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作家買い。
作家買いですが、挿絵を草間さんが描かれていると知ってあらすじも拝見せずに予約していました。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
時は2041年。近未来の日本が舞台のお話です。
日本国内で開発された「ポットスプラウト」、通称「ポット」という違法薬物が蔓延し、その薬物依存者による凶悪犯罪が頻発するようになっていた。実はポットが蔓延する前に警察はその存在を知り食い止めることにほぼ成功していた。が、その摘発手段に問題があり不起訴に。結果、国内でポットが蔓延することになってしまったのだった。
凶悪犯罪が起こったことでポットを取り締まるための法が整備され、その法に基づき新たな部署が警察官内に設けられることに。その部署は薬物などの違法なものを用いている容疑者を、24時間監視することができる。要は、容疑者を盗撮することが許されているのだった。
主人公は、その監視任務に就いている玖月。
玖月たちは常に数人の容疑者たちの部屋に取り付けられた監視用(盗撮用)カメラを介して、部屋を見続けている。そんな玖月には、一人気になる人物がいた。
薬物などの違法なことをしているようには見えない、「十六番」と呼ばれる男性。
整然とした部屋で、規則正しく生活している十六番だったが、ある日、彼がそっと泣いているのを目撃してしまう。犯罪者に見えないこと、そして泣いていたこと。容疑者たちはあくまでモニター越しの対象者でしかなかった玖月だったが、その十六番と偶然街中で出会ってしまう。つい、十六番、もとい戸明に声をかけてしまう玖月だったが…?
というお話。
24時間、部屋の中まで監視されていると想像したら思わずぞっとしましたが、玖月という男性は感情の起伏が激しくない。おっとりしているとか優しい、という意味ではなく、監視対象はあくまで容疑者、モニターの中の人物、といった冷静さを持ち合わせた人物で、そのためか盗撮という行動(もちろんこの作品の中では合法なわけですが)にさほど嫌悪感は感じることなく読み進められました。
砂原さんて、なんて言うんですかね。
ミスリードの仕方が凄くお上手なんですね。伏線の回収の仕方が凄いと言ってもいいかも。玖月をはじめとするルーム勤務の警察官しかり、監視対象者しかり、戸明さんしかり。ちょっとした描写とかしぐさ、セリフで物語の奥行きがぐっと広くなる。2041年という時代設定、「ルーム」という警察の新しい部署、24時間部屋の中まで監視されているというバックボーン。少しファンタジー要素がありながらすごく骨太なストーリーでめちゃめちゃ面白かった。
ストーリー自体とても面白いのですが、そこにBL要素を加えるのが戸明さんが泣いていた理由、二人が出会ってしまってからの感情の機微、そしてモニター越しに垣間見る戸明さんの自慰行為。ハラハラドキドキしつつ、少しずつ育っていく二人の相手への感情が、モニター越しで、あるいは直接会話していく二人を介し読者に流れ込んでくる。
特に、濡れ場。
濡れ場、と言うと語弊があるかも。戸明さんの自慰行為をモニター越しに見てしまう玖月ですが、実際に戸明さんと身体を重ねるとき。モニター越しに見ていた時と、実際に身体を触れ合う時の違いが、玖月の感情と共に読者にも伝わってくる描き方が秀逸でした。それは濡れ場というだけではなくって、モニターという無機質なものを介しあくまで監視対象者としてしか見ていなかった「十六番」が、玖月のなかで、「戸明」という血の通った一人の男に変わっていく、その描写も素晴らしい。玖月の中で色がついていく様が手に取る様にわかるのです。
警察官と、その対象者。
という、相反する立ち位置にいる二人の恋は割と早々に実ってしまいます。んー、これで終わりじゃないよね?と思いつつ読み進めましたが、そこから二転三転するストーリー展開がまた素晴らしい。戸明さんは本当に薬物に関わっているのか?彼のクソでクソな(いや失礼)オヤジの過去の因縁が彼を苦しめるのではないか?そうハラハラさせつつ、最後の大団円まで一気に駆け抜ける物語でした。
これねえ、タイトルも素晴らしいと思うんですよね。
ルーム勤務の皆さんが見るのは対象者たちの部屋。ということは、普通に働いている戸明さんの自室の様子を玖月が見るのはほぼ夜なんです。二人の接点は夜。けれど、その夜に月は昇ってー。
んー、深いです。
違法薬物「ポット」による凶悪犯罪。
玖月の過去と警察官になった理由。
清廉で正義感あふれた戸明さんに違法薬物に関する容疑がかかったこと。
全部書き切れませんが、書き切れないほど最初から最後まですべてが繋がり、一つ一つに意味がある。さすがベテラン作家さまと唸らざるを得ない。
そこに草間さんの描かれた挿絵が華を添えるという眼福さ。
何もかもが素晴らしい。特にミステリとか警察ものがお好きな方には超お勧めだと思います。とっても好きな世界観のお話で、違う登場人物(玖月の同僚男性たちが特に好き)たちでスピンオフを書いていただきたいなと思う神作品でした。
砂原糖子先生と草間さかえ先生のタッグ。それだけでマスト買いなのに内容も良かった!久々にBL小説で泣けた。切なさにドキドキさせられる砂原ワールド。
2041年の東京が舞台でSF要素もあります。その時代の日本は監視社会が進み、盗撮そのものの捜査方法が一部許されていた、というちょっと怖いお話。設定が凝っているので話に入り込むまで少し時間がかかる。
話が進むにつれて攻めと受けはこの状況から果たして幸せになれるのかとハラハラドキドキさせられます。善人そのものに見える戸明になぜか犯罪の疑いがかけられているし、攻めの玖月は秘密の捜査情報から、個人的に被疑者の戸明に惹かれてしまうのですから。警察官としてやっていけるのか。そちらの面でもドキドキします。
年上メガネ受けは草間先生の絵柄の作風にもピッタリ。水族館みたいな表紙も素敵。中のイラスト枚数も結構あります。BL小説はこうでなくては。しかし先生漫画の方も忙しいのに。ディアプラスは漫画家のイラストが多いです。
玖月は年下攻めだけどワンコ攻めではなく、暗い過去を持った少し影のあるタイプ。これからは心優しい戸明に癒されながら生きていけばいいと思う。Hのシーンでは結構な言葉攻めぶりに萌えました。
玖月の同僚である満安はセリフも多く存在感あり。上司から下の名前でも呼ばれていたのでスピンオフがあるかも。砂原先生スピンオフ結構お好きだし。先生、その時はぜひ刑事受けでよろしくお願いします。
近未来の大人なラブストーリー。
舞台設定が地味にドラマチックでした。メインカプの職業は警察官と弁護士で、本来なら接触を許されない二人が恋に落ちてしまいます。
受けは攻めが監視する、モニター越しの監視対象の一人。受けは攻めに自分のプライベートな姿をさらしているのを知りません。捉えようによってはなかなかにエロティックなシチュエーション…。
まるで映画を観ているみたいな心持ちで読み進めていました。作中にも映画を観に行くシーンがあって、イラストもよくて。映画好きなツボをグイグイ押されまくりです。
本作は攻め受け両視点で描かれていく手法がとても効果的で、それぞれの事情を読者が知っている中、二人がどういうふうに接近していくのかがめちゃくちゃ興奮する読みどころとなっています。
キャラ的には情緒未発達で冷めた若者と、優しさゆえにちょっと弱気でナイーブな大人の組み合わせ。表面上は穏やかで儀礼的なやりとりなのに、互いの胸の内にはすでに恋の萌芽が生まれている状況にドキドキです。
受けはたおやかで控えめなタイプですが、真面目で初心なところが可愛いかったり。攻めが年下なので、敬語なのがまた…(←好き)。攻めが受けに胸を撃ち抜かれてしまうきっかけとか、受けの健気な恋心とか、両者とも周囲に気取られないように思いを秘めている感じが大人の恋だな〜としみじみとしました。
書影を拝見した時から楽しみでたまりませんでした。草間さかえ先生のイラストがもう本当に素晴らしくて!カバーイラストの色調がとっても素敵です。深くて暗いブルーが作中に出てくる空やアクアリウムの水の色味を象徴するかのようで、読んでいてイメージが膨らみました。昔は意識していなかったのですが、近年の砂原先生のお話に触れると色彩のインパクトが強いなと感じて楽しみになっています。あと、受けのメガネについてはあとがきを読んで先生ありがとう!ってなりました。わたしもその一人でしたので笑
今回は動物たちがお話をサポートしてくれているようにも感じるけれど、(絶対に猫は外さない笑)、ストーリーをずっと見守っている「月」が作品のモチーフになっているようです。夜に活動する攻めにとって大きな意味のあるものなので、本篇最後の一行に繋がっていくまでの道のりを、是非じっくりと味わってみて欲しいです。
砂原先生だし草間先生なのでマストバイ。雑誌でほとんど読んでいたためか、ちょっと盛り上がりに欠けていたんですけど、何度か読み返すとじわっっと来たので萌2にしました。ちょっと近未来の、夜の水族館の中のような印象のお話、本編260pほど+後日談50Pほど。色々事情抱えた大人の恋がお好きな方でしたらおススメでは。
対象者の盗撮画像を監視する警察官の玖月(くづき)。監視対象の十六番は勤勉で毎日同じようなルーティンを繰り返していて、長く監視していても証拠になるようなものは何も出ていませんでしたが、ある日同僚が、十六番が泣いているのを見つけて・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
満安、延本(攻めの同僚)、伊塚、小南(受けの弁護士事務所関係者)、暴力団の方ぐらい。
++ 攻め受けについて
攻めは両親亡く施設育ちの方。そのせいでか、普通というものが少しわからないらしいです。感情もフラット、喜怒哀楽に乏しいようでイケメンなんだけどフラれることが多かったようです。「ルーム」と言われるモニター画面ばっかりの部屋で、男3人で対象者(男)の監視を24時間。きっつい業務としか思えない。ブラックすぎる環境です。
受けは、不祥事で引退した父親の跡を継いだ弁護士事務所のボス弁さん。押しが弱くないか?!と思うキャラなのは、疲れているからか・・?裁判関係の記載があるわけではないので、受けの仕事の有能さ等は不明。色々あってめちゃお疲れちゃんという状態です。
そんな二人が出会って、モニターされていることがばれて、再び出会うって感じのお話です。大人だからですかね、手探り、ゆっくり様子を見ながら進む、ちょっと突き当ったら引いちゃう、そんな感じで進む恋のお話に思いました。
書き下ろしの部分で、二人の不器用な部分と糖分が足されていて、良かったです。なにしろ不器用な二人なので、最後の最後まで「おいおい大丈夫かいな」というお話でした!これね、出版社特典のSSペーパーがめちゃ好きなんです。ほわっと温かい心地のするお話(二人で朝ごはん作るお話)なのです。手に入りそうなのであれば、ぜひそれ付きのところでご購入することをおススメします!
めちゃくちゃ面白い小説でした!
BLとストーリー展開・世界観の面白さの比重に偏りがなくてとても引き込まれました。
2041年の日本。
法律の改定により、被疑者に対して秘密裏に証拠撮影捜査(盗撮)が可能になった時代。
警察官の玖月は24時間映像を監視する監視員として働いています。
様々な被疑者がいる中
限りなく無実に近い真面目な弁護士の戸明にあることがきっかけで、今まで抱いた事のない関心を持つように。
そして偶然街で戸明を見かけて声をかけてしまい、玖月は警察官の身分を隠して交流が始まっていきます。
秘密裏の盗撮だったり近未来のお話ですが、ディストピアSFのようなダークな世界観ではなく
AIや電子機器のテクノロジーが発達しているぐらいの未来感でした。
ディストピア的な倫理観ではなく、人は現代小説の感覚を持っていましたので読みやすかったです。
玖月は感情が乏しくロボットのようだと揶揄される人物なのですが
戸明に対して無自覚なうちに関心を持ち、思いもよらない行動をとってしまったりします。
徐々に自分の変化を自覚し、戸明に対する感情を理解していくのですが、その描かれ方がもう秀逸で。
強引な展開等はなく、自然に恋に落ちていく過程を読ませてくれます。これがほんと自然でリアリティのある心理描写で。
ベテラン作家様だから当然かもしれないのですが、文章で気持ちの変化を伝えられるってほんと凄い!面白い!と読みながら何度も感動しました。
戸明は玖月に監視されている事は知らずに交流しているので、玖月ほどは複雑な心の内というわけではありません。
ですが、彼の苦悩や悲しみを淡々とした日常から少しずつ分かるような描かれ方をしています。
その間に戸明という人物像を分からせてくれるので、感情移入する事ができました。
気が付けば玖月と一緒に監視カメラで戸明を見ている感覚になり、いつの間にか好きになってしまっていました。
この2人が恋に落ちていくのですが、隠し事をしながらのもどかしさもあり。
色々すんなりという訳ではない恋愛なので、ドキドキしたり悲しくなったりと心が揺さぶられました。泣きました。
ほんとに素敵なラブストーリーなのですが
監視カメラや被疑者となってしまった経緯等、ストーリー自体がもうめちゃくちゃ面白かったんです。
ラブ要素がなくてもストーリーだけでも充分面白いと思います。いや、ラブストーリー要素だけでも充分面白いです。
それが合わさるのだから、最高に面白いお話でした!
ほんと読んで良かったです。