからも変わらず権力者で在り続ける。あんな不快な人物として描いておいて、最後までノーダメージなんてモヤる。

イザークはいつかミフルを連れ戻すために地位を固めたのかな。元から左宰相家の人間なので、のし上がった感は薄いのが残念。宮殿内で畏怖されているらしいが、そこは具体的なエピソードで見たかった。子供時代に大暴れする話がとても好き。

BL的には最初からイザークの想いは丸見えで、反発していたミフルがドキドキし始めてから動き出すのが分かりやすい。ミフルの中で、真っ直ぐ相手を見れるようになれば、遅かれ早かれという位置にイザークはずっといたってことかな。

王妃の夢という鍵はありつつ、先が見えないストーリーで、最後まで引き込まれた。エルハムとナシールと、イザークとミフル。夢のような運命に感動していたら、最後にまとめるように「人なんてそんなもの」と言い、現実も見せてくる。

傲慢な権力者がのさばり続けるのもそうだし、歴史の修正に触れてみたりと、絶妙なバランスで現実感がある。真面目な作品という印象が残った。
苦手だったのは、説明文の回りくどさと要約になっていない確認セリフ。ストーリーはスッキリしないながらも面白かった。

分かりやすい義兄が可愛い

嫌われ悪役が前世の記憶を取り戻し、更生?した姿で周囲を驚かせながらBLするお話。もはや定番になったテンプレで、序盤で婚約破棄されるのもお約束。ラファエルの分かりやすさが可愛くて良かった。

傍若無人であったユリウスは、前世の記憶を取り戻した瞬間からコロっと変わり、常識人のように振る舞い始める。二つの人格が同居してるはずが、性格は全面的に前世の自分で、ユリウスの記憶を持つ別人のよう。少々違和感を覚えるが、そういうもの、という暗黙の了解なのかな。

ラファエルは恋に落ちるのも早いし、反応は初々しいしで、笑ってしまった。ユリウスの変化に戸惑う様子をラファエル視点で読んでみたい。顔が好きだと言われて刺さりまくってる義兄ちょっと面白い。監禁願望も、相手がユリウス限定なら病み感ゼロに思える不思議。

ストーリーはユリウスが冤罪に次ぐ冤罪をかけられ、もどかしい。転生・回帰系作品でよく見る、流行り病と薬のマッチポンプや令嬢の自作自演等、お決まりのエピソードが満載。衆人環視のプロポーズは、ユリウスのあほのこぶりに笑った。

気になったのは、心理描写の文章表現にバリエーションが乏しいこと。気楽に読める一方、物足りなさも感じる。逆に内面の分からないラファエルは、ユリウス視点で伝わるくらいあからさまな反応で、好感度がぐんぐん上がっていった。

読後に表紙を見ると、大量の鳥かごにおぉ、となる。ユリウスを閉じ込めたいラファエルの執着心の発露は、コミカルに描写されており、何の不安もない明るいハピエンだったと思える。ティモも可愛く、最後まで楽しく読めた。

どうしようもなさがとてもリアル

衝撃的な始まりからどうなることかと思ったら、読み終わるころには最初の衝撃など忘れてしまうほどに、杉浦のことで頭がいっぱいになっていた。実は三者視点で語られる杉浦充の物語だったんだろうか。ラストはめちゃくちゃ泣いた。

「秘密Ⅰ」は啓太視点で、冷凍庫に殺した死体が、という驚きの展開。でも決定的な場面になると描写が曖昧になり、啓太が本当に殺人犯なのか、確信が持てないまま緊張感を持って話が進む。

で、その秘密が暴かれるタイミングは、ギリギリを超えて行き過ぎてからのように見え、このラインを超えられるのが木原さんのすごいとこだと個人的に思う。充のように、人並みの社会生活が難しいキャラを多く生み出すのもすごいが。

「秘密Ⅱ」は充の従兄弟の榎本視点の過去話。杉浦家が崩壊していく様子と、充が自立するまでが描かれており、それぞれのどうしようもなさがとてもリアルに伝わってくる。辛すぎるお話で、充と啓太が五年経っても続いていることが唯一の救い。

「秘密Ⅲ」は充の弟視点。樹は父親の価値観を色濃く受け継いでいるようで、充と素直に話ができる日が来るとは思えない。ただ、最後の描写から、まだ残っていた良心が間接的に見えたのはとても良かった。

通して見ると波乱万丈な人生を送っている充は、純粋な心根がずっと変わっていないように思える。啓太のためなら、どんなことでも成し遂げるであろう愛の重さは怖くもあるが、啓太が道を踏み外さない限り大丈夫という安心感がある。

警察騒動後、啓太の妄想癖がどうなったのか分からないけど、充のおかげでこちらも安定したのかな。最後の最後で嬉しくて焦る充が見れて、心地良い読後感。幸せの予感に浸れる余韻がとても良かった。泣いた。

どうしようもないもどかしさ

四編構成・四者視点の一冊。最初の二編でハッピーな結末かと思いきや、わだかまりを残しながらも一緒にいたいという話になり、モヤモヤの残る終わり方。ただ、これ以上の追求は藪蛇感があり、どうしようもないもどかしさがあった。

ノンケ男が同性の部下に告白されるところから始まるお話。有田は過去の経験から元々ゲイへのマイナス感情があり、だからこそ広瀬を過度に気にして心を乱され、絆されていったと思う。自身の恋心に気付く描写は秀逸。

その後、広瀬視点に移り謎の四角関係になり、あんなに遠回りするとは思わなかった。それにしても、川上と磯貝は出向先の社内で何度修羅場ってるのか、外でやれと笑った。有田との関係は、結局広瀬の頑張り次第なとこが切ない。

三編目は広瀬の弟視点で、兄カップルを別れさせようと画策するお話。この誤解は物語が終わっても解けることはなく、有田の中で広瀬は浮気二股男のまま。それでも良いと心を決めるのは感動的だけど、辛い気持ちは読後も残る。

でも有田が真実を知るってことは、広瀬の家族が自分たちの仲を裂こうとした事実を突きつけられるということで、それはそれであっさり別れを選んでしまいそうな気がする。どうしようもないこの現実は、ひたすらに同情を禁じ得ない。

気持ちはどちらも重いけど、二人の関係がどうなるかは、広瀬の行動にかかっているのかな。この先の二人の話も読んでみたいと思った。

ヒトの愛執は恐ろしいという話

雰囲気から、どろっとした因習村ホラーかと思ったら、恐ろしいのはヒトの愛執だったという話。変わった形の再会ものでもあるのかな。最後に明かされた小田牧村の歪みの元凶がとても良かった。あっちもこっちも執着執着ですごい。

十年前に行方不明になった幼なじみに、異界で再会するところから始まる。舞台となる小田牧村は、閉鎖的で不気味で、読んでいると気分が落ち込んでくる。児童婚や独断的裁判といった、リアルで笑えない設定がキツい。

救いは柊に絶対的な安心感があること。柊の生い立ちは切なく、夏生しか見えなくなったまま発展しない村に閉じ込められて、想いがそのままなのが良い。夏生には何も求めずそのままを愛し、一人で全てをやってのける執念。

夏生の方は、突然異界に来て頼れるのは柊しかおらず、特殊な状況下で緊張状態に置かれたわけで、柊に好意を抱くのは必然かと思う。なので巻末短編にて、その後も気持ちが続いている姿を見られてほっとした。

おだまき様を零番目とする種明かしを見ると、n番目の柊も同程度の執着心を持っているように思える。だとすれば村一つを永遠に歪ませるレベルの執着ということで、柊が闇落ちしなくて本当に良かった。まあ通常状態でも十分怖いが。

よく分からなかったのは、過去のループ時のことが夏生の記憶として再生される理由。夏生の脳内でなく挿話のような形だったら、並行世界の説明にすんなり納得できた気がする。こういう超然的な理解が必要そうな事象は苦手。

また、二つの世界の時間差にループが関係しているのかと思ったが、そんなこともないようで。無駄に五年や1.5倍という数字の意味を考えてしまった。

こういうループものは他にあっても、その舞台が和風の因習村という作品は初めて読んだかも。最後に村のからくりが明かされ、スッキリできて良かった。

女の執念がホラーだった話

面白いけどめちゃくちゃ怖い。しかも怖さの方向性が、前世の女の怨念というドロドロ系。月子が消えてからがやっと有村と深見のBL本番なのでは?と思っていたら終わってしまった。この先をもう少し読みたかったな。

前半は、初対面から執着を見せる深見の異常さが気になるものの、有村との仲が深まっていく様子が描かれており、微笑ましく読める。だが徐々に雲行きがあやしくなり、深見に恐怖を覚え始める。

情緒不安定で、有村の目に“狂乱”と映るほどの行動に出た深見は、その後も手作り弁当で牽制したり、有村がもらった菓子を粉砕したりと暴走しまくり。こうした行動のどこまでが月子との同調で、どこまで月子の影響を受けていたんだろう。

深見は月子と自分は同じと言い、有村は月子のせいで深見が変わったと言う。前者は本人としての実感で、後者はそうであって欲しいという願いだったのかな。最終的には、まあいいかでヤンデレ深見を受け入れる有村も、立派な盲目状態。

なんとなく、深見は多少の異常さを見せつけることで、この先も有村を縛っておきやすくなる気がする。心配させた方が有村が深見の傍にいたいと思う気持ちを強くさせられそう。

いろんな方向に怖いエピソードが詰まっており、心臓に悪いお話。思い返せば岩崎が癒やしだったかもしれない。

えぇ……こんな社長はイヤかも

実兄と義弟が次男を取り合う三角関係のお話。正直、三輪のことは早々にどうでもよくなり、唯一まともに見えた梓馬が気になって読んでいた。が、途中で京にドン引きしてしまって。京は摂子とくっついたら良かったんじゃないかな。

三輪はふらふらし過ぎで、呆れるしかない主人公。同意でも無理矢理にでも、抱かれればその相手のことを好きになっていく。仕事もせず全盲になる将来への備えもせず、屋敷内のことは家政婦任せで毎日何をしているんだろう。

目が見えなくなっていく病気を利用して三輪を閉じ込めた京は胸糞だが、そういうキャラなので仕方ない。ただ、三輪を支配する方法をSM嬢に指南してもらい、その通りにやっていたのが最高にダサい。

これがヘタレキャラなら可愛いと思えるが、犯罪に手を染めている傲慢社長が、素人セックスコンサルの言いなりだったなんて冷める。しかも誰にも言えなかった本音を初めて吐露した相手が摂子。京には摂子の犬役ルートもあったのでは。

梓馬は直情的で短気なとこはありつつ、一度目の失敗をいかし、心から迫っていく姿勢が良い。くつくつ笑ってヤってるシーンばかりの京より魅力が分かりやすいのもあって、応援したくなるキャラだった。

最終的に三輪が出した答えは、優柔不断な三輪らしい結論。とはいえ、あまりに都合の良すぎる告白を繰り出す三輪に唖然とする。綺麗事にまみれたセリフでなく、欲望に正直な醜い言葉が欲しい場面だった。
全体のストーリーは嫌いじゃないけど、主人公の行く末に興味を持てない作品だった。

途中でガラっと景色が変わる

設定が凝ってる作品だと思った。加えて途中で180度ガラっと景色が変わる面白さ。飽きさせないストーリー展開でとても良かった。ただ、楽しむより考えてしまう場面の方が多かったかもしれない。

“処女執事”の設定は、なんとも悪趣味。遺伝子操作で作られ施設で育ち、18歳になれば記憶を消去し、主人を登録して出荷される。自我を持ち人として生きているが、主人第一主義なのは作り物の感情という。

だが己裕は主人を失っても生きたいと願ったり、追加処理の話もあったりと、遺伝子云々の己裕の認識に違和感が強まっていった。これについては後にサイがただの洗脳だと、思っていた内容を言ってくれて腑に落ちたが、訂正までが長くずっと気になりながら読んでいた。不要なとこでも遺伝子連呼してた気がする。

尊厳を徹底的に貶め、己裕から人としての感情を引き出すサイ。目的は分かっても、後の告白を聞くと、そこまで想っていた相手によくあんな仕打ちができたもんだと驚く。最短で結果が出る手段を取ったのか、他の感情も混じってたのか。

中盤で善と悪が入れ替わり、人や事象への印象が変わっていく展開は面白かった。処女執事利用の抜け穴や悪用方法も納得。過去が分かると、サイの執念が見えて泣ける。のし上がる人生全てが己裕につながっている。

終わり方は、この形にするなら意味があって欲しかった。メインキャラの記憶喪失の扱いは大事なとこだと思う、私は。思い出さないまま終わるのも意図的なら良かったのに、助長だからという理由で収録外SSで思い出させるのにガッカリした。

傲慢攻めが弱々受けを強姦して始まる耽美小説かと思ったら、一味も二味も違う方向に進んでいった作品。読み返すとまた違ったものが見えてきそうだと思った。

閉じられた世界に入っていく二人

子を拾う大人と拾われた子供のBL。アレックスはノエルを喰うために拾ったのか、拾ってから喰いたくなったのかが気になっていたが、最後のオチでそんなことは気にならなくなってしまった。どっちもどっちだったという話。

日本に異常な執着を見せるアレックスは、犬猫を拾うように子供を自分のものにして、ノエルと名付ける。ノエルを傍に置き続けるために、倫理観がおかしかったり自分に都合の良い言い訳をしたりと、危ういほど入れ込んでいるのが分かる。

そこには狂気があるのかもしれないが、アレックスが明るく堂々としていたおかげか、闇や病みの気配は感じなかった。舞台が戦後だからというのもあるのかも、なんでもアリの雰囲気っていう。

ノエルはあの出来事の後、部屋に閉じこもって何を考えていたんだろう。後から未熟さのためと綺麗にまとめてたけど、裏がありそうにも思えてしまう。肝心なところでアレックス視点に移り、ノエルの内面が見えなくなるのがもどかしい。

婚約者の存在一つであっさりくっついたのは少々物足りなかったが、何もなくても結果は同じだっただろうし、たぶん重要なのはその後のノエル。アレックスと出会った際のノエルの年齢を考えると、すごいというか怖い。なんて強かな。

ラストは閉じられた世界にしっとりと入っていく二人。晴れやかにも感じる共依存。この時代背景と独特の空気がとても良かった。

二人きりの楽園を築いたお話

妖しさ満点のダークな雰囲気を最後まで保ち、一直線に二人だけの世界を作り上げて終わっていった。第三者がオチを語ることで、二人がより一層遠くに行ってしまったように感じる。この独特の読後感がとても好き。

下男の学は酷い境遇ではあるが、自己防衛がしっかり働いており、学視点で語られる光景に辛い描写は少ない。マゾヒストの自覚は本音かどうか分からないけど、こうした性質もまた悲壮感を失くしてくれる一つの要素で、ダメージを避ける精神構造が徹底している印象。

裕太郎は病み具合が露になるにつれ、怖くてゾクゾクする。学の何がそんなに?という疑問への答えが本人から語られることはなく、取り返しのつかないことが起こりそうで起こらない、いや実は起こっているかも、という緊迫感が良い。

主人と下男の立場もあり、裕太郎に流されていく学の心理描写は、感情の起伏が乏しくどこか他人事のよう。これについては、最初に学は自我が無く従順で愚鈍と書かれていたので、伏線になっているとは途中まで気付かなかった。

不気味な謎をいくつも残しながら、二人だけが幸せなエンディング。その後の裕太郎視点の「楽園へ」は、心の欠けた部分が見えるようでちょっと切ない。そしてここで終わり?と戸惑っているところで、「葵の手紙」という種明かし。学の状態に納得し、裕太郎の生い立ちから推察される理由に泣く。

曖昧なままにされたのは、学視点で描くわけにいかないところで、知らぬが仏ってやつなのかな。とあるシーンの棺桶はなぜ三つ?ってのはとても気になるが。そんなまさかね……。

この二人は、出会わなければ二人ともずっと一人の世界で生きていたんじゃないかと思う、精神的な意味で。お互いの内側に入れるのはお互いだけ、という二人が、現実世界でも二人きりの楽園を築いたお話。ツボにハマる作品だった。