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「食べ物が出て来て、安心して読める作品」を探していて教えてもらった作品。
王道の幼馴染ラブでした。
高校1年のユズは幼馴染のいっくんのお姫様になりたい男子。
料理部で花嫁修行に勤しみつつ、目下の悩みはいっくんより10cm近く大きくなってしまった身長で…、という始まりです。
ユズは181cmの長身だけど、とにかく可愛い。
いっくんのために三段重のお弁当から甘さ控えめのお菓子と毎日いそいそ奥さんをしていて、周囲も温かく見守りたくなるほんわかくんなのです。
一方のいっくんは高校生に見えないほど落ち着いた黒髪イケメン。弓道部なので道着袴姿も拝めます。弓道経験者としては絶対にひとに向かって矢を引いてはいかん!と思うシーンはあったものの、ユズをクールに溺愛してます。
空手部部長に元剣道部で女子に人気のクール系女子、果てにはいっくん兄まで邪魔やいじわるをしてきますが、その度にお互いの新しい一面を知ってより気持ちが深まる結果に。
良い!こんなカップル、絶対応援したい!と思えるカップルでした。
同時収録は大学浪人の大賀と、大賀の家に転がり込んで来た高校の同級生。
努力が実を結ばないタイプと何でもソツなくこなしてしまうタイプの「自分にないもの」に惹かれるという話でした。
軽く読めるけど筋がしっかりしているので、胸きゅんもあり、胸が痛むシーンもありと楽しめる作品でした。
体格差逆転カプにはあまり食指をそそられないので、萌えポイントとしては低かったですが、身長180cm超えでいてお姫さま願望のあるユズは、普通に可愛かったです。調理クラブとかこれ以上大きくなりたくなくて猫背になるとかダイエットするとか、完全に恋する乙女でした!!
対するいっちゃんの方は、王子様と呼ぶにはかなり無愛想で上から目線で、どちらかというと昭和の親父風ですが、要所ではちゃんとナイトぶりを発揮していて、似合いのカップルだなと思いました。
大丈夫!いっちゃんもちゃんと兄のように大きくなるはず!
連作4話の表題作と、関連のない連作2話の、2カップルの話が収録されています。
「そばにおいてね。」
幼馴染で、子供の頃から、両思いという話が甘くて良かったです。
一誠は譲より身長は低いけれど、確かに王子様のようにカッコイイです。
譲が一誠のお姫様やお嫁さんになろうとするのを周囲が温かく見守っているのも面白かったです。ユズ、いっちゃん、という互いの呼び方も可愛らしい。標準語×なんちゃって関西弁という言葉遣いもイイ! ニヤけながら読んでしまいました。
「勝ちに行こうぜ!」「勝ちに行こうぜ!その後」
浪人生と、入学して2か月で大学を辞めて博打ジャンキーになった元同級生の話ですが、シンプルイズベスト、というシナリオで良かったです。博打と恋愛が似てるというのは至極同感でした(笑)
コミカルでテンポが良く、明るく楽しく、甘ーい作品です。切ない本を読んでちょっと疲れたときになんかにお勧めです!
表題作である「そばにおいてね。」は少女漫画のストーリー、登場人物をそのままBLに置き換えた物語。
主人公の譲は乙女思考の持ち主。料理クラブの部員で、好きな人より背が高いことにコンプレックスを持っていたり、太っていないか気になって食べる量を減らしたりしている。幼馴染みの一誠を王子様と慕って、可愛い嫁になることが目標だ。
この譲のキャラクターを好きになれるかどうかが物語を楽しめるかどうかのポイントだと思う。気立ての良い好青年だが、少女漫画のヒロインが男に姿を変えただけである。毎回王子様の一誠に助けられるお姫様ポジションだ。
王子様、お姫様のワードにぞくっと寒気がする人間は回れ右を。逆にドキドキする人にはオススメする。残念ながら自分は女々しい男も、少女漫画的展開も苦手なので(だってBLは男同士だからこそ良いわけで!)合わなかった。
さて表題作のみを読んでいた段階では、この本の評価は中立にするつもりだった。しかし同時収録の短編「勝ちに行こうぜ!」で評価をがらりと変えた。掌編ながら魅力的なキャラクターとストーリーが魅了されたからである。
「勝ちに行こうぜ!」の主人公は浪人生と博打打ち。ある日、浪人生の大賀の家に高校時代の同級生・大月コウが居候を始める。大月は現役で大学に合格したものの、二か月あまりで中退し今は博打で生計を立てていた。現況に満足し、日々楽しそうに賭け事をしている大月。しかし大月の寂しさに大賀は気がつく。
気ままに生きているようで、大賀のためを思って自分から離れようとする大月。生真面目で不器用な大賀。二人の物語をもっと読みたいと思う。
ということで評価〈萌〉は「勝ちに行こうぜ!」に。