イラストあり・電子限定ショートストーリーつき
作家買い。
宮緒さんの新刊は、宮緒ワールドへようこそ!と言えるワンコを通り越したオオカミ攻め。が、執着心はバリバリあるものの、受けさんへの暴力的ともいえる性行為はあまりないので程よい感じの(※個人的な感想です)な攻めさんだったように思います。
さて。
今作品の舞台は近未来の日本。そして、警察ものでもあります。
ちょっとミステリ要素も加わった、そんな作品でした。
主人公は警官になったばかりの日秋。
彼の両親は亡く、父の親友だった北浦が引き取り育ててくれたという過去がある。
日秋の父も警官だったが仕事中に殉職。そして、その死はテロリストによって引き起こされた爆発事故によってのものだった―。
という、なかなか壮絶な過去を持つ日秋ですが、今作品は、「父の死」の真相を日秋が追うという展開で進むストーリーです。
格差社会が広がり、治安も悪化。
犯罪者たちを取り締まるべく警察組織が新たに導入したのが、死刑を待つばかりの犯罪者を刑事の手足となって働くように「手」を加えてスレイブ(作中は「イヌ」と呼ばれますが)として働かせ、彼らに犯罪者を捕まえさせていた。そしてその課のルーキーとして、日秋は配属されたのだった。
新人警官である日秋に白羽の矢が立ったのは、新たに警察組織が捕まえた「イヌ」、通称アグレッサーと呼ばれるテロリストが日秋を彼のマスターに指名したからだった―。
という、なかなか面白いバックボーンのお話です。
アグレッサーは、実は日秋の父親が死んだ事件の首謀者で…、と話は進みます。
もしそれが事実ならアグレッサーは日秋がずっと追いかけていた父の仇なわけで、んーどう話が進んでいくのかな、とページを捲る手が止められませんでした。
で、ストーリー自体非常に面白いのですが、そこに華を添えるのが石田さんの挿絵。暴力的なほどの美しさと淫靡さを魅せる石田さんの挿絵がこの作品の世界観にぴったりハマっていて、読んでいてゾクゾクするような高揚感すら覚えました。
アグレッサー(彼には「烈」という名前がありますが)と日秋との恋の行方、そして父の死亡事故の真相。正直に言ってしまうと、黒幕、というかこういう風に話は進むんじゃないかな?と思う向きはあるのですが、それを差し引いても二転三転するストーリーに引き込まれる。
BLという側面から読むと、日秋に執着し、彼にワンコさながら尽くす烈の姿にめっちゃ萌える。烈が日秋に執着するその理由もなかなか見えてこないので、話がどう進むのか気になって仕方なかった。
犯罪者をもって犯罪者を制する、しかも、スレイブにする方法だとか、スレイブとスレイブのマスターとの関係とかなかなか胸糞で、設定としてはかなりドシリアスなお話ですが、日秋という青年が清廉で、彼の存在がこのドロドロしたストーリーを浄化している部分もあります。彼がとにかく好青年で、まさに正義の塊です。
その彼が、まっさらで清廉な日秋が烈にぐっちゃぐちゃに愛されるシーンはめちゃめちゃ読みごたえがありました。さすが宮緒作品です。
ドシリアスですし、流血とか死とか、ちょっと凄惨なシーンもそれなりに描かれている作品なので、もしかしたら苦手な方もいらっしゃるかな?でも、ミステリ大好き、ワンコ攻め大好物な私にはドンピシャで刺さる、そんな一冊でした。
個人的に久しぶりの「達幸」以外の犬犬しい攻めの登場に心躍りました。
宮緒葵先生の犬攻めが受けに一途なところが凄く好きなんです。
それは時に狂気や強い執着を産むのですが、超人的な才能でもって受けを守る姿にどうしようもなくワクワクしてしまいます。
今回の作品は近未来のお話でしたが医療系ナノマシンとかとても興味深くて、思わず世界観にのめり込む自分がいました。(私もナノマシン入れたい!)
「アグレッサー」がどうして日秋をマスターに指名したのかとか、日秋が父親が亡くなったテロ事件を追いかけるのと同時に深まる謎に夢中になっていました。
もうね、黒幕の想像は大体ついて行くんですよ。でも、その黒幕が最後まで絞れきれないところが面白いんです。
日秋が配属された公安部の第五課の面々とそのスレイブたち、日秋が配属された事によって起こる思わぬことなど…あらゆる所に伏線が張り巡らされてて、まるで読者に与えられた推理戦なんです。
ちょっと読むつもりが徹夜でした。www
黒幕との最終決戦には「アグレッサー」の活躍に胸躍りました。また日秋と父親の親子愛にもじんわりすること間違いなしです。
最後に「アグレッサー」こと烈の年齢と日秋との接点が明らかになります。
そして元スレイブ達のこれからが気になってしょうがありませんでした。
あとがきに宮緒先生が本編後の想像をサラッと書いてくれてたんですが、是非とも続編として書いて頂きたいと思いました。
並はずれた身体能力を持つ烈と、「イレブン」としてこれまた他を寄せ付けない実力を持つ日秋、新たなヒーローの登場だと思うんです。
大好きなお恵渡のシリーズが終わってしまうので、新たなシリーズを是非お願いいたします!
★下書きのままだった(@_@)
とても面白かった。科学の発達に伴う倫理への警鐘要素入り。
「chain」とは、日秋の父が開発した、生体にカプセルを埋めて洗脳使役する技術。
・・頭部に電極を埋め込む人工補助脳が開発中なので、実際に起きそう。
宮緒先生のお約束・・一旦官能場面になると濃厚で長い。
結末部の伏線回収は一気にまくるどんでん返し。
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日秋:技術系の父;機密技術の開発者;が勤務中に殉職。
アングレッサー/烈:日秋を一目観て自ら主従関係を希望。日秋には切ないほど従順。日秋の父を殺害した当事者と目されている。
日秋:謎(全部父の置き土産)が多い。
霜月=「イレブン」凄腕ハッカーとなり、父の死の謎をずっと調べている。
警察官の父を早くに亡くし、同僚の養父に育てられた日秋。
そんな日秋の初登庁の時に、出会った烈。
二人はマスターとスレイブの関係に…
SFとSMと、そして警察、ハッキング、という設定に負けないストーリー設定で、骨格にある日秋の父親の殉職の謎を探るというところはとても楽しく読めました。やはり一番の黒幕は…
そうよね、そこだよね!
と(笑)
最後にはお父さんにも会えた?ので日秋的にもトラウマからは開放されて、一区切り付いたんじゃないかな。
脇に出てくるイヌ達もそれぞれいい奴らだったし、烈がホントにイヌなので!萌え要素もちゃんとありました。
ただ、惜しむらくは、烈と日秋の気持ちの高まりようというか、お互いの近づき方がもう少し詳しかったら嬉しかったかも。とはいえ、神作品です!!
SFチックな話は得意じゃないけど、あまりの濃密なストーリーに驚きました。
近未来的ポリスミステリーとでも言いましょうか。設定がとにかくすごくて映画のようでした。
キャラクター設定、物語展開、ストーリーの構築は言うまでもなく、それに加えて犯人はまさかの…のラスボス登場。最後の最後までハラハラドキドキ、そしてヒヤヒヤのオンパレードに、物語から目が離せません。
ちょっと歩けば新たな展開、ちょっと歩けば驚きな情報。…うーん、困りました。こんなに脳内処理が難しい濃密作品はなかなかお目にかかれません。こんな複雑な設定をたくさん盛り込みながら、でもごちゃつかず整然とストーリーまでの道筋はきっちりとしていて、読むことにストレスを感じることがなかったです。
それにそれに、"イヌ"の登場ですよ。
マスターである日秋に付き従い慕うのは、"イヌ"です。
このイヌがねー、まぁなんとも頼もしくて格好良くて、一途で愚直。日秋のことをこよなく愛する男です。彼の日秋に対する愛し方はとてもねちっこくてド執着。けど、この執着があるからこの物語が成立するといっても良いでしょう。
彼はアグレッサーという凶悪犯罪者でありながら、日秋とともに事件を解決するスレイブ。
んー…と。この辺りの説明は難しいのですが、警察の極秘事項として犯罪者を使役するシステムがありまして、マスターとスレイブという絶対服従の関係の下、犯罪事件を解決していきます。スレイブには犯罪者をあてがい、犯罪者を犯罪事件解決に関わらせるというしくみではありますが、それは建前。その裏では実はとんでもない事実が隠されています。
この事実はとても悲しく辛い現実でした。組織ぐるみの黒い実態や黒い感情は、非常に利己的な思想に侵された身勝手で恐ろしい人たちによって引き起こされましたが、この結末は本当に予想外で驚きです。心臓に悪くて、胸クソ悪い真実が解き明かされましたが、それ以上に悪をぶちのめしたスカッと感が味わえました。
マスターとイヌとのBLも合間に入れながら、大いにストーリーが盛り上がりました。
マスターである日秋にしつこく身体をねだるイヌの烈。烈の喜びは全て日秋絡みなので、二人のやりとりは時にコミカルで面白く楽しいのですが、烈がひとたび雄の顔を覗かせるときには獰猛な獣です。
マーキングがすごくてですね、セックスシーンも9割が変態です。ここまでやっちゃうのも、ある意味清々しくもありますね。宮緒先生の描く"イヌ"はこうでなくては(笑)
続刊も読むのが楽しみです。
新たに巻き起こる事件に2人がどう立ち向かうのか期待しています。