ボタンを押すと即立ち読みできます!
班目先生の作品で未読なのはこちらのみとなってしまい、なんだか尻込みしていたけど読んでみました。
「今日あなたに」シリーズから
「明日 君に愛をささやく」に特化してネタバレ含めて書きます。
何度も読み返しました。
読み手によって色々な感想を抱くと思いますが、私の感想を一言で言えば「現時点ではひたすらやるせないけど、希望の光が見える」です。
自分の中では消化しきれない気持ちも含めて、他の読者の方々と語り合いたい気分になる作品です。
ハッピーエンド命の私なので、なんとか希望の光が見えないかと何度か読みましたが
「明日 君に愛をささやく」はメイの中での美里に対する変化の兆しが見えたと思うんです。
メイは三人のサトに愛されたけど、その中で特別な「サト」はサトシでした。
かっこ付きの「サト」が特別な存在として表記されてます。
メイが自分に言い聞かせする途中がキーだと思うんです。
美里にとっての自分は、サトシに対する復讐心とプライドを守る幸せのために存在しており
自分はなぜ美里と一緒にいるかというと美里の役に立つ幸せと、サトシを選ばない事が自殺したサトミへの償いになるためだと考えるメイ。
それに自分のために誰かの気持ちを切り捨てる残酷さとその代償を知ったから、もう二度と誰かが犠牲になるようなことはあってはならない、
だからこれでいいんだ・・
なのに、なぜ、サト(美里)から向けられる愛は痛くて、苦しいのか?とメイは考えます。
それでも俺はサトを愛してる サトを愛していこうと思う。
俺にとって特別な子・・・傷ついた「サト」に小さな幸せをあげるために(→ここから「サト」になってます。)
僕を愛した寂しい眼をした「サト」
ここでメイは気付くんです。
「サト」はどんな顔だったか?
さっきの「サト」は一体どのサトのことを指しているんだ?
今まで彼の中の「サト」はサトシでしか有りえなかったから、こんな疑問を抱くことが異常だと思うんです。
そしてメイの視界にベンチにぽつんと座ってメイを待っているサト(美里)の姿が入ります。
メイは三人のサトはみんな少しずつずるくて愚かだと思っていたのだけど、美里はその中でも少しだけ違っていた事に気づくんです。
他の二人よりも少し優しくて、少し聡くて、少し前を向いていて、少し寂しい人だった・・・と思いながら、美里のいるほうへ向かうのですが、なぜか理由もなく気が焦って次第に歩幅を広げて息急き切って彼の元へと急ぎます。
そして呼びかけるんです。サト、と。(かっこ付きではない普通のサトです。)
振り返った美里をみて メイはなんて都合のいい夢を見てたんだろう・・って気付きます。
美里をすべての(サトシとサトミ)身代わりにしていた自分に気づいて、心が壊れた美里を前に「これが自分の犯した罪だ・・・」と気づきます。
そして美里へ「ごめん・・・」と言う。
ようやく初めてまともに美里と向き合ったんじゃないかなと思います。
心が死んでもはや抜け殻の美里。そこがメイのいう「少しだけ他の二人のサトとは違う」ところであり、サトシとの差なんだと思う。サトシは愛していないアキラの腕の中にいても心壊れない。
メイにとって身代わりでしかなかったこの恋は美里の心を殺してしまいました。
だからこそ足早に近づいたメイは彼に「ミサト」と呼びかけてあげて欲しかったんだけど、この呼びかけ時点ではまだ自分の罪を自覚していないので「サト」と呼びかけてしまったのではないかなと思います
今はまだ贖罪の意識で美里が許してくれる限りそばにいることを誓っているようですがそのうち「サト」に関わるものとは決別して、
「明日 君に愛をささやく」」のタイトル通り、明日=未来・これからは愛をささやいてくれて「ミサト」と名前を呼んで、美里の心が蘇るといいなぁと心の奥底から熱く熱く妄想しております。
------------
表題作 こちらもネタバレしてます。
冒頭からのほほん&博愛精神に富んだ攻めというイメージでずっと描かれていただけに
街中でのやり取りの際、感情を剥き出しに受けに執着する姿が格別際立って見えました。あそこの場面は劇的ですね。
愛されたいと思ってもいい、人を愛してもいい、ということがわかった受け、永遠に幸せになってほしいです。
肉欲が絡むと、情欲や愛憎がまじっていつか別れてしまう時がくるかもしれないから、一切それを省いた清らかな真綿でくるむような愛を与えて、家族でいれば別れることがないと考えてたなんてねぇ。泣けます。
だからって彼氏を家に住まわせたりしていいのか?そこはずーっと受けに対する思いを抱えたまま悶々として欲しかった・・とも思ったのですが
受けは性に関する知識が皆無で、彼氏がいるということが性的にどういう意味があるのか、全く理解していなかったようなのでまぁいいか・・となぜか思ってしまったり、どうしようもなく湧き上がる獣のような愛をなだめるために、代替え品として他の人と仕方ないか・・・聖人君子ではないし攻めも若いのでそりゃしたいだろうから仕方ないか・・・でもそこも我慢して欲しかった・・・などそこらへんが自分の中でグルグルします。
最初に読んだ時は、なんて重い作品だろう、なんて悲しい愛し方だろう…と。
あの時に評価していたら、多分、中立だったと思います。
でも、斑目先生のコメディや他の沢山の作家さんの作品に触れた後、ふと読み返してみました。
何度も何度も読み返しているうちに、いつの間にか、評価は神になりました。
※ここからは、かなりネタばれです。
ビューティフル…の方は、はじめどうしても棗の気持ちが理解できなくて。
途中まで読んでいて、朝陽を救いたいのか?本当はもう放棄したいのか?
最後の告白も、なかなか理解ができなくて。
そんならなんで、朝陽の居場所を脅かすような男を家に入れたのか?
どうしてまた、朝陽から居場所を取り上げるのか?
どうして朝陽にあんなに冷たく出来たのか?と。
でも、棗側からの視点で見ると、なるほどなぁと、ストンと落ちてきました。
はじめは親代わりに。
でも、自分が注ぐ愛情が、どんどん深く濃いものに変化していって。
それを悟られまいと、色んな人と恋仲になって。
朝陽を綺麗なまま、永遠の存在のまま保とうとして。
でも雪の夜、自分の作った二人の中の秩序を、自分で壊してしまった。
棗は内心、錯乱状態だったんでしょうね。
もう、朝陽がどんなに悲しんでいても、その事に重きを置く事も出来ないほど。
あまりのパニックに、かつての恋人も、目の前の愛する人も、自分さえも深く傷つけてしまって。
朝陽をあのまま見付けられなかったら、別の傷で壊れてしまっていたかもしれない。
だから、その前に見つけて、本当の気持ちを吐き出せて良かった。
悲しいけれど、三人それぞれにアサヒが射して終わるので、ほっとしました。
今日あなたに…の方は。
実はこの作品、はじめ読んだ時はかなり苦手でした。
でも、読めば読むほど深く突き刺さってくる何かがありました。
今は、こちらの作品の方がより好きです。
三人の悲しいサトと、三人から愛され、愛に翻弄されたメイと。
それぞれの愛、それぞれの罪、それぞれの罰…。
永遠の別れを選んだサト、ピュアな心を自分で汚してしまったサト、自分の罪深さに心が死んでしまったサト。
三人のサトに愛されて、愛してしまったメイ。
アキラも含めて登場人物、全員好きです。
でもやはり、ミサトが一番好きかな?
一番傷つきやすくて、ズル賢くて、卑怯な自分に正直で。
新しい愛情に気付いたからこそ、別れを告げて。
でも、別のサトを愛していると告げるメイの手を、振りほどけなかった。
振りほどけないのに、抱き締められているのに、心は凍えて、死んでしまう。
ミサトがもっと本当の意味でズルければ。
サトシのように、傷ついても差しのべられる愛の中で別の誰かを愛せれば。
そうすれば、心が死んでしまう事など無かったのに。
皆それぞれに深く愛していて、間違っていて、傷ついていて。
ただ、ミサトは一番、脆い心だったんでしょうね。
メイを突き放すことも、永遠の別れを選ぶ事も、一人になる事も出来ない。
ただ、抜け殻になってそこにいる。
この話を書き下ろしまで一気に読めたからこそ、深く共鳴したんでしょうね。
そして、手放さずに時間を置いて読み返す事が出来たので。
今は、この本に出会えて良かったなぁ、と思います。
斑目先生、ありがとう。
「ビューティフルデイズ」は叔父と血の繋がらない甥のお話。
とにかく切ない。BLで泣くとは思いませんでした。
だらしない棗としっかり者の朝陽 叔父と甥として暮らしてきた。
でも棗が連れてきた元恋人の登場でバランスが崩れて。
親に捨てられた過去がある朝陽。棗に拾われて色々な感情を知って
棗を好きだと気付いて でも拒絶されて
また捨てられないために自分を偽って身をひこうとして そこに棗が表れて
棗が朝陽を引き留めるシーンは涙なしでは読めません。
家族ならずっと一緒に生きていける だから朝陽の気持ちを拒絶した。
朝陽を自由にしようとした。 でも 愛しているから 離したくない。
今 自分があるのは棗のおかげ そんな自分が棗と離れて生きてはいけない。
お互いの気持ちを知って そしてやっと結ばれる二人。
ラストシーンは抱き合って終わっているのですが
もう少し先が欲しかった。 もう少し幸せそうな二人で終わって欲しかった。
ぜひ続編を書いて欲しいお話です。
「アナザーライフ」
棗の元恋人のその後の話 良い人なの とても
自分のせいで朝陽を悲しませたことを悔やんで涙を流すほど良い人なの。
だから幸せになって欲しい。
忘れさせてみせるから そうなって欲しいです。
「今日あなたに別れを告げます」
3部作です。色んな解釈の仕方があるお話だと思います
私はハッピーエンドだと思っています。
違う人を想いながら恋人と生きていく。
ミサトは心が壊れてしまってもメイがずっとそばに居て
サトシにはすべてを受け止めてくれるアキラが居て。
いつか恋の芽が芽吹くと信じて
やっぱり終わり方が・・・もう少し幸せそうな感じで終わって欲しかった。
基本切ない系が苦手なので。 幸せそうに終わって欲しかった。
でもほかの方はバッドエンドとして読んでいるのかも。
かわいい悪魔で斑目ヒロさんにハマり、ビューティフルデイズ、というより「明日君に愛をささやく」に衝撃を受けました。
こんなに泣きながら読んだせつない話は初めてです。
一人ベンチに座ってメイを待つ美里の後ろ姿を見た時、切なくて痛々しくて愛おしくて涙が止まりませんでした。
メイも最後は、しっかり美里と向き合っていたので嬉しかった。
是非続編で美里がメイに愛されて幸せになるところが読みたい!是非!
メイのそばに居ながらも一人絶望の中にいる美里にヤキモキしながらどんどん嵌っていくメイを見たい。久しぶりに心に深く残る作品に出会いました。
親の愛情に恵まれなかった朝陽と私生活が全くダメな棗。
朝陽の過去がじわりじわりと絡みついて気持ちの整理が難しい読後感です。
朝陽のアイデンティティの全てが棗の愛情で作り上げられているのに、朝陽の棗に向ける愛情はいらない。
そんな2人の間に広海が加わった生活が始まり、不安定な足元の脆さにどこにも行けない孤独感。
棗の望む朝陽で在ろうと健気に振舞う姿はどうしようもない程切なくて仕方ありません。
棗の大きな愛情と優しさに包まれて幸あれと願うばかりです。
今日・明日・昨日の3部作。続けて読んでも全く見劣りしません。
(でもひと呼吸おきましたが)
それぞれの恋人が絡んでもつれて、気づけば自己満足と嫉妬の毒でゆっくりと麻痺していく。
とてもドギツクテ、この関係を考えるほど思考の沼にハマっていく。
そんな怖さに眠れなくなりました。