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表題作踊る阿呆と腐れ外道 (上)

芳野英一朗,伊月の付き人
千代森伊月,杖つき様と呼ばれる千代森家の養子であり情夫

同時収録作品踊る阿呆と腐れ外道

千代森環,千代森家当主・伊月の養父
千代森伊月,千代森家の養子・環の情夫

同時収録作品踊る阿呆と腐れ外道

医者(モブ)
千代森伊月,杖つき様と呼ばれる千代森家の養子

その他の収録作品

  • 幕が上がった日

あらすじ

時は大正。千代森家の養子である伊月は、
裏では旦那さまの環と夜毎淫らに交わる情夫。
世間から家督目当ての“お寝子さま”と称されようと、
忠実な付き人・芳野に支えられ、
頭と体で千代森家を己のものにしようと強かに生きてきた。
ある日、環が毛嫌いする結城子爵のパーティに招かれるが、
伊月の秘密を知る医者に薬を盛られ快楽地獄に落とされる。
興奮がおさまらず密かに想いを寄せていた芳野に慰めを乞うけれど…


【収録作品】
踊る阿呆と腐れ外道 第壱話~第肆話
幕が上がった日(あの日、私に芽生えたものは…)[描き下ろし]

作品情報

作品名
踊る阿呆と腐れ外道 (上)
著者
あかねソラ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
竹書房
レーベル
バンブーコミックス 麗人uno!
発売日
電子発売日
ISBN
9784801971974
4.4

(164)

(116)

萌々

(26)

(14)

中立

(3)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
20
得点
729
評価数
164
平均
4.4 / 5
神率
70.7%

レビュー投稿数20

個人的ベストBL。もっと評価されてほしい

元々表紙の美しさに惹かれて気になっていたのですが、上巻帯の「好いているだなんて口にはできず、ただひっそりと愛を注ぐことしかできないのです。」という言葉にとてつもなく惹かれ、購入しました。

上巻では主に義父に体を売る養子の伊月、伊月に使える付き人の芳野、伊月の義父で主人の環が、下巻ではそこに環の因縁の相手である結城を加えた4人の心情が複雑に絡み合います。

個人的に4人の中で一番感情移入してしまったのが芳野でした。
元々伊月と同じように旦那さまに拾ってもらった身なので、昔の醜かった自分を見ているようで伊月にきつく当たることもありました(言ってしまえば同族嫌悪)。
そんな芳野でしたが、伊月がこんな自分にも感謝をし、信頼してくれているという嬉しさや、自分の力で事を動かそうとする強かさに惹かれていきます。

しかし、伊月は旦那さまに体を売っています。
伊月が旦那さまに酷いことをされてボロボロになった姿を見たり、見知らぬ男に壊される姿を見たりした時の芳野の表情が…

本当は伊月が自分以外の誰かに抱かれているところを見たくない、と思う芳野ですが、当然そんなことを口に出せない。でも伊月を守りたい。ともがく芳野の姿は鳥肌ものでした。

また、この漫画はモノローグよりも表情でキャラクターの感情を語ります。
大好きな人にこんな姿を見せたくない、でも自分にこれ以外出来ることはない、と自分を嫌う伊月、
大好きな人の前では泣きそうな顔、怒った顔、笑顔…と様々な顔を見せるのに、その大好きな人を傷つける人には冷酷な顔しか見せない芳野、
大好きな人が自分から離れていくのが怖くて酷いことをしてしまうけど、本当は大好きな人の幸せを心から願っている環、
大好きな人を想うあまりどんどん「酷いやつ」になっていく結城。
それぞれの想いが交錯する、圧巻のストーリーでした。

肉体的にも精神的にも痛々しいシーンが多い作品ですが、それすらも美しい。

タイトルに「踊る」とあり、上巻下巻それぞれダンスしているそれぞれのカップルが表紙になっていますが、作中でもダンスシーンが何度かあります。

一回目は、伊月が月明かりの中芳野を想って一人でワルツを踊るシーン。
二回目は、想いを通じ合わせた伊月と芳野がパーティーで幸せそうに踊るシーン。
三回目は、足が不自由な環を「足を踏んでも構わないから」と結城が誘って踊るシーン。

このダンスシーンもそれぞれの気持ちが伝わってきて、とても美しい大好きなシーンです。

最初から最後まで作画もとても綺麗でしたし、個人的には文句のつけどころがない。
間違いなく人生で出会った中で「一番」の作品です。

0

すべてが魅力的

ストーリー、絵、ページのコマ割り、キャラクター、セリフなどなど、すべてが魅力的な作品でした!

主従関係ってだけでも萌え要素なのに、受けが攻めの抱っこが嬉しくて足が悪いふりをし続けていたり、攻めが受けに酷いことをした奴の指を銃で吹き飛ばすなどなど受けをかなり好きなところだったり、萌えるなっていうのが無理なくらい萌えました。

上巻の終わり方もいいです。紆余曲折あって、心も体も結ばれて、幸せそうに抱き合ってる寝ている場面を、情夫として体の関係がある受けの義父にその場面を見られて、下巻に続くというふうに本編が終わります。
はじまりから終わりまで、何もかもが完璧な作品だなと思いました!

0

三角関係、いや四角関係?

初めての作者さんの作品でした。
発売当初、タイトルと表紙にインパクトがあってランキングにも入ってたので気にはなっていたのですがようやく読めました。

よくある主従関係とは少し違うな…と感じました。
伊月も芳野も旦那様である環に服従心がそれほど強く無い感じで、芳野への気持ちを知られてもあっさり認めちゃう感じで、それでいいんか?って思いました。
もうちょっと"秘めた想い"感が強い方が好みかな。

登場人物がみんな美形で華奢なので"お耽美"という雰囲気がありますね。
芳野はもう少し男らしい方が個人的には好みかなと思いました。
男らしい場面もあったんですが、色っぽいシーンになると何故か雄っぽさがなりを潜めてしまって残念でした。

期待が大きかったためか、感想としては厳しめになってしまったかも知れません。
ストーリーは面白かったし、ラストはハラハラで下巻に続く、というのは好きな感じでした。
下巻への期待を込めて萌で。

0

すごい…

あかねソラ先生の作品は『未来圏で愛を紡げば』を前に読んでいて
そこからはかなり違う世界観っぽいなーと思って購入しました。
同じ作家様がこうも違うお話を描くなんてすごいなーという感想です。



時は大正。大正浪漫です。
それぞれの思いが交差して雁字搦めになって
辛くて切なくて、でも愛しくてなんか色々大変な感情になりました。

上巻のみだと最後の終わり方に不穏さしか感じなくて
果たしてこの二人に救いがあるのか心配になりました。

どうなることが救いなのか…なんか難しいなぁ…。
でもすごい作品だな…と思いました。

0

メロドラマ?

タイトルと表紙の雰囲気がいいなと思ったのと、上下巻が好きなので事前情報を入れずに読みましたが(キャラはよく見てなかった←私にはあるあるでw)。
予想していたのと違いました。

お耽美系?というのか、劇場型というのかメロドラマっぽいですね。

芝居がかった表情とか、すぐに声を荒げたり、感情を剥き出しにするとことか。私はそういうのちょっと引いてしまう方なんですが。

主従モノは好きなんです。

が、芳野が常に沈着冷静な付き人なのかと思ったら、意外にブレブレ?元ワルだから、素が出ちゃうの?

普段鉄仮面で有能な使用人がどうしようもなく伊月への気持ちを抑えられなくなった限界突破のココ!という時に本心を垣間見せてほしかったなぁと、個人的な好みとして思ったり。

旦那さまにあんな反抗的な態度でいいの?と疑問がわいてきて。

挙句、旦那さまにヒトのものを取るなと言われているのに、伊月に「あの男のもとに行かせません」て?!
旦那さまに雇われているんよね。なのにそんなことしてクビにならへん?伊月と一緒にいたいんでしょ。
旦那さまのもとを離れて2人一緒に生きていく算段でもあるのかしら?とまたまた疑問で。

ま、どうなるのか下巻を読みます。

1

上・下 巻 セットで最後まで読んで欲しい。

個人的に下巻がたまらなく良いです。
1番好きな作品ですね。

1

読まないと人生損

あかねソラ先生の作品は本当に 優しい地獄 が似合う作品です。
環の台詞ひとつひとつが本当に胸を打たれ、特に下巻は涙無しでは読めない作品です。
1番印象に残っている台詞の 「流産だ」 は本当にこれでもかと涙が溢れましたし 妊娠するわけないと頭では理解しているのに中のものを出したくなくて腹痛に耐えようとする環の姿にも涙が溢れます。ただただ環には素直に、幸せになって欲しいという気持ちが強いです。
もっと沢山の方々に本を手に取ってもらい読んで欲しい作品です。
この作品に出会ってから私はソラ先生の地獄で生きてます・・・・・・
環と結城メインのお話の続編も決まってますのでこの機会に 踊る阿呆と腐れ外道 是非呼んで頂きたいです!!

6

余韻が長く感じられる作品

絵がとっても見やすいです、物語も時代があるので世界観がとても素敵なお話でした。
きゅんとできるし、しっかりお話として満足以上の感覚を得ました。
何より登場人物を好きになれますし私は1週間ほどこの作品の余韻がとれませんでした(笑)
登場人物の気持ちも辛いほど伝わってくるので本当に購入して良かったと思います。言葉選びが時代に合った素敵な言葉になっていたりするので絵と文章を見るとこの世界に産まれてみたかったなあとつい考えてしまいました·͜·
儚く綺麗に描かれたお気に入りの作品です

9

ただただ綺麗

情夫になることになってしまった伊月にこの言葉で表現するのはどうかと思いますが、ひたすら綺麗でした。

もともとビジュが私好みというのもありますが、芳野に自慰をしてもらったあとの月夜を背に踊っていたシーンがとても綺麗で息を呑む美しさでした。あれは昼間に見た芳野の踊りを思い出して、自分と踊っているようにしていたのかなと個人的に思いました。


伊月も芳野もお互いが好きで、両片思いのような状態でした。
伊月は自分には抱くことしかできないと思っており、一方、芳野は伊月を抱くものたちと一緒になりたくなくて抱かずにいました。
結局は上巻で、お互いの気持ちが通じ、結ばれることになりましたが、このお話はこの2人の話だけではなく、結城子爵と千代森の2人の話でもあるのかなと感じました。

それは下巻を読めばわかるので、楽しみです。
さっそくこれから読んできます!

0

大正ロマン

絵がすごく好みでした。伊月が美少年♡孤児だった伊月を旦那様の環が拾って愛人に…
旦那様がもっとおっさんかと思ってたら、また中性的で美しいこんな美しい旦那様が美少年を毎夜慰みものに…でもそこがなんか艶かしく大正時代耽美で良いですね。萌えます
でも伊月は本当は、執事の芳野が好きで
旦那様も本当は伊月を愛してるのではなく愛した男に、伊月を重ねてるだけっぽくて
もし環が伊月を一人の人間として好きで、伊月は自分に心がないことを悲しく思ってて、どうにか旦那様に愛されようとしてたら、
また違った展開になってたのかなと

一番好きなシーンは、月夜に芳野を想いながら、ダンスをおどる伊月がもう切なくて、泣けます

2

下巻のラストがとてもよかった

二人の物語だと思っていたら四人が主役の物語で、こうゆう感情が交錯するお話とても好きだな。表紙の構成がそれぞれのカップルのダンスしているシーンなのが素敵!黒と赤のなにかぞくっとするような印象の色使いもよい。絵が可愛くって気品があるんだけど、最中に受け君の肩とか膝とかとにかく全部真っ赤になってるのが可愛かった。ネタバレになってしまうので詳しくは言えないけど、下巻の最後の切ないやり取りは印象的な表現で素晴らしかったし、こうゆう感情になりそうだなと強く共感した。

3

世界観が素晴らし過ぎる でも男らしさが欲しい…

世界観にどっぷり浸かれる緻密で繊細な絵が素晴らしいです。コマ割りや時代の風俗、モブ達どれをとっても魅せられます。巧いだけでなく、描き慣れている安心感がありました。

幼い頃拾われた美少年と養父、従者の三角関係は耽美です。
伊月を教養に施し、絵画のモデルにし、縛り、抱く父の環。不自由な足を嘯き、噂を笑い強気な伊月(モブ◯、趣味じゃないけど良かった…)、従者の芳野。
3人の関係性や其々の性格は大変ドツボでした。

少々台詞ばかりが上滑りしている感があり、感情移入もついて行くことも難しかったです。台詞自体は良いのですが語り過ぎな気がします。
また、あまり男らしく描かれない美しい世界なのですが、私にはキャラクターの外見が弱くて咄嗟に伊月なのか芳野なのか混乱する所がありました。

3

鬱くしく、狂おしい

「散切り頭を叩いてみれば、文明開化の音がする」
なんて言葉が有名な明治時代を通り越して、物語の舞台となるのは大正時代。
西洋と東洋が混ざり合う非常に魅力的な時代ですよね。
個人的に、大正時代設定のお話って、なんとなくパッと明るいイメージよりも薄暗かったり混沌としている狭い世界が描かれているイメージがあるのです。
今作もなかなかのどろりとした作品でした。

繊細で美麗な画と共に描かれる、危うい愛と複雑な関係性が絡み合う。
ちょっと、圧倒されました。すごい世界観。
作中の雰囲気は決して爽やかなものではないですし、痛々しさだったり、鬱々しさ、息苦しさを強く感じるんです。
これは内容的にもきっと好みが分かれる作品だろうなとも思う。
でも、惹かれる魅力があるのはなぜなのか。
上巻を読んだ時点では、誰に感情移入をしただとか萌えた萌えないというよりも、"なんだか気になる"が続く感じ。
ページをめくるごとに、歪な形をした彼らにぐるりと絡まっている糸のその先が気になって仕方がなくなっていく。
ストーリーはもちろん、魅せるコマ割りというのでしょうか。独特のコマ割りにもなんだかとても目が惹きつけられました。目で追いたくなるんですよね。
窓の描き方も非常に印象的です。

これがまだ上巻だというのだから、下巻ではどうなってしまうのだろう。
引き続き、絡まり合った彼らの愛憎の行く末を最後まで見届けたい。

5

踊る阿呆と腐れ外道

切ないお話でした
胸が締め付けられる
それぞれの気持ちが交錯していて
交わるけれど重ならない
歯痒くて辛い

けれど強かでまっすぐな気持ちが
痛いくらい刺さりました

時代背景や描写が繊細で
それが作品の世界観を深めてます

心に深く刺さるお話で
上巻ではこれで幸せになれるのかと
期待したところ一転する場面で終わります

絶望なのか希望なのか
このお話の世界に引き摺り込まれます
息をするのも忘れるくらい
大袈裟でなく、それくらい魅力されました

3

大正時代に繰り広げられる珠玉のラブストーリー

初めて読んだ あかねソラ先生の作品です。

千代森家の執事 芳野 英一郎と千代森家の養子 千代森 伊月のお話。

第一次世界大戦に伴う好景気を背景に、生活様式が大きく変化した大正時代。
千代森家の養子である伊月は眉目秀麗な容姿と片足が悪く杖を突いていることから“膝つき様”と呼ばれていました。
まだ幼い頃に千代森家の当主 環に拾われ、養子として何不自由なく育てられた伊月。
――しかし、実際は“寝子”として、環の相手をする毎日を送っています。
そんな伊月には、千代森家の家督を継ぎ、財産も地位も全て搾り取ろうという野望がありました。
愛する人を傍に置いて…。

実はこの作品の購入に関してすごく悩みました。
あらすじから仄暗い世界に背徳感と雪辱の心情も感じられて躊躇したのが本音です。
…が、表紙の美しさに手に取ってしまいました(笑)
結論をお知らせしますと、この作品を読ませていただいて本当に良かったです!

時は大正時代
政治や経済面だけでなく、建築やファッションにも和洋折衷のスタイルが取り入れられた時代です。
西洋の花柄や幾何学模様、鮮やかな色合いが特徴で、あかねソラ先生の綺麗な絵柄により大正文化を作品全体で感じることが出来ました。
また、緻密で繊細なストーリー構成に冒頭から惹き込まれますよ。
物語を読み進めていくうちに、きっと気が付くでしょう。
養子と執事、そして当主の主従関係だけではなく、その裏にはもう一つの純愛があることを。

身寄りもなく貧困の生活から抜け出せなかった伊月を救ってくれたのは環でした。
環からは全てを与えられ、毎晩のように愛を注がれても、伊月の心はそこにはありません。
「好き」
その一言が伝えられない相手…それは、執事の芳野でした。
一方、幼い頃から伊月の執事として身の回りの世話をしてきた芳野。
ならず者だった芳野もまた環に拾われてきた一人です。
環の“寝子”として身体を捧げる伊月にいたたまれない感情を持ちながらも、同じくらい愛情も抱えていました。

本当はずいぶん前から両想いの2人。
登場人物のそれぞれ思惑と大正時代に反映された複雑な関係。
誰もが愛する人に必要とされたいと願い、その想いが届く時――大きな代償が生じるのです。
もう、どうしようもないんだ

上巻では、伊月と芳野がメインでお話が進みます。
気持ちが伝えられないため誤解をしたまますれ違う2人に切なくてやるせない気持ちになりました。
どんな状況でも好きな人に抱かれたかった伊月。
本当に大切だから抱けなかった芳野。
そして、千代森家の当主 環に対しては最初に覚えた嫌悪感が少しずつ変わっていくでしょう。

このお話には、当て馬も脇キャラも登場しません。
伊月と芳野、環の他にもう一人重要な人物が登場します。
それは、結城子爵…下巻ではメインになりますので、回想シーンも含めて取りこぼすことなくご覧ください。

Hシーンは、具体的な描写は少ないのですが扇情的なエロが堪能できます。
環に手練手管を教え込まされた伊月が、芳野に抱かれたい一心で伝えるセリフに涙が出ました。
「お前はどう動いて どう啼けば喜ぶ?」
芳野の心は胸が張り裂けそうだったに違いありません…。
だからこそ、気持が通じ合った後のセックスは抑えきれない喜びと愛しさに溢れていました。
ご注意としては、前半に結城子爵のパーティで伊月がモブに薬物を盛られてレイプされる場面があります。
しかもレイプされているところを芳野に発見されてしまうので、読みながら悲鳴をあげました(汗)
…地雷の方はお気を付けください。

描き下ろし『――幕が上がった日(あの日、私に芽生えたものは…)』
本編のプロローグにあたるお話。
今日は伊月の誕生日。
芳野から欲しいものを聞かれた伊月の答えは…。

最後は、ようやく心も身体も結ばれた伊月と芳野に感極まり、これから迎える展開に身震いしました。
下巻では、どんな運命が2人を待っているのか?
また、環の歪んだ愛情はどこに向かうのか?

上下巻の同時発売にこれほど感謝したことはありません(泣)
好みが分かれる設定ではありますが、ぜひ多くの方に読んでいただきたい作品です。

6

壊れてしまうのは、身体か。心か。

うーん。他のサイトで「中二病の様なモノローグ」と書かれていたのですが、確かに。
大正ロマネスク調の主従愛かと期待したんですけれども。それはそうかもしれないけれども。うーん。伊月の痛々しさったら無い。
孤児の伊月は、千代森の美しい主人に拾われ、不自由の無い暮らしを与えられ。美しい従者を与えられる。子供のいない主人はいつか伊月に家督を譲るだろう。伊月はそれくらいの野心は持っている。持っているからこそ主人に抱かれる事も厭わない。
そもそも。何が不満なのか。男に股を開く男娼の様だと自嘲しながら、ただ優しく側に仕えている芳野に抱かれたいと惨めに願っている。
芳野は芳野で、伊月がほんの幼ない頃から側に仕えているのに関わらず、情が移ったのか。この子供を愛している。側で他の男に抱かれているのをただ見つめるしか無い。側に居られるだけで良いと、結構な無理を自分に強いている。
強いて言うならば。全員がドMなのだ。主人は、心までは手に入れたいとも思っていない、伊月を自分のモノにしてはいるが、彼の気持ちは多分結城子爵に叶わぬ恋をしているのだろう。
伊月は脚の悪いふりをして、芳野の気を引く癖が付いてしまった。何もかも見抜いているが、ただ側に居たいと願う芳野。

危うい均衡を破るバイオレンスには驚いた。結城子爵のパーティというのが、また怪しい。千代森の主人は危険だと分かっていて伊月達を行かせたのか。薬を盛られて犯される伊月。芳野は伊月のピンチに全く間に合っておらず、伊月は下衆に好きなようにヤラレまくる。
元ならず者だったという芳野が、怒りに任せて発砲するのも血生臭い。
この事件自体が、金で解決してしまうのも。何もかもがどす黒いのだ。
闇の中で。恋人たちに救いはあるのか。
絵が美しいのだけが、ホッとさせてくれるんだけども。
大きな屋敷の中とはいえ、主人に釘を刺されているのに。芳野が伊月を抱くのにも驚き。
ここは、主人の家ですよ‼︎
主人も美しい男であるのに。伊月が全くと言って良いほど、芳野しか目に入って無いのにも驚き。まぁ、主人が伊月を愛してはいないことを、幼ない伊月は感じていたのでしょうかね。

修正はトーンに細線。細い身体の伊月がヤラレている様子は、誰が相手でもただ痛々しい。
だから抱きたく無いと思っていたという芳野も。大切な筈の伊月に可哀想に『自分は穢れている』と思わせていては、男としてダメ過ぎる。
ダメな男たちだらけの彼等にどうか救済を。次巻へと続く。

0

絡み合う本音と建前

寸分の隙もない美しい作画。
それだけでも十分酔いしれてしまうレベルなのに、緻密な人物描写と繊細な心理描写まで加わってしまったら、卒倒しますよ。
各話で少しずつ変わっていく扉絵にもご注目を。

大正時代。
新しい文化と古いものが入り交じる中、貧富の差が歴然としてある社会で、貧しくも狡猾に逞しく生き延びてきた伊月。
朝から足を轢かれ、厄日だと思っていたその日、金持ちの懐からちょっと失敬しようとしたところを見つかって…。

その出会いから千代森家に連れて来られて躾けられ、次期当主を継ぐべく養子になった伊月。
主人であり養父でもある環は、読み書きも出来なかった薄汚い浮浪児だった伊月をどこに出しても恥ずかしくない少年に育て上げ、裏では「寝子」として慰み者にしています。
好きなように扱ってはいるけれど、環からは伊月に対して何の感情も感じられません。
それこそ気まぐれに拾った猫をその日の気分で可愛がるような感じです。

それに対して世話係の芳野は、自分自身も環に拾われた身。
過去の自分と重なる伊月に情を感じています。
一緒にいる時間も長い分、伊月の強い面も弱い面も知って、その情が違う感情に育っていくのも頷ける状況です。

ひとつの屋敷にいながら、3人それぞれの思惑の違いが交錯している様子が見事に描かれています。
ダンスホールへ赴いたものの、女性からの誘いを引きずる足を理由に断って、芳野に相手をさせる。
その夜に女性と踊る芳野を思い浮かべながら、ひとりで踊る伊月の姿は悲しいまでに美しい。見惚れてしまうような描写の中に、好きな人と踊ることのできない虚しさが滲み出ていて、胸を締め付けられます。

芳野もまた、伊月に対して湧き上がる感情を殺そうとするのですが、その描写が秀逸です。
これはぜひともご自分の目で見ていただきたい!
伊月への想いを殺すことは自分を殺すこと。
そうまでしてもそばにいたいと願う気持ちの強さが痛いほど伝わって来ました。

好きだから抱かれたい。
愛しているから抱いてはいけない。
根底にあるのが同じ気持ちだからこそ、このズレが切ないんです。

環は自分が拾った命に情けはかけないけれど、所有欲はある。
わざと意地悪く、旧知の結城の屋敷で行われるパーティに2人だけで行かせて罠を仕掛けて、2人を試す展開があるのですが、この場面の芳野が…、もう…、読者の心臓を撃ち抜く気かと。
伊月に不埒を働いた相手に容赦なく銃を向ける。
だけど錯乱状態の伊月がどんなに懇願しても、自制するんです。
そのときは伊月の言葉に嫉妬したのかと思って読み進めてしまいましたが、後から理由を知って痺れました。

ああ、まとまらない。

1巻終盤、誤解した伊月のせいですれ違いが起こりますが、それが引き金となって芳野のタガが外れます。
一瞬のしあわせと、そのあとに来るであろう恐ろしいことを予感させる終わり方に、下巻を読まずにはいられません。

自分の幼い頃と伊月が似ていると言った結城の存在も気になるし、伊月の肖像画を描きながら「目が違う…。髪も…」などと呟く環も気になる。

2巻へ行きますよ!

9

風情ある大正恋愛ロマンス

大正浪漫の世界に浸れる、雰囲気たっぷりの作品。
主従関係、年齢差、体格差、身分差……と、設定もてんこ盛りなのに雑然とていないから驚きです。


主人公・伊月が不憫なのですが、その状況に負けないしたたかで強いキャラが魅力的。
幼い頃に千代森家の主人・環に拾われ、養子となって情夫を続ける伊月の心の支えは、想い人で側近の芳野です。

クールで気持ちの読めない芳野ですが、実は伊月を心から愛しており、強い独占欲と執着心の持ち主。
ここがめっちゃ萌える♡
環にも隠さないライバル心、薬を盛って伊月を犯す輩を躊躇なく撃つ冷酷さにさえドキドキしてしまいました。

千代森家を手に入れるために環に抱かれながらも、必死に芳野を求めてもがいている伊月が悲しくて健気。
そんな伊月の傍に寄り添いながらも、決して手を出さない芳野。
 
芳野が抱いてくれないのは自分が汚れているからだと思っている伊月と、伊月を大切にしたいからこそ手を出さない芳野……
このすれ違いが切なくて、耐えきれなくなった伊月が芳野を遠ざけてしまうところは苦しくなりました。

足の悪いフリを続けている伊月の可愛い嘘、環と結城の関係にも萌えまくる!
すれ違いからの本音のぶつかり合いが胸にきて、伊月が芳野に気持ちの吐露を迫る場面はキュンキュンしました。

……で、そこからの濡れ場がめっちゃ良かった!
クールな芳野の赤い顔も、伊月の色気に翻弄されるところも可愛かったです♡体格差も堪らんですね。

裸で抱き合って眠る2人の前に環が現れ……と、ここで上巻終了。
環の伊月への思いは、愛情か身代わりか?
ここにも注目して下巻を読みたいと思います。


1

王道のストーリーではありますが

「大正」ってロマンがあるよね…。
目まぐるしく変わる激動の時代。
階級制度。
経済格差。
個人的にすごく萌える時代で、思わず今作品も手に取りました。

初読みの作家さまでしたが、いやー、こんなに素晴らしい作家さまを読み逃していたとは。とても素晴らしい作品でした。




千代森家の養子・伊月は見目麗しい青年。
が、その実情は千代森家当主の環の情夫。子どもの時に拾われ、そのまま環に抱かれるようになるが、いつか千代森家を乗っ取ってやろうと画策しているガッツのある青年。

そんな伊月には想い人がいる。付き人の芳野だ。
けれど主人の愛人と奉公人という関係の2人には大きな壁があって…。

まあ、バッサリ言ってしまうとよくあるお話というか。既視感ありありのストーリーではあるのです。あるのですが。

伊月と芳野の感情の機微の描き方が実に緻密で繊細に描かれていて、彼らに感情移入してしまう。
お互いに愛してはならない人なのだと。
自分が想いを告げてはならない人なのだと。

そんな二人の一途な愛情がきちんと描かれていて、さらにそれが上滑りしないストーリー展開。めっちゃ良い…。

で。
この二人の関係を引き締める存在として描かれているのが、彼らの主人である環。彼がまたいい味出してます。

「良い人」として描かれてはいません。
時にひどく伊月を抱きつぶし、経済的に恵まれている人ならではの傲慢さも持ち合わせている。けれど、その表情とは裏腹に、彼の孤独とか愛情も透けて見えるんです。その魅せ方がとってもお上手。

だからこそ、伊月と芳野は、お互いに想いながらも環のもとをあっさり逃げようという思考にならず、ストーリーに奥行きがある。

実際、飢えるほどの貧困から抜け出すことができたのは環のおかげであり、そこに環の想いも見えてくる。単にきれいな男の子を侍らすだけであるならば、伊月に、そして芳野に固執する理由は環にはなく、別の人間と入れ替えることも、環には可能なわけで。

そんな三人の思惑が絡み、読んでいてすごくドキドキした…。

ただ、伊月がモブレにあうシーンがあります。苦手な方は注意が必要かもです。

王道のストーリーでありながら、萌えがぎっちり詰まってる。
文句なく、神評価です。

3

大正×耽美な世界観が堪らない(;///;)

愛憎浪漫譚。
タイトルのインパクトに反して純愛にやられました。
すっっっっっごい良かった……(;////;)

葬らなければならない恋心。
内に内に秘める心が燻り黒く流れ出す。
歯を食いしばって耐えて耐えて……。
時代背景が重なって昏い昏い影を落とす。

刹那的な時間がとても切なくて、すれ違いが痛々しくて、
めっっっっっっっちゃ萌えました(;////;)泣・泣

4人の男の因果と執着が絡み合って、
でもその中に浮かび上がる純愛が堪らなかった。
そして下巻では非常にやるせない気持ちが募ります。

ちなみに私のイメージと違った点は、
義息を愛人にするなんてキモいおっさんかと思いきや
下巻表紙の長髪男性が父親でビックリしました。
普通に見目麗しい父親なので歪な関係が耽美的な美しさに映りました。

さてさて。

主な登場人物は4人。
・千代森家に拾われ育てられた[伊月]
・千代森家で働き伊月の付き人[芳野]
・千代森家の当主で伊月の養父[環]
・環の旧友で子爵家[結城]

ストーリーはあらすじにもあるように
千代森家に拾われた孤児の伊月は義父・環の情夫をさせられています。
付き人の芳野がいつも傍にいてくれることで唯一の安らぎを得て、
いつか必ず家を乗っ取ろうと強かな一面も見せます。

本当に恋心を寄せる相手は芳野。
口に出来ぬ想いを抱えたまま父親に抱かれる。
芳野に情事の声を聞かれ、事後の姿を見られる。

伊月:「お前にだけは…こんな姿見られたくない…」
と顔を伏せる伊月が切なくてシンドイんです!!!!
(そんでめっちゃ萌えちゃうのよ…腐女の業なのよ…)

伊月視点だと芳野は淡々とお世話しているように見えるんですが、
芳野視点に切り替わると全く違うってのも(鉄板ですが)そそられますね…!
家の主(環)に対して口汚く諫めるのがカッコよきです。

芳野は伊月に惹かれ、あまりの愛らしさに自分を制御出来ない衝動に駆られながら
自分の心を「殺せ、殺せ」と言い聞かせる。

そんな中、肉体的接触をするキッカケが出来るのですね。
もしかしたら通じ合えるかもしれない、
1度でいいから好きな男に抱いて貰いたい、
と伊月は期待をし、芳野も応えようとするんですが…。

それが両片想いのすれ違いを生むのがまぁ~~~~~シンドイ。シンドイ。
芳野に抱いて貰えなくて傷ついてる伊月が痛々しくて、とにかくシンドイ。

ここも少し難しい所でして…。
伊月はずっと子供の頃から父親に抱かれているから、
逆に言えば父親好みに仕上がっている身体なんですね。
でも伊月自身はそれを自覚しておらず芳野を苦しめる。

芳野:「アンタを抱いているのは俺だ!!!」
これはキツかった。。。
伊月を責めたってしょうがない話しだし、
だからといって芳野の嫌さもわかる。。。

好きで好きで求めても傷つけ合って。
好きで好きで求めた結果すれ違って。

2人が拗れてまくってるタイミングで
父親の環が"伊月は俺のモノ"と牽制するのもゾワリ。
上巻では環は何を考えているのかわからなくて時々人形みたいな無感情さが怖かった。
(個人的にラストページはホラーだったわ…)


描き下ろしは7P。
芳野視点の過去回想。
最初は伊月を小馬鹿にするように呼び捨てしてたけれど、
"伊月様にお仕えしよう"と忠誠心が芽生えた瞬間のお話。
些細なことが本当に嬉しかったんだなぁとジンワリ温かくなりました。

10

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