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表題作紙の舟で眠る 下

三上燿一,アマチュアカメラマン
北原 憬,天才脚本家

その他の収録作品

  • 最終幕(描き下ろし)
  • 締め口上(描き下ろし)

あらすじ

僕はあなたでできてる

戦後、横浜。
娼館の居候・燿一は、北原憬 脚本の映画に、人生を与えられた。
北原作品を観あさってカメラマンを志し、写真館の助手となる。
ある日、泥酔していた男に声をかけた所、それが何とあの北原憬で……。
憧れの人と、夢のような日々を過ごすことに。
だが、増していく恋慕とは裏腹に、憬と己の埋められない才能差を感じ、憬の存在は遠のくばかり。
燿一のやり場のない恋心は、いつしか、彼との心中を望むまでに――。

作品情報

作品名
紙の舟で眠る 下
著者
八田てき 
媒体
漫画(コミック)
出版社
プランタン出版
レーベル
Cannaコミックス
発売日
電子発売日
ISBN
9784829686898
4.6

(69)

(51)

萌々

(13)

(4)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
15
得点
320
評価数
69
平均
4.6 / 5
神率
73.9%

レビュー投稿数15

最後まで読んで良かった、そう思わせてくれます。

2巻では、電車事故に遭ったときに、憬が絶対に燃やしたくないと、胸に抱えて守った物が何だったのか?そして、過去の憬の忘れていた記憶が戻ってきます。自分の生い立ち、過去に何があったのか?自分に現れていた死神の正体も分かってきます。1巻のカラーの扉絵はじつは2巻のあるシーンだったのも分かります。
ウェブ版のザ・テレビジョンのインタビューでの八田てき先生のインタビューを読みました。先生がずっと温めてきたお話だったこと。そして、戦争による生命の尊厳と文化の破壊によって…トラウマティックな体験をした人の創作物からは、生命と魂の慟哭が泥臭くむせ返る様に感じる…
と、書かれており。(本文を読むことオススメします。先生の語彙力を私では表現出来ないです)先生のこのインタビューを読んだ時に、私自身も、八田先生がこれくらいの(憬の様な)覚悟というか、キャラクターが憑依しているかの様な、想像を絶する集中力でこの漫画を描きあげたのでは無いかと。先生の熱量を感じました。

2巻の後半からは、どんどん謎解き要素が強まって、今まで不思議に思っていたことが実はあるカラクリがあった事。ストーリーにどんどん引き込まれます。それにしても、創作物を作り出す為の人の心、執念の闇の深さに恐怖を感じました。
特に憬が苦しめられていた死神の正体、そして、自分の父親の思い出との決別。死神となっていた過去の自分との別れ。

傷を負った心で描かれる脚本は決して自分を傷つけるものでは無いと教えてくれた燿一。そして自分が脚本のモデルにして亡くなった森さんも憬の脚本を喜んでいたと。死神から決別して自分の創作に自信を取り戻す憬の姿がとても心をうたれます。魂の浄化です。
上巻は憬が燿一を守る為に、彼を遠ざけてしまいますが、下巻では燿一が憬の創作の為に憬の元を去ってしまい…最後まで二人の恋心の決着がどうなるのか心配でしたが、本当に素晴らしいラブレターを憬は燿一に向けて送ります。ここに来るまでにも何度も様々なストーリーのカラクリがあったのに、まさかラストにもこんな仕掛けがあったなんて!と驚きでした。
映画の様な二人の物語を文字どうりに楽しめます。
最初から最後まで素晴らしい作画で物語が綴られており、苦しい場面がたくさんありますが、そういう合間にも、安らぎを得る二人の場面が何度か入れられていて、二人が苦しみから解放され心が浄化されていく場面はとても美しく描かれています。
八田先生の魂を感じられる神作だと思います。

0

下巻

ファンタジーのような独特の世界観がある場合に難しいのは終わり方だと思うのですが、この作品はすごく綺麗に完結していました。
圧倒的な世界観を圧巻の画力と素晴らしい文章で語られていました。

憬が記憶と向き合ったことで死神と決別し、過去の泣いてばかりの自分も救うことができた下巻

特に、憬の過去が印象的でした。これだけ悲惨なことが幼少期にあれば記憶に蓋をしてしまいたくなるのも当然だなと思いました。

憬と燿一の物語こそが、タイトルの『紙の舟で眠る』
フィルムのように今までの印象的なコマと共に添えられた言葉、半生を語る言葉がすごく素敵で、こんな文章を綴るのが本当にすごいなと思いした。

描き下ろしの特に、3年後の憬は表情が柔らかくて、すごく素敵でした。
2人が当たり前のように一緒にいて過ごしていく日々を感じられてうるっときました。

カバー下が上下巻共に憬の書いた原稿になっていてすごく凝っていてよかったです。

0

なんかとにかくすごい

正直好きな系統の話じゃないんだけど読んで損はないというか質が良すぎて言葉を失う感じ。作家先生の世界観ガンガン出てるし熱量すごいし純文学って感じで読み直そうと思うまで半年くらいかかる感じの重さだけど、読むの止められない。圧倒的美!話が難しいし、アホには辛いんだけど圧倒的な美!途中もえ。。。。。?ドユコト?なんだけど買って損はない!とおもひます。

2

良かった!

「遥か遠き家」のラストがけっこうトラウマになっているビビリなんで、今回ここでレビューをいくつか読ませて頂きどうやらバッドエンドではないと確信した後購入。
上下巻通しての感想となります。

緻密で繊細な絵で圧倒されます。
戦前戦後のお話の場合、あの時代にこんなものはなかった、こんな言葉はなかったなどとつい重箱の隅をつつく性格の悪いわたしでもこんな丁寧なお仕事を見せられると感服するしかありません。
BLマンガ内でハエトリ紙を見たのも絶対初めてです!
主人公の2人も美麗で眼福、、、
しかしエロ?シーンは相変わらずエロくないです。
もちろんエロくなくてもぜんぜんOKです。
お話はわたしには難しくてよく分からないというか説明が面倒なんでぜひ読んでください!
と言って逃げますね!すみません。
ただ大きなネタバレなんですが






最後、2人がパリに向かうというのは適切な良い落とし所だとつくづくおもいました。
古今を問わず作家、詩人、絵描き皆パリに辿り着きます。
心の逃亡を求めて。
パリには特別な何かが有るのです。
特にセーヌ川。
2人が彼の地で心の平穏と精神の高揚を得る未来を紡ぐ事を祈ります。

最後にこの作品はコミックスではなく小説にすべきではなかったかとつい思いました。
多才なかたなので小説で表現されていたら、と贅沢言いました。
わたしの好みとしては独白が多い、地の文が多いのはマンガとしては最上位にはこない。
なので⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎にしました。



2

タイトル回収がいい

上巻は「間違いなく神」とタイトルにつけました。
2人の生きざまが交差し、生と死、不思議な現象、謎…それらが盛り上がり緊張感高まりました。
その謎が明かされる下巻。
憬の両親の記憶が蘇り幼き憬を解放する。
死神の正体は映画会社の社長だった。
昭和のメロドラマみたいなことだったの?!となりまして。
舞台が昭和なので何らおかしなことではないし、結局生きている人間がいちばん怖いですもんね。
ストーリーとしておもしろいと思います。
が、上巻で描かれた超常的な現象やホラーチックなものはなんだったのか。
精神的に不安定な憬が見た景色…なのだと思いますが、それだけでは説明つかない部分もじゃっかんあるのではないかな〜と私の頭では理解できないだけですね。
生と死の狭間で苦しむ憬の救済って、そんな感じでいいのか…とちょっと拍子抜けしてしまいまして。
勝手ながら思ってたんと違う〜てだけで、作品としてはすばらしいと思います。

映画のタイトルが「紙の舟で眠る」だったのはよかったです。
紙の舟は憬と燿一のことですもんね。

言葉の使い方、絵の描き込み、全編通して緻密でした。

湖の描き方が好きです。
「遙か遠き家」でも魂が返る場所のようでしたし。
本作でも熱海や横浜かな、印象的な場面できらきらした海が描かれて生命の生まれた場所、返る場所という象徴のようで神秘的でした。

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