ボタンを押すと即立ち読みできます!
【あらすじ】
作家の辻浦は、野辺送りの葬列に遭遇。
遺族がもっていた遺影を目にし、まだ学生じゃないかと同情する。
その夜、夢に出てきたのは、遺影の少年。
少年は、辻浦と接吻しながら、
「叶えて」「僕のせいだった」等の謎めいた言葉を繰り返す。
翌日、少年の墓を探し出し、手を合わせていると
故人と瓜二つの少年が現れる。
彼は、階段を踏み外して死んだ少年・惣太の弟で、
要と名乗った。
聞けば、兄の惣太も要も、辻浦の作品の愛読者であったと。
死者が結び付けた縁で、二人は度々会うようになるが…。
【感想】
死者に囚われる人々を描いた作品、という意味では
同作者の「追憶忌憚」と似ているが、
話としてはこちらの方が、ハラハラする展開で面白く感じる。
辻浦と要、そして惣太。
誰もが少しずつ狂っていて、一体この先どうなるのか
気になる幕引きです。
今のところ、要の不憫さが顕著です。
ことあるごとに優秀な兄と自分を比べる両親に傷つき、
兄と会ったこともない辻浦さえも、
夢の中の惣太に魅入られ、自分ではなく惣太を見ている。
ただ、不憫だけど、
要は要で壊れているため…、話がどう転ぶか分かりません。
辻浦の夢に現れる惣太は何を訴えたいのか。
辻浦と要が、惣太の呪縛から解放され、お互いを見ることができる日はくるのか。
「死人が憎い」
ラストの要の涙に切なさを覚えると同時に、
添えられた独白にゾクゾクッと恐ろしい情念も感じます。
後編に続きます。