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一冊全部丸ごと「百草の裏庭」なのか、と思って購入。
意外と短い作品で、後ろ半分ほどは他の短編だった。
非BLに近い。
どれも何かの精霊と出会った人の物語。
なんというか、真夏の炎天下に都会や森で見る白日夢のような、気付いたら消えていた幻のようなものとの出会い。
ただ表題作の「百草の裏庭」だけは、実体を持つ異形の男性との恋のようなもの。
BLのくくりを入れないほうが、多くの読者を掴めたんじゃないかと思いました。
描写が緻密で綺麗。電子版で拡大しても粗がない、十分見ごたえあります。
いつものように、とても美しい作品でした。
次作が楽しみ。
心が浄化されるような1冊でした。
いつも表紙や装丁やページ表記が素敵ですね。
あまり価値を見いだせなかった自分が誰かにとってはとても大切で。
なぜ自分なのか?きっと誰とでもうまくやれるのに…。
百草の裏庭は村の青年と森の異形の男との不思議でほっこりして、心を寄せ合う素敵なお話でした。
他の短編もとても良かったです。
旅の途中
消えてしまいそうなどこかへ躊躇いもなく旅立ってしまいそうな友を、いつもどこかへ連れ出す人気者の彼。
なぜ構うんだ?と聞かれて…。
絵本の話と重ねて作者の足跡を辿るような。
どれも美しくてちょっぴり切ない感じがして、幸せになってと祈りたくなる作品集です。
5話完結の表題作を含む五つの中短編とおまけ一つの入った作品集です。
植物達が緻密に描かれた背景や装飾画に目が奪われうっとりとしてしまいます。ストーリーを楽しむ漫画というよりは絵を楽しむために読む漫画という印象が初読の時は強かったのです。
でも、2周目では登場人物の会話や内心に目が向いてしみじみと良いなと感じました。
耽美的な絵柄からは、植物の瑞々しい葉を触った時のような冷たさや、鬱蒼と草木の生い茂る森に漂う湿気を含んだ冷気を感じるけれど、登場人物たちの間にあるのは温かくて柔らかい空気です。
特に表題作『百草の裏庭』は尺が長いぶん心理描写が特に細やかで、マルセルとギーゼルベルトがお互いを知り合いやがてかけがえのない絆で結ばれていく様が描かれています。
耽美的な雰囲気でありつつ、耽美につきものの冷たさや退廃的破滅的な雰囲気はなくて、温かくて優しいお話でした。
『ゆうづつは藍にとける』に続いて読んだ青井秋先生の作品です。
こちらは、表題作の他に4作品が同時収録されています。
『stalks』
『passage』
『浸食』
『旅の途中』前後編
『百草の裏庭』
黒い森の異形の男性 ギーゼルベルトと薬草売りのマルセルのお話。
幼い頃、マルセルの妹のベルタは薬草摘みの最中に毒虫に刺されて倒れてしまいます。
そこに現れたのは、黒い森の住人 ギーゼルベルトでした。
ベルタを助ける代わりに「一緒に来い」と交換条件を提示されたマルセル。
「妹が嫁ぐまでは待とう」
それから10年後、ベルタが嫁ぐ日が来ました…。
青井秋先生の丁寧で優しい絵柄と作品の雰囲気がマッチしており、童話を読んでいるような錯覚を覚えました。
独特の世界観が広がり、静かにゆっくりと浸透するようなストーリーになっています。
黒い森のほとりには人の世の終わり
向こう側の住人が住んでいる
その住人に会えば、魂を取られてしまう
人は、外見にとらわれると本質を見失いがちです。
マルセルも化け物にしか見えないギーゼルベルトの優しく穏やかな心に気が付けず、恐怖に怯えていました。
ベルタが嫁いだ日、始めてギーゼルベルトの胸の内を聞かされたマルセルは、自分が勝手な誤解をしていたことに気が付きます。
「僕と友達になってくれますか」
最後までお互いに大切な「友達」のままですが、人の数だけ愛情のカタチも異なります。
この先、2人がどのような関係を築いていくのか…そっと見守りたい。
描き下ろし『冬の支度』
10月になると森全体が色を変え、冬の支度が始まります。
まだお互いに知らない事が多い2人。
同時収録『stalks』
お屋敷の温室で庭師が出会った男の子のお話。
同時収録『passage』
何をやっても上手くいかないサラリーマンがピアノの音色をきっかけに男子学生と出会うお話。
同時収録『浸食』
仕事の調査から戻ってきた恋人が未知の菌糸に侵されていたお話。
同時収録『旅の途中』前後編
小さい頃から一緒にいるヨーアンとカスペルのお話。
どのお話も、青井秋先生らしい繊細で幻想的な内容になっています。
BL要素は薄いですが、それぞれの未来に思いを巡らせました。
透明なのにぬくもりを感じる…誰にも秘密で宝箱にしまいたくなるような短編集に仕上がっています。
いつもの日常を離れて癒やされたい方にはとくにおすすめです。
1ページずつじっくりと読んでしまう美しさ。
ぱっと本を開いてみると、そこには少し不思議なお伽話の数々と、緻密に描かれた植物たち。
表題作と、4作の物語からなる短編集です。
それぞれのお話に関連性はありませんが、どの作品も植物や小物、装飾が本当に美しくてため息。
カバーイラストや目次からもう既に素敵すぎるのですけれど、作中・短編ごとの幕間に描かれた植物モチーフのデザインも美しくておしゃれなんです。
合間に登場する、草花の採取地のメモを書いているのはマルセルなのかな。
こういう遊び心も読んでいて楽しい。
同時収録作品も、青井秋先生にしか描けない独特の雰囲気のものばかりで非常に魅力的なのですが、今回は中でも表題作の「百草の裏庭」が飛び抜けて好き。
読め始めてすぐにギュッと何かを掴まれました。
異形の男性・ギーゼルベルトの姿形も、穏やかな口調から出る嘘のない透明な言葉もすごく好み。
マルセルと過ごしていくうちに、少しずつ柔らかく変化していく彼の表情が愛おしいです。
お互いの知らない部分、自分と相手の異なる部分を知っていく。
「もっと知りたい」を重ねていく。
季節、植物、食事、そして会話。それらを通して2人の距離が縮まるにつれて、孤独で薄暗かった暗い森に小さな明かりが灯るかのように、静かな優しさがふわりと広がるお話でした。
四季折々の自然と共に穏やかに生きる彼らの素朴で特別な関係性が心地良くて、なんだかずっと見ていたくなってしまいますね。
手の表現が印象的。