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無愛想な領主×転移者の料理人+ちびっこ。ほのぼの異世界レストランラブ!
isekai shiawase koishokudou
作家買い。
小中さんてファンタジーものを多く書かれる作家さまのイメージが個人的に強いのですが、今作品もそのイメージを損なことのないファンタジーもの。ちょっぴり切なくって、でも心が温かくなる、小中先生らしい1冊でした。
ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
主人公は料理人の留依。
実家がレストランを営んでいたこともあり、ごく当たり前のように彼もまた料理人になった。やりがいのある仕事で充実していた日々を過ごしていたが、信じていた人に裏切られ多額の借金を背負ってしまう。
何もかも失い途方に暮れた留依だったが、ある日起きると家ごと異世界にトリップしていて―?
というお話。
留依がトリップしてしまった地はセアトルという街。が、セアトルの人たちは突如出現した留依に親切にしてくれる。そこでは異世界の人が突然トリップしてくるという現象がまれに起きており、やってきた人を「マレビト」と呼び大切にする習慣があったからだ。
周囲の人たちの手を借り、そこでレストランを始めた留依だったが、そこに身なりはいいがやせ細った二人の兄弟がやってくる。虐待を受けているのでは?と危惧した留依は、その子たち―アンリとヴァジルという6歳と5歳の兄弟たちに食事をさせるけれど、実はその子たちはセアトルの領主・ルシアンの子で。
異世界トリップものって、何か巨大な力が働いて、とかそういう設定のものも多くありますが、今作品は摩訶不思議な事が起こっても、すべて「そういうもの」という括りでまとめられており謎が掘り下げられることはありません。
言葉が通じるのも、建物ごとマレビトがやってくるのも、そして多くのマレビトが「不思議が力」をもっているのも、すべてが「そういうもの」として流されていきます。
こういう言い方が適切かどうかわかりませんが、この適当さが、今作品のほのぼのさを生んでいて味がありました。
で。
今作品の萌えどころは、ずばり攻めのルシアンかと思われます。
伯爵で、領主で、国王の覚えが愛でたいナイスガイ。
けれど彼は表情が乏しく、感情があらわになることがない。そんな彼の、内に秘めた、っていうのかな。素で持ち合わせている優しさとか、男気とか、そういったものが少しずつ見えてくる。
めっちゃカッコいいんですけど…!
そして、二人の子たちも可愛い。
とにかく可愛い。
「いい子」でいなければならないと常に気を張っている彼らですが、そこにも理由が存在しており、その健気さに萌える。
そして、そこに華を添えるのが鈴倉さんの描かれる優しい絵柄。ルシアンはイケメンだし、お子たちは可愛いし、この作品の世界観をきっちりと描き切っています。
小中先生の文体ってすごく読みやすいと個人的に思っているのですが、その読みやすい文章でスルスルと頭の中に映像として入ってくる。不思議な世界とか、可愛いお子たちとか、留依の気の良い隣人たちとか。
そして、そこに小中さんらしいスパイスのきいた伏線があちらこちらに撒かれていてそれが読み進めるごとに繋がっていく様は圧巻。留依はとある能力を手にいれますが、それがこんなところに繋がるのか―!と、その小中先生の手腕に圧倒されました。
嫌な奴も登場したりしますが、基本的に登場人物たちが優しく、ストーリーもシリアス展開になることはほぼほぼないので甘々で優しいお話が読みたいときにぴったりのハートフルなお話でした。