憂鬱な朝(8)

yuutsu na asa

憂鬱な朝(8)
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神223
  • 萌×217
  • 萌5
  • 中立1
  • しゅみじゃない2

6

レビュー数
24
得点
1199
評価数
248
平均
4.8 / 5
神率
89.9%
著者
日高ショーコ 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

媒体
BL漫画(コミック)
出版社
徳間書店
レーベル
Charaコミックス
シリーズ
憂鬱な朝
発売日
価格
¥720(税抜)  ¥778(税込)
ISBN
9784199607714

あらすじ

亡き先代の面影が残る鎌倉の地で、思い出す確執と擦れ違いの日々──暁人の渡英が迫る中、過去と向き合った桂木は「二年間は長すぎます」と本音を吐露してしまう。そんな真摯な桂木に、暁人は「一緒に英国へ行かないか?」と旅券を渡して…!?久世家を守り、未来を繋げるために、二人が歩んだ恋の軌跡、ついに感動の最終巻!!

表題作憂鬱な朝(8)

久世 暁人(久世家当主・子爵)
桂木 智之(久世家元家令、29→31)

その他の収録作品

  • Last scene
  • あとがき
  • epilogue「Life is just biginning」

評価・レビューするAIの精度がアップいたします

レビュー投稿数24

お見事です

読めば読むほど理解が深まる。感情の変化や揺らぎ、愛目の芽生えや痛いほどの思慕が手に取るように。ラストまで読んで、再読最初から読み進めると、様々な伏線や布石の見事さ、描かれていた表情や言葉の本当の意味につい唸りたくなる。間違いなく傑作。評価は、ぜひ最後まで読んでからに。

0

ああもう記憶を消してもう1回読みたい

悶えに悶えました。こんな作品あったのは初めてで、試し読みをしてすぐに全巻買うことを決めました。BLには珍しいストーリー重視の作品では無いでしょうか。

久世と桂木、二人の関係が巻数事に変わって行くところが特に萌えます。萌えるんです。
最初はあんなに久世のことを憎み恨んでいた桂木が、久世と共にいることによってどんどん変わっていく様子がたまらないです。特に「好きだ」と言われた時の表情。言われる度に顔を赤らめ、桂木のデレの一面を見ることができます。うふふ。
また、二人を取り巻く時代、背景、人物などなど...、話に手が込んでいてひじょうによい。
ときに久世と桂木のすれ違いにもやもやしながら、愛し合う姿に悶えながら。ページをめくる手が止まりませんでした。続きが読みたい。ああ、だけど終わっちゃう。ええどうしよう...おわってほしくないいい。あぁああ。みたいなかんじで。

この作品に出会えてよかったです。どうぞ皆さんもみてみてくださいね!

1

対極的だからこそ補い合えた2人

 凡人であれば何もかも放り出して逃げてしまいたくなるような立ち位置にいながら、2人はよくここまで耐え抜き1つひとつのことに向き合えたなぁと、感服せずにはいられませんでした。相当時間はかかったけれど、久世家をどうするか、自分達の身の振り方はどうするか、石崎家・桂木家との関係はどうするか、そのすべてにこの最終巻で答えを導き出した2人。どちらかだけでは絶対辿り着くことはできなかったであろう終着点でしたね。保守的で根回ししながらしっかり地盤を固めていく桂木と、革新的で先導する力に長けている暁人。なるほど、どちらも当主としての資質があるというのは本当にその通りですね。でも、この終着点には間違いなく2人の考えが両方必要だったのでしょう。

 桂木がなぜ自分はいつも最後まで考えを言わないのか暁人に語るシーンでは、理由が稚拙で思わず目が点になりましたが、これは彼の育った経緯に原因があるのかもしれませんね。でも、彼はようやく先代の柵から解放されました。自分の出自を知ることによってではなく、暁人の言葉によって。先代の思惑というのはもう誰も知り得ないけれど、少なくとも彼が幼い暁人に桂木のことを穏やかに語ったのは事実。ならば良い方向に考えようという暁人の言葉は、きっといとも簡単に桂木の纏っていた殻を溶かしたんじゃないかと思いました。

 そして、2人は久世家に新たな可愛らしい当主を迎えます。最終的に桂木はどのような立ち位置からこの当主を支えるのかよく読み取れませんでしたが、彼は最早何家のものでもないということなのかな。これくらいは読者が都合の良いように解釈してもいいかもしれませんね。2人が共にいられる未来を手に入れたことももちろん嬉しいけれど、何よりも桂木が救われたことを嬉しく思えた最終巻でした。

2

是非読んで欲しいです!!

終わってしまいました…はぁ、終わってしまいましたね。
毎度のことながら8巻を手にして、既刊ぜんぶ引っ張り出して読み返しました。早く続きが読みたいはずなのに、その時間さえ至福に感じられる本は数える程しか知りません。

本当によく話が作り込まれていて、原作と作画の二人体制ならではの完成度でした。
本当に良く練られたお話で、まだ読んだことのない方にはまっさらな状態で読んで欲しいのでネタバレ的なことは我慢します。
私は4巻から読み始め、新刊が出る度に全て読み返していたのですが、今から読める方は久世と桂木と、それをとりまく時代背景やしがらみ、周りの人間の思惑や、思いやり…それを一気に読めるのが正直羨ましくもあります。
特に時と共に変わっていく桂木の想いと、大人の男へと変わっていく久世の姿が他を探しても見つけられない程に魅力的でした。
「憂鬱な朝」というタイトルも読後は染みます…。

BLというジャンルに深さ、ストーリー性を求める方はハマると思います。
桂木も久世も大好きです(*´꒳`*)

8

唯一無二の作品

私に悶えるという感情を与え続けてくれた作品が遂に完結…!!
日高先生10年間大変お疲れ様でした!そして、こんなに素晴らしい物語を、本当にありがとうございました!
最終巻をやっと読み数日経ち、想いが抑えきれず、初レビューさせて頂きます。

私は4巻発売少し前から憂鬱な朝を読み始め、約6年間この作品を追いかけてきました。3巻まで一気に読んだ当時、時代背景やお家騒動もがっつり話に絡み、憂鬱感溢れるこの作品を読んだ時は衝撃的でした。
こんなに苦しいBLがあるのかと…。
いや、もうこれはBLじゃない。
2人の素晴らしい歴史物語だと思いました。
そして、4巻で桂木が暁人様に想いを告げた時は、暁人様になったかの様に歓喜しました。
周りの腐友人の多くに、今すぐ読め!と全巻セットで貸しまくり、友人が「自費で漫画全て買った」という報告を受ける度に、営業で成績を上げたかの様な満足感を感じる程、作品にのめり込んでいました。褌萌えを教えてくれたのも、この作品です。

そして、憂鬱な朝の新刊が出ると知り、調べると最終巻の文字…
ずっと、終わりに近づいているとは思っていましたが信じられませんでした。実際に購入した後も、数日ページをめくる事が出来ずにいました。1巻から読み直し、気持ちを整え、遂に8巻を読み終わりました。

今までお互いの事を想うがあまり、行動がずれまくっていた2人でしたが、お互いの為ではなく、自分の信念の為行動し、自立していく2人にじわじわと感慨が溢れてきました。
また、暁人様が桂木を渡英に誘った事には少し驚きました。
鎌倉で蜜日を過ごした後は静かに別れるのだろうと思っていましたが、私の予想など遥かに超えて2人は好き合っていました…。桂木はやはり残る事を選びましたが、銀時計を貰った時の表情や、暁人様が出立する前のベッドでじっと見つめている目から、未練というか、暁人様と離れたくないという想いが溢れていて…ありがとうございます。

海で2人でじゃれ合っている時も、外でやろうとする暁人様に手を払う桂木…その冷静さというか、つれなさ。とても好きです。日高先生もあとがきで言っていた通り暁人様好きすぎてしまった桂木ですが、どこかつれなさを残して頂ける所がとっても好きです。
暁人様の手紙読み切れてない所も好き…。暁人様のいつか外でやってやる、という台詞に期待してしまった人は私だけじゃないはず。

2年後、暁人様が帰国してきた時に2人が再会するシーンはありませんでしたが、暁人様は一直線に桂木に飛び込み、桂木は伸びた髪に苦言を言いながらも嬉しそうに抱きしめるのでしょう。妄想すみません。
あと、石崎の成長した姿、カッコよかったですね。

そして最後には、手を繋ぎ肩を並べて歩く2人…
暁人様が願っていた姿そのままな事に、感激しました。2人が明るい朝を迎えられている事が何よりの幸せです。

言いたい事は沢山あるのですが、漫画を読まなければ分からない魅力が多く詰まったとても素敵な大切な作品です。
今までこんな素晴らしい物語を届け続けて下さった事に、憂鬱な朝に関わった皆様に感謝感激です!!
毎秋の楽しみがなくなり、とてもとても寂しいですが、この作品はずっと忘れません。
まだまだスペシャルbookも発行される予定との事で、とっても楽しみにしています!
素晴らしい名作に出会わせてくれて、ありがとうございました。

10

光り輝く朝。堂々の完結編‼︎そして、これでさようなら。(涙)

終わってしまうのが、本当に嫌で…。読んで仕舞えば、終わってしまうので。買ったはいいものの、読むのを躊躇っていました。私が読まなければ、いつまでも終わらないのだと思ってみたり。また、その終結にガッカリさせられるのではないかと、恐ろしくもあったのです。それほど、この物語は特別でした。これまで、じっくりと読み込んで来たと自負している読者のひとりとしては、やはり全てが想定内だったと申し上げるほかありません。桂木は自身の立ち位置を得、暁人さまの渡英には着いて行かないだろうし、暁人さまは、桂木の心の不安、不信の元となっていたその出自を明らかにするだろうし、直継さまの遺志を受け、その子供、直矢さまの後見をするんだろうし、未来の久世家とそれ以上の発展の為に、書生として受け入れた若者たちの指針になるであろうことは容易に想像し得るものでした。
ただ一つ、驚いたのは、総一郎の縁談‼︎ 何、このミラクル⁈ さすが、桂木‼︎ 総一郎は、自身が悔やんでいた様に、その初恋を苦い想い出として終わらせるのだとばかり思っていました。桂木が諭した様に、総一郎には暁人さまの様に選び取り、責任を取る覚悟は無いのだと。ここでも桂木の奸計と愛情深い結末に涙させられます。『あなたの味方は、この私だけです』と桂木の言った言葉。涙腺決壊です。ハリボテの身分など、意味を成さないが、それを装ってさえすればまかり通る。その馬鹿馬鹿しさを逆手にとって、一石を投じた策略だとも思いました。総右衛門殿はもちろんカンカンでしたが、この先、総一郎が覚悟を決めて進んで行きます。そして、遂には総右衛門殿も桂木とは和解するのでした。

暁人さまが桂木に贈る、揃いの指輪ならぬ、揃いの銀時計というのも素敵でした。これは、学院の首席が代々贈られるという曰く付きのものでしたが、桂木は首席であったに関わらず、先代の暁直さまに「平民出が首席を取り続けると、余計な敵を作る」と指摘され、最終学年ではワザと首席を取らず、賜われなかったもの。そして、暁人さまにとっては、やはり首席であったのに、隠遁生活を余儀無くされた為に、首席を続けることが叶わなかったもの。そして、この時計は二人の「これから」を刻む時を象徴するもの。暁人さまが渡英する際に互いの名を刻んだ時計を交換するという桂木もロマンティックです。あの律して崩すことの無かった桂木の甘い甘い願い。着替えて見送る事をせず、ベッドに突っ伏したまま、見送る桂木は色っぽかったですね♡ そのしどけなさに暁人さまも相当後ろ髪を引かれたに違いありません。

暁人さまの渡英、2年後の帰国まで描かれていたのも嬉しかった。表紙の暁人さまの髪がなぜ、そんなに長いのかと思っていたのですが、あまり整える事もなく、ただ伸ばしていたのでしょう。 epilogue で、台詞は無いですが、「髪を切れ」と言っている様な桂木が微笑ましい。私も、暁人さまは短い方が好きです。

また、桂木が先代の暁直さまに認められたいと願い、叶わなかったと思い続けて来たこと、幼ない暁人さまと過ごした『悲観的だと思って来た』状況を『今、思えば、私は…。幸せな処に身を置いていたのだ。』と思えるまでになれた事。桂木の心を救った物語にもなっていて。とても幸せな気持ちになれました。願わくば、渡英はハネムーンでは無く、桂木にとっても学ぶことがあったとも思うので、行かせてあげても良かったのに、とか。この2年の間に「時間はありません。来週には紡績工場の役員会に出るので。」と、(昔の船旅だから無理⁈ どれくらいかけて行くのかしら。)突然慌しく会いに来る桂木、とか。そういうのも見てみたかったです。二人のあまあま後日談は、来年刊行予定の特別版を期待して。やはり、読めて良かったと思うことにします。
でもやっぱり寂しいな。寂しくてたまらないよ‼︎(涙)

5

他に類をみない名作中の名作です!!

連載から10年…長いようであっという間に過ぎて、いや…長い10年でしたね。日高ショーコ先生本当にお疲れさまでした!!そして、何より心から感謝申し上げます。こんなきれいで素敵な世界、私は知りませんでした。

8巻というBL作品の中では長い巻数で、時代は明治…現代とは違う制度や価値観の中ですすむ内容には正直難しさもあり、なかなか意図や考えがわからずに、何度か読み返して理解することもありました。言葉や制度の意味がわからず、調べた事も何度かありました。
だからこそ、「憂鬱な朝」という世界にどっぷりとハマり、8巻を手にした時は読む前から胸に熱いものが込み上げました。

鎌倉で過ごした日々は「憂鬱な朝」の中では驚くほどに穏やかでゆっくりとして、お互い身体だけじゃなく心に触れ、ゆっくりとしっかりと強く繋がってゆく様が温かく心地よく伝わりました…暁人さまじゃないけど、本当に夢の様でしたね。そして、私も高之さん雨宮と同様、絶対に桂木は暁人さまと英国には行かないと思っていました。夢の中では生きていけない、現実で…その言葉通り己の足で立ち歩んでいけるよう、先を見つめながらも今をしっかりと生きていくふたりが輝いて見えました。二人の選んだ各々の道は、何度も曲がりぶつかり遠くなりながらも、最後は真っ直ぐ太い一本道になったように感じました。

8巻を手にとって、表紙の銀色に輝く「憂鬱な朝」の文字と二人の手をとる姿に胸が熱くなり、読みながら暁人さまの桂木を抱きしめる手の強さに桂木の表情にぐッときて、出港前に身体を重ねる二人に顔がほころび、船内で泣き崩れる暁人さまにもらい泣き、ラストの笑顔で手を繋いで肩を並べ歩き始める暁人と智之にもう…もうもうっ、胸が痛くなりました。終始、涙で視界はボヤけっぱなしでした…心が感じて動いて感動ですもんね、本当に感動しっぱなし。

銀時計に刻まれた通り、名にも生にも家にもとらわれない、何ものにもくくられない従わない「暁人」と「智之」は本当に眩しいくらいでした!!

あと、脇勢のそれぞれもしっかりと描かれています。総一朗とこふさ…予想的中し、やはり嬉しい結末でした。

日高ショーコ先生、完結おめでとうございます!!
私の中に、ずーーーっと暁人と智之は生きております。

8

全部完璧です。ありがとうございます。

この作品に出会えて幸せです。

2人とも強くて男らしいのが大好きです。
遺言書を託して旅立つ暁人と、旅券を渡されてなお付いては行かない桂木。
まさに夫婦の中に男が2人、リーダーが2人と言う感じ。
守り守られる関係、また主人と従者の関係ではなく
肩を並べて歩く関係。これが2人の苦悩と努力によって
達成されたのだと思うと本当に感慨深いです。

ハピエンで良かった!
えっちしてる時に桂木が好きって言ったし、気持ちいいって言った\(^o^)/
何かもうそれだけで泣けるぐらい2人ともよくここまで頑張りました。。
あと、「2年なんて短いよ」と強がった後に
1人でガン泣きする暁人がどこまでも尊いです・・・

2年後も書いてくださってありがとうございます。
感謝しかないです。

8

これ以上なく好きな作品でした。

二人の葛藤とか思慕とかが入り乱れた作風が大好きな作品でした。最後は今までの伏線が回収され綺麗にまとめられていました。

桂木の渡英に関する展開も良かったし、これまでにないくらいの蜜月関係もあったし、新しい当主を受け入れる事ができた結末も良かったです。

だだ、既刊での複雑な心理描写を加えた展開が好きだったせいもあり、そして大好きな作品なだけあって最終回に対するハードルが上がってしまい、8巻の足早な展開に少し物足りなさも感じました。

既刊で終わりがどんどん伸びているというあとがきを読んでいたせいか、この巻はどうにかして終わらせるために描いている印象を受けたせいもあるのかもしれません。

また、日本に残った桂木も好きだと思ったのですが、なんとなく元々視野の広い暁人よりも桂木にこそ渡英して広い世界を見て欲しかった感も残りました。

この気になるところは好きだからこそ気になったところなので、最終回にここまで綺麗にまとめられた作品はやはり神作品だと感じます。

3

明けない夜の果て 特別な朝

「朝が来なければいいと思いました」

 いよいよこの長く壮麗な物語も終章を迎え、この桂木の台詞で、タイトルの意味がようやくストン、と胸に落ちました。「憂鬱な朝」って、相愛の恋人同士が甘い一夜を過ごしたあとの「後朝(きぬぎぬ)の別れ」のせつなさを指していたんですね。

 物語序盤の桂木は、昼は子爵家の家令職と暁人さまの教育係を完璧にこなしつつ、夜は男女問わず上流階級の情人たちのベッドを渡り歩く、かなりやさぐれた日々を過ごしてました。
 「たった一人で…明けない夜を、ただ彷徨って 朝の光を浴びることもなく…」
 美貌の芸者として数多の浮名を流した挙げ句、父親の分からない子として彼を産んだ実母に自らの姿を重ね合わせて。この頃の彼にとって朝の光は憂鬱じゃなくてむしろ救いだったかもしれない。情事の後の身体は怠く、重くても、職務に追われる日中は、底なしの孤独を忘れていられたから。
 
 曲折の末、暁人と想いを通じ合わせてからも、桂木はいつもどこかしら身構えていた。全身全霊で恋に溺れるのを自らに禁じていた。決して寝顔は見せない。本音も言わない。まるでいつか訪れる破局を見越しているかのように。暁人の愛が信じられないというのではない。恋と当主の責務の両立も困難には違いないが、ふたり力を合わせれば、越えられない壁ではなさそうだ。それでも、末永くふたり共にある未来を無邪気に思い描けるほど、おめでたい生き方を彼はしてこなかった。「僕はお前を幸せにしたいんだ」繰り返し暁人は言ってくれたけど、誰より桂木自身が、自分が幸せになる未来を信じ切れていなかったのだ。

 桂木のトラウマの根源、それはやはり、先代暁直子爵との因縁抜きには考えられない。桂木のため良かれと思って、きくが暁直氏に差し出した蓄妾届。それが彼の運命を大きく狂わせた。理不尽極まりないようだが、誰かにことさら非があるわけでもない。それでも、信じていたものが一瞬で覆ってしまうことは、確かにあるのだ。

 だから今回、すべての始まりである鎌倉の地を訪れて、自分の歩いてきた道と向き合う時間が、どうしても彼には必要だった。桂木を裏切り者と決めつけて、冷たく突き放したまま逝ってしまった暁直氏。でも暁人の目を通してみると、違う一面も見えてくる。何より彼は最期に、自分の一番大切なものすべて、子爵家の全権と最愛の一人息子の教育を、桂木一人にゆだねて逝ったのだ。傲慢だけど聡い暁直氏。桂木が過去の自分の仕打ちを恨んでいて、お家を乗っ取り暁人に害をなす可能性に思い至らなかったはずはない。それでも彼は桂木に託した。桂木が結局、自ら手塩にかけた暁人を裏切れなかったように、暁直氏もまた、最後の最後には自分の育てた子どもを信じたのだ。その重みはきっと桂木にも届いたはず。ずいぶん時間はかかったけれど、自分ももう一度自分自身を、未来を信じてみてもいいんじゃないかと。

 鎌倉から帰還した桂木は、いつも以上に彼らしさを取り戻していて(暁人いわく、「目が覚めた」んだそう)とても彼らしい決断をします。寂しさ半分、でもやっぱあいつならそうするよな、そういうあいつだから好きになったんだし、と納得顔の暁人。そこからは逢えない2年分を先取りする勢いで怒濤のお別れエッチになだれ込みます。ふたりきりでホテルの一室にこもって、誰か来ても追い返して(気の毒な高之氏)、残された時間のぎりぎりまで… 最後の夜明け、桂木が暁人に初めてさらした無防備な寝顔。そして冒頭の一言… そう、憂鬱な朝は、身も心も満たされた幸せな夜を過ごしたからこそ、恋人たちに訪れる特別な時間だったのですね。憂鬱だけど、せつないけれど、この朝はまっすぐふたりの未来に続いている。孤独を抱えて明けない夜をさまよう日々にはもう戻らない。新しい一日が始まる。


 日高先生、そして作品の制作に関わったすべての皆さま、桂木と暁人をこの世に生み出してくれたことに感謝します。おそらくふたりは、BL史上最も美しい(その生き方も含めて)カップルとして永遠にその名を刻まれることでしょう。10年分の眼福をありがとうございました。

12

この作品が収納されている本棚

PAGE TOP
  • 商品購入
  • レビューを見る
  • 評価レビューする
  • 関連作品
  • 攻受データ