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女性ぶーすけさん

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坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとは限らない

 竹書房の日セールに合わせて作家買いしました。表紙や愛人契約という言葉に胸を踊らせながら読みました。

 絵を愛している亮と絵を愛せない澤との物語でしたが、絵を題材にしているだけあって絵画や画材の名前がいろいろ出てきます。
 本作で美術の知識が全然ないことが発覚した私は、日本画には岩絵の具が使われることやイーゼルという名称すら分かってなかったので、知らない用語が出てくるたびにネットで検索する始末でした。

 亮は小さい頃から日本画家の祖父に絵を教わったり中退とはいえ美大にも通っていたので、澤に才能を買われるだけの実力があったのでしょう。あと、澤に拾われてからいくつもの作品と向き合いながら複製画を描いてきた経験が亮のさらなる技術向上に繋がったのだと思います。
 正直、作中で二十歳の亮が早くも祖父を超えたと自覚しているところで何ともいえない気持ちになりましたが、努力や経験だけではどうにもできないほど素質が必要な世界だし、才能に年齢は関係ないのでこれが世の現実なのでしょう。
 本作はとにかく絵と向き合う場面が多く、生みの苦しみというものをこれでもかというほど感じさせられ、また、自分が全く絵を描かないからなのか、絵描きが苦悩する姿にかっこよさや色気を感じたので、支えてあげたくなるパトロンの気持ちも共感できました。

 全体的に芸術面は丁寧に描写されていたと思います。ただ、個人的にくどく感じながら読んでいたのもあって見落としたのかもしれませんが、肝心の恋愛面というか亮の心情があまり理解できませんでした。
 愛人契約で澤と肉体関係を持ったあたりは楽しんで読んでいたんです。さすがは吉原とほる先生、澤みたいな乱暴な男を書くのはお手のものだなと改めて感じたりしていました。
 絵を好きじゃないと言うわりには絵に対する的確なアドバイスをくれるので、亮が澤の過去に興味を持つのは分かります。でも同性愛者ではない上に、痛いのは嫌だとあれほど抱かれるのが苦痛だったはずの亮は、いつの間に澤に恋愛感情を抱いたのでしょう。
 ただ単に私がその過程を見落としたのかもしれませんが、気づけば亮は澤を好きになっていて、澤の過去を知ってから澤のために絵を描いていたので、あまり共感できないまま絵を描く苦しみの場面が連続していく展開に読むのが少しつらかったです。
 体を重ねるたびに情が移ったと考えるのが一番なんでしょうけど、金や絵を続けるために抱かれるしかない絶望的な状況を正当化するために好きになったのでは……とも考えてしまいます。ストックホルム症候群のようなものと言えばいいんでしょうか。まあ澤はあくまで契約を持ちかけただけなので決して犯罪者ではないんですけどね。
 そもそも祖父が亡くなった後に土地や家屋を売ろうとする祖母に強く反対し、そのわりに絵を捨てることもせずに不況の中で生活が困窮していく亮の考えの甘さもどうかと思います。これを言ったら物語は始まらないのは分かっていますが、澤が現れなかったら亮と祖母はどうなっていたのでしょう。
 小橋も脅迫まがいな発言で亮に関係を迫るような外道のわりには、拒絶されたのに展覧会で金賞に亮の作品を推薦したりとややご都合主義な感じを見受けられました。

 澤の過去も、亮を埠頭へ連れていった場面で何となく察しがついていましたが、父のせいで絵を憎まずにはいられなくなる心情は理解できました。
 それでも生まれ育った環境によって皮肉にも絵を見る目は磨かれていき、商売道具でしかないはずの絵を憎みきれずにいる澤の葛藤は良かったです。
 個人的には澤視点の方が物語を楽しめたかもしれません。

 終盤で澤の「おまえは、おまえの絵を描けばいい。俺は、おまえの絵が好きだ」で不覚にもキュンとしたので萌評価にしたかったのですが、モヤモヤする部分があったのと、絵を描きあげるまでの生みの苦しみの描写を読むのが結構つらかったので中立評価にさせてもらいます。
 私は絵を描かないのでこういう評価になりましたが、絵が好きな方は楽しめる作品かもしれません。

全ての出来事は必要な試練である

 近親BLを求めて購入しました。沙野風結子先生の作品を読んだのは久しぶりでしたが、素敵な作家さんだなと本作で改めて感じました。
 あとがきで本作が改稿作品であることを知りましたが、タイトルは今回の「月を食べて恋をする」の方がロマンチックで好きです。
 ネタバレを見てから本編を読むのは本当にもったいないので、未読の方は読まない方がいいと思います。

 本作の感想をひと言で表すなら、とにかく苦しかったです。
 恵多に感情移入しすぎたのか、恵多と同様に章介の一挙一動に心を乱されたり、水面や性が引き金の発作の場面ではこちらまで頭痛や吐き気を催しそうになりました。
 このお話で一番厄介なのは、恵多の記憶が一部欠如していることです。記憶があれば物語が成立しないのは分かっていますが、これのせいで煮え切らない態度の章介と胡散臭い須藤との板ばさみになっていく恵多にかなりハラハラさせられました。
 第二に厄介だったのは章介です。章介は記憶や発作など恵多の不安定な心にしっかり寄り添えているようには見えないのに、そのわりには恵多のことを束縛して恋愛感情があるようにも見えたので、ただ単に恵多のことを好きだけど血縁関係だから叔父と甥としての距離を保っているのだと思っていましたが、恵多と須藤が接近してからは章介の不穏な話が出てくるわ本人がそれを否定しないわで、話が進むほどに章介の人物像が謎めいて混乱しました。
 だからこそ須藤の狡猾さがふんだんに発揮されていたように思います。
 本当は彼が悪者なんだろうなと分かっていながらも、章介と比べたら須藤の方が親身な対応だし恵多の恋人だったかもしれないし……とアパートから恵多を連れ出したあたりから金目当てなのが丸出しになるまで、須藤はヤンデレ気質の当て馬とばかり思っていました。
 恵多早く逃げて! と思った時にはもう手遅れで、恵多が心身ともに弱っていくのが本当につらくて、私も須藤を殺す以外に解決策はないだろうなと思いながら事態を見守りました。

 物語の終盤を迎えてようやく様々な重苦しい真相が明らかになるのですが、蓄積されたモヤモヤが晴れるとともに推理小説の謎が解明された時のような爽快感がありました。
 とはいえ、章介の行動が不可解だった理由が分かると、理性的な行動も衝動的な行動も全て恵多を愛しているからこそだったんだなと合点がいくので切なくなります。次に本作を再読する時は絶対に章介に感情移入すると思うので、さらに苦しくなりそうです。
 恵多と恋人で、兄(恵多の父)に関係が知られ、猛反対され、二人の今後を話しあうために密会している間に兄が事故にあって、そのことで恵多が自責の念にかられて、あげくの果てに階段から転落した恵多は章介のことだけを忘れて……。
 これだけのことがあれば、章介が恵多にあいまいな態度をとってしまうのは当然だと思います。記憶がない方が恵多は罪悪感から解放されるし、叔父と愛しあう以外のまっとうな人生を生きられるかもしれないと思うと言えませんよね。でも、頭では理解しているのに、愛する恵多を手離せない章介が切なくて萌えました。
 恵多は恵多で記憶がない代わりに発作に苦しめられていましたが、水面は父の事故死、性は章介との許されない恋といった形で封印された記憶と結びついた無意識の罪悪感が発作を引き起こしており、章介との性行為で恵多が禁忌に対する罪悪感以上の恐怖を感じていた場面は、章介への想いが父を死に追いやったという潜在意識がそうさせたのだと思うとかなりつらいです。
 須藤に恋人だったと嘘をつかれようと、章介は悪者だとしつこく言われようと、それでも恵多は章介への恋愛感情を捨てられずに章介を守るために自分を犠牲にするところが、読後にふり返るとより感動します。
 記憶を失ってからの恵多は他の男女と恋愛できる機会が何度もあったのに、それでも章介に惹かれていました。章介は自分のことを好きになってもらおうとしたと自虐していましたが、記憶がなくても恵多自身の意思で章介を好きになったということは、章介との恋人時代は決して恵多にとって若さゆえの過ちだったわけではないことの証明になるのではないでしょうか。

 三年前だって、恵多も章介も恵多の父も誰も悪くなかったと思います。恵多の父の怒りは当然のことだし、むしろ章介を警察につき出さなかっただけ優しかったかもしれません。
 強いて言えば、章介が大人として自制するべきだったのかもしれませんが、恵多が須藤とキスした時に見せた絶望していた姿から恵多への本気度がよく伝わったので、公にできない関係とはいえ好きな人から恋愛感情を向けられたら気持ちを抑えられなくなるのは時間の問題だったと思います。
 恵多の父の死に対して恵多も章介も負い目を感じていますが、この三年間で二人は様々な苦しみを味わうという形で罰は充分受けたと思います。そして、それでも二人はこれからもずっと十字架を背負って生きていくのでしょう。
 しかし、お互いにとって苦しみを理解しあえるのも、幸せになれるのも、この二人でしか成り立たないことです。周りから祝福されない関係だと分かっていながらもお互いしか求めあえない二人だからこそ、これから先もずっと支えあいながら幸せになってほしいと思います。

 本作は官能的な場面以外に、性行為はしていなくても淫靡な空気をまとっている場面が多く、さらに小山田あみ先生の素晴らしい挿絵との相乗効果でドキドキしながら読みました。タイトルも表紙も物語の根幹を表現できていて素敵です。
 写真が欠けたアルバムや、ショースケ・ケータ呼びの音引き、恵多の左頬のえくぼなどの伏線回収もお見事で、章介はあの時どんな気持ちだったのかな、とついつい思いを馳せてしまいます。あとがきを読むと、さらに章介の恵多への本気度を知ることができて萌えました。
 苦しかったけれど、読んで損はない作品だと思います。

誰かにとっての救いは誰かにとっての絶望でもある

 作家買いなのと、yoco先生の素敵な表紙に惹かれました。
 いつものことながら犬飼のの先生の緻密な設定に感心させられ、特殊な世界観を楽しむことができました。
 ネタバレてんこ盛りな感想なので、未読の方はご注意ください。

 本作の舞台は、猫を守ったり救ったりした際に命を落とした人だけが死後に招かれるという天国の中にある猫の王国でしたが、こんな風に現世で何らかの徳を積んだ人が死後に何らかの形で報われる世界が本当にあったらいいのにな、と何度も思いました。死後の楽しみがあれば、現世はもっとがんばって生きようと思う人がたくさん増えそうですよね。
 あと、本作は映像化に向いているなと思いながら読んでいました。グラスソードやデートと称した跳躍シーンや戦闘シーン、そして何より猫耳や尻尾がついたキャラが動いているのを想像するだけで愛らしいです。

 中立評価にしましたが、由良が過去を改変するまでは神寄りの評価でした。
 生前の場面は辛かったけど、生前も死後も由良があれだけ執拗に貴洋にこだわっているのを見せられたので、イズミはおそらく貴洋だろうと思っていました。そうなると貴洋が由良より先に死んでいないと矛盾しますが、そこは犬飼先生の手腕で上手く納得させてくれるだろうと期待していました。
 なので、由良がイズミに惹かれながら二人の距離が縮まっていく過程に萌えていたのですが、全てを明かされてからではイズミが卑怯な人間という印象が強いです。
 素性を隠したまま望みが叶った通りにイズミとして由良に近づき、子孫繁栄の必要がない世界だから同性愛や同性同士で番になるのも普通のことだと刷り込み、由良から恋愛的な意味で慕われているのを確信してもなお、由良が過去を改変して貴洋の罪がなかったことにされるまで真実を話しませんでした。この一連の行動がどうしても保身に走っているようにしか見えません。
 結局由良のゲイ疑惑をでっち上げたのは誰だったのでしょう? 貴洋は普通でいたいから由良への恋愛感情を抑圧していたはずなので、そっちの方面で由良を吊し上げるのはおかしい気がするし、かといって他の誰かであれば自分も被害者として揶揄されている状況も耐えられないと思うし、由良が友達としか思ってないとゲイ疑惑を否定した直後に貴洋が友達とすら思ってないとわざわざ傷つけるようなことを言ったのも、愛憎なのか何なのかよく分かりません。
 由良が川で溺れた件だって、子供たちが猫を虐待したことはもちろん人としてありえませんが、貴洋が由良を呼び出して放置しなければ由良が死ぬことはなかったのです。それも由良から一方的に恋愛感情を向けられているのであれば、彼女といるところを見せつけるのは効果があると思いますが、友達としか思ってないと言った由良にこれをする意味とは一体……。
 貴洋は由良のことを家族を捨てて死ぬような人ではないと言っていましたが、極限まで追いつめられた人が衝動的に自殺という今まで考えたこともなかった選択をするのであって、普段の人柄なんて何の参考にもならないと思います。それを第三者の立場が思うならまだしも、本当に自殺に追いこんだ可能性があるかもしれない立場の貴洋がそう思うんだ……とガッカリしました。
 おそらく、遺族が由良の死の真相を知ったとしても、やっぱり貴洋を責めずにはいられなかったと思います。

 そして由良ですが、とにかく貴洋第一なところにあまり共感できませんでした。どんなにひどい扱いを受けてもあそこまで執着するなら、いっそのこと貴洋に恋している設定の方が納得できたのではないかと思います。
 過去改変の場面も、結果的に自分だけでなく貴洋の死に繋がってしまう人物だったとはいえ(でも由良はまだそのことを知らない)、猫を虐待した子供たちをクズ呼ばわりする由良に違和感がありました。
 猫の王国で騎士になるために猫の死と向き合ってきたからこそ沸き起こった憎悪なのだと思いますが、私からすれば貴洋もクズに等しい行為をしたと思っているので、子供たちには写真を撮ってデジタルタトゥーをちらつかせて脅した上にデータを消すことを失念したのに、一方で貴洋の所業は無条件で許して貴洋の罪を消すことで頭がいっぱいになっている態度の落差について行けなかったです。
 何より、過去改変の被害者は由良の家族だと思います。
 事実をねじ曲げた失踪なのに、家族は由良の悩みに全く気づけなかった自分を一生責め続けるのではないでしょうか。特に弟の紗良は全力で由良を引き止めなかったことを両親に責められたかもしれないし、これからずっと悔やみ続けるのかと思うと本当に気の毒です。
 由良の死に直面しないとはいえ、二度と姿を見せることのない由良の帰りを待つ人生は果たして家族の救いになるのでしょうか。私ならこちらも相当地獄だと思います。真実を知っているだけに、ただただ家族がかわいそうという思いしかありません。
 由良の望み通りに過去を改変して一番救われたのは貴洋です。貴洋の家族も加害者一家というレッテルはなくなりましたが、事故死だったはずの貴洋が謎の失踪に変わったので新たな苦しみがずっと続きます。改悪と言ってしまいたいほど貴洋本位なのに、そこまでのことをしておきながら友情しかないのはさすがに突っ込みたくなります。
 無自覚で好きだったわけでもなく頑なに親友の憧れと言い切りましたが、もしも猫の王国が同性愛が普通ではない世界だったら、同性愛を全く意識しない由良はイズミに恋しなかったという裏づけになるのでは? と思ってしまいました。せめて両片想いだったらまた別の見方ができたのかもしれません。

 辛口な感想になりましたが、どんな過ちを犯しても、何かしらの善行があれば天国に行ける可能性があるという希望を持たせてくれる作品です。
 納得できない部分はあるものの、小規模なセカイ系と解釈したら、まあそういうものなのかなと思いました。

温もりを知り、孤独を知る

 積読していたので本作の情報はきれいさっぱり忘れていましたが、読後に作品ページを確認してみて購入動機は教師×生徒とヤンデレだったことを思い出しました。
 ネタバレを見ずに読むことをおすすめしたいので、未読の方は読まない方がいいです。

 上記のようなことを書いておいてなんですが、情報ゼロの状態で一章を読み進めるのはなかなか辛かったです。なぜ陽斗が悪魔を呼び出したのかも分からなくて、物語に入り込むまでに時間がかかりました。
 時折回想を挟むので陽斗が松宮を好きになっていった過程は理解できましたが、天使や悪魔といった特殊設定や子供なのにかわいげがない沙帆の登場、そして何より松宮があまりにも陽斗に対して突き放すような態度だったので、いつまでも松宮にこだわる陽斗にまでモヤモヤしてしまいました。
 とはいえ一章の終わりで陽斗と松宮の関係性が分かって感激したので、話の構成としては間違っていなかったと思います。
 ただ、一章はページ数の三分の一以上を占めており、その一章の終わりまで(今思えば途中で松宮が陽斗にただならぬ想いを抱いているような描写はありました)核心にふれられないので、私のような察しが悪い読者にとってはそこに辿り着くまでが少々長すぎたかもしれません。
 でも松宮が恋をした相手が陽斗であることが分かった時は本当に感激しました。

 二章は陽斗の空白の過去編で、松宮と取引きを結んだ恋人関係だったことが明らかになります。
 やきもきしながら一章を読んだご褒美と思いながら二人の恋人としてのひと時を楽しんでいましたが、松宮は悪魔としての役目を果たすために陽斗に甘い言葉を囁いていたのが少し残念だし、松宮が陽斗に恋しているのを自覚してからは陽斗に本当の名前を呼ぶなと言ったり遠ざけ始めるので、結局切なかったです。
 寒いと感じることは寂しいことだと、そして寒くなくなるまでずっと一緒にいると言った陽斗に松宮は無自覚に恋をしますが、陽斗に近づく者全てに嫉妬する一面に萌えました。
 せっかく本格的に甘い関係になろうとしていたのに、陽斗を大事に想う松宮は悪魔としてあるまじき行動をとり、天使である沙帆の協力のもと陽斗の恋人期間の記憶を消すことで悪魔との取引きを強制解除し、陽斗の死後の魂が孤独にならないようにするのです。
 確か三章で、悪魔は前世の記憶がないと言っていたので、松宮にとっての記憶は松宮怜(人間)としての生活が全てと解釈して良さそうですよね。だから孤独だった松宮は、初めて温もり(愛)を与えてくれた陽斗に惹かれたのでしょう。温もりを知ったことで孤独の寒さが辛いことだと身をもって知ったからこそ、愛する陽斗に孤独になってほしくないと願うのは共感できます。
 陽斗との強制的な取引き解除は、悪魔である松宮にとって、これ以上ない愛ある行動だったと思います。しかし切ない。

 以下、本格的なネタバレ注意です。

 本作の疑問は、なぜ同僚の小原の告白には職場恋愛はしないという理由で断り、教え子である陽斗の告白(好きとは言ってないけど)は断らなかったのか。
 自分を好きだと言ってくれる相手なら魂を予約できる好機だと思いそうですが、祖父の一件を踏まえると「悪魔」とじゃないと成立しないんですかね。個人的には松宮が陽斗との時間を人生で一番心地よく感じていたからという説を希望します。
 もうひとつの疑問は、陽斗が記憶をなくした間は本当に取引き解除になっていたのか。
 陽斗は前々から松宮を好きだったので、記憶を消しても松宮への想いは消えてなかったし、松宮も陽斗との思い出の場所へ出向いて感傷に浸るほど陽斗を好きなままでした。
 甘い匂いは魂の腐敗臭だと言われていたけど、記憶を消したら陽斗の腐敗臭は消えていたのでしょうか。
 どんなに想い合っていたとしても、陽斗が松宮の悪魔の名前を忘れてさえいれば取引きは解除されていたと解釈しておきます。
 あと、猫(アザミ)は何者だったのか。私は最初猫が天使(北斗)だと思っていましたが、それは沙帆でした。
 悪魔には縄張りがあると言っていましたが、沙帆が陽斗の友達の妹という関係性を思うと天使にも縄張りが存在する可能性があります。なので猫は別の天使でもなさそうですが、かといってただの猫という風にも見えず、意味を含ませた存在に見えました。
 本作の神様と天使と悪魔は、神様>天使⇔悪魔のような位置付けでしょうか。神様と悪魔ではなく天使と悪魔が対極っぽかったですよね。
 タイトルは「神様の庭で廻る」なので、身も蓋もない言い方をすれば、陽斗も松宮も沙帆もしょせんは神様の手のひらの上で転がされているのでしょう。その神様とは一体。とても安易な考えですが、私は猫だと思っておきます。陽斗は神のご加護を受けているから死後も何とかなる……はさすがにご都合主義にも程がありますかね。
 余談というか願望ですが、北斗が最期に頼った悪魔が松宮の前世で、無意識に記憶を継承した松宮が無意識に陽斗へ近づいていたらおもしろいなと思いました。

 賛否ある終わり方でしたが、最善策がないまま終わったのが現実的で私は良かったと思います。
 むしろ死とは無縁の今が一番幸せなはずなので、現実逃避的な意味でも二人の甘々をもっと見せてほしかったです。
 松宮は陽斗が死ぬ前に自殺して取引き解除することが最善と思っているようですが、さすがに陽斗に気付かれるでしょう。
 沙帆は前世(北斗)の記憶の影響で陽斗を案じているので、沙帆が天使特有の短命でも来世でその記憶が引き継がれ、また陽斗の元へやって来て味方になってくれるような気がします。
 とにかく長生きしてほしい。ただそれだけです。

 おそらく二周目ありきの物語だと思うので、再読したら今よりも評価が高くなるのは間違いないです。
 しかし、あえて初見の感想として「萌」にさせてもらいました。
 少し期間をあけてから、陽斗と松宮の気持ちに寄り添いながら再読したいと思います。  

人の想いは永遠ではない

 作家買いです。海野幸先生はお気に入りの作家さんなので、楽しみはもう少し後に取っておこうと思っていましたが、我慢しきれずに読んでしまいました。
 途中からは想像以上に切なくて苦しくて何度も泣きましたが、すごくすごく良かったです。

 冒頭から朝陽の変人ぶりが際立っていて、度を越した昆虫好きであることと国吉のことが大好きであることが、たった数ページでこれでもかというほど伝わってきました。
 この二人は両想いじゃないの? と思わせるような朝陽と国吉のやり取りにニヤニヤさせられ、国吉は朝陽の昆虫を交えた独特な表現を瞬時に理解し、朝陽は昆虫好きであることを肯定してくれる国吉に堂々と「好きだ」と言い、それに対して国吉は平然とした態度で「知ってる」と返し、周囲にとっては日常の光景なので誰一人として突っ込みません。 
 ところが国吉は朝陽だけと親しくしているわけではなく、不特定多数の人たちにも分け隔てなく接します。趣味に熱中する人の話には興味深く耳を傾け、何かを相談されたら真剣に対応し、困っている人やポツンとしている人がいたら自ら声をかけるのです。
 誰もが自分は国吉にとっての特別ではないかと夢を見ますが、時が経てば国吉はただ誰にでも優しいだけという現実を目の当たりにします。朝陽もその内の一人です。
 だけど朝陽はそんな国吉を否定せず、同じクラスになった高二以来ずっと恋心を持ち続けていました。その国吉の優しさがなければ朝陽は孤独のままで、今の関係もなかったからです。
 高三でクラスが離れてから、自分から会いに行かない限り国吉と接点を持つことができなかった朝陽は、本来なら高校卒業を機に国吉をあきらめるつもりだったのに、国吉は朝陽と同じ大学を受験していたのです。しかも同じ学部なので、朝陽は国吉の近くにいるのに特別になれない切なさを大学生になっても感じ続けることになります。

 初見でも国吉はずるいなと思いましたが、国吉の事情を知った読後の今はさらにそう感じます。
 朝陽の恋愛感情に気付いていながら、特別扱いすることも突き放すこともしないなんて、いつまでも生殺し状態の朝陽が本当にかわいそうでした。想いには応えないけど、自分の振る舞いで朝陽の心を乱して、それでも朝陽に想われ続ける立場はさぞ心地よかったことでしょう。
 だから、国吉神社に現れた蝶が人の心を食べることを知った時、真っ先に朝陽の国吉への恋心を食べられたらいいのにと私は思ったのです。その後も朝陽の精一杯の遠回しの告白を受け流した時は特にそう思いました。
 いわゆる攻めザマァ展開になればいいと安易に考えていましたが、実際に朝陽の感情がなくなってしまうと想像以上に悲惨な展開でした。
 まず、朝陽が失ったのは恋心だけではありません。昆虫への興味関心までもが奪われたのです。朝陽の人生を彩ってきたものはなくなったのに記憶だけは残っていて、時が経つほどそれに苦しめられ、オスのセミは体内が空洞で、それがまさに自分のようだと揶揄する朝陽の姿が辛かったです。
 そんな朝陽に追い打ちをかけるのは国吉です。こちらは完全に自業自得ですが、朝陽が変わってから必死に追いかけます。でも朝陽には片想いで苦しんだ記憶がしっかり残っているので、国吉の変化や昆虫関連も含めて記憶と現実のギャップの大きさに戸惑いと苛立ちばかりが生じます。
 そこまで朝陽に執着するなら最初からもっと朝陽を大事にしなよ、と思ったのは私だけでなく朝陽もそうでした。
 まあ国吉も自業自得とはいえかなりかわいそうな目にあっていたので、この辺で朝陽を元に戻してあげてと思ったけど、海野先生は容赦しません。夏休み前から朝陽をどんどん心の死へ追いやって友人と疎遠にさせるし、国吉はいくら朝陽に拒絶されても毎日メールを送ったり家まで行くという献身的な姿を見せます。
 親の心配が深刻になってきた頃にようやく国吉が朝陽の部屋まで入り、そこで朝陽が感情を爆発させた場面はとても良かったです。
 国吉の過去や事情も、もっと前から朝陽に話しておけば良かったのにとは思ったものの、打算的だったり八方美人な部分や、それら全てを肯定してくれた朝陽のことを好きになり、恋人になれば別れがくるから友人のままで一生途切れない関係でいたいと臆病になるのも、どれも共感できました。
 海野先生の作品は両想いが確定するまで丁寧に書いてくれるので、それだけで心が満たされ、個人的に性描写はなくてもいいとすら思うのですが、本作の朝陽が元に戻ってからの性描写は結構好みでした。早く相手を自分のものにしたいという執着心が二人とも出ていたのが良かったです。
 その後の二人も上手くやっていけそうで安心しました。国吉はきっといい執着攻めになれそうです。

 朝陽が心を取り戻す場面は想像したらゾワッとしますが、何らかの「思い」を養分にしていた説は幻想的で素敵だなと思いました。
 作中で鬼の話が出てきましたが、私は妖怪とかの類いではなく、やっぱり蝶は国吉神社の御神体(縁結びの神様)だと思っています。
 朝陽は蝶を見つける前に御神木に触って国吉を想っていたので、それを神様が成就するように取り計らい、二人に試練を与えてくれたのではないだろうか。実際ああでもしないと朝陽と国吉は永遠に結ばれなかったと思います。
 蝶の数だけ誰かの恋が叶った、もしくは真の愛を見つけた、と思うとロマンチックです。

 お話だけでなく、Ciel先生の絵もどれも本当に素敵でした。
 電子ですが、あとがきの後の絵でさらに余韻に浸ることができていい演出だなと思いました。

 虫好きではないけれど、知らない虫が出てくるたびに怖いもの見たさでネットで検索するのをくり返したのですが、初回のモモチョッキリで早くも挫折しそうになりました。モモがつくから勝手にかわいいイメージを持っていた私が悪いのです。
 でも不思議と愛着がわいてきて、昆虫博物館に興味を持ってしまいました。                

全てをさらけ出し、愛を知る

 表紙買いです。和装姿のキャラやタイトルに惹かれました。
 本作は既読でしたが、作中の空気感がとても好みだったので久々にじっくりと読み返しました。
 スマホもパソコンも車も出てくる現代のお話なのに、日本家屋、和服といった昭和以前を感じさせる古風な世界観がたまらないです。

 本作は荘介と彼を拾ったフジ夫の閉鎖的な暮らしを主軸に、荘介が自殺志願者に至るまでの経緯、トラウマの克服、そして生きたいと思うまでの経緯が過去と現在を行き来しながらじっくりと描写されており、最初は添えもののような存在だった恋愛が話が進むにつれて重要になっていくので、読みごたえがあります。
 相手のフジ夫も人嫌いで長年家に引きこもっている小説家ということもあり、全体的に明るい雰囲気ではないものの、現実をあきらめている二人と相反するように、運命的な二人の恋模様を見せてくれるのがおもしろくて好きです。

 荘介視点の一人称でたどっていく物語なので、今回も荘介の心情の移り変わりを追体験する形で楽しめました。
 特に、十年前の回想で憧れの作家である光次と対面する場面は、私まで恋をしたような気分になり、そこから一気に物語に入り込むことができました。好印象を持ったからだろうけど、初っぱなから苗字呼びではなく「荘介さん」呼びする光次は天然たらし確定です。
 そして何と言っても、たった数分間の光次との夢の時間を終えて縁側を歩いている途中で起きた、ほんの数センチだけ開いた襖の向こうにいる誰かと目が合うという強く印象に残る出会いです。その人こそが光次の孫であり、十年後の現在に結ばれるフジ夫でした。
 しかも、この出会いは想像以上にフジ夫に多大な影響を与えており、一瞬見えた荘介の右脚の鱗(傷)に一目惚れしたことがフジ夫にとっての初恋であり、恋愛小説家・藤尾真珠が生まれるきっかけであり、全ての作品の原点にまでなっていたのです。なんて素晴らしい設定なのでしょう。
 さらに、荘介との出会いはフジ夫だけではなく、光次にも影響を与えていたことにも興奮しました。ミステリー作家が晩年に恋愛小説を書き始めていたなんて、こちらもなかなか強烈です。フジ夫も匂いに反応していたらしいし、荘介どんだけいい匂いなの。
 光次は荘介に先立った妻を思い出すと言いましたが、小町には初恋の匂いと言っていました。つまり、光次は最期まで初恋の人だけを愛したわけです。
 そんな素敵な祖父母夫婦と生活してきたフジ夫が、光次の恋愛小説の続きを書けないと思うのも無理もないですよね。
 たった一瞬の初恋で溢れる想いを小説にしてきたフジ夫はもちろん素敵だけど、いかんせん光次の作品を引き継ぐには恋愛経験が足りません。池田光次という小説家を尊敬しているからこその苦悩をむき出しにして涙を流すフジ夫が印象的でした。
 このように二人の作家に影響を与えていたなんて、自分が荘介だったらと思うと感極まって死んでもいいとさえ思ってしまいそうです。本作において「死」は禁句なんですけどね。

 荘介で印象に残っているのは、フジ夫の初恋話や荘介の鱗(傷)の発見といった強力なアシストをしてくれた小町のエピソードです。
 小町が最低な男ときっちり別れられるように、小町に化粧をして女としての自信を持たせる場面は、私まで励まされるような気分になりました。フジ夫と荘介の優しさは形が違うけれど、小町にとってはどちらの優しさも必要だったと思います。
 亡き母の影響で化粧品メーカーへ就職した荘介は、本編でも母のことをよく振り返っていました。荘介が愛する母に化粧をしてあげたら母はすごく喜んだだろうなと切なくなりましたが、化粧品に携わることが荘介自身にとって生きがいになっていたので、これでいいのだと思います。
 諫山の件は高校時代に傷害で警察沙汰になったんだから、ストーカーされている時点で警察に通報すればすぐに動いてくれたのではと思いましたが、今回で二度目の逮捕だから今後は接近しただけで即通報で大丈夫でしょう。

 フジ夫はとても魅力的な人物で、小説家らしくない真っすぐな言葉には、良くも悪くも相手の逃げ道をふさいだり、時には背中を押してあげるような優しさを持っています。
 そして、恋愛面では堂々と初心者丸出しの発言をしてくれます。荘介とほぼ合意のキスをしてから、そのことで頭がいっぱいになって執筆に手がつかなくなるのとか本当にかわいいです。布団で気持ちを確認しあってからの初夜もすごく良かったです。
 荘介の手を握って温もりを与える場面はどれも好きなんですが、それがかつてフジ夫が祖母にされて安心した行為だったことを知り、さらに好きになりました。光次のように荘介のことをいい匂いと言っていたし、フジ夫はおばあちゃん子だったんですね。
 荘介と結ばれたことで結果的に光次と同じく初恋の相手と添い遂げることになりそうですが、それが藤尾真珠の作品にどんな影響を与えるのか、そして光次の小説の続きはどんな作風になったのか、荘介の再就職後の暮らしぶりなど、知りたいことがたくさんあります。掌編でもいいから後日談が読みたいです。

 私は電子書籍ですが、本編と千地イチ先生の素敵なあとがきを読み終えてからの伊東七つ生先生の絵にやられました。紙本も同じなのかは知りませんが、これは最後に持ってきて正解だと思います。

 実はこの感想を書くのもかなりの日時がかかっています。この文面で? というツッコミはご容赦ください。
 いろんな思いが込み上げるのに上手く言葉にできなくて、とてももどかしいです。
 改めて素敵な作品を生み出す作家さんや、素敵な感想を書かれるレビュアーさんに尊敬の念を抱きました。
 本作は静かでゆったりとしたお話が好きな方や、一般文芸が好きな方におすすめできると思います。

一世一代の命をかけた恋

 龍と竜シリーズの五作目です。
 発売当時は本作で完結だったこともあり、最後にふさわしいお話でした。

 大学一年生の颯太が竜城に龍一郎と別れたいと思ったことはあるかと質問するところから始まり、次郎の愚痴をたくさんこぼしています。ほらやっぱりと言いたくなるような内容です。
 前作の続きは勘弁してくれと思っていたら、龍一郎と別れたいと思ったことがある上に浮気までしたことがあると自白する竜城の回想話になりホッとました。

 回想の時期は、三作目(銀の鱗)で竜城が自力で自分の店を持つために養子縁組を拒否したお話の続きです。夢を叶えるため、やる気に満ち溢れた竜城は調理師専門学校の一年制クラスに入学しました。
 颯太との生活も幸せだったから人生を犠牲にしてきたつもりはないけれど、それでも自分の意志で学校へ通い、夢を持つ生徒の一員に加わり、友人と交流するなんて、金銭的にも精神的にも余裕がなかった十代の竜城には到底できなかったことです。竜城は背中を押してくれた龍一郎に改めて感謝の念を抱きますが、竜城のこういうところがいいですね。
 非日常の一日を味わい気分が高揚したままの竜城は、家族の不在で性欲を抑えきれずに珍しく自慰を始め、目を閉じて龍一郎を想像しているうちに本物の龍一郎に突然貫かれます。
 しかも、スケベオヤジのような言い回しで言葉責めする龍一郎だけでなく、次郎までいました。人前プレイ再び。竜城には恥ずかしすぎる展開の連続です。
 情事を見たり見せつけたりするこの義兄弟の価値観は理解不能で最低なのに、毎度のことながら萌えてしまいます。
 でも、おそらく龍一郎はこの時点で竜城の無自覚な変化に勘づいたのかもしれません。

 遅れてやって来た青春を謳歌する竜城は岸谷と急速に距離を縮めていきますが、その過程がとても自然というか、このまま二人がくっついても悪くないなと思ってしまうほどでした。
 岸谷に頭を撫でられることを、これは岸谷の癖だからと意識しないようにする竜城から
そこはかとない甘酸っぱさを感じ、不覚にもキュンとしてしまいました。
 しかし、読者の私をも浮気させた竜城の夢のような時間もそう長くは続きません。
 岸谷のバイト先で夢中になって店の手伝いをした竜城は初めて門限を破り、帰りの道中で一ノ瀬組の監視の目に気付き、自分は極道の世界の人間であること、自由のようで自由ではなかった現実を改めて突きつけられます。
 まあ竜城は二十歳までカタギだったので、極道とかけ離れた学生生活を楽しむほど、自分がいる世界に嫌気が差すのは致し方ないです。逆に、その負の感情は竜城の暮らしが豊かになった証拠でもあるので、その日暮らしだった頃を思えばある意味贅沢な悩みとも考えられます。
 帰宅後、颯太がいる前で不機嫌な龍一郎と押し問答してしまいますが、その時に竜城をかばう颯太が本当に天使でした。そんな健気な颯太に良心が痛んだ竜城は身勝手な行動をしたと反省します。
 颯太が部屋へ戻った後、岸谷との関係を疑っている龍一郎は、問題の本質を理解していない竜城に怒ります。予想通りの展開です。
 竜城は監視がついてるのを知りながら、岸谷のバイクの後ろに乗って腰に手を回したりと軽率な行動が多かったのは事実です。でも、一か月半も竜城を泳がせている間に着々と岸谷の情報を掴み、岸谷に危害を加えることを匂わせ、その翌日に未遂とはいえ本当に何度も実行する龍一郎が恐ろしくもあり、そのやり口だと竜城の心がますます離れていく一方なのに、極道で育ったからそれ以外の術を知らないことが切なくもありました。
 竜城が初めて龍一郎の職場へ押し入った場面も、岸谷の件で押し問答の末に龍一郎は銃で脅し、怯まずにさっさと撃てとまで言う竜城の足元に本当に撃ってしまうのです。
 発砲されてもウンザリだと吐き捨てられる竜城は強すぎるし、本気で殴りかかろうとする龍一郎も恐いしで、本場の修羅場に感心するとともに、ここまでくると修復不可能なのではと心配になりました。

 龍一郎は真っ当な仕事で大きなチャンスが到来しており、夜の営みを我慢してでも竜城や颯太の将来のために多忙な日々を送っていたので、今現在の竜城の心が離れていく事態に頭を悩ませる龍一郎が、さっきまでの修羅場とは別人のようで気の毒でした。
 極道だから竜城を暴力で繋ぎ止めるのは簡単だけど、極道だからこそ竜城と心で繋がることにこだわる龍一郎が切なくて、次郎は豪快に物騒なことを言いつつも龍一郎を誰よりも理解して励ますところが良かったです。
 竜城は岸谷の優しさに甘えて逃避行……はしてませんが、いい雰囲気に。料理人を目指したきっかけが龍一郎の昔話だったことを話しながら龍一郎を想う姿に、夜のカフェの雰囲気と相まって感動しました。
 そしてラブホテルの場面ですが、龍一郎が全てをさらけ出して竜城の意思を尊重した上で愛を乞うのは良かったけど、竜城と岸谷への報復でもある今回の人前プレイは萌えませんでした。
 岸谷を巻き込まないでと思ったけど、祖父の影響からか極道にも刺青にも全然臆さなかったし、あれからも竜城と親友を続けたりと肝がすわったいい男でした。現実を踏まえて、岸谷が無傷ですんだ点においては龍一郎はもっと評価されてもいいと思います。

 竜城の話を聞いた颯太はますます自分が惨めになったのではないでしょうか。
 次郎に張り手をかましたところはスッとしたけど、軽んじられる颯太がかわいそうでした。
 あと、竜城の浮気話が出た時は全然驚きませんでした。なぜなら相手は咲子と思っていたからです。
 前作で男女の関係を匂わせた描写にもショックを受けてあれこれと感想を書いたので、綺月陣先生にまんまとだまされました。

 本作はいろんなドラマが詰めこまれていてとても楽しめました。
 あれだけの修羅場を乗り越えた二人なら、これから先何があっても大丈夫でしょう。
 次は~清明~ですが、今はもう少し余韻に浸りたいと思います。

まるで餌(愛)を欲しがる雛鳥のよう

 龍と竜シリーズの四作目です。
 私がこのシリーズを読み始めたのは、綺月陣先生の「背徳のマリア」に登場した黒崎和巳の行方を追いかけてきたからなので、詳細も評価も調べずにシリーズ全作品を大人買いして、今に至ります。
 それを踏まえて本作の感想を書くので、「背徳のマリア」を未読の方は注意してください。

 表紙の色気を漂わせた颯太があまりにも大人びていて、次郎を見るまで竜城と勘違いするほどでした。
 前作で心が結ばれた颯太と次郎がようやく体も結ばれるのだと確信して読み始めたのですが、颯太がたっちゃん呼びを復活させた中学一年生の颯太のままだったので、表紙とのギャップに驚きました。
 次郎に貞操を守ることを誓った颯太は、颯太の唇は次郎のもの=龍一郎とはキスしない宣言をしたり、嘘の理由で愛撫すらしてくれない次郎には浮気はしないでとかわいいことを言います。
 しかし、二人の蜜月はここまでです。

 まあ颯太は十三歳だし、親子ほど年の離れた良識ある恋愛ならキスやハグが限度だと思います。その点においては次郎はちゃんと自制できています。
 このシリーズを読んできて、次郎が颯太の言いつけ通りに誰とも寝ないなんてありえないと分かっていました。愛する颯太を抱けない間は、仕事や和巳の定期検診で性欲を発散させるのだろうと思っていました。仕事で他の誰かを抱く次郎に、颯太が嫉妬して切なくなるお話かなと予想すらしていました。
 その上で次郎に言います。和巳との最後の情事は完全に裏切り行為です。
 颯太は最後あたりの声を聞いただけですみましたが(全然良くないけど)、読者は次郎の心情や和巳と交わす言葉の数々まで全て見せられます。不快でした。
 仮に和巳が東京に残ったとして、颯太が大人になったとしても、次郎が穴埋めと称した関係はずっと続いてたとしか思えません。まさに次郎のイロです。
 颯太に和巳との情事を知られたのではないかという予感が的中した時、次郎は大賀をボコボコにしましたが、そこまで憤慨するということは裏切っている自覚があったんでしょうよ。

 次郎の裏切りに対する龍一郎の反応にもガッカリしました。あれほどかわいがってきた十三歳の息子の恋心が傷付いているというのに、組の為に情事は必要だと論点をすり替える次郎に理解を示すなんて……。さすが穴兄弟だな、と。
 竜城が現れるまで体の関係があったそうですが、竜城の前にも本気の相手(女性)がいたはずなのに関係を続けていたのか、和巳から離れなければ竜城がいても関係を続けていたのではないか、こっそり和巳に会いに行ったあたり龍一郎も「餞別」を贈ったんじゃないのか、と下衆の勘繰りばかりしてしまいました。
 まあ竜城も戦友と言いながら咲子の部屋に泊まっているらしいので、おあいこかもしれませんが。

 颯太の将来とか、一生かけて守るとか、次郎の言わんとしていることは分かるし、それが次郎なりの大人の愛し方なのでしょう。
 でも、未来を見据えるのも大事だけど、今の颯太と向き合えていたのか疑問です。
 自分の行いで颯太を傷付けたと分かっていながら、今の颯太では大人の事情が理解できないから時期が来るまで距離を置きながら待つって、自分を正当化して体よく逃げているようにしか見えません。
 言い訳なんていらないんです。ただ颯太の怒りや悲しみを受け止める姿勢を見せるだけで良かったのに。ままごとみたいな恋愛をするつもりがなかったのなら、一大事なのに多感な年頃の颯太を突き放すくらいなら、最初から颯太が大きくなるまで手を出さなければ良かったのに。
 次郎から全く誠意を感じられませんでした。

 思春期真っ盛りの颯太は見ていて辛かったです。幸せの絶頂期に恋人に裏切られ、また大人を信じられなくなり、自己肯定感がさらに低下しています。
 真藤と体を繋げては断ち切れない次郎への想いが溢れて傷付いてのくり返し。一種の自傷行為です。
 竜城と二人で暮らしていたアパートへ帰りたがる颯太に胸が締め付けられました。
 心を許さずに真藤を振り回す颯太もひどいですが、真藤も嫌がる颯太に付きまとっていた上に弱みにつけこんで体の関係に持ち込んだので、どっちもどっちな部分もあります。
 とはいえ、真藤母の嘆きはごもっともなので真藤母は全然悪くないです。個人的に病院で逃げた颯太は、死にたいと言った場面と同じくらい駄目だろと思いました。
 いろいろあって竜城の機転で次郎と久々に二人きりになり、何故か過去の過ちをうやむやにした次郎が優位に立った形で仲直りして初夜を迎えましたが、次郎の言葉は浮気男の常套句にしか聞こえないし、愛に飢えた颯太は浮気してもいいし何番目でもいいから愛してほしいと必死に懇願していて、とても痛々しかったです。これじゃ本当に次郎のイロだよ。
 はたして颯太のこれは成長と言えるのだろうか。アダルトチルドレンによる幸せになれない恋愛のお手本にしか見えません。

 あと和巳、前作で薄々嫌な予感はしてたけど、結城との子供はどうなった。
 私は禁忌を重ねた黒崎兄弟が好きで、結城の子供を産もうと決意した和巳を応援していたので、この件が一番ショックでした。
 次郎に安藤の面影を重ねてるのは分かってはいたけど、本当に次郎との子供を産む気なら、颯太のためだけに、次郎に連絡することも姿を現すことも今後一切しないでほしいです。
 この調子だと、北海道へ行ったら安藤にちょっかいをかけそう。北海道の面々の良好な関係が壊れないことを願います。

 個々の設定だと意外と地雷はないのですが、あまりにも見たくない場面や知りたくない情報が多すぎました。
 ただし、ホスト仲間だった拓也がカフェで働いていたことは唯一うれしい情報でした。
 腑に落ちない展開の連続だったけど、綺月先生の文章だから最後まで読めたのだと思います。
 竜城と龍一郎以外興味がない方や颯太と次郎に甘々だけを求めている方は、本作はおすすめしません。
 引き続き、~啓蟄~を読みます。

幸せの根源の正体

 龍と竜シリーズの三作目です。
 前作までは竜城と龍一郎に焦点が当てられていましたが、本作は新たな主人公が登場します。
 竜城の弟の颯太です。前作の感想で将来有望と書きましたが、中学一年生にして早くも覚醒していました。

 颯太の独白から始まりますが重いです。
 物心ついた頃には母から存在を否定されていたせいで、母が不幸なのも、母が亡くなったのも、竜城が大学を中退したのも、全部自分のせいだと思い込んでいます。
 成長するとともに自分が邪魔な存在だったことを認識(誤解)したので、大人の顔色をうかがったり、大人が喜ぶ子供の振る舞いをしたり、カフェのオープンが目前に迫る竜城を気遣って授業参観があることを黙るという意地らしさがありました。
 しかし、颯太は大好きな家族に素直に甘えることができず、週の半分は家に帰らなくなっていました。そして、それがただの思春期や反抗期だけではすまされない決定的な原因があったのです。
 颯太はついに竜城と龍一郎の夜の営みを見てしまいました。颯太が四歳の頃(前作)から危なっかしい場面はあったものの、それ以降も暗くてよく見えなかったり、性行為は男女じゃないと成立しないという先入観で核心に触れるまではいかなかったようですが、中学一年生の夏休みの終わりに明るいダイニングで愛し合う二人の一部始終を見てしまったのです。
 颯太が感じたのは、汚いものを見てしまったという嫌悪感よりも、愛し合っている中に自分がいないことへの疎外感でした。龍一郎が今までかわいがってくれたのも竜城を愛していたからで、自分がいたから二人は堂々と愛し合えないのだと歪んだ解釈をしてしまいます。辛い幼少期を過ごした上に、多感な年頃ならそう思うのも仕方ないかもしれません。
 そんな中で、竜城に似ているとしか言われない颯太が、次郎に龍一郎似と言われて喜ぶ愛らしい一面もありました。かわいい。

 今の颯太にとって唯一の支えは次郎で、颯太が竜城たちの営みを見たあの夜、初めての自慰で想像したお相手も次郎でした。小さい頃からずっとかわいがってくれて、甘やかしてくれる存在だから自然と惹かれていったのでしょう。
 でも、現実的な話をすると、親の愛情を満足に得られなかった人は恋愛で補おうとする傾向もあるので、恐らくアダルトチルドレンに該当する颯太も、親子ほど年が離れた次郎を好きになることに全く抵抗がなかったのだと思います。
 だからと言って、颯太と次郎を否定しているわけではありません。
 人によっては、子供の一時の感情と思うかもしれないし、親子愛への憧れを恋愛感情と混同しているだけと思うかもしれない。そうだとしても、今の颯太は真剣に恋をしていることに変わりありません。
 しかも次郎は常識人なので、颯太を甘やかしはするものの叱るところは叱るし、誘惑されたからといって暴走するようなことはしません。誰でもいいわけではなく、次郎という人間を颯太は好きになったのです。
 だから、颯太との恋愛に及び腰の次郎とは違い、和巳や龍一郎や竜城までもがそれを否定せずに次郎の背中を押してあげるところが良かったです。これも次郎に人徳があるからでしょう。まあ竜城も和巳も釘は刺してましたけどね。
 次郎は文字通り愛して撫でて颯太を喜ばせ、二人は恋人になり、初めては大人になってからと約束したのでした。
 その後の颯太と竜城・龍一郎とのメールで不覚にも感動しました。龍一郎は本当にいい父親です。

 二人の進展の立役者となった和巳ですが、診察という名目で次郎と言葉遊びをしているように見せかけて、彼の言葉には重みがありました。
 この世で一番醜悪なものは恋愛感情と豪語する和巳だけど、自分たちのような悲劇が二度と起きないように、次郎を諭し、龍一郎に連絡し、颯太と次郎の心を結びつけたのでしょう。そんな和巳に幸あれ。

 そして竜城編ですが、颯太が十歳の誕生日の頃のお話なので、颯太編でさらっと触れた養子縁組の一件の真相が明らかになります。
 私は本作を読むまで、竜城はよく颯太に嫉妬しないよなと思っていました。
 颯太もかわいそうでしたが、竜城だって親に愛されなかったわけで、いくら龍一郎に愛されようとそれは親の愛情とは違います。
 だから、親(龍一郎)や祖父(組長)や叔父(次郎)や組の一員から愛される颯太を見て、嫉妬心は芽生えないのだろうかと思っていました。私なら嫉妬しそうなのでなおさらです。
 でも竜城は全くそんなことなくて、それどころか、大学へ進学した時に実家から逃げたことで颯太に負い目を感じているんです。竜城は悪くないし、そうさせた親が悪い。本来感じる必要のない罪悪感を、竜城も颯太もそれぞれ抱えてしまっているのが切ないです。
 竜城も颯太も、相手が幸せじゃないなら自分も幸せじゃない(救われない)という思考だと思いますが、そもそも相手が一緒にいることこそがお互いにとっての幸せなんですよね。
 颯太は竜城がいるから幸せで、市ノ瀬組の面々から愛される幸せも知ったし、竜城は颯太がいるから幸せで、龍一郎と愛し合う幸せも知った。
 本作の本質はそこだったのではないでしょうか。

 養子縁組の件も、竜城は自力で颯太を養えていないし自立できていないと思っているから、乙部姓で夢を叶えることにこだわったんですよね。この意地とプライドには共感しました。
 そして龍一郎、心中お察しします。颯太の機転がなければ惨めでしたね。怒りに任せてお風呂で竜城に乱暴するのは駄目なんだけど、正直萌えました。そして、竜城の夢を聞いて応援する姿がかっこよかったです。やっぱり龍一郎は懐が深いいい男です。
 あと、竜城の素性を知った上で味方でいてくれる咲子はとても貴重な存在だと思います。かつて咲子に淡い恋心を抱いたり、抱きしめたり手を繋いだりして甘える竜城に母性本能をくすぐられました。

 今回は恋愛面よりも家族愛を重視して神評価にしました。
 引き続き、~虹の鱗~を読みます。

光と影は表裏一体

 龍と竜シリーズの二作目です。
 前作でさまざな葛藤を乗り越え、極道の龍一郎とともに生きる選択をした竜城ですが、本作は龍一郎とは住む世界が違うことをまざまざと思い知らされ、愛だけではどうにもならない壁にぶつかり苦悩するお話でした。

 と、上記のように要約すると重苦しく感じますが、作品全体を通してみると官能的な場面がたくさんあったので、個人的にはそちらの印象の方が強いです。包み隠さずに言うとエロエロでした。
 だって、初っ端から二人は致してます。隣のベッドで四歳児の颯太がすやすや眠っている中でです。声を潜めながらの状況で、龍一郎はスケベオヤジさながらの言葉責めで、自分が不在の間に浮気していたのではないか、一人で慰めていたのではないか、と竜城を虐めていて萌えの連続でした。
 しかし、そんな淫靡な雰囲気にそぐわない颯太の泣き声で空気が台無しになってしまうのですが、その時の竜城の狼狽ぶりがおもしろいです。本作にはこういう場面が何度もあり、もはや定番化しています。BL的にはお邪魔虫な立場になってしまう颯太だけど、かわいくて憎めないというか、そもそも颯太は何も悪くないですね。

 龍一郎の家に住むようになってから約二か月が経っていますが、リアリストの竜城はいつか離別する日のことを考えて、金銭感覚が狂いそうな生活に染まらないように気を引き締めたまま、龍一郎にカフェやホストの仕事を辞めるように言われても拒否します。
 過労の不安はあるものの、いつかのために貯金をしておきたい竜城の感覚は一般的だと思うし、龍一郎は竜城のそういうところが放っておけなくて好きになったんだと思います。
 それなのに、堅実に生きようとする竜城の思いを打ち砕くように、ヤクザと親しいという理由でカフェのバイトをクビになってしまいます。現実でも企業間で反社会的勢力排除の書類を交わすので、よりクリーンなイメージを求められる昨今では仕方がないことだと思います。
 竜城は本当に気の毒だけど、本人も状況を理解しているので、店を非難しない代わりに少々思いやりに欠ける龍一郎に行き場のない怒りをぶつけるしかありませんでした。
 いくらなだめても機嫌を直すどころか、龍一郎の生きざまを否定するような物言いをする竜城にしびれを切らした龍一郎は、とうとう車内で竜城を犯します。
 合意じゃない性行為は強姦でしかないので決して許されない行為です。よって龍一郎は最低なんです。それなのに、何でこんなに萌えるんですかね。愛する竜城に人格を否定されるのが耐えられない、極道の自分を受け入れてほしい、愛してほしい、そういった龍一郎の弱さや執着が見え隠れしていたからでしょうか。そう言い訳しておきます。

 やり過ぎたと反省する龍一郎はさらに颯太の地雷を踏んだのがきっかけで、愛されなくても母を嫌いになれなかったと言う竜城に自分の生い立ちを話すのですが、これがまた悲惨な過去で、龍一郎の頬の傷痕がヤクザ同士の抗争などではなく実母につけられたものだと発覚します。
 施設や警察などの大人の態度は事務的にしか感じられなかったけど、生まれて初めて親身になってくれた大人(坂下)はヤクザでした。ラーメンやトマトを食べさせてくれただけではなく、家にも住まわせてくれました。無力な幼児の龍一郎にとって、居場所を与えてくれた坂下は神様のような存在だったと思います。
 母が嫌いだと言う龍一郎ですが、十五歳に母のアパートへ行って警察沙汰になるまで暴れたので結果的に復讐みたいになってしまったけれど、本当は母に愛されたかったのだと思います。これが母に愛を求めた最後の瞬間だったんじゃないかな。激情の理由に気付けない龍一郎に切なさを感じました。
 最初に人情深く接してくれた人がたまたまヤクザだっただけ。現実でも、境遇が悪い人や自ら道を踏み外して非行に走る人が果てに行き着くこともあるだろうし、今はたまたまカタギの世界にいる人も、何かしらの因果があれば極道の世界に足を踏み入れてしまう可能性もあるのだと考えさせられました。
 龍一郎の生い立ちや奥底にある孤独を知った竜城は、坂下や組長に感謝の念を抱きながら過去の発言を謝罪し、龍一郎も竜城に車内の一件などを謝罪しながら性行為に持ち込んで仲直りしました。

 ところが痴情のもつれで龍一郎が刺されてしまいます。相手の組から献上された情婦を抱くことが礼儀とされる世界なので、本当に龍一郎がその女性を抱いていたとしても浮気ではない。そう簡単に割りきれるわけもなく、竜城は龍一郎を失う恐怖と相まって混乱しながら病院へ向かいます。
 到着したのは闇医者のいる部屋でした。ついに黒崎和巳が登場したのです。元気そうで何よりなんだけど、和巳が登場するということは修羅場を意味するので、今後も出てほしいような出てほしくないような……と複雑な気持ちになりました。
 龍一郎が浮気したのかが気になりながらも献身的に看病する竜城は、これ以上心を揺さぶられたくない思いで、ヤクザの恋人でいる辛さを打ち明けます。しかし予想通り龍一郎は女性を抱いておらず、この先竜城を交渉の道具にしたくないこと、絶対に手離したくないことを告げ、二人は愛を誓い合い、愛し合いました。竜城が絶頂を迎えたと同時に颯太がお風呂へ入ってきた時は笑うしかなかったです。

 颯太の誕生日話ですが、龍一郎と次郎の固い絆が分かるいいお話だったけど、問題作です。
 まず、フードプロセッサー。颯太と龍一郎、舌絡ませすぎですよね。しかも明らかに颯太は次郎に見せつけてます。この子は将来有望です。
 次は人前プレイ。次郎とグルになって竜城を辱しめる龍一郎は本当に最低なんです。それなのに、何でこんなに萌えるんですかね(二回目)。もう言い訳はしません。萌えた。

 亜樹良のりかず先生の素敵な挿絵ですが、男性器が普通に見えてました。おすすめです。

 引き続き、続編の~銀の鱗~を読みます。