バイ限定の恋愛リアリティショーに参加した者同士の恋を描いたお話。
誰とも恋愛をするつもりはなかったけれど、頼まれてサクラとして番組に出演することになったトワ。
バイではなくゲイで他の参加者と性指向が違うということもあり、ただ"サクラとして"の役割を果たそうと思っていたはずなのに。
そこで出会った南に少しずつ心が動いていく、というような展開でした。
わりと序盤でサクッと流れるようにセックスまで進むので、ある程度先は見えていましたが
恋リア番組らしく他の人との関わり合いもある中で、少しずつ距離が縮まりやがて核心に辿り着くまでを見守る楽しさがありました。
ただ、それぞれの重たい過去をもう少ししっかり知りたかったな。という感じです。
過去の恋愛でツラい思いをし、それぞれ違う種類の傷を抱えた彼らがお互いを知って心を通わせていく様子はすごく素敵だったのに
過去のことがさらっとしか紹介されていないのでその痛みがわかりにくくて…。
トワの元彼も結局何がしたかったの?みたいな中途半端さがあり、過去の感情とのバランスがちょっと気になりました。
重たさに沿ったふたりの気持ちを知ることができたらもう少しお話自体の印象は変わったかも。
登場人物は多めですが、わちゃわちゃしたところがほぼ無いのはとても読みやすかったです。
いつもほんわかあたたかい気持ちにさせてもらうことが多い月村先生の作品。
yoco先生も大好きなので迷うことなく手に取ったのだけど…
これは思わぬところでだいぶ抉られたなーという印象です。
もう、律の母の言動すべてがムリ。
少しずつふたりの距離が近付いていく様子にドキドキしたり、わりとわかりやすく倫太朗にモーションをかけられても律には響いていない感じにヤキモキしたりと倫太朗と律の恋模様にはキュンとするところがたっぷり。
健児くんの若さあふれる真っ直ぐな感情表現もすごく良かったし、健児くん含めていい関係性を築いていく未来を予感していたくらい素敵だったのに。
律の母親の登場によってこれまでとは印象の違うお話になってしまった感覚でした。
ただただ甘い恋のお話ではなくピリッと痛みのある展開が良いスパイスになっているのは間違いないんですが、あまりにも酷い毒親っぷりにどうしたらいいのかわからなくなります…。
あんな親のもとで幼い頃から自分を押し殺して生きてきた律が不憫すぎて、そして大人になってからもその繋がりから逃れられないでいるなんて、救いようがなさすぎる。
この先何があっても母親の考え方は変わることはないだろうに
倫太朗が母親へ優しくしたり律に歩み寄りを提案したのもものすごくモヤっとして、
ふたりの幸せな着地点までそのモヤモヤを引きずってしまった感じです。
ふたりの恋だけを見ればものすごく良かったのですが、すんなり飲み込むのが難しいお話でした。
ふたりの関係性だけを見れば、
演劇をキッカケに知り合って距離が近付いていく大学生同士の恋愛模様を描いたストーリーに受け取れるお話だけれど、
あらすじにもあるように『ロマンティック・アセクシャル』という大きなテーマがあるので
読み手としても"BLとして"ではない部分で考えるところがあるなと感じた作品でした。
メンタルがボロボロのときに古葉の演技に魅了されて、いわば勢いで演劇サークルに入った末永ですが。
演劇を観て最初に感じた熱を失わずに、いろいろなことを吸収しながら成長していく末永の姿がすごく眩しくて。
時には後ろ向きになったり凹んだりもするけれど、その傍らにはいつも古葉がいてさらっとプラスになる言葉をかけてくれるので
末永の気持ちが古葉に向かうのはとても自然な流れだったなと思います。
古葉の恋愛的指向を理解したうえで彼を好きになって、そして古葉もまた末永に惹かれて晴れてお付き合いすることになるけれど
やはり性的な接触についての問題は恋人同士には切り離せないもので、目を背けたままではいられない場面がきてしまうわけです。
お互いがお互いを思い遣るあまりに距離が生まれるのが本当に切なかったけれど、でもすれ違うのも仕方ないなと思ったりもして…
ふたり同じ気持ちでいるのに『付き合うこと』の意味を求めるような苦しさに何度も胸を締め付けられました。
でも末永は一生懸命言葉を紡いで、過去の悲しい恋に縛られている古葉へ自分たちなりの"好き"を大切にしていこうと届けてくれるのです。
その想いを受け取った古葉とふたりそろって幸せなところに無事に着地してくれて感動…!
涙ボロボロでビシッと決めきれない末永の年下感にほんわかしつつ、
この先も彼ららしいお付き合いを続けていくんだろうなとほっこりしました。
ふんわり優しく進むふたりの関係のなかに、
恋愛的指向というのは様々で、"普通"の中で生きづらい思いをしている人がたくさんいるんだよなぁ。と改めて気付かされるような深いストーリーだったなと思いました。
冒頭からすでに切ない恋の予感を匂わせていたので
タイムリープした先の過去でも幸せが待っているとは限らないな、と覚悟しながら。
彼らはどんな運命を辿るのかを見届けるべく、ものすごくドキドキしながら読み進めました。
ニューヨークにいる由弦のもとに突然現れた絢人の
突拍子のない発言に戸惑いながらも
すんなりタイムリープすることを決めた時点では
『恋をしない』ことを決めていた由弦でしたが。
惹かれる気持ちを努力で止めることなんてできないほどの引力で心が奪われていくわけです。
抗えば抗うほどに深く絡んでいく縁を目の当たりにして、
ふたりが出会ったことは運命だったのだなと感じたのでした。
結局そこから同じような道を辿って別れもまた訪れてしまうので
タイムリープした意味は…?などと思ったりもしましたが
謎だった絢人がストーリーを繋ぐ鍵のような存在になっていて、
慧太と由弦だけではなく絢人の心までが救われる展開になっていて良かったです。
途中の流れだけ見ていれば
別れない道を選ぶために動けばいいのでは?と
感じたところもあったけれど
「やり直せない過去」を経て違う未来を掴んだことに意味があったのだなと感じられるラストにじんわり感動。
そして。ぜひ絢人にも幸せな道をあげてほしいなと思いました。
表紙のふたり、これまでと違って
ちょっと恋人な雰囲気出てない…?
そしてこの帯!ド直球な告白キタ!!
と、手に取ってひとり大興奮(笑)
でも内容は安定のダーク&ヘビーで、もちろん甘さは控えめ。
ただそんな中にも光が見える展開になっていた4巻でした。
ぐちゃドロに重たすぎる執着を向けてくる洋二への拒絶は前巻あたりで少し薄れていた陸ですが
洋二の言動に"裏"が見えないところが増えてきたことで、冷えていたその心に少しずつ熱が戻っていくのがわかります。
手放しで信じることはできないけれど
柔らかく笑う洋二の笑顔に揺さぶられたあたりでもう、陸は自分の気持ちと向き合う覚悟ができていたのではないかなと思いました。
このままの流れでお互いに歩み寄ればグッと距離が縮まるか…?というところで、
またしてもふたりの仲を搔き回す例の奴が登場。
洋二パパの愛人だったからきっと洋二にも色目を使うんだろうなーと思っていたら案の定で、
想像以上に生々しい誘惑は不快を通り越していっそ清々しいほどだったけれど。
それをしっかり利用して復讐にかかる洋二の華麗な策士っぷり、お見事でした。
そして。
あんな場所でセックスして大丈夫か?というところからの、ド直球告白っ…!たまらんすぎる…。
それに応えた陸の言葉からはふたりがこれまで歪んだ関係だったことが伝わってきてちょっぴり切なかったけれど、
それと同時に本当は洋二を求めていた陸の本心がしっかり見えていたのがすごく良かったです。
次巻がラストになるかもとのことなのでどういうところに着地するか予想しつつ、楽しみに待ちたいと思います。
クラート推しなので彼のソロ表紙に歓喜。
この憂いを帯びた表情、本当にたまらん…!
などと思いながら読み始めました。
4巻はそんな彼のソロ表紙に相応しく、
クラートの気持ちや過去をたくさん知ることができる内容となっています。
帯に「悲しい悪魔の愛の証明」とある通り
彼の意地悪キャラの裏に秘めていた『真実』が明かされていて、その真実を知るほどに切ない展開に…。
これまで時折見せてきたクラートの悲しげな表情も思い出されて、何度も胸がギュッとなりました。
それを知って改めて思い返してみると、
幼い頃のあの健気さがさっぱり消えるはずないもんな…。と、妙に納得。
謎だったスーリとの関係も判明してスッキリしたものの、この先への不安もまた募ったのでした…。
いつも面倒くさそうに投げやりに、あえて冷たく意地悪に接してきたクラートの本当の想い。
彼はメロルを大切に想うからこそ、自分の気持ちを伝えることはないのでしょうが…
ウィルに対する『恋心』を取り戻す前に、メロルがどうかクラートの愛に気が付いてくれますように…!と願わずにはいられません。
とはいえ王子役を決めるための「恋人ごっこ」はまだ続いているし、ウィルとメロルの期間限定同棲も始まったので
またそれぞれの心が揺れ動く展開が続くのだろうなと思います。
演技でもプライベートでも恋人っぽいやり取りを重ねる中で、今現在の気持ちと向き合うふたりにどんな変化があるのか…
温かく見守りたいと思いながらもクラートのことを考えると、やっぱり複雑ですね…。
ものすごくぐるぐるしてしまうくらい、強く引き込まれた今巻。
作品自体の印象も変わったかもしれません。
様々なことがわかってきてもまだ先が読めない展開は続いていますが、ハラハラしつつ次巻も楽しみに待ちたいと思います。
透明感のある表紙に惹かれ、
そして笑顔の藍の涙の美しさに一目惚れしての購入でした。
不穏な空気あふれる帯の言葉にぎょっとして
遺作って…もしかして…??と、身構えてしまったけれどそれはなんとも切ない比喩表現で。
かつての思い出をなぞり、輝きを取り戻したいと願いながら終わりへ向かう。
そんな柳の役者としての最後の炎を撮りながら
藍自身に再び情熱が戻っていくその姿に胸を打たれました。
時間をかけながら妥協無しで"遺作"を撮影していく様子に引き込まれつつ。
でも『すっかり燃え尽きてしまうため』だった
柳の気持ちは少しずつ変化していって、やがてふたりの日々には終わりが訪れるわけです。
藍はそうなるとはじめからわかっていた上で
柳のことを撮り続けていたのがなんとも切なかったけれど
でもそれ以上に強い想いが伝わってきたので、
どんな結末を迎えてもしっかり受け止めようと思わせてくれる展開だったなと思います。
そして。
ふたりで作り上げた作品が柳の背中を押して
藍とも役者としての自分とも向き合えるようになり、最終的には幸せなところに着地してくれたことにものすごく救われたのでした。
世間では「失踪中」となっていた柳だけれど、
ふたりを迎えてくれた人たちがそこには触れずにいてくれた温かさもめちゃくちゃ沁みました。
そういうところ含めて、映像として観てみたい作品だったなと思いました。
彩東先生の最新作がとても刺さったので
過去作も読みたくて購入。
テンポの良さはやっぱりすごく好みだったし
謎だった久世の言動の意味がわかっていく様子にも引き込まれるところがあって、
真那也が義兄と向き合ってからは久世も少しずつ過去の彼らしさを取り戻していくところにはドキドキしたけれど…
シリアスなトーンで進むストーリーにそれぞれのキャラがなんとなくハマりきっていない感じがして、盛り上がりを維持できずに読み終えてしまったような印象です。
過去の明るかった真那也をどうしても取り戻してあげたかったという久世の、愛あふれる振る舞いの数々は素敵だったけれども
まるでもうこの世にはいないかのような言い方をしていたのは引っかかってしまったし
義兄と顔を合わせた後もなお、自分の手の内を真那也に明かさなかったこともなんだか謎でした。
あのまま真那也が好きにならなかったらどうするつもりだったんだろう…。
家出して隠れるように暮らしていた真那也だけども彼自身の"暗さ"はそれほど伝わらず、
バチバチに義兄を恨んでいるわりには実は決着を望んでいて、なんとも古風な怪文書を送っていたのも「うーん??」という感じ。
両親のお墓参りのためにひとり故郷に戻ったこともあるとか、もう誰かに会いたくて仕方ないよね?みたいなツッコミ不可避でした。
理解不能なことは起こらないけれどなんだか引っかかるなぁ。みたいな、
グッと盛り上がったときにちょいちょい「あれっ?」と思うところが差し込まれていたのが気になってしまった作品でした。
こちらを読むにあたり前巻を読み返して
卒業ライブのとこでめっちゃくちゃに滾り、
その熱量のまま読み始めたのですが…
前巻に比べると"ふたりのお話"感は薄かったかなという印象です。
実家訪問というと恋人たちにとっては
一大イベント的な立ち位置にあるエピソードだと思うのだけど、わりとあっさりしていてさらっと過ぎてしまったことにちょっぴり物足りなさを感じました。
それこそ前巻終わりにこの話題を持ってきていたくらいだったので、
優希の家族と凉との関係性が変わるような部分があるのかな?と期待してしまったんですよね。
せっかく両親との初顔合わせだったのだから
家族にバレるかもしれないシチュエーションでのセックスよりも
家族にもう一歩踏み込んでいくところが欲しかったです。
そして、マキさんのストーカーかも?な客とのエピソードではフロレゾン側の対応にちょいちょいモヤるところがあり、これってふたりに関係あるのかな…?と思ってしまったりして。
もうとっくに辞めている凉に声を掛けること自体納得いかなかったし
優希の提案だって普通なら断るべきだよな、と。
わざわざトラブルに巻き込むようなことをお願いして結果警察沙汰にまでなってしまうなんて。
それぞれに思うところがあったのもわかるんですけどね…
あまりに考えが浅すぎたのではないかなと思ってしまいました。
ふたりの関係がとても良好なのはわかるし、
それぞれの心の動きを追いながら日々過ごす幸せはしっかり伝わってきてほっこりするところもたくさんあったけれど、
それ以上に気になるところが多くて
キュンとしたりモヤっとしたりを繰り返していた感じの『beat 2』でした。
10年ぶりの再会を果たしても
周の感情には"喜び"が感じられなかった時点で
切ない展開になりそうなのが伝わり、
その先をある程度覚悟して読み進められたところはありましたが。
覚悟していてもツラい、心が痛い…。そんなエピソードはかりで、どこまでいっても誰も救われないことが本当に苦しかったです。
というか、紗知の命を繋ぐために優しいようで残酷な言動を取る橘をどうしても理解できなくて
モヤモヤしてしまった感じです。
彼が真っ直ぐな人なのはわかります。
ただただ『紗知が元気になる』ことを願い続ける優しいお兄ちゃんなだけだし、
生きる希望を渡してあげたいと考える優しさはあたたかいと思う。
でも。だからといって人の気持ちを操っていい理由にはならないと思うんですよ。
そんなことをしても誰も幸せになれないと少し考えればわかることなのに。
ひとつの可能性を前に周りが見えなくなってしまう様子がなんだか痛々しくて悲しくなりました。
結局紗知には周の本当の気持ちや橘が根回ししたことだとバレていて病気の彼女を苦しめるし、
そんな拗れた関係のまま亡くなってしまうし。
良かれと思ってやっていたことは逆に紗知を苦しめたのでは?という別れがツラすぎましたね…。
なので亡くなってからふたりがくっつくのも
どういう気持ちで受け止めていいのかわかりませんでした。
ストーリーにはグイグイ引き込まれたけれど、
なんだか胸に引っかかるところが多すぎて…
すんなり飲み込むのが難しいお話でした。