おまけ付きRenta!限定版
僕に全てを与え、捧げてくれた人。
1990年代アメリカが舞台の作品です。
「赦し」ってなんだろうな…と思いました。
例え他者に赦しの言葉を与えられても、
自分自身が納得できない限りは罪意識はついて回る。
本当の意味での赦しを得て解放を求める彼等の旅路。
安住の地へ向かってーーーー。
ずっとずっと心の奥底に抱え込んだ罪意識が彼等を引き合わせたのか。
好みが分かれる作品だと思います。
人によっては何の解決にもなってないと感じるかも。
賛否両論ありそうなメリバ作品ですが、
個人的には読後はポツリと「良かった」と零れました。
うん。良かった。私はハッピーエンドだと思ってます。
『世界中 敵に回して、愛した』
『僕に全てを与え、捧げてくれた人』(帯より)
寄り添い合って安住の地に向かって走る姿に感情が揺さぶられるお話でした。
さてさて。
攻め:ヘイデンは放浪癖のある青年。
次第に壊れていく家庭環境で育ち、どこか達観しているような節も…。
実年齢はたぶん若いと思うんですが壮絶な人生経験をしている子です。
受け:アランは狂信的カトリックの親を持つ少年。
持病があって薬は必須、親から世界を遮断されて雁字搦めな生活を送る少年です。
2人はそれぞれに人には言えない罪を持っていました。
ひょんな事で知り合った彼等はシンパシーを感じたのかすぐに打ち解けて、
まるでピッタリ凹凸が合うような心地よさを覚えて仲良くなるんですね。
けれど、ヘイデンは一カ所には留まれない。
いつかヘイデンが旅立つことを知りながらアランは何でも話し、心を開いていきます。
そうすれば優しいヘイデンはまだココにいれくれるかもしれないと願いながら…。
そんなアランをヘイデンは旅路へと誘います。
当てのない旅路の中で、いつまでも付きまとう罪。
赦し、赦されることとは。
彼等にとっての幸せとは。
救いの神とはーーーーー。
私は1990年代アメリカの時代背景やカトリックの知識がなくて、
知識があればもっと深い解釈が出来るんだろうな~ともどかしいんですが…;
他人からみたら「逃亡」
彼等からしたら「帰り道」
あらすじにかかれたこの解釈がすごく刺さりました。
彼等は帰る場所(=幸せの場所)を求めているだけなんですよね…。
元来帰るべき家は奇しくも幸せを感じられるような場所ではなかった。
彼等に罪を背負わせたのは周囲の大人で、救いの手がなかった、というのもシンドイ。
なんていうか…、
ヘイデンもアランも厳密には罪は犯していないんですよ。
(ヘイデンはグレーかもだけど親の責任だと思う!)
子供に罪意識を植え付けたのは大人達なんですね…。
境遇は違えど同じ孤独を抱えて居たヘイデンとアラン。
自然に惹かれ合うようになるのは必然と感じました。
これがもう!切ないけど尊みもあってグッとくる(;///;)
しかしですね。
少しずつ罪意識を克服し、赦しを得た。と感じた矢先に本当の罪を背負ってしまう。
これもまた彼等にとても辛い影を落とします。
(作者さんインタビューを読んでマリアの立ち位置と業の深さがなんとも言えぬ…)
(『赦しと罪を同時に与える役割』ってえらいもん背負わせたな!って感じ;;)
助けてはくれない神の存在を手放しつつあったアランが、
ここから少しずつ神に赦しを乞うようになっていくのが重い。
もどかしく見守るヘイデンの心情たるや…(;ω;)
アランを救いたかったのに逆戻りしていくんですよ。
なんで?ってなるのツラ…。
ヘイデンのこと考えると感情が言葉に出来ないんですが、
ヘイデンの愛は親が子に与える慈しむような無償の愛も感じるんですよね。
与えて、見守って、アラン自身を呼び起こすような。
ヘイデンの年齢に合わない大人びた様・献身的な部分が刺さりました(;///;)
そんな風にヘイデンに愛されたアラン。
ヘイデンによって愛し愛されることを知り、
犯した罪もヘイデンが全て丸ごと受け容れてくれて。
神に求めていたことをヘイデンが全て叶えてくれるんですね。
対するヘイデンは母親を守れなかった自責の念があって。
アランを守って、愛し返してもらえて、心の解放に至った気がします。
なんかもう…こう書いちゃうと言葉が軽いんですが
2人の愛し合い方が尊いとしか言えない……(;///;)
本当の罪を犯した彼等は追われる身となるんですが、
「彼らは生きるのに必死だっただけだ」
「この事態を引き起こしたのは周囲の大人だ」
そんな言葉を発してくれる大人が1人だけ居たことが私にとって救いでした。
ホントね、それに尽きると思うんですよ。
そういう意味では悲劇だったと思えてしまうんですが、
でも彼等は彼等なりの幸せを見つけて心の底から幸せを実感してたと思う。
頼れる大人がいたら、
正しく保護してくれる大人がいたら、
神が本当に存在する世界だったなら、
彼等の生き方は絶対に違っていたはず。
もどかしさが募るけれど非情な現実の中で愛し合う彼等の姿が深く刺さる作品でした。
賛否両論あるかもですが、私にとっては神作品です。
腐女子になって十年以上、数えきれないBL漫画を拝読してまいりました。
過去イチの神作品に出会いました。
拝読して二日経った今も、この世界観から抜け出せず、ずっと二人のことを考えています。
この感情をどう消化したら良いのか、誰か教えてほしい。
絵の描き込みが非常に細かく、吸い込まれそうな瞳や髪が印象的です。
何より特質すべきは言葉選びの美しさ。
帯にもありますが、
「僕に全てを与え、捧げてくれた人。僕をくれた人。」
「君に触れられるところが、僕の形を取り戻していく」
「この海だけが、俺たちの世界のすべてだ」
人生何周目になったら、こんな言葉が浮かんでくるんでしょう。
文字量、メッセージ性多めで小説のようでもありました。
テーマが重く難しく、好みが分かれる作品ではあると思いますが、
だからこそ忘れられない、唯一無二の作品でした。
読み返すのに体力がいるけれど、きっと何度も読み返してしまう神作品です。
この2人にはこの結末しかありえなかったのだと思う。
他の作品も読みたくなり検索したが出なかった。
こちらの作品がデビュー作なら逸材としか言い様がない。
最後まで読めば、タイトルの意味が染みる。
表紙から絵が綺麗なことは分かっていたけれど、中を見たら更に綺麗。
青年たちを取り巻く世界の残酷さに辛くなる。
神様とはなんなのか。
どうか、いつか、彼らは手放しで祝福されて欲しいと願ってしまう。出会えてよかった。
太古腐女子的には、何というか、懐かしいような、故郷に帰ったような気持ちになる作品でした。
二人とも、最初に逃げた瞬間からもう帰れる場所はなくて、でもそもそも今いる場所が、帰れる場所だったのかと問われれば甚だ疑問で。
二人は二人のための「帰れる場所」を探して、探した結果があそこだったのだと思います。
幸せを求めるには、二人とも自分のことを許せていなくて、だから出来ることは逃げ出すことだけで。
救いは、お互いが出会えたこと。孤独な二人がやっと寄り添える相手を見つけられた。そこでまた、許されない自分に苦しんだとしても、それ以上の幸せがそこにはあったと思うので。
黄昏作品はいいな、と久しぶりに思わせていただいた名作です。
今まで読んできたBL漫画の中で1番好きです。
まず作画がとても綺麗で世界観に惹き込まれます。最後の数ページでは多くを言葉で語らずとも2人の関係や世界、重ねてきた時間が美しく描かれていて涙なしでは読めませんでした。
文章が多めで出てくる人物たちの苦しみや葛藤の描写がとにかく丁寧で繊細で心が苦しくなりました。
「神への信仰」「罪と赦し」「家庭環境」「同性愛」などたくさんのテーマがあるのに物語がシンプルで分かりやすくてでもすごく深くて。
お互いの足りないところを埋め合うように2人が愛し合う姿が素敵でした。
世界の見え方が違う2人だからこそ優しく歩み寄っていく暖かさがあって、最後まで真っ直ぐ世界と葛藤する2人が愛しかったです。
どうしようもなく哀しくて切ない気分になりたい方におすすめです。