イラスト入り
木木原音瀬先生って読ませるんですよね。BL要素を含みつつ、タイトルから「どゆこと?何でこんな設定なん?」と読み進めればドップリ⋯
次はどうなってくの〜と読み終えてしまいますw
悲しみや苦しみの中で、本当に自分の欲しいもの、大切な事が何なのか、もがきながら見つけて、受け入れて新たに進んでいく。普通に生きていたらなかなか体験できない事が起こるので、山村は本当にどクズだな、と思いながらも自分に当てはめたら繊細さが共感できる心模様が多々。あっでもどクズですけど。宏国と関わって本当に大切にしたい事と愛を見つける事が出来て良かったねって思いました。
詐欺まがいの仕事をし賭けごとで借金まみれの人生を歩む男
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ジャングルで育った従兄弟
設定の時点でインパクトありすぎですよね。
面白い予感しかしませんでしたが、期待を裏切られることはなく楽しめました。
日本での生活に右も左も分からず困惑する受けを遺産目当ての攻めが適当に弄び酷いことするのでは?と勝手に心配したのですが、そんなこたぁなく(笑)
それどころか意思の疎通すら難しく手を焼く攻めに同情すらしました…。
このキャラクターでBLを書くに思い至った木原先生やっぱり凄い…!
BL作品にあふれるありきたりな萌えが一切用意されておらず…だけどそんな萌えなど必要ないと思わせる独自の切り口で物語を完成させるんだ。
後半は想像をこえる危ない展開になり非常にドギマギしました。
自業自得ではあるんですよね。
攻めは悲しい過去をもちつつも、人を騙しその懐をあたためていた…。
人としておいおいという部分も目立つのに、嫌いになれないというか…気付けば肩をもちたくなるような登場人物に仕上げられているんですよね。
ラストに関しては私は逆にヒヤリとしましたけどね…。
後を濁しておけばいいものを、幸せでやってるっぽいじゃんというところに水を差された気がして…そんな衝撃が魅力でもあるんですけど。
“捨てるものの為に苦しむ人がいるなら、自分くらいビールを瓶にしてもいいかと思ってね”
最後まで夢中で引き込まれるお話ではなかったのですが、BL小説でここまで愛以外のメッセージ性を持たせた作品に出会った事が(絶対数が少ないのですが)なく、挑戦的な作品だと思いました。
法外な値段で浄水器を売る悪徳業者の主人公(この設定が既に面白いのだけど、詳細は流石にないので面白さが半減して惜しい)が遠い親戚の遺産と共に原始育ちの若い男を任されるというお話。
BLに限らず、台詞が単語のみを使いがちな簡潔な喋り口のキャラクターは多数存在します。「よるとあさの歌」ヨルや昨年のアニメどろろの百鬼丸、木原作品の「箱の中」喜多川など。単純で少し学が足りないから、またはその逆でキレ過ぎる頭で芯を見抜く為に簡潔なのか、独特な魅力で好きな人も多いと思っています。
そういったキャラクターや野生さを求めたのが今回のカップリング、としか思わずに読み進めたのですが、それは浅はかでした。(どうにも宏国の会話の成長が遅くまどろっこしい!というのは置いておきます。)
一番印象的だったのはビール缶を何気なく買って飲んでるけど、そのすぐに捨てられる原料を作るために宏国のような人達が住んでいた場所は奪われたと落合先生が語るエピソード。
いきなり環境問題…とは思ったのですが、ただ木原作品を読みたいという動機だけだった私は、テーマが今までと少し違うなと思いました。
アルミの話以外にも、背景を考えない、要らなくなったものを捨てるという短略行為には必ず失われているものがある。それがこの小説に繰り返し書かれていました。
母子家庭だった山村が高校時代、そっけなくし続けたことで母は彼を置いて出て行く。
老人に無理やり契約をさせ息子に狙われる。
嘘に嘘を重ねた結果有沢に宏国を取られる。
その様にして何度も大きなショックとしっぺ返しを食らい、最終的に独りになった山村が、宏国に愛されて、命を張ってまで守ってくれる人だと気付き、今後を誘うシーンは希望あるラストで良かったなと思いました。
宏国がお面持って出てきたの、どういう意味だったんだろう。
落合先生が登場し宏国が言葉を理解しだすまでと、早々に予測できる同僚の200万の話がダレるので、もっとサクサク進めてほしかった。
ビールを請求するヤブ医者や隣の部屋のババアなど口の悪い詐欺師主人公とどっこいの変なキャラが楽しめました!結局、医者のまとめたノートに何がかかれていたのか、ブラジルには行かないし、ふーんわりな終わり方に消化不良な読者も多数いらっしゃるかと思います。
高校生で母親に捨てられ一人で生きてきた山村は、今は浄水器を高額に売りつける訪問販売をしていました。セールストークの巧みさで売り上げは上々ですが、趣味のギャンブルが過ぎて借金の返済に追われる日々。突然、従兄弟の宏国の面倒を見るという条件付きの遺産話が舞い込み、喜びます。宏国は幼い頃に家族で住んでいたブラジルで、原始インディオに誘拐され育てられましたが、父親の遺言で日本に定住することになったのです。山村は分割で払われる遺産目当てに宏国と暮らし始めますが、言葉も通じず、野性的な宏国の世話に疲れ、酷い風邪で寝込んでしまいます。山村の熱を引き受けるように宏国が発熱。医者嫌いの宏国を抱えて駆け込んだ診療所の医師・落合が、偶然にもインディオの文化に詳しく、宏国に日本語と生活習慣を教えてくれることに。ある夜、宏国からスマタを仕掛けられ、山村は宏国への欲望が止められなくなります。落合からは、部族によっては男性同士の関係を許容すること、日本語のような「愛している」という概念がないことを聞かされ、山村は自分だけが宏国を好きになっていくことに苛立ちを募らせます。そんなとき、山村が浄水器を売りつけた客の息子がヤクザだと発覚。ヤクザから山村をかばって宏国は大けがをしてしまい…。
宏国と山村が数少ない日本語でやり取りする描写が、面白くて仕方ありませんでした。特に、宏国がセックスすることを「食う」と言ったところは爆笑してしまいました。直球の言葉は胸の奥まで届くように感じます。ブラジル生息の蝶の標本を見た宏国が、「とぶ きれい」「いっぱい きれい」と言ったときは、故郷に帰りたい気持ちが伝わってきて、切なくなりました。
内省的な山村が、語彙の乏しい宏国を好きになったのは、分かるような気がします。嘘の言葉で生き抜いてきた山村は、面倒と言いながら、直接的で嘘のない宏国といるのが楽しかったのでしょう。でも、どんなに体を重ねても宏国の気持ちが見えなくて、言葉を求めてしまうところが悲しくて。言葉は便利だけれど、持ち過ぎるほど生きにくくなるのかもしれません。山村が同僚から詐欺にあってしまったのも、巧みな言葉のせい。
宏国が山村を好きになったのは、きっと理屈抜きの本能なのでしょうね。だから命がけで山村を守って。宏国の「好き」は、行動で表現されるから、言葉はいらないのだなあと、その力強さに圧倒されました。
アルミニウム採掘のためにアマゾンの密林が破壊され、インディオが移住を強いられている話が、衝撃的でした。自分の便利で細やかな世界が、自然と共に生きる誰かの犠牲に成り立っているとは。ネットで調べたら、確かにこの事実があって。せめて自分くらいビールはアルミ缶でなく瓶で、という落合みたいな気持ちを自分も忘れたくないと思いました。
ラスト1ページの落合の語りが、山村と宏国の幸せそうな暮らしを感じさせて、思わず笑みがこぼれました。宏国の弁護士が二人を5年間も探していたということは、宏国の怪我が治った後、二人は南の島へ逃げたのかもしれませんね。弁護士さん、山村ばかりを責めたことを反省したのでしょうか。
山村は喋りを活かしてツアーガイドをしているとのこと。自然豊かな島なら、宏国ものびのび暮らせそうです。二人はうまく折り合いをつけて生きているのでしょう。
言葉が無ければ、複雑な想いで相手を責めることもないのかもしれません。ただ相手をありのまま受け入れて、無邪気に愛せたらいい。そんな思いが、タイトルに込められている気がしました。
こちらの作品、事前知識なく読み始めました。
よしながふみさんによるすっきりしたリーマンと短髪の男…
…いざ読み始めたら、なんとも驚きの設定。
木原音瀬さんの世界というものを舐めていた。
そうだよなぁ…この驚きこそ木原作品を読む醍醐味なんだよな。
詐欺まがいの訪問販売員と、原始インディオに誘拐され常識も生活力も言葉も持たない男の物語。
この野生児・宏国の行動の描写は衝撃的だし、カネ目当てに宏国を引き取る山村の生活の乱れとゲス具合もひどいものです。
全く「萌え」というものは見出せません。
元々ゲイという設定の山村が宏国の身体にムラムラして、顔を舐めたり手コキしたり、どこまでさせてくれるか間合いをはかりながら遂に挿入までヤってしまい、カラダから慣らしてかなりの頻度でセックスをするようになる。
そのシーンも淡々とした情景描写でエロ気分を煽るものでは全くありません。
アパートの隣室のお節介女性や、宏国に言葉や日本での行動を教えてくれる医師との交流で、散らかし放題の部屋は片付け、コンビニ弁当オンリーから手作りの惣菜などを食べるようになり、違う意味で山村の方も人間らしい生活になってくる。
なんとなく2人の生活がこれからうまくいくのかな、そんな気がしてくる時、足元をすくわれる…
山村は詐欺と暴力の被害者になるのだけれど、彼のやっていた仕事ゆえの被害のため、自業自得とか自己責任とか、そんな言葉も浮かんでくる。その上、元々宏国を連れてきて今まで丸投げしていた弁護士の有沢が急に出てきて、山村から宏国を奪おうとするのです。
ここに至って宏国を手放したくない山村が可哀想で、有沢なんか何も知らないくせに、という気分が湧き上がってくる。
山村の、宏国に対しての「愛」的な何か。
読者が山村x宏国に感じる「愛」的な何か。
ラスト、どうやら2人は逃げおおせて南の島で暮らしているようだと知る事で、なんとなく安堵を得るような感覚。
なのに弁護士に住所を知られて、その先どうなるの?という一抹の不安…
思いもつかない設定、甘さの無い展開、この終わり方…やはり木原作品は他のどれとも違う。
こういう人を異才と呼ぶのだと思う。