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女子視点で描かれるBL作品は時々ありますが、こちらの作品はBLを目撃してしまう女子の戸惑いやドキドキ感、妄想などに終始しているわけではなく、彼女たちの人生についても各短編でしっかり描写されているところが素晴らしかったです。私たち女性は本来、脇役や当て馬じゃない。私たちにだって様々なドラマ、葛藤や成長の瞬間があります。彼らをたどる物語でもありながら、彼らに出会った女性の人生にも共感でき、彼女に寄り添いたくなるように描かれている。稀有なBL作品ではないでしょうか。そして、最後はもちろん彼らの長い長い一途な関係性に萌え。一般漫画としてもBL漫画としても心に残る、そんな作品でした。
女性視点のお話です。
各タイトルごとに主人公が変わるので、短編集かと思ったら全てのお話が繋がっていて驚きました。
各お話の女主人公ごとに視点を変え鬼怒川くんと泉くんカップルを辿る作りで、ストーリー力と構成力がとても高くて面白かったです。
お話によって時間軸が前後するので、もう一度時間軸通りに読み返したくなりました。
『ひみつの公園』
仲のいい小学校低学年くらいの女の子マナちゃんと男の子守くん。
よく2人で遊んでるんだけど、幼稚園の頃は男女関係なく遊んでいたはずなのに小学生になると同性同士で遊ばないといけない空気になり、周りから付き合ってるとからかわれてしまう。
守くんと遊びたいだけなのに……マナちゃんは人気のない公園を見つけて守くんを連れて行くのだけど、そこには先客の高校生がいて。
優しそうなお兄ちゃんと、ちょっと怖そうなお兄ちゃん、いつも2人でベンチにいる。
2人と接するうちに、マナちゃんは暑いといいながらも寄り添い合い座る2人を疑問に思う。
窮屈な偏見の目という悩みを抱えたマナちゃんと守くんと、高校生のお兄ちゃんカップルの悩みがシンクロしているのがいい。
2組にとっての特別な場所だった公園は秘密の場所ではなくなってしまって、お兄ちゃん達は来なくなってしまった。
大学生になったマナちゃんは、守くんとは年々自然と距離ができ環境も変わったけど、お兄ちゃん達を思い出す。
マナちゃんにとってあの秘密の公園の思い出は特別な記憶。
『キラキラさん』
大学生になったらアルバイトをやりたくてコンビニ店員をしている七さん。
コンビニでは常連客にあだ名をつけていて、キラキラさんという人がいると聞いてどんな人だろうと楽しみにしていた。
キラキラと呼ばれる理由が面白い...!
よかれと思ってついお客さんとの距離が近くなる七さんが主人公だからこその展開でした。
うっかり口が出る七さんだけど、ちゃんとキラキラさんの話をひみつにしていたのも好感が持てる。
優しそうなお兄ちゃんとちょっと怖そうなお兄ちゃんが繋がった時の爽快感。
買い物の中身だけで何が起きたのかどういう買い物なのかがすぐ伝わってきた。
やだもう、いいもの見た~~~七さんもう1つの願いも叶うといいね。
コンビニ店員さんあるあるがリアルだったんだけど、もしかてチョコドーナツ先生もバイトされたことがあるのかな?
店員さんに覚えられるのが嫌なお客さんもいる...私は七さんに似ていて、常連さんにはいつもありがとうございますと言ってしまうし、相手もその方が喜んでくれると思ってしまっていたんですが、そうか...これって時代もあるのかな?
あまり干渉せず距離感を持った対応をしなきゃなと学びましたが、でも全員がこうなってしまったらそれはそれで寂しいなとも思ったり…七さん達の出会いも生まれなかっただろうし……難しいなぁ。
これからは私も買い物の量が少ない時はバーコードを上にするようにしてみます!
『推しがほしい』
周りはみんな推しがいて楽しそうで自分も推しがほしい!と思っている新名さん。
友人の推し活(ライブ)に付き合った帰りの電車で、怖そうと思っていた部署の先輩と鉢合わせる。
気づかれませんように~!!と祈りながら見ていたら、スマホを見ながらとても幸せそうに優しく笑っているのを見て、こんな顔もするんだな~恋人かな~と思う。
きっとあの表情を見たからだろう、新名さんから先輩に声をかけて話してみると意外と話しやすくていい人で───?!
恋人がいる人を恋愛対象として好きになると角が立つけど、推しは別!
推し≠恋愛対象(恋愛対象の人もいるだろうけど)、推し=崇拝対象!
結局推したかったのかお慕いしていたのかは分からないけど、誰かを好きになるのを諦めたくなかった気持ち、なんとなく分かる。
『同窓会』
学生時代に後悔をかかえている本好き薬剤師のるなさん、同窓会があるというので行くことに。
学生時代、泉くん(名前が判明した~!)とるなさんは本好き同士交友があって、鬼怒川くんと泉くんが付き合っているんじゃないかと噂されているのを庇うつもりで「男同士でありえない」と否定した。
これ、るなさんを責めきれない...。
だってそんなつもりはなく人を傷つけてしまうことが人生に一度もないなんて言いきれない。
しかも正義感...。
私はるなさんのことは許せたんだけど、クラスメイトにはモヤついた。
理解ある人たちばかりだったけど、だったらあの相合傘を書いた奴はなんだったんだと。
知っていて暖かく見守ってくれた優しいクラスメイトもいるんだけどね。
虐めとか弄りって、大人になって謝ればすむ話じゃないし、若気の至りですむ話でもない。
でも、本人が許してくれるならこれ以上外野がどうこう言うことではないし、るなさんはやっと後悔から解放され、もう二度と同じ轍を踏まないように気をつけるんだと思う。
『まっすぐ育て』
鬼怒川くんと泉くんの出会いのお話です。
子供が大好きな新米教師ハナちゃん(生徒からそう呼ばれている)の受け持つクラスに鬼怒川くんが転校してきて。
金髪で怖そうな鬼怒川くんはクラスで浮いてしまっていたんだけど、泉くんのお陰でクラスの子達とも打ち解けられて、鬼怒川くんと泉くんは仲良くなる。
「かっこいい」という言葉を外見のことではなく内面に使っていたのが、感性が繊細な泉くんらしくてよかった。
ハナちゃんがハナ先生と生徒に呼んでもらえたのは、生徒全員をよく見ていると認めてもらえた時。
子供ってよく見ているし素直だなぁと思いました。
『いつまでも』
鬼怒川くんに指輪を渡す前日の泉くん視点のお話。
今までのお話が走馬灯のように時系列順に思い出され繋がるところが好き。
全話が女性目線からのお話で構成されている、斬新な一冊でした。
チョコドーナツ先生らしい作品の世界観に引き込まれつつ、その時々で心がじんわりあたたかさに包まれて。
客観的な視点から見る彼らの関係に、BLというジャンルをこえたモノがあった気がしています。
彼女たちが見守っているのは、友達だったり恋人だったりそのどれにも当てはまらないときであったりする鬼怒川と泉ですが、
各話の主人公はあくまでも"彼女たち"なので、鬼怒川たちの気持ちすべてを知ることはできません。
でも彼女たち目線で見るその姿は、ふたりの気持ちを絡めないからこそ美しく映った部分があったと思うし、断片的でしか知ることができない想いをより輝かせていたように感じました。
それぞれの主人公たちにもたくさんのドラマがあって、彼女たちの日々の中に"彼らの日々"が少しずつ刻み込まれている。
そんな奇跡みたいな1ページをたくさん見ることができてすごく幸せな気持ちになりました。
しみじみ良かったなぁ。彼ら彼女らは「特別」じゃない。過去の自分の友達にも、自分がバイトしているお店のお客さんにも、会社の先輩も日々暮らしている。過去の自分はわかったつもりでいたその後悔とか…今自分がBL読みながら抱えるLGBTQコミュニティをサポート?したいがこの趣味によって傷つく人がいるのではないかという思いも含めてなんだか癒された。
1組のBLカプへの女性キャラ数人視点の話で構成された1冊。
いろんな女性キャラが登場し、共感したり、それは不躾よな〜とか若気の至りや無知からの行動に後悔すること多いよな〜など複雑な気持ちになりました。
同性カップルに対してのことだけでなく、他者への興味本位な視線や詮索、噂話ってはたから見ると痛々しいところがあるな〜と普段から思っておりまして。
本作のように悪意ないのが特に。
興味を持ったり関わることは問題ないはずですが、その中身ですよね。自分にも思い当たることがあり目(耳)が痛かったです。当時は気づかないのもその通りで。
あとキラキラした表情が眩しすぎてちょい引きました。ひねくれた年寄りなもので。すみません。
いい話なのはいいのですが、あまりにキャラがみんな善良で普通で言っていることがとても道徳的に感じて。これまで読んできたBLで味わったことがない心境になりました。エンタメで道徳を教えられる複雑さよ。じゃっかん興醒めしてしまうと言いますか。
女性視点だからというだけでなく。
BL的萌えは少なめで、周辺人物のあるある、こうでありたいよねという考え方が前面にきているようでぐぬぬぬぬとなりました。