Sakura0904
互いを思いやるあまり暁人も桂木も極端な行動に出ることによって、物語の方向性が二転三転する4巻。暁人は桂木の積年の目的を果たすため、自分が隠居し桂木を久世家当主に据え置くことが最善だと考え、森山侯爵を脅迫してまでその根回しに奔走します。最大の目的は桂木のためですが、彼は自分が当主の器ではないとも感じています。家格を軽視し恋に溺れている自分では、臣下や領民が不安になる、と。一方、その画策を知ってしま…
今まで桂木に任せていたことにもどんどん暁人が裁量権を持つようになり、暁人は既に桂木とほぼ互角の才覚を見せていました。別に彼は桂木から何か奪いたいわけではなく、そこにあるのは昔から変わらず、ただ桂木に認められるだけの人間になりたい、彼と一緒にいられる人間でありたいという純粋な気持ちだけなのです。桂木と同様に抜け目ない根回しをするようになっても、彼の本質が変わることはないんですね。
雨宮と桂…
1巻では明らかに桂木の方が優位で何を考えているのか分からない印象でしたが、2巻では暁人も堂々とした態度を見せるようになり、彼も彼で何を考えているのか分からない時がありました。きっと2人はまだ本質的には子供とそう変わらないはず。でも、桂木が一貫して頑なな態度を崩さず先代との約束にこだわっているから、暁人も家督にこだわらないわけにはいかない。無意識の内に2人はお互いとても無理をしている状態にあるよう…
日高先生の無駄のない美しい絵と、華族という身分が幅を利かせていた時代の重厚な雰囲気がとてもマッチしていました。子爵だった父が亡くなり、10歳という若さにして襲爵した主人公の暁人。何もかも任せれば良いと彼に与えられた家令である桂木は、私情を挟むことを一切許さず、徹底的に厳しく暁人を教育します。桂木に認められたい一心で努力しても、彼が暁人を穏やかな目で見てくれることはありません。なぜなら桂木は、なか…
終わってしまうのが、本当に嫌で…。読んで仕舞えば、終わってしまうので。買ったはいいものの、読むのを躊躇っていました。私が読まなければ、いつまでも終わらないのだと思ってみたり。また、その終結にガッカリさせられるのではないかと、恐ろしくもあったのです。それほど、この物語は特別でした。これまで、じっくりと読み込んで来たと自負している読者のひとりとしては、やはり全てが想定内だったと申し上げるほかありません…