イラスト入り
推し作家さん&絵師さんです。
シリーズ5作目。
颯太のグチから始まる今作。
前巻で湧いた「いつの間にこんなに竜城は達観するようになったのかな」という疑問の答えがありました。
26歳にして思春期を迎えた、という龍の言葉通り自分の力を試したい、束縛されず自由に生きたいという竜城が知った自分の欲。
竜城が学生生活を活き活きと楽しんでいる様子が、先の不穏を予想させて読むのが辛かった…
怒りに振り切れた龍、その根底にあるのは深すぎる愛。
あれをやられても受け止める覚悟を決めた竜城。
ぎゅぎゅぎゅとふたりの気持ちがひしめき合った一冊でした。
龍と竜シリーズの五作目です。
発売当時は本作で完結だったこともあり、最後にふさわしいお話でした。
大学一年生の颯太が竜城に龍一郎と別れたいと思ったことはあるかと質問するところから始まり、次郎の愚痴をたくさんこぼしています。ほらやっぱりと言いたくなるような内容です。
前作の続きは勘弁してくれと思っていたら、龍一郎と別れたいと思ったことがある上に浮気までしたことがあると自白する竜城の回想話になりホッとました。
回想の時期は、三作目(銀の鱗)で竜城が自力で自分の店を持つために養子縁組を拒否したお話の続きです。夢を叶えるため、やる気に満ち溢れた竜城は調理師専門学校の一年制クラスに入学しました。
颯太との生活も幸せだったから人生を犠牲にしてきたつもりはないけれど、それでも自分の意志で学校へ通い、夢を持つ生徒の一員に加わり、友人と交流するなんて、金銭的にも精神的にも余裕がなかった十代の竜城には到底できなかったことです。竜城は背中を押してくれた龍一郎に改めて感謝の念を抱きますが、竜城のこういうところがいいですね。
非日常の一日を味わい気分が高揚したままの竜城は、家族の不在で性欲を抑えきれずに珍しく自慰を始め、目を閉じて龍一郎を想像しているうちに本物の龍一郎に突然貫かれます。
しかも、スケベオヤジのような言い回しで言葉責めする龍一郎だけでなく、次郎までいました。人前プレイ再び。竜城には恥ずかしすぎる展開の連続です。
情事を見たり見せつけたりするこの義兄弟の価値観は理解不能で最低なのに、毎度のことながら萌えてしまいます。
でも、おそらく龍一郎はこの時点で竜城の無自覚な変化に勘づいたのかもしれません。
遅れてやって来た青春を謳歌する竜城は岸谷と急速に距離を縮めていきますが、その過程がとても自然というか、このまま二人がくっついても悪くないなと思ってしまうほどでした。
岸谷に頭を撫でられることを、これは岸谷の癖だからと意識しないようにする竜城から
そこはかとない甘酸っぱさを感じ、不覚にもキュンとしてしまいました。
しかし、読者の私をも浮気させた竜城の夢のような時間もそう長くは続きません。
岸谷のバイト先で夢中になって店の手伝いをした竜城は初めて門限を破り、帰りの道中で一ノ瀬組の監視の目に気付き、自分は極道の世界の人間であること、自由のようで自由ではなかった現実を改めて突きつけられます。
まあ竜城は二十歳までカタギだったので、極道とかけ離れた学生生活を楽しむほど、自分がいる世界に嫌気が差すのは致し方ないです。逆に、その負の感情は竜城の暮らしが豊かになった証拠でもあるので、その日暮らしだった頃を思えばある意味贅沢な悩みとも考えられます。
帰宅後、颯太がいる前で不機嫌な龍一郎と押し問答してしまいますが、その時に竜城をかばう颯太が本当に天使でした。そんな健気な颯太に良心が痛んだ竜城は身勝手な行動をしたと反省します。
颯太が部屋へ戻った後、岸谷との関係を疑っている龍一郎は、問題の本質を理解していない竜城に怒ります。予想通りの展開です。
竜城は監視がついてるのを知りながら、岸谷のバイクの後ろに乗って腰に手を回したりと軽率な行動が多かったのは事実です。でも、一か月半も竜城を泳がせている間に着々と岸谷の情報を掴み、岸谷に危害を加えることを匂わせ、その翌日に未遂とはいえ本当に何度も実行する龍一郎が恐ろしくもあり、そのやり口だと竜城の心がますます離れていく一方なのに、極道で育ったからそれ以外の術を知らないことが切なくもありました。
竜城が初めて龍一郎の職場へ押し入った場面も、岸谷の件で押し問答の末に龍一郎は銃で脅し、怯まずにさっさと撃てとまで言う竜城の足元に本当に撃ってしまうのです。
発砲されてもウンザリだと吐き捨てられる竜城は強すぎるし、本気で殴りかかろうとする龍一郎も恐いしで、本場の修羅場に感心するとともに、ここまでくると修復不可能なのではと心配になりました。
龍一郎は真っ当な仕事で大きなチャンスが到来しており、夜の営みを我慢してでも竜城や颯太の将来のために多忙な日々を送っていたので、今現在の竜城の心が離れていく事態に頭を悩ませる龍一郎が、さっきまでの修羅場とは別人のようで気の毒でした。
極道だから竜城を暴力で繋ぎ止めるのは簡単だけど、極道だからこそ竜城と心で繋がることにこだわる龍一郎が切なくて、次郎は豪快に物騒なことを言いつつも龍一郎を誰よりも理解して励ますところが良かったです。
竜城は岸谷の優しさに甘えて逃避行……はしてませんが、いい雰囲気に。料理人を目指したきっかけが龍一郎の昔話だったことを話しながら龍一郎を想う姿に、夜のカフェの雰囲気と相まって感動しました。
そしてラブホテルの場面ですが、龍一郎が全てをさらけ出して竜城の意思を尊重した上で愛を乞うのは良かったけど、竜城と岸谷への報復でもある今回の人前プレイは萌えませんでした。
岸谷を巻き込まないでと思ったけど、祖父の影響からか極道にも刺青にも全然臆さなかったし、あれからも竜城と親友を続けたりと肝がすわったいい男でした。現実を踏まえて、岸谷が無傷ですんだ点においては龍一郎はもっと評価されてもいいと思います。
竜城の話を聞いた颯太はますます自分が惨めになったのではないでしょうか。
次郎に張り手をかましたところはスッとしたけど、軽んじられる颯太がかわいそうでした。
あと、竜城の浮気話が出た時は全然驚きませんでした。なぜなら相手は咲子と思っていたからです。
前作で男女の関係を匂わせた描写にもショックを受けてあれこれと感想を書いたので、綺月陣先生にまんまとだまされました。
本作はいろんなドラマが詰めこまれていてとても楽しめました。
あれだけの修羅場を乗り越えた二人なら、これから先何があっても大丈夫でしょう。
次は~清明~ですが、今はもう少し余韻に浸りたいと思います。
颯太が大学一年生。
16才年上の竜城は・・。立ち仕事がきつくなる年ごろに。
小説とはいえ、月日の経過は光陰の如し・・早いなー。
顔はソックリ、だけど性格に大きな違いがある颯太と竜城。兄より颯太は身長が3センチ高くなった。作品中で一番の器量よしはやはり、兄。
颯太が、相変わらず続く次郎の浮気の相談を竜城にすると、竜城が一度だけした浮気の経験を話し出す。
・・・調理師免許を取得する学校で知り合った、カフェ経営希望の4才年下の男性岸谷が作る「卵麺」の作り方を知りたくなった竜城・・空想上のレシピらしいのですが、美味しそう。
岸谷に教わるうちに、竜城と心が通い合っていくが、当然ばれて・・笑っちゃう結末。
次郎さんの浮気防止は、今の颯太君には難しいみたい。若いだけじゃダメ、竜城のように、胃を掴むか、なにかの才能でつなぎ留めなければ。・・という展開の、半分ラブコメ風でした。
★この巻の後、暫く著者は活動休筆。だいぶ経ってから続巻が出ています。
あとがきには、長い間、引退を考えたらしいことが書かれていました。復活されているので、こんなスランプもあったんだんだな、という感想しか無いです。この巻のあと2巻出ています。
あとがきが、自虐的な内容なので気になります。なにかあったのかも。
あとがきから抜粋: 2012年 9月 //「龍と竜」シリーズだけは、夢いっぱいのBLジャンルを貫こうと決めていた/17年目の作品。/アイデアが湧かなくなって、疲れはててしまった。/6年前から引退すると言い続けてきた。/変態物書きの世界で・・/執筆したいという気持ちが顔をのぞかせる日まで さようなら。」//
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★作品に出てくる曲。ゴスペル「God Spell=福音」;
他人から必要にされることで、どん底の孤独を克服する歌 survive とは、長生きする,生き残る..
この曲を選んだ意味を考えると、著者の心境が当時、こんな言葉を求めていた?
【I need You to survive】
I need you You need me
We're all a part of God's body
(中略)
I need you to survive だからあなたには生き残って欲しい
I won't harm you 傷つけないから
With words from my mouth 約束する
I love you I need you to survive 愛しているので 生きのびて欲しい
龍と竜〜啓蟄〜が発売されたのが2012年。発売から8年程経過した現在、私がこの本を手にとるきっかけとなったのは、強い美人な受けを教えてと問う私に対してのアンサーからでした。
遅まきながら手にした私は今現在、龍と竜シリーズの次作があと一冊ある事を知っていますが、〜啓蟄〜の発売時点では作者様はシリーズの最後の作品予定だったそうで。
そして、綺月陣先生が休筆に入られる前に書かれた最後の作品で。
んー…もうそれだけでも胸がいっぱいなのですが、〜啓蟄〜の内容もそれ以上に胸がいっぱいになる素晴らしいお話でした。
攻めである龍は、傲慢でもあり誰よりも優しくあると思います。傲慢と優しさ相対する性質が同居してるなんて、なんとまぁ難儀な男性か。竜城(受け)の事を思うとなんだか苦笑いになります。
〜啓蟄〜ではシリーズを通して初めて龍の弱い部分を痛いほど感じ、竜城に対し情けないほどの愛をぶつけました。
その姿を見て、こんな感情を持てる人だからこそ傲慢であっても誰よりも優しくいられるのだなぁ。とウルウルしてしまうくらい龍の竜城への気持ちが私にも刺さりました。
情けないほどの愛という言葉を使いましたが本当に強い人が見せるから、実際は情けなく無かったです。とても格好良かったです(^^)
龍の苛烈なまでの愛し方。ここまでメーター振り切った愛し方されても格好良く感じられるのだから、綺月先生の表現力あってのものだな。と思います。
竜城はお勧め頂いた通り、紛う事なき強くて綺麗な受けでした。大満足!!
まさかこれが最終巻になろうとは? ううっ、せっかく次郎さんと颯太が結ばれてラブラブな場面が読めると思っていたのに、思ったより2人の仲はラブラブではなかったみたい。 颯太が怒るのも無理はない。 でも宝物なら、大事すぎるなら、相手の事をもっと愛でてやれよぅ…。 他の人間を抱くくらいなら颯太を抱いてやれよぅ…。と思ってしまった。 前作で凄く男らしい次郎さんを見ていたのにこのヘタレさは何なんだーっ! 先生が復活される日が来るなら是非この続きを1番に書いてもらいたいです。