• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作虎皇帝の墜ちてきた花嫁

シア,22歳,ナゼリン王国の皇帝で虎の獣人
高梁亮太,22歳,児童養護施設出身のトリマー

その他の収録作品

  • 虎皇帝のかわいい嫉妬
  • あとがき

あらすじ

トリマーの亮太は、車に轢かれそうになった黒猫を助けたことで命を落とし、
人獣や半獣たちが暮らす不思議な世界、ナゼリン王国へと導かれた。
そこで出会ったのは、決闘によって選ばれたという虎の皇帝シア。
初めは己の運命が信じられず絶望した亮太だが、ふかふかの虎姿で寄り添ってくれる頼もしいシアの庇護のもと、トリミングサロンを開くという夢の実現に向けて歩み出すことに。

作品情報

作品名
虎皇帝の墜ちてきた花嫁
著者
今井茶環 
イラスト
兼守美行 
媒体
小説
出版社
三交社
レーベル
ラルーナ文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784815532437
3.6

(18)

(2)

萌々

(9)

(6)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
6
得点
65
評価数
18
平均
3.6 / 5
神率
11.1%

レビュー投稿数6

虎皇帝の溺愛ぶりを堪能して下さい

主人公の亮太は猫を助けた事によりトラックに引かれて亡くなり、その猫の力で異界のナゼリン王国に行くお話でした。

助けた猫が人獣で人間界に行ける不思議な力を持っているとか、ナゼリン王国へ入る関所の不思議さとか、いろいろな動物の特徴を持った人々など冒頭からファンタジー要素満載でとても楽しく読み進めました。

そして皇帝であるシアに紹介され、そのまま気に入られてシアの部屋で暮らし始めるのです。シアから見た亮太がとても魅力的に書かれているので、亮太を側に置き続ける理由が早々に分かってしまいます。

一方で亮太は人間界での暮らしとのギャップに気が付かないうちに疲れていて、火事で女の子を助けた時にふと魔が刺してこのまま死んでしまおうと思ったりします。その時にシアが駆けつけて身の危険も顧みずに亮太に語りかけるのでした。

助かった亮太は改めて生きてて良かったと思い、シアに特別な感情を持ち始めます。
そして同じく人間界から来た胡蝶と知り合う事により、自分がシアに甘えて過ぎているのではと悩み始めます。

亮太の火傷が治る頃にシアと前皇帝オジーの決闘の話を聞いた亮太は、花を見に行った西の宮で偶然オジーと出会してしまいます。
オジーの言動に酷薄さを覚えた亮太は、決闘に不安を覚えます。

そしてシアとオジーの決闘は序盤からシアが優勢でしたが、胡蝶の知らせで塔の上から弓でシアを狙うオジーの私兵を発見するのです。
思わず飛び出して行ってシアを守ろうとしますが、人間である亮太には何も出来ません。
その時シアを狙って飛んで来た矢を、シアの私兵のアマネが剣で叩き落とします。

そこから2年前にシア暗殺未遂の証拠の矢を持って隣国に逃げた元長官を誘き出して殺す手助けをした現長官、そしてその元長官を殺したオジーの私兵、前皇帝毒殺とシア暗殺未遂のオジーを集まった観衆の前で捕まえるまでが見事でした。

勝利したシアは戴冠式を経てあらためて皇帝となるのですが、自分の臣下に亮太を伴侶とすると言ってあったので皆が亮太に挨拶に来るのです。亮太だけが不思議に思っていました。

その夜に亮太は池のほとりでシアからプロポーズされます。亮太が人間界では指輪を渡して求婚すると話していたのをシアは覚えていたようです。もちろん亮太はOKします。亮太は孤児院育ちなのでシアが初めての家族になるのです。

同じく人間界から来た中国人の胡蝶がシア暗殺未遂の際に亡くなった兵士の恋人だったり、憎まれ口を叩きつつ亮太を心配する姉的存在でした。
シアの私兵のアマネも亮太が助けた人獣の珠洲も脇役がとても魅力的でした。

亮太が自分のアレが小さい事を凄く気にしてたり、口に出さなくても亮太のアレをみたシアが小さいと思ってたりとツッコミ所も沢山でとても楽しく読ませて頂きました。

2

助けたのは異世界の猫人獣!?

今回は虎の人獣である皇帝と異世界トリップしたトリマーのお話です。

天涯孤独な受様が界渡りした世界で攻様の伴侶として幸せになるまでと
受様がお店を開く後日談を収録。

受様は児童養護施設で育ちます。高校卒業後はアルバイトでお金を貯めて
トリマーの専門学校に通い、猫と犬のトリミングライセンスを取得、就職
したトリミングサロンではまだ2年目ながらも人気なトリマーとなります。

その日も受様は朝9時にアパートの部屋を出で、自転車で2駅先にある
職場に向かいますが、今日に限って信号によく引っ掛かります。今も
ちょうど信号の変わるタイミングで足止めをくらってしまいました。

職場は10時からですが、このままではいつもより遅くなりそうだと思って
いる間に信号機が変わりそうだとペダルに足を掛けたところで、1匹の猫
が受様の足元をすり抜けました。

受様が気づいた時には横断歩道に踏み出していましたが、1台の車が黄色
信号をすり抜けようとスピードを上げて走ってきたのです!!

受様は考える間もなく、自転車を降りて猫を追いかけて救うように抱き
上げた受様はそのままダッシュしようとしますが、なんと靴紐がプチっと
切れ、咄嗟に猫を歩道に放り投げたものの、受様自身は強い衝撃に襲われ
てブラックアウトしてしまうのです!!

次に受様が目覚めさせたのは耳と尻尾の生えた男の子の泣き声でした。
その男の子は自分のせいで受様が死んでしまったと言いだして、受様は
さらにびっくりしますが、これは夢なのだろうと納得します。

男の子はこの国は半獣と人獣の住む国だと言い、人間がこの国で暮らすに
は皇帝陛下に挨拶をしなければならないからと、皇帝陛下の元に案内する
と言われてしまいます。

受様はどうせ夢なのだからと男の子に付き合う事にしますが、関所を抜け
て入った街を行きかうのも半獣や人獣のようで、受様はあまりにも不思議
な世界に徐々に不安が募っていきます。

そして案内されるままに宮廷に向かい、皇帝陛下と謁見する事となるので
すが、対面した皇帝陛下は迫力ある巨大な虎でした。現皇帝は虎の姿を
とる事の出来る人獣だったのです。そしてこの皇帝こそが今回の攻様に
なります♪

攻様は迫力のある虎姿でしたが、隣国との戦いから戻ったばかりで毛が
ボサボサで色ツヤも悪く、トリマーである受様は恐さよりも汚れ具合が
気になってしまいます。

そんな受様を見た攻様は受様が現実を認識していないのではと訝しみ、
人間界の様子を銅鏡に映して見せます。そこに映されたのは受様の葬儀
の様子でした。受様は夢を見ているのではないと気付かされるのです!!

果たして死んでしまっていた受様の第二の生の行方とは!?

猫を庇った事で人獣や半獣の住む王国で生きる事になった受様の恋を描い
たもふもふ異世界トリップファンタジーになります♪

攻様の治めるナゼリン王国は半獣や人獣の国ですが、人界から紛れ込んで
しまう猫達が元の世界ら戻らないまま宮廷に居ついています。能力のある
人獣は幼い頃から宮廷で学び、異世界から時空を超えてしまった動物を
保護して元の世界に戻す使命がありました。

受様を攻様の元に導いた男の子も猫の人獣で保護した猫を戻しに行くので
すが、異世界では五感が鈍くなって事故にあう人獣が多く、男の子も猫姿
で事故に遭いかけて、受様に助けられたのです。

その結果、受様は死んでしまいますが、能力のある人獣は命の危機に瀕し
た時に不思議な力を発揮し、命を賭けて己を救ってくれたものの魂をこの
国に連れてくることができるのです。

そうして受様はこの国にやってくるのですが、住人達よりもはるかに力の
ない人間にとってこの国の暮らしが必ずしも"良い"生活ではないのですよ。

しかし受様は夢の世界だと思った事と、トリマーという職業柄が相まって
か虎姿の攻様に恐れず接し、人間に興味のあった攻様は受様を宮廷に留め
て、受様がこの国の暮らしになれるように尽力してくれるのです。

そうしたそれぞれの様子が両視点で描かれているので、人間界でも身寄り
の無かった受様の優しさともろさと強さが、権力抗争渦巻く宮廷で生きる
攻様の誇りと孤独と弱さが対比され、互いに惹かれていく様子が丁寧に
描かれています。

そんな2人に皇帝の地位を狙う前皇帝が絡んできて、宮廷劇らしいハラハラ
とワクワクがプラスされ、受様が攻様の隣を自分の居場所と定めるまで
たいへん楽しく読ませて頂きました (^O^)/

攻様に私兵として従う狼人獣が、攻様の友人としても臣下としても実に
いいポジションで攻様に絡んでいて良かったです。続編短編の揶揄うよう
な絡みは実に美味しかったです。

1

にんまり



世界観がめちゃくちゃ好き
死後こんな世界あったら最高だなぁ
人間同士の交流がないみたいだけど交流積極的に取り組んだらきっと住心地もいいよなぁしかもトップは尊い夫夫で薄い本大量生産待ったなしだよなぁっていう妄想が止まらない


すーごい入り込みやすい異世界物語
イラストも最高
異世界小説にありがちな覚えること多くて大変って事もなく、キャラも話もゴチャゴチャしてなくて本当に読みやすいし猫に虎に受けに萌えるしで
平和ににんまり読めました

地雷大量に積んでる人も安心して読めると思う(これ大事よね)

0

黒猫に導かれた先に広がるのは

善い行いをした結果、突然亡くなってしまった人間の死後の世界とは一体どんなものなのでしょう?
もちろんこのレビューを書いている私は生きている人間なので分かりませんが、願わくば素敵な世界であれば良いなと思います。

今作の主人公・トリマーとして働く亮太は、車に轢かれそうになった黒猫を助けたことによって命を落としてしまった優しい人。
ふと目覚めると、そこは人獣や半獣と呼ばれる、獣をルーツに持つ者たちが暮らすナゼリン王国という見たこともない不思議な異世界だった。

異世界トリップものです。
トリップの定番・突如として飛び出して来た人を轢き殺してしまったトラックに関しては、運転手がただただ気の毒で仕方がなくなるのですが、それはそれとして。
亮太が助けた黒猫・珠洲(すず)は、ナゼリン王国から任務のために人間界に渡っていた人獣で、特殊な条件下でのみ発動する能力を使い、自身の代わりに死んでしまった魂だけでもどうにか救おうと王国へと亮太を誘ったというもの。
こちらのナゼリン王国。基本的には人獣と半獣が暮らす国ではあるものの、亮太と珠洲のような理由で亡くなり導かれた人間も暮らしています。
完全に獣の姿もとれる人獣、身体の一部に祖先の獣の証が現れている半獣。
人獣の方が半獣よりも能力が優れているようです。
中世の中華風の建造物であふれる世界、見たこともない人々で賑わう少し古めいた雰囲気の街。
このシーンの兼守先生のイラストが素晴らしいので、可能であればぜひイラスト付きのものを読んでいただきたいな。
不思議な世界に迷い込んだようでワクワクするんです。

珠洲から説明を受けても当然信じられるはずもなく、夢だと思い込んでいる亮太が、大きな虎の皇帝・シアと謁見をし、実際に自分が命を落とした瞬間と自分の葬儀の様子を見て現実なんだと気付くシーンがなんとも言えないもので…
どう気持ちの折り合いをつければ良いのか分からないまま、考えても仕方がないのだと、住む場所と職を与えられるのであれば、トリマーとして虎の皇帝を洗ってみたいと大胆な発言をする亮太。
周囲がざわつく中、こんな人間は初めてだとシアに気に入られ、宮廷で暮らすことになり…と続きます。

ちょっと不思議だけれど面白いお話でした。
ほのぼのさもありつつ、メリハリのある展開やエピソードが面白く飽きさせません。
全編受け視点ではなく両視点です。
ナゼリン王国で暮らすことになった亮太と同じ目線で王国のこと、シアのこと、亮太と同じく導かれた人間のことを知っていく形になります。
メインとなるのはシアと亮太の何気ない異文化交流かな。

主人公の亮太がとにかく心が優しい人。
誰のことも責めず、恨まず、この世界で出来ることから少しずつやっていこうと懸命な姿は好感が持てます。
健気受けかと思いきや、結構行動力があるんですよ。
人のために何かしたいという気持ちが大きいのかも。
お相手となるのは虎の人獣である皇帝・シア。
ナゼリン王国の皇帝は世襲制ではなく、前皇帝からの直接指名か、決闘によって力を示し勝利した者のみが皇帝を名乗れるとのこと。
シアが皇帝になった理由のエピソードから繋がる、後半の盛り上がりと展開が上手いです。面白い。
彼は決してなりたくて前皇帝と戦って皇帝になったわけではないんですよね。
だからなのか、今までは側近のような存在のアマネ以外の前では常に皇帝であろうとし続けていた。
やがて亮太が現れ、同じ部屋で寝起きし、お互いの世界について語り合う穏やかな日々を過ごす内に、いつしか亮太の前では皇帝ではない「ただのシア」で居られるほどの心地良い関係になっていく。
甘く、穏やかで優しいという言葉が本当にぴったりの素敵な雰囲気です。
2人の関係性が少しずつ深いものになっていってからの、想い半ばで殺された兵士が持っていた銅鏡のエピソード・前皇帝との再びの決闘シーンは、先ほども書いた通りしっとりとした良い空気から一気に手に汗握る展開になり、非常に読み応えがありました。

と、面白かっただけに惜しい部分も。
養護施設設定とトリマー設定がそこまで活かされてはいなかったことと、亮太は恵まれた環境にいるけれど、動物を助ける善い行いをした他の人間たちが、必ずしも幸せには暮らせていないことが少しだけ引っ掛かりました。
これだと、亮太だけがものすごくラッキーだっただけな気もしてしまいます。
わけも分からずやって来ては、亮太の話し相手として登場した人間・胡蝶のように身体を奪われてしまった人々が不憫で仕方がないですし、この設定にするのであれば全員幸せに暮らしてほしい。
それらは今後シアによって少しずつ変化していくのかな。

気になる点が少々あったため評価に迷いましたが、萌萌寄りの萌評価で。
ライトめなファンタジーものですが、お話は面白かったと思います。
本編後のシアとアマネの気安い仲が微笑ましく可愛らしかったので、この辺りももうちょっと読みたいです。

2

猫を助けて異世界へ


事故にあいそうになった猫を助けて命を落とした天涯孤独な青年が異界に連れてこられて家族ができる話。


横断歩道を赤信号で渡っている猫を助けようと飛び出したトリマーの青年・亮太(受け)はトラックにはねられてしまいます。気が付いたら何故か知らない場所で寝ていました。傍には泣きじゃくっている10歳くらいの猫耳尻尾の男の子が。
猫耳尻尾の男の子・珠洲は亮太に自分を助けたため亮太が死んでしまったこと、自分は異界の人獣であること、珠洲の能力で亮太をこちらの世界へ連れてきたことなどを説明してくれますが、どうも現実味がありません。
初めに皇帝に会って住居と仕事を貰うのだと言われ、珠洲に宮廷へと連れていかれ、そこで初めて本当に自分は死んでいることを思い知るのです。

ここは人獣(獣姿と耳尻尾のある人両方になれる)と半獣(耳尻尾のある人)の住む世界で、人獣を助けて命を落として連れてこられた人間がごく少数存在します。
虎の人獣である皇帝・シア(攻め)を怖がらなかったこと、亮太が見目麗しいため男色家の担当長官に預けるのはためらわれたこと、毛並みの悪いシアを洗いたいと申し出たことなどから皇帝自ら珠洲とともに当面の面倒を見るということになります。
ずっと夢見心地で現実感が湧かなかった亮太でしたが、珠洲に色々教えてもらいながら新しい環境に慣れようとするのです。



両視点で話が進むので、お互いの気持ちと共にこの世の中の情勢などもわかりやすくなっています。

シアの方は最初から亮太のことが気になっている様子がよくわかります。
亮太の方は懸命に慣れようと努力し珠洲と仲良くしていましたが、実際には少しづつ疲弊していっています。
大分世界に慣れてきたように感じていたころ、火事現場に居合わせてしまい、取り残されている女の子を助けるため現場に入った亮太は女の子が助かったと思ったとたん生きる気力を失ってしまいます。
亮太視点だったし、頑張って馴染もうとしていたし、シアや珠洲ともうまくやっていたので、深層ではこんなに疲れていたのかと驚愕しました。きっと自覚していなかったのに些細なきっかけで表に出てしまったのでしょうね。
人生を終わらせようと思うほど疲れてしまった亮太も、火事現場から逃げるのを諦めた亮太を下から眺めるしかできなかった珠洲も心中を考えると心が痛かったです。
そして、このシーンが一番心に来ました。


この事態を乗り越え亮太が再び生きることを決めてめでたしではなく、今度は前皇帝による皇帝の座をかけた決闘が行われることになり、さらに一波乱あります。

恋愛面では、シアの方は好意駄々洩れですが、愛すること愛されることを知らない亮太は自覚するのにすごく時間がかかります。
メインは亮太が前向きになり皇帝の問題が解決することであり、その流れの終着点が二人の結婚という流れだったため、甘々な話な割にはシリアス部分が多かったように思います。


最近はやりの異世界召喚とかでは結構あっさり自分の状況を受け入れて前向きに行動していることが多いので、初めは意外に思いましたが、普通そんなにあっさり受け入れられるわけないよなーと妙に納得してしまいました。
それでも、亮太自身の努力もさりながら周りの優しさにも救われて、亮太が幸せになる明るい未来が見えてよかったです。


1

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP