特典付き
初恋は実るのか?
ずっと好きだった近所のおにいさん。
最近離婚したんだってよ…
こんな風なこと言われたらどうしますか?
私なら、どうするかなぁ。自分がシングルで、なおかつ気持ちがその人にあるなら頑張ってみようとか、現在を知りたいと思うだろうと。
だから、至の発想は自然なんです。私はBL好きですが、恋愛対象は異性。
周りくどいけど、つまり好きになればノンケとかゲイは余り関係ないのだと。人が人を好きになったら、好きな気持ちは嘘にはなりませんもんね。
至が、ずっと好きだった理とあっさりと付き合い始めるけど、それも10年の幼馴染みの時間が有ってこそ。
後に、理がゲイバーで「ゲイとかノンケってなんだ」みたいに話してちゃんと人として至が好きなんだ、隔たりはないと気持ちを表明するところ。
いやはや。痺れました!理、格好良い!
さらりと、そして至にメロメロなんだな…という場面が随所に出てきていて。
至が、理を好きでいた理由がわかりました。
後に理が『スーパー彼氏』と呼ばれるくらいになるとか、最高の初恋の実り方だと思いましたね。
この2人のえっちが、予想を超えてエロかったのも嬉しかったです。至がエロい。で、理も攻めの才能有ったのね…とか読みながらにやけました。
10年かけた初恋。とても良かった。ときめきました。
表紙で受ける印象と読中の印象はきっと違うと思います。
爽やかなカバーデザインとは裏腹に、内容は結構ディープ。
ディープと言っても、暗いとか、痛いとか、奇想天外とかでは無くて、むしろ世界観は平和で地味寄り。
なのに、人間の不安定な所、突きつけられると地味に弱い所、掴みどころが無かったり、どうしようもなかったりする所が、淡々と、しかし丁寧に切り取られているから、気づいた時には心に深く入り込んでいる。
そういう意味でのディープ。
ふんわりキラキラポップとかゴージャスドラマティックとかとは正反対な世界観。
盛らないのに、日常系で深く刺せる作品って個人的にはすごく好みです。
中学時代に告白して玉砕した年上の幼馴染まこちゃんがスピード離婚したと聞いて再開してみることにした受の至。
ノリか勢いかあれよあれよと付き合ってもらえることに。
身体の相性も良いし幸せと思っていたけど、いざ付き合ってみると不安や懸念が尽きなくて、何だか苦しくなってきて…
あらすじだけだと本当地味。
付き合うまでの焦れ焦れなどは気持ちいいほどに皆無。
でも、感情の揺れるポイントが、何とも痒い所に手が届く感じで、良いんですよ。
当たり前なんだけど、派手じゃないんだけど、そこも拾って欲しかったんだよね!という声に応えたかのようなセンスのある切り込み方。
例えば中盤のシーン。
受の働くゲイバーに女性の同僚と遊びに来た攻。
何とその日は女装デー。
本当は恋人なのにわざわざ幼馴染ですと自己紹介する女装姿の受。
訂正するでもなくさらっとそのまま流しちゃう攻。
そのまま家に帰ってから女装可愛かったねーと言っちゃう攻。
なら今度から女装してする?やっぱ男むり?とキレだす受。
(なんで女装しているタイミングで女連れてくる?)
(同僚にカムアウトする奴なんかいる?)
(どうせもこの恋愛も終わるんでしょ?)
ぐらぐらですね。
このあと2週間の音信不通から別れ話寸前まで発展…
この話、壁視点的にはどっちもどっち。
各々の常識と論理と感覚で行動していた自然の成り行きだと思う。
でも、だからこそぶつかる、拗れる、揺れる。
受がイライラするのもわかる。
受がなんでキレてるのかわからなくて攻が戸惑うのもわかる。
もう、全体的にわかりすぎて辛い。
辛くてどんよりモードなのに、壁的にはこの自然な衝突を見ているのもすごく楽しかったりする。
受、攻、壁視点どこから読んでもシラケない世界観は見事だし、読み手に取っては贅沢でしかないですね。
おそらく、この魅力的な世界観の秘密は、言葉の選び方と並べ方にもあると思いました。
「てか」「まじ」「つきあお」「うそ」「つまんな」
普段使いの砕けた言葉の数々。
だけどフィクション作品のセリフにするには、抑揚が無くなりすぎる言葉の数々。
ここまで多用する作品は正直珍しいのでは?
でも、この盛らない、生っぽい言葉の掛け合いと、付き合いたてなのに拗らせている恋人同士の気持ちの揺らぎが絶妙に好相性なんです。
リアリティは増し、読み疲れは無くなり、ローテンションなのに気持ちのアップダウンがガンガン伝わってくるという不思議な現象に引き込まれます。
さて、最終的にこの作品では、
他人同士が付き合い出すと、色々な誤解やひずみが出てくるけど、完全に埋めるのは難しい。
それでも努力は必要だったよねって感じになるんですが(なんか山崎まさよしのセロリみたいになってきた)、
「俺もお前もバカ、俺の方がちょびっとだけバカ」
という超シンプルな言葉にまとめて仕切り直してくれるんですよね。
ここ、めちゃめちゃ萌えました。
もう前半結構だらしないし、後半の初デートもめちゃめちゃなんだけど、
きちんと己を省み、相手と向き合う努力ができるようになった攻は基本最強です。
今回の一件で攻様度を上げつつ、まこちゃん流常識の良い所はそのままに、ちょっと頭の固い至くんの幸せの扉を開いてあげて欲しいなーと思いました。
なんてことない日常
でも当人にとっては恋愛の大劇場
嘘っぽくないローテンションと壁視点万歳!なお勧め作品でした。
どうしようもない奴の男前発言の威力!
サクッと振られた初恋相手が離婚、再会から軽いノリで付き合うことに。
嬉しいけど不安、繋ぎ止めたいけど…って受けが思い悩むとこから、言葉にしないとと実行する攻めの甘潔さ!ちょっと方言の入った言葉での2人の掛け合いが楽しく、2人の可愛さに悶えました。
『あれよ、あれよ』と『ミーのキラー』が良かったので、作家買い。
「男性」というものを描くのがすごく巧い作家さんだなあと思います。
手抜きしているわけじゃないけど、基本的に気が利かない。
行動で伝わっている「つもり」だから、あえて言葉にしない。
自分が空気を読むのは苦手だけど、「流れ」で理解してもらおうとする。
そんな「よくいる男性」像を具現化したようなまこちゃん(29)。
彼女の回転が早い、付き合っても最長5ヶ月、結婚しても1年経たずに離婚のバツイチです。
そんなまこちゃんを好きで、14才のときに告白して玉砕したのが、6つ年下の幼馴染み・至(24)。
叶わなかった初恋を引きずりつつ、適度に遊んではいる、ゲイバーというわけではないけどゲイばかり集うバーで働いている青年です。
まこちゃんの離婚をきっかけに付き合うことになった2人ですが、うまくいかない。
それはなぜか。
至が怖がりすぎているからです。
自分は付き合うこと自体が初めてだし、今までのまこちゃんの短い恋愛遍歴がデータとして頭に入っているせいで、「飽きられたら終わり」という不安が常に頭の中にある。
だから繋ぎ止めようとして誘う。とにかく誘う。誘いまくる。
一方のまこちゃんは豊富な交際経験も結婚歴もあるけど、この人、別れても自分の何が悪かったか気付けないタイプなんです。
気付かない、分からない、でも次が出来るからいいやって感じで顧みない。
至に違和感があっても聞かないし、自分の考えも言わない。
「会えてる」=「うまく行ってる」という表面しか見えない人なんですよ。
決定的な出来事の予兆のところで、読者はもうみんな分かってましたね、拗れるぞと。
そこからの心理描写と会話、展開がすごかった。
読みながら無意識に頷いてしまう説得力。
無頓着すぎて分からなかったことを知る。
初めてで不安ばかりだった気持ちを相手にぶつける。
からだを重ねるんじゃなくて、ちゃんと話をする。
そうやって土台をきちんと作り直した2人が迎えたラストが、もう!!
男性特有の空気の読めなさを発揮するまこちゃん、最高です。無双状態。
そこで改めて読者も気付く。
そうだ、マイノリティだからって壁を作ったり、身構えたり、過剰に反応するのは、マイノリティ側の人こそ意識しすぎている面もあるよね、と。
いろいろな気付きがありました。
良い台詞もたくさんあって、そこから切なさをもらえたり、ジリジリ感もありました。
ちょっと目の表現が爬虫類っぽいときがあるけれど、爬虫類苦手なわたしが作家買いするくらいなので、きっとみなさま、大丈夫なはず。
これは買いです。
初読み作家さまです。
表紙の雰囲気が良かったので購入。
あっさりめでキャラクターの瞳が印象的な絵柄です。
以下、内容について。
10年越しの片思いをしている至(いたる)。
6つ年上のノンケの幼馴染・理(まこと)が離婚した事を機に再会し、冗談交じりに「付き合わない?」と言うとまさかのOKをもらい付き合うことに…というお話です。
あれよあれよとサクサクっと付き合い、身体の関係までいってしまうので、「えっ、もう?!」となってしまうのですが…
長年の片思いが呆気なく成就し、初めはこんなことがあるなんて!と喜びつつも、だんだんとノンケの理は本当に自分のことが好きなのか?と不安になっていく至が健気で切ない。
理の女性関係のサイクルの早さを見ていればそうなるだろうなあと思います。
理は良くも悪くも淡々としているというか言葉が少ないので、相手にあまり伝わらず不安にさせてしまうんですよね。
どこでどう好きになったの?と感じてしまうのは仕方がないのかも。
至も自分の中でだけ悩んで口に出すタイプではないようなので、どっちもどっちというか…理の言葉を借りればどっちもバカなんです。理の方がちょっとバカ。
理が至から不安をぶつけられてからは、今まであまり見えて来なかった彼の心情も見えてきますし、改心しようとしている姿も(遅いですけどね)良く見えました。
これだけだと理がとんでもないクズのように聞こえてしまいますが、男同士だゲイだノンケだで線引き・ジャンル分けをしようとしない堂々とした所は良いなと思いましたし、考えに考えたデートプランが想像通りにいかずにヘコむ姿も可愛らしかったです。
「まだ俺のことを好きでいてくれた至に馬鹿みたいにときめいた」
「俺の好きは今まで誰にもどこにも届いてなかったのかもな」
「ゲイとかノンケとか分けられたらなんて言えばいいのかわからない」
「俺は男の至が好きなだけ」
「(ノンケだから)至に自分とは違うって思われているのは嫌だな」
この辺りの理の台詞はストレートで好きでした。
言葉にしなくては気持ちは伝わらないと知ってからは、こちらも至が赤面するくらいのどストレートな口説き文句でメロメロにさせてしまいます。
この2人、この後周りが恥ずかしいくらいのものすごいバカップルになりそう…(笑)
今度は理が至に夢中になって至無しではいられないくらいになればいいと思います。
その他のキャラクターは、ゲイバーの人々と理の同僚女性・河原さん。
どのキャラクターも嫌な感じの人は居ませんし、ズバッと言う事は言う人が多いので読んでいてスカッとします!
正直、人によっては合う合わないが分かれそうな作品かな?とは思いますが、私は好きでした!
攻めが受けにだんだん夢中になっていく姿が好きな方や、一途で健気な受けがお好きな方におすすめです。