イラスト入り
ちるライブで白米さんが紹介していたことをきっかけに読みました。
今まで何冊かファンタジーBLを読ませて頂いていて、そのどれもが面白かったですが、こちらの作品は、世界観のスケールがとにかく壮大で凄まじいな……!!! と感動しました。
多種多様な人種、土地、町や村の人々……一見現実離れした設定ながらも、本当にこんな世界があるのかもしれないと思わせられるほど描写が徹底されていて、作者さまの脳内で繰り広げられているものを作品を通して見せて頂いて感謝感激です……!!!
特に印象に残っているのは、エルンストの為政者としての気質です。彼は、皇太子として様々な教育を受け、緻密に勉学を重ねてきてはいますが、そのバックボーンと、彼の才覚が化学反応を起こし、メイセンという貧しい辺境地に、大きな変革をもたらします。
彼の懐の広さや度量の大きさ、また、大局的に物事を見て今何が必要なのか、また何を切り捨てて何を選ぶのか――エルンストが語る言葉の数々は、現代を生きる私たちにも刺さるものばかりでした。彼の何気ない一言に、考えさせられたり、はっと気付かされることもたくさんあり、エルンストの帝王学に感銘を受けました。
また、特質すべきなのは、作中で流れる年月の長さです。クルベール人の寿命が200年ということもあり、数十年、数百年単位で物事が語られていて、それがまた物語のスケールの大きさを物語っています。
そして、何と言ってもラストですよ……!!!!
もう、BLでこんなに泣いたのは生まれて初めてです!!!!
作中で度々触れられている、ガンチェとエルンストの寿命の差が、こんなにも胸を締め付けるなんて。。。エルンストが本能的にその未来を恐れているのと同様に、読者の私も恐れていました。最初から分かっていたことではあるけれど、いざその瞬間に直面すると、心がこんなにも苦しくて切なくなるのだな、と思いました。『ガンチェの満月』ではティッシュを何枚も取り出して、延々と流れ続ける己の涙を拭っていました。それでも流れ続けました。
そして、本当のラスト。エルンストが死去した後の世界が、モノローグ調で語られている場面、ここでも泣きました。600年の時を経て、侵攻してきたリュクス国を返り討ちにできたのは、エルンストがリンツ谷に橋を架けることを陳情し、グルード国と協定を結んだからです。エルンストがきっかけを作り、種を撒き、植えたものが、600年という長い時を経て、強く逞しく芽吹き、その真価を発揮する。彼の為政者としての功績は、600年後の今もなお輝き続けている。エルンストが積み上げてきたものは、メイセンを永久に守り続ける。エルンストという命は、メイセンという彼が愛した土地で、永遠に生き続ける。そんな気がしてなりません。
こんなにも壮大で美しい物語を生み出して下さった作者の月夜様、そして、一番最初に『お気に入り』を押してくださった読者の方、雪原の月影という作品を世に送り出してくれた出版社の皆様、本当に、本当に、ありがとうございます。
エルンストとガンチェの長い一生を、彼らの生きた証を、こうして一つの形にして残してくださりありがとうございます。
雪原の月影に出会えたことを、幸福に、そして誇りに思います。
この満月の巻では、様々な問題があったメイセンの領土が少しずつ前に進み出す様子が描かれていました。
登場人物が増えていき、どんどんエルンストを支える人が増えていくのが読んでいて楽しかったです。人を長い目で育てる気持ち、適材適所を見極める目、本当にエルンストがカッコよく読めます。体は小さくても頼もしい領主になったエルンストのあらゆる施策がとても楽しく読めました。
まだまだ清貧な生活が続いているけど、その清貧さが清々しい気持ちになり、見た目の贅沢にこだわる他の貴族が醜く見えます。
伴侶契約で結ばれているガンチェとエルンストですが、結婚式を挙げられてないし、新婚旅行も行ってない。しかし、新婚旅行とは書いてないけど、2人きりの旅をこの巻で経験出来たのが読んでるこちらも幸せを感じました。けして2人が背負った問題は楽しいだけの旅では無いものの、この経験が2人の中で人生のプレゼントになってると思うととても感慨深く、涙がでてしまいました。
そして、ガンチェの力強さと、エルンストの頭脳が炸裂する他国からの襲撃事件は2人のカッコ良さが存分に発揮されていました。
人種の違いにより寿命が違う2人がラストどのように描かれているかは読んで確かめて欲しいです。そして貧乏な領土メイセンがどのように変化したのか。2人の愛が導いた功績を読んで欲しいです。
切なくて最後は泣いてしまいましたが、とても充実した読後感でした。
寿命が倍程違う種族。それでも寄り添って、命の限り精一杯生きて、生き抜いて、後世に掛け替えのない足跡を残した主人公と伴侶。
その二人の人生を温かく支え、共に戦い生きた人々。
登場人物一人一人の鮮やかな人生を本当に間近で見ているような、そんな作品でした。
BL枠に当てはめてしまうには余りにも勿体ない。
いつまでも読み継がれて、いつかBL枠から飛び立って世界中で読まれて欲しい、そんな作品です。
続きものです。
まず、こちらを読む前に「雪原の月影 三日月」をお読みになるのがよろしいかと存じます。
もう読んだ方はこちらの巻を買おうか買うまいか迷う方はいらっしゃらないと思います。
それほど、前巻が面白い。
たぶん、ページを捲る手が止まらなかったんじゃないでしょうか?
この巻を読んだ後、あまりの壮大さ、物語の緻密さに私は他のBLを読む気力がなくなりました。まだ、このメイセン領に浸っていたい。
現在、2022年3月ですが、この巻は本当に考えさせられました。
守る側は強い意志があるけど、攻める側は大将が決めるってセリフがあって、思わず現況と照らし合わせて、考えさせられました。
これは、BLじゃなくて、実用書とか歴史書なんじゃないだろうか…。色々考えさせられて、すぐ思考の海に沈められます。
最後は大号泣して、本を閉じました。もう、表紙を見ただけで泣きますよ、私は。
なんなんだ、ほんと、なんなんだ。この本は。
書いた人は天才なんて言葉じゃ片付けられない。天才より上ってなんですか??
あ…もしかして…神ですか???