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表題作サイモン・フェキシマルの秘密事件簿

サイモン・フェキシマル,ゴースト・ハンター
ロバート・コールドウェル,新聞記者

あらすじ

伯父から相続した古い屋敷で暮らし始めた新聞記者のロバートは、霊障に悩まされていた。壁は血を流し、夜な夜な聞こえてくる男同士の甘いうめき声――。依頼を受けたゴーストハンターのサイモンはまるでボクサーのような佇まいだった。彼が部屋に入りシャツを脱ぐとその体は文字で覆われていた。「物語が自らを書いている」と説明するサイモン。その後霊によって部屋に閉じ込められ、支配された二人は互いを激しく求め合う――。19世紀末の英国を舞台に、ゴーストハンター、サイモンにまつわる事件を新聞記者ロバートが記したオカルティック事件簿。

翻訳:鶯谷祐実

作品情報

作品名
サイモン・フェキシマルの秘密事件簿
著者
KJ Charles (KJ チャールズ) 
イラスト
文善やよひ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
モノクローム・ロマンス文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784403560484
4.4

(15)

(10)

萌々

(3)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
6
得点
65
評価数
15
平均
4.4 / 5
神率
66.7%

レビュー投稿数6

絆も愛情も深いバディ

数ヶ月に一度のお楽しみ、モノクロームロマンス文庫新刊です。作者の前作「イングランドを想え」もすごく良かったし、今回も面白かった。時代背景は19世紀末のロンドンなので前作と同じですが、スピンオフではありません。

今作はタイトル通りオカルト的な秘密事件簿。特殊な力を持つゴーストハンター×記者のち作家で第六感的な力も持つ攻めの助手の青年、のカップルです。第10章まであり事件の数も同じですが、回を増すごとに2人の関係性は深まり、精神的・肉体的なダメージも大きく2人への試練は多いですが、同性愛が犯罪だった時代に長い年月を2人で添い遂げられたのは幸せなカップルと言えるでしょう。短編の積み重ねですが、長編としてのストーリーもあり読み応えあります。

攻めは寡黙で笑う事すら苦手の硬派で不器用なナイスガイ。対して受けは社交的だけど自分のペンの力に誇りを持つ熱血漢。攻めより年齢(7歳差)も体格も戦闘力も経済力も下だけど(多分可愛さでは勝ってる。イラスト的にも)、「君に扶養されるだけは嫌だ。僕も君を守りたい。」という頑固な面も持ち、実際ストーリー終盤では攻めにとって心身共になくてはならない人になります。お互いがお互いの半身みたいな。BL(M/M)ならではのこの関係大好き。リバ無しの受け固定型なのでリバが苦手な方にお勧め。前作と違いセックス描写はガッツリあります。大体最初の章から一章毎にある感じ。結構荒々しい。けど愛があるから甘い。

イギリスの古い伝承とかオカルト作品へのオマージュが散りばめられているらしいけど、自分にその知識がないのが残念。それを知っていたらもっと楽しめそう。あとがきや訳者のツイッターにも関連作品の情報などがあったのでマニアックに楽しみたい方はそちらもチェック。

1回目はストーリーを追うのがメインだったので今2回目で細かい部分を読み直しています。何度も味わえるタイプの作品だと思います。

自称・ホラー愛好者としては第5章の「憂き世の愉しみ」の話が好き。派手な戦闘シーンはないけど最後のオチが!幽霊を全く怖がらない善良な人々こええー、といった感じです。

11

19世紀末のロンドンでオカルトミステリー

ゴーストハンターの攻めと新聞記者の受け。
受けは攻めの活躍を記録して発表していたけれど、そこからは省かれていたもっと“私的な”物語を秘密事件簿として過去を振り返って語る形式。冒頭から二人は二十年以上経った今も恋人同士だと確定しているので、恋愛面と命の安否は安心しながらもドキドキハラハラと読み進められる。

とても寡黙で不器用な攻めと社交的で口達者な受けの凸凹バディが面白かった。攻めは言葉選びが下手すぎて失礼な物言いになったり、騎士道精神が空回りがちですれ違いの原因になる。
出会いは受けが攻めに仕事を依頼したのがきっかけで、その最初の事件でいろいろあって関係を持ってしまう。その後攻めが依頼料を請求して来ないし受け取ってくれなくて、身体で支払ったって言われてる??と受けは侮辱的!て怒っちゃう。でも攻めはその出来事を仕事にしたくなくて、二人の出会いをプライベートな出来事にしたかった…とか後から言う不器用コミュ障なすれ違いが面白い。後半はその不器用な失礼さごと愛らしく思ってくれる受けも好き

。あと攻めは受け対してはとても過保護で口煩くなるんだけど、いつも命知らずに事件に挑むのは攻めの方だから受けは「あんたがそれを言うの?」と思いつつ話を聞いてるのも面白い。

二人の関係がバレてしまう証拠の一つが受けからのセクシーな内容の手紙で、普通は燃やすだろ!(当時は同性愛は犯罪)への返事が「君が俺に書いたものだから」だったのがめちゃくちゃ可愛かった。不器用で健気なゴーストハンター。

事件の内容もバラエティに富んでいて楽しかった。幽霊を全然怖がってなかったファミリーのお話がコメディっぽくてお気に入り。

5

19世紀末イギリスの雰囲気が好きなら必読

時代的にはちょうどシャーロック・ホームズたちが活躍している頃で、あの時代のイギリスの雰囲気が丁寧に描かれていて最高でした。
バスカヴィル家の犬とか、ああいう少しオカルトちっくなお話に雰囲気が近いと思います。
一話完結形式でお話が進んでいくのも海外ドラマ風で好き。
カップリングとしてはそこまでツボにはまる二人ではなかったんですが、時代設定とその書き込みのリアルさ、切ない読後感が素晴らしい。
「イングランドを想え」同様、脇役もいい味出してます。

4

胸が震える愛

シャーロック・ホームズとワトソンみたいなバディものかな?とあまり期待せずに手に取った本書。最初は除霊?がらみで、なし崩し的に関係を持つ二人に「え〜…」と若干引いて読んでいたのですが、話数を重ねるごとに深まっていく二人の愛情にどんどん引き込まれ…そして最後まで読むと…感無量です。お互いを大切に想い合う二人の幸せを願わずにはいられません。
さすがモノクローム・ロマンス!ハズレなしですね。同じ作者さんの「イングランドを想え」もなかなかでしたが、こちらはドラマ化しても受けるのではと思うほど面白かったです!

2

最後まで読んで本当に良かった

レーベルへの信頼でタイトル買い。19世紀後半のイギリスが舞台のオカルトもので、メインキャラの設定がとても面白い。カプの関係性は最終的に一蓮托生なところまで行きつき、特に後半に多くの萌えが詰まっていて良かった。

序盤で二人の関係がさらっと始まりつつ、事件を解決していく。情景が浮かんでかなり怖い場面もあったが、グロってほどじゃないのでホラーに耐性があれば問題なく読めそう。
オカルトものの暗黙の了解なのか、非科学的な事象に説明はなく、人々はそれをすんなり受け入れる世界観。

メインキャラのサイモンには暗く重い秘密がある。最初はただ物語を紡ぐ不思議な能力として語られていたそれが、命を脅かす爆弾だったと分かる。そのときにはすでに二人の絆は深まっていて、サイモンを助けるためにロバートは……?という熱すぎる展開がBLとして萌えた。

何とも言えない始まりから時を経て気持ちが深まっていたことは、五章で実感できる。内面が分かり辛く、ロバートと出会った当初は何度も笑顔を作ることに慣れていないと書かれていたサイモンが、はっきり想いを口にする。
その後八章でつながりはいろんな意味で確固としたものとなり、幻視者の言葉を下地に余韻を残すエンディング。メモの形をとったミス・ケイへのフォローと二人の幸せを匂わせる爽やかな終わり方も良かった。

翻訳文章は好みが分かれそう。接続詞のない短文の連続になっているところが多い。

評価は萌と迷って萌×2。あと一つ何かがあれば……と思う。
章ごとに事件が綺麗に終わり、次章への引きがないため、そこで本を閉じても心残りが無い。少しずつサイモンの秘密が明かされる匂わせや、関係性が変化していく様子を小出しにするなど、何でも良いので一冊を通した軸が一つ欲しかった。

キャラの魅力だけでは引っ張られず、章の終わりと共にページをめくる手が止まり、続きが気にならない。挫折せず八章まで読んで本当に良かったと思う。そこからやっと一気。
元々オカルト好きだったり舞台設定やキャラにハマれば、全部楽しく読めるのかな。

6

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