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表題作龍と竜~啓蟄~

石神龍一郎,42歳,一之瀬組幹部
乙部竜城,26歳,伴侶となった恋人

あらすじ

カフェで働きながら幼い弟を育てている竜城は、市ノ瀬組幹部の龍一郎と家族のように暮らしている。そんなある日、竜城は「自分のカフェを持ちたい」というかねての望みを龍一郎に告げるが――?

(出版社より)

作品情報

作品名
龍と竜~啓蟄~
著者
綺月陣 
イラスト
亜樹良のりかず 
媒体
小説
出版社
海王社
レーベル
ガッシュ文庫
シリーズ
龍と竜
発売日
ISBN
9784796403696
4.3

(42)

(28)

萌々

(9)

(1)

中立

(1)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
9
得点
180
評価数
42
平均
4.3 / 5
神率
66.7%

レビュー投稿数9

有終の美

実はこの本で綺月陣さんは、作家さんから引退というか休筆にはいられるそうです。
実質引退に近いかもしれません。
あとがきを読んでショックを受けました(号泣)
もうぼちぼち出るよ、辰年に龍竜なんて、縁起のよいこと♪と喜んでおりましたが・・・
年末に病気で入院され、退院後、体調を見ながら実に丁寧に丁寧にこの続編に取り掛かられている姿をブログで見守らせていただいておりました。
発売前の締めの言葉に何か感じながら、まさか、よもやのこのあとがきに!!
ひょっとすると、これが最後の本になるのでしょうか?
しかし、本当にBLらしいBLを目指して書かれた、とありましたように、ちょっと個性的ではありますが、言われてみるとそうだったかもしれません。
この評価は、作品の質として、そして作家さんへの愛情と惜別のちょっとカサ増しの評価かもしれませんが、その点はご容赦ください。
ここはレビューなので、作者さんの事についてあまり言及してはいけませんね(涙)

さて、「龍と竜」の完結編に当たるこの5冊目は、颯太の話の間に仲の良い夫婦のような、信頼し合うカプにみえていた龍一郎と竜城の、颯太が10歳、竜城が26歳の時の自分のカフェを持つ直前のお話です。
自分の店を持ちたいと、そのために学校に通いたいのだと龍一郎に相談すると、快く行かせてくれることになります。
目標もあり、魅力的な先輩にも出会った竜城は、今まで親がなくなり颯太の子育てと、ヤクザの世界とバイトだけの狭い世界で生活してきただけに、久しぶりに味わう開放感に、毎日楽しくて仕方ありません。
学校で出会い仲良くなった先輩の岸谷の作る料理の味に魅せられて、彼との付き合いがふえるにつけ、その変化を敏感に感じ取った龍一郎の激しい嫉妬と怒りを買うのです。
もうだめかもしれない、、、激しい龍一郎を知るだけに死さえも覚悟するほどの激しいスレ違い。
しかし、竜城はわかっているのです。
龍一郎も、わかっているのです。
そんな、浮気とも言えない、ひと時の竜城の開放の時間とより二人の結びつきの深さを見せるエピソードがメインになっております。

始まりは現在の時間軸で颯太が大学1年生、竜城が36歳くらいの現在の場面から、
その前の巻で颯太と次郎の恋が成就する話で、二人は恋人になったのですが、次郎の変な理論で颯太は、それなりに苦しんでいるようです。
その不安を兄に漏らすと、兄が危機を乗り越えたエピソードとして語るのがこの話なのです。

龍一郎がヤクザだけに、激しさを見せながらも竜城をどんなに愛しているか、そのやり方は残酷ですが、それだけ愛が深いと、
彼の激しさが、とてもヤクザらしい(テンプレではない)これが魅力です!
竜城も、強さを持っています。
決して諦めではないのです。
何だか長年連れ添って互いを分かりあった夫婦のようでもあるのですが、決して竜城はオンナではない。
その点が、いいところです。
颯太も、大人になりました。
彼にはまだ乗り越えなくてはならない、経験しなくてはならないことがたくさんありそうです。
次郎ちゃん、本当に罪な男だよ(トホホ、、、)

昔懐かしい衆人環視プレイ(笑)が復活しておりますw
次郎ちゃん、加わらなかっただけマシだったw
ラストは、岸谷にまで見せつけてました(驚!)

題名に啓蟄と付けた意味。。。
作者さんの新たな旅立ちを示唆する意味でも主人公たちのこれからを想い、付けられたのだな~と、とても感慨深いのでした。

14

相応しいシリーズの締め括り

このシリーズが好きで、あまり得意でないヤクザものでもこのシリーズはとても好きでした。きっとそれはヤクザとか関係なしに愛情はもろ刃の剣で愛おしいと思う心が強い程に隣り合わせに憎しみも持ち合わせているという事。相手を幸せにしたいのにボタンが掛違うと小さな綻びが生じてしまうのはよくある事で、乗り越えて強く結びつきに変わるまでを飽きせる事無く一気に読ませてしまう意欲作でした。お互いこの人でないとダメなんだ感が強くないとBL作品での萌は少ないですが、この作品から伝わるこの人でないとダメなんだ感はぶっちぎって臨界点越えです。シリーズ最後にしてしばし筆をおかれるとは何とも寂しい限りですが、休養なされてぶっちぎりの萌に出会えるまで楽しみに待つ事にします。

5

読み終わってしまった……

発売日に買っておきながら、これを読むと終わってしまう…と惜しみまくってなかなか読めずにいました。
でもやっぱり今年中に読まないと!と思い、ようやく読み終える事が出来ました。
評価はシリーズ通してとして付けています。

お話は竜城の昔語り。
次郎との事で悩んでいる颯太の「別れたいと思ったことある?」との質問に答える形で始まります。

カフェを開くための第一歩として通い始めた調理師学校でのこと。
とにかく「学べる事」や「同じ目標を持つ友人とのふれあい」にワクワクし、「一般人としての普通なこと」を満喫して、楽しんでいる竜城の事がよく分かります。
その中でも、味に惚れこんで急速に近づいていった岸谷のこと。
うん……確かにこれはもう……浮気かもしれない。

竜城の楽しいという気持ちも分かるし、龍一郎の許せない事があるというのも分かる。

二人の意見がこじれにこじれた結果、龍一郎の取った行動は……ヤクザですもんね…
こういう事もあるかもしれない。
けど竜城から見るとやはりこれは許せない事で、結局さらに二人の仲がこじれる事に。

でも最後は本当に最悪な事態に陥る前に竜城自身が龍一郎でないといけない、という事に気づいてくれて良かったと思います。
岸谷に見せ付けるところは、さすが龍……と思ってしまったw
でもそれに答える竜城も、そちらの道へ入っているというか、覚悟が出来たというか。

それにしても、岸谷君の度量の広さには驚きました。
あんな事があっても竜城と親友でいよう、と言えるなんて凄い。
非常に魅力的な当て馬君で、そりゃ竜城もちょっと目が眩むよね!と思ってしまう。

次郎と颯太の今後が激しく気にはなるのですが、シリーズも終わり。
綺月先生もいったんは筆を休められるという事で、本当に今までお疲れ様でした、ありがとうございましたと言いたいです……

5

残念ですね

作家さんの取りあえず最後の作品になるのでしょうか?
だとすれば非常に残念で仕方ないですね、何かを創作して創り出す仕事をされている方は
毎回生みの苦しみを味わって作品を世に送り出してくれることを忘れがちですが、
このシリーズものは毎回楽しませて頂いて、作家様にありがとうとお礼を言いたいですね。

シリーズ1作目の主役二人の夫婦としての苦楽を感じさせるお話で、読み終わると
1作目から読み返してみたいと言う欲求が湧きおこる内容でした。
歳の差カップルで相手が極道、それも結果的には兄弟揃って同じような相手に恋する。
弟編も萌え心がたっぷりで、良かったですが、元祖的な龍と竜のカップルは感慨一入。
完結編で、小冊子も手に入れる事が出来るみたいなので是非読みたいと思います。
綺月陣先生お疲れ様でした、でもエネルギー補充を十二分に蓄えて、是非復活して
下さいと心から願っております。

3

シリーズ中一番良かった

シリーズの中でも出来不出来ありましたが、これは一番良かったです。最後を飾るにふさわしいと思いました。

お話のメインは、竜城の浮気で危機に陥った時のお話で、次郎とのことを悩む颯太に聞かせる形で始まります。
専門学校に通い始め、自分の人生をやり直す歓びに浮かれていたときに、印象的な出会いをしてしまった竜城。初めて満喫する学生生活についつい浮かれてしまうが、当然龍からの待ったがかかる。そこで一悶着、というお話なんですが、この相手役、岸谷がえらいいい男でした。正直、龍といるより岸谷といた方が幸せなんじゃ?というくらい。
だけど、颯太こみで大切にしてくれている龍ファミリーへの感謝もあり。龍にまもられていることが自然になりすぎて、初心を忘れてしまったり。たしかに、龍は忙しくてすれ違いも多いし、この辺は専業主婦の奥さんが子どもも手がかからなくなったところでカルチャーセンター的な外の世界に出て、それが旦那の力で支えられているのも忘れてはめ外しちゃった、みたいな。
やっていることは褒められたことではないんですが、岸谷といるときの竜城が本当に楽しそうで、いいカップルなんですよね。颯太が竜城の子供であるなら、責任感がないなぁと思うところですが、弟ですし。ろくに恋もしたことがないまま、親子ほど年の離れた龍とくっついてしまった竜城にとって、そりゃ魅力的だろうなぁと。思い出話なので、結局は龍と元さやなのはわかっているんですが、岸谷とくっついて欲しくなってしまいました。

で、この巻のよかったところは、すごく丁寧に書かれていたところです。描写が、とかではなくてお話として非常に丁寧に書いた感があって、それが温かみと読み応えになっていました。綺月作品は痛さが秀逸で、でもそれはそのまま作者の痛みでもあるんだろうと感じてました。しかしこの作品で断筆、というところをとっても、その内容をとっても、綺月さんは癒されたのかな、という気がしてなりませんでした。(不遜ですみません)
そう思うと、よかったな、としか。

ただ、啓蟄というタイトルについては、それが作者の思いなんでしょうが、この作品には似つかわしくないように思いました。未来に向かって歩き出す描写が少なく、希望を持って進むというところにはつなげきれてない気がしました。

お話としては非常に読みごたえがあり、綺月さんの思いの深さが伝わってくるような作品でした。はなむけの気持ちで、神評価です。

3

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