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絵本に囚われた魔人×スランプ中の小説家の、不思議な恋の千夜一夜♡
絵本から現れた魔人と、スランプ中の作家による、甘くて優しくて心に響く、とても素敵なお話でした。
これ、あらすじから、完全にギャグだと思ってたんですよね。
いや、絵本から現れた魔人に「ご主人様は可愛いじゃねえか」的に抱かれちゃうのね!とかって。
それが、包容力があって主人公をあたたかく見守る魔人に、自分と向き合い弱さを乗り越えて行く主人公と、すごくいいお話だった。
いやね、終盤で魔人が最後に願った事が、あまりに切ないしいじらしくて泣けちゃうんですよ。
こういうお話、めっちゃ弱いんですよ。
やめてえぇぇぇぇ!ってなっちゃうじゃないかよ。
若干、ラストが都合良すぎる気がするし、主人公が思い悩む部分は、読んでてしんどくもある。
でも、個人的にはすごくツボで感動的なお話でした。
ザックリした内容です。
スランプ中の作家・来栖。
図書館で見つけた不思議な絵本に何気なく触ると、なんと煙と共に魔人が現れたんですね。
そこで、三百年ぶりに目覚めた魔人・シンから、「三つの願いを叶えてやる」と言われますがー・・・と言うものです。
で、作家と言う仕事がら、突然現れたシンを質問責めにする来栖。
すると、「俺の事を知りたいなら分からせてやる」と、シンは来栖を組み敷いてと言う流れ。
これ、「えっ? ここでエッチ突入?(最後まではやっていません)」と、最初は展開が早くてビックリするんですよね。
あと、主人公である来栖ですが、コミュ障の引きこもりと、結構な陰キャだったりします。
えーと、彼はスランプ中と言う設定なので、鬱々と思い悩む様なんかが、結構重いんですよ。
いや、読んでてしんどいと言うか。
まぁそんなワケで、主人公がグルグルやってるのが苦手と言う方にオススメしかねるのですが。
ただこちら、ここから主人公が変化して行くのが、面白いと思うんですよね。
また、攻めである魔人・シンがですね、すごく包容力のあるいい男でして。
洗濯して料理を作ってと来栖の面倒を細々と見て、また来栖の胸の内を聞き、彼の頑張りを認めてあげる。
こう、めちゃくちゃ甘いんですよ。
めちゃくちゃスパダリなんですよ。
超頼りになる素敵な攻めなんですよ。
いや、シンのバックボーンなんかも語られるんですが、一人絵本の世界に閉じ込められと、なかなか過酷で気の毒な人生なんですよね。
で、ここから少しずつ自分の殻を破り、前向きになって行く来栖。
自分を支えてあたたかく見守ってくれるシンに、惹かれて行くんですね。
しかし、ずっと絵本の外の世界に居続けたシンは、魔力が絶えてしまい・・・と続きます。
これ、シンが最後に願った事が、めちゃくちゃ切なくて。
「消えるまで一緒に居たい」なんですよね。
彼にとって、絵本の世界に戻るより、来栖のそばで消えたいなんですよね。
個人的に、こういう展開ってめっちゃ弱いんですよ。
泣けて来てしまう。
この後ですが、ちゃんとハッピーエンドです。
ちょっと都合良すぎなオチではあると思うんですけど、二人が幸せだから全然問題無いです。
ちなみに、作家である来栖が絵本に新しい物語とか書いちゃうってオチでしょと思っていたら、全然違いましたよ。
まぁそんな感じで、主人公がグルグルやりすぎてて若干しんどい部分もあるし、展開も早い気がする。
ただ、それを含めても、とても好みの個人的ツボ作品でした。
心優しい魔人と心優しく臆病な大人の、まるでお伽話のような大人の甘いラブストーリーです。
表紙とあらすじから、魔人といえば…と、えろえろなものを勝手に想像してしまっていたんです。
想像してた内容を良い意味で裏切る、じんわりと胸があたたかくなるようなとても優しいお話で、ああ読んで良かったなと思える素敵な作品でした。
メインキャラクターは、ランプの魔人ならぬ絵本の魔人シンと、デビュー13年を迎えスランプに陥っている小説家の佳。
以下、ざっくりとしたあらすじです。
ある日、スランプ中の佳が気分転換に訪れた図書館で古びた絵本と出会います。
どうにも気になった佳は家に持ち帰ることに。
日本語ではない、けれど他国の文字とも違う…
不思議に思いながら何気なく絵本をなぞると、突然煙が立ち上がり美しい褐色の魔人が現れ
「お前が新しいご主人か。おはよう、よい目覚めをありがとう」
と、物語は始まります。
さて、読み終えての感想を。
シンも佳も本当に優しい魔人と人間なのが随所に見えて、読んでいて終始心地が良かった。
「早く願いを言え!」とは言わず、「気の長いご主人だと分かった。深く理解したいから側にいたい」「寂しそうに見えるが、今の俺にはまだ口出しをする権利はない。だったらせめて寝食は近くありたい」と、無理矢理押し付けることなく、さり気なく日常の中に自然と溶け込んでいくシン。
正直、こんなに優しく包容力のある魔人は見たことがなかったです。
本当にさり気なく、するっと佳を包み込んでしまいます。
スランプを抱えながら、あれほど頑なに外界との接触を拒み、自分の中の陰鬱とした城に籠もっていた佳。
シンと共に過ごす日々の中で良い刺激を受け、一歩また一歩と外の世界へと踏み出して行くのが見どころのひとつかなと思います。
ある程度の年齢になると、なんとなくこのままじゃ良くないと思っていても行動が出来なかったり、今まで守りに入っていたものをぶち壊して新しいことにチャレンジするのって本当に勇気がいることだと思うんです。
小さな何かがきっかけで人生は豊かになるのかもしれない。
シンの影響は少なからずあるものの、一歩踏み出したのは佳自身の選択で…彼の前に進もうとする姿と、溢れ出る優しさが眩しくて好きでした。
SNSを流し見しながらの虚無感もわかるなあと思いました。
一方、魔人となってから数百年。
故郷をとうに失い、人々の願いをひたすらに叶え続け、絵本に戻れば1人きりで永遠の時を生きて来たシン。
数多の願いを叶えても、自身の願いは叶うはずもなく、皆一様に願い事を3つ言っては去っていくだけ。
誰も胸の裡を聞いてくれることが無いまま、すべてを諦めていたシンを佳だけが呪いと暗闇の世界から救ってくれた。
佳が成長をするだけではなく、シンも佳に救われるという、どちらか一方だけではないのがこのお話の素敵なところだなと思います。
本編終了後のシン視点での番外編が幸せそうですごく良かった。
このままずっと、人としての命が尽きるその日まで幸せに生きてほしくなる2人でした。
あとがきで先生も仰っていましたが、またこの関係性でぜひ読んでみたい…!
そして、佳の職業が小説家ということで、作家ならではの苦悩や葛藤が丁寧に描かれていて、個人的にはここがものすごく読み応えがあって面白かったですね。
紙や電子、各々の作風や流行り廃り、売れる売れない等。
若手もベテラン作家もそれぞれ悩みを抱え、もがきながら必死に新しい作品を生み出している…
いつも楽しく読ませて頂いている作品達も、作家さま方がそうやって魂を込めて書かれているのだろうなと想像し、改めて物語を読める幸せとありがたみを感じました。
小説が読めるって本当に素晴らしくて幸せなことです。
表紙の表情に惹かれて購入。小説家さんのお話が好きで、執筆関係の部分が沁みたので萌2にしました。秀先生の「他人同士」がお好きだった方は嬉しいのでは?と思ったお話、本編240Pほど+攻め視点の後日談15Pほど+あとがき。
代表作のバイオレンスアクションものをシリーズとして書いている小説家の佳(けい)。なーんとなくスランプを感じて気分転換に向かった図書館で、バーコードも付いていない古い絵本を見つけます。馴染みの司書さんに頼んで持って帰り、家で頁をめくっていると・・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
吉坂(受けの担当編集者)、向井原(ベテラン小説家)、奥野(新進小説家)、あとちょこちょこいますが割愛。
++好きだったところ
絵本から出てきた魔人が3つ願いを叶えてやるって、いわゆるランプの精ですね。
なんだけど、佳はあっさり「人気小説家になりたい」等、言わないんです。お話書くのが好きで好きでしょうがないし、ほんとはバイオレンスものではなく純恋愛・心中ネタを書きたいと思っている方。引きこもりがちで何となくスランプになってきたような気がしていて、不安だったのが、魔人のシンが側にいて食事掃除添い寝等々あれこれ面倒みてくれるから・・という王道よりな設定。
王道でも!秀先生の、小説家が葛藤する部分の書きっぷりがすごく良かったんです。向井原先生という先輩格にあたる同業者も出てくるのですが、皆さん一生懸命自分のスタイルと売れ筋とを戦わせている。厳しい世界ですが、そうやって先生方がうんうん唸って出てきたものが面白かった時の嬉しさを、つい想像して沁みました・・・楽しい。
ちっちゃくなった攻めも、ちょっとくたばってへんなりしている攻めも、可愛らしいし、一生懸命頑張る受けも35歳おやじっぽいのに「良いなあ」と思えて、しっとり良い一冊でした!小説家さんがお好きな方にはおススメしたいです。
現代作家と絵本の魔人のお話。
秀先生が、こんなトンチキアラブファンタジー?って驚きと、安定のスパダリ攻めがたっぷりと楽しめて、さらに、小説家さんの創作の苦悩が垣間見れるという、楽しみどころが一杯のお話でした。
來栖が、安易にシンに願いごとせずに、しっかり自分で考えて成長していく姿に好感持てるし、魔人のシンも、それが自分に掛けられた呪いとはいえ、主人の願いを叶えることを優先して無茶なわがままを言ったりしない。
とっても気持ちよくハッピーエンドになる作品、楽しかったです。
絵本の中からモクモクと現れて、ご主人様の願いを三つ叶えましょう…とベタな「魔人」もの設定に驚きでした。
既に某ランプの魔人BLも存在しますし。
ちょっと二番煎じなの〜?なんて構えながら読み出しましたが、途中からはぐんぐん引き込まれました。
というのも、今回の「主人」となった小説家の來栖佳の造形がいい。
高潔…というのは言い過ぎかも。だけど安易に「金持ちになりたい」とか「とにかく売れたい」とかいう普通に小市民が描く願い事をしないんです。
彼は魔人・シンが現れた時、正にスランプを感じていて、創作に関して迷いや不安の只中にいた。それでも佳は創作、大きく言うと生き方そのものに伴う苦しみを安易に三つの願いの中で叶えようとはしない。苦しくても自分でもがいて答えをつかみ、乗り越えようとしているのです。
しかし、シンは長く人間の姿を続けるのは本当は大変で…
佳が願いをなかなか言わないのはシンを便利に使いたいからじゃない、願いを叶えたら消えてしまうから。自分の元からいなくなってしまうから。
シンがいてくれたから内向的でネガティブな自分から脱皮できた事を自覚し、シンこそが呪いを解いて自由になってほしい、と願う佳。
一方シンも今までの主人たちと明らかに違う佳を敬愛し、愛おしく想っていく。
この2人の切ない両片想いと、小説家・クリエイターのリアルな理想と葛藤についての臨場感あふれる描写が非常に良かった。
魔人と人間の恋。結末はどうなる?
自分よりも相手、自分の命すら差し出しても相手の願い・幸せを…という心こそが鍵だった…それは愛の真理。時空も呪いも超えるのですね。
基本ファンタジーってちょっと苦手なんですけど、本作は日常がベースにあっての不思議が紛れ込むお話だったのでなんとかついていけました。
書き下ろし「人間修行期間」はシン視点。シンから見た佳は可愛らしい恋人なんですね。シンが心から佳を愛し、いくらでも甘やかしてやりたい気持ちがものすごく伝わってきました。