• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作トロイメライ 上

高杉蓮、29歳、臨床心理士/スクールカウンセラー
一条勇、高校生

あらすじ

この寂しい子供なら、俺を必要としてくれる――
暴力で支配していた恋人と別れて途方に暮れる臨床心理士の高杉は、副業のスクールカウンセラー先の高校の生徒・勇が、自分と同じように「1人は寂しい」「誰かに必要とされたい」と切望していることに気付く。この子供の気持ちを解ってやれるのは自分だけ…いけないと思いながらも手を伸ばすが、逆に勇から「僕の恋人になってよ」と迫られて?
孤独で病んだ大人×孤独で寂しい高校生の、危険すぎる共依存、そしてその先に待つ「愛」についての物語。上下巻同時発売!


初版のみにお付けしている特典(初回特典、初回仕様特典)がある商品は、商品ページに特典の表記が掲載されている場合でも無くなり次第、終了となりますのでご了承ください。

作品情報

作品名
トロイメライ 上
著者
涼子 
媒体
漫画(コミック)
出版社
Jパブリッシング(ジュリアンパブリッシング)
レーベル
arca comics
発売日
電子発売日
ISBN
9784866695525
3.8

(38)

(14)

萌々

(10)

(10)

中立

(4)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
7
得点
144
評価数
38
平均
3.8 / 5
神率
36.8%

レビュー投稿数7

切ないトロイメライは共依存のメロディー

高杉×勇


『トロイメライ』は、
孤独を不安定な旋律に乗せた、
切なく美しい共依存のメロディー。


2人の視点から、
心の欲求をリアルに描いており、
その描写は衝撃的でありながらも、
精神的な苦悩をリアルに表現しています。

『肩甲骨とワンピース』のスピンオフ作品であり、
未読でも問題ないが、
先に読んだ方が人物関係の理解に役立つでしょう。

29歳の臨床心理士である高杉は、
幼馴染の奥さんが亡くなった後、
同性の恋人と別れてしまい、
その後途方に暮れるようになり、
眠れなくなってしまう。
孤独な時間を1人で過ごすことができず、
そんな彼の前に高校生の勇が現れた。

喘息を持つ勇は、
母親と死別した過去があり、
ピアニストの父親にも咳のせいで大事にされていない。
慕っている兄にも恋人がおり、
自分自身を寂しい存在と感じる。
勇は、学校の保健室によく通い、
そこで副業でスクールカウンセラーをしている
高杉と出会った。

高杉と勇は、
同じように孤独な思いを抱えており、
精神的に支え合っていくことで、
共依存関係となっていく。
というお話。

上巻

ある日、
寂しさと我慢の限界に達していた勇は、
高杉にキスをし、
自分たちが「共犯者になろうよ」と誘う。
この時、勇が言った「共犯者」とは、
お互いに支え合って必要とされる、
大切にされる関係、
つまり
ーー共依存関係を指しているのだと思われます。

勇が高杉にキスした理由は、
父親が大切にしている恋人にキスするのを
真似したいと思ったことが一因だろう。
また、高杉のそばにいると、
兄の温かさを感じることができ、
心が癒されるから。
彼は恋人に対する感情を曖昧に認識しており、
高杉を自分の恋人にすると脅す。

高杉にとって、
誰かに必要とされたいという思いが
勇と関する理由の一つ。
彼は勇を寂しい子供として見ており、
「この子の気持ちをわかってやれるのは自分だけ!」
勇は、高杉にとって自分自身を誰かの何かになりたいという
思いを受け入れてくれる
最適な相手でしょう。

勇にとっては、
高杉と恋人になることで
自分自身が大事にされる存在になることができる。
自己肯定感を得ようとしているのかもしれない。

2人は自分自身の存在意義を感じることができ、
孤独から抜け出す・・・。

「私はあなたを好きじゃない」
「あなたも私を好きじゃない」
高杉と勇は自分自身の存在価値を確かめるために、
共依存関係に縛られてしまう。
2人は、お互いを必要とし、
支えあうことで、
孤独を克服することができるが、
その関係は依存的であるため、
深刻な問題を引き起こすことになる。

「眠れない夜に傍にいてくれる存在は価値があるんじゃないのか」
という高杉の一言で、
勇が嫌いだったピアノを
夜に高杉の部屋で弾くことになる。
高杉は、勇の演奏する優しいメロディに
心地よさを感じ、
不安な気持ちが曲に流され、
よく眠れるようになる。

そして、
勇が高杉に「好きだよ」と告げるが、
この「好きだよ」は、
高杉に大事にされたいという思いを抱いており、
高杉への依存に操られた感情である可能性がある。

その後、
勇が自分のためにピアノを弾くことが「必要とされている」と
勘違いしている高杉は、
学校で勇が自分の前でなくてもピアノを
弾く様子を目にして
憎悪の念を抱く。
彼は、勇を自分の支えとして依存し過ぎていたため、
自分が求める「支え」を勇に押し付けすぎてしまうでしょう。

上巻は、不安定で切ない旋律が流れるトロイメライで終わりました。
下巻では、美しいトロイメライが続くのでしょうか。

4

前作の謎が解ける

「トロイメライ」とはドイツ語で「夢」「夢想」を意味する語で、ドイツの作曲家ロベルト・シューマンのピアノ曲。親しみやすい旋律にもかかわらず、ドイツ・ロマン派特有の複雑な書法もみられ、高度な内容もある音楽となっているとのこと。
作中で勇が弾いているピアノ曲で、ふたりの関係も物語っているようなタイトルでした。

「肩甲骨とワンピース」のスピンオフですが、今作を先に読みました。
その為、最初から高杉の目線で読んでいたのか「肩甲骨とワンピース」のメインカプであるひかると二葉の恋愛を純粋に楽しめなかったので、「肩甲骨とワンピース」を先に読んだ方がいいと思います。

前作でそれぞれが依存していた高杉の恋人の二葉と勇の兄(従兄)のひかるが恋人同士になったことで、ひとりになってしまった高杉と勇。「寂しい」「ひとりでいたくない」ふたりは「共犯者」になっていきます。

今作では「肩甲骨とワンピース」で謎だったDV男の高杉の過去、「KAORI」の正体、「共犯者になろう」のセリフの意味などがわかります。

~上巻についてお話します~

精神的にも肉体的にもコントロールしていた恋人が離れて、ひとりぼっちになった高杉は不眠症になります。
ひとりになりたくない、必要とされたい、子どもの時の気持ちに戻ってしまいます。なんでもひとりでできるから他人を素直に頼れなかったせいか、自分が誰かに必要とされていないと不安になってしまうようです。
上巻では高杉の心の闇が明らかにされていきます。
前作ではただのクズのようでしたが、内に秘めた辛さや苦しさがやっと見えてきます。

そんな高杉の前にやってきた勇。頼っていた兄(従兄)に恋人ができて寂しくなり、構ってほしくてわざと吸引器を使わなかったり、高杉の気を引こうとしたりします。
勇も子どもの頃に十分に与えられなかった親からの愛情不足によって、自分は必要とされていないと思い込んでいます。

同じ傷と同じ想いを持つ高杉と勇は、互いを利用しつつも一緒にいる良さも分かってきます。
ふたりとも温かい手で抱きしめられたいだけなんですよね。でもどうしたらいいのか分からないから、変な行動をしたり戸惑ったりします。
勇は高杉への好意を気づき始めたら積極的にアタックしていきますが、高杉は自分が勇の兄替わりなんだと感じて苦しくなっていきます。
その上、スクールカウンセラーと生徒という間柄でもあるので、簡単には恋人になれません。
距離を置こうとする高杉に対して勇は高杉の為にピアノを弾き始めます。

今までしなかったことを始める勇と内に籠ったままなかなか前に進めない高杉。ふたりはだんだんとすれ違っていきます。

恋とは、恋人とは何か、考えさせられた上巻でした。

2

必要とされたい

恋愛とは何か。
自分の価値とは何か。

誰もが、自分の価値について、一度は悩むんじゃないでしょうか?自己評価が低い人でも誰かにとって特別になりたいと思っていると思う。
高杉先生と一条くん。
2人はすごく似ていると思います。
でも、一条くんのほうが若い分、柔軟というか糸口を見つけた感じがしますね。
高杉先生は二葉さんとの恋愛を見ても威圧的なところがありますよね。
もっと、素直な気持ちで相手を見ることができるといいのに。

歳の差がある高杉と一条だけど。
一条くんが高杉先生を救ってくれるのを期待します。人に頼られたいという気持ち。
今後どういうふうに救われるのか、とても楽しみにしています。

二葉さんの作品あるんですね。是非読んでみようと思います。

1

不安定な心

高杉の纏う仄暗い雰囲気と勇の幼い執着はすごくアンバランスで、その気持ちはどうやっても交わらないんじゃないだろうか…というところからお話は始まりますが、少しのキッカケで関係はカタチを変え、徐々に距離が近付いていくふたり。 
でも高杉の本心はなかなか見えないので、なんとなくハラハラしながら読み進めた上巻でした。

最初は「肩甲骨とワンピース」のスピンオフだと知らずに読んでいたので、高杉の過去が随分具体的に絡んでくるなーと思っていましたが。
高校生のひかるの姿を見てやっとピンときて、色々なことが繋がっていったのでした。
そうか、あのどこまでも怖かった高杉のお話だったのか…、と。
外側だけを見るのと内面を知ってから見るのとでは、高杉の印象はだいぶ変わりますね。
どれが本当の高杉なのだろう。勇へ対する感情が変わっていくとどんな表情が見えてくるのか、下巻で彼の心は救われるのか。
そんなところも確かめてみたいなと思います。

1

寂しがりやたちの共依存

本作は『肩甲骨とワンピース』のスピンオフ作品。
オリジナルは読めていませんが、前作の大筋を
把握さえしていれば不都合は感じないかと思われます。

上巻を一読した印象はしっとりというか、重めの空気感でした。

最愛の妻に先立たれ、恋人にも去られてしまった臨床心理士の高杉。
喪失感から情緒不安定となり、眠れぬ夜を過ごすように。

そんなある日、持病がちで保健室によくやってくる
生徒の一条から「僕の恋人になってよ」と告げられ…。

大切な人に置いていかれる恐怖。
実の父から愛されなかった幼少時代の記憶。

年齢も性格も、育った環境も全く違うけれど、
それぞれ過去の出来事がトラウマとなり、
“自分に価値はない”“誰かに必要とされたい”
と孤独に怯え、祈りにも似た願いを抱える高杉と一条。

そうした不安定さを抱える彼らは
無自覚に依存し合っていて、どこか似ています。
そして、そんな二人だからこそ、
惹かれあってしまうのかもしれません。

親に愛されない可哀想な一条と
可哀想な人間に求められたい高杉。

手を伸ばせば互いが欲しいものは互いの中にある。
求めたい衝動と、求められたい衝動。

けれど、高杉は一条に対して芽生えつつある感情から
目をそらし、「付き合って」と迫る彼を拒みます。

それが大人としての倫理観からなのか、私情からなのか、
複雑でわかりづらいけれど。
ただ、高杉は一条が自分に抱く感情が恋情ではなく、
同類に対する同情や依存であることに気が付いています。

一方、突き放されても執拗に高杉に付きまとう一条ですが、
彼の気持ちは今のところは恋愛というよりもお気に入りの
おもちゃに執着する子供のように見えます。
年齢よりも幼く見える容姿だけではなく、中身も幼稚なままの一条。

だけど、高杉から拒絶され、胸の痛みを感じたとき、
皮肉にも初めて本当の恋を知ります。

そこからは一条にとって高杉は都合のいい“共犯者”ではなく、
彼のために何かをしてあげたい、もう一度笑顔が見たい人、に。

不眠症の高杉のために出来ることを模索し始めたあたりから
急速に成長してゆく一条。
そんな一条に高杉が見せた反応は…。

一条がいい方向へ向かい始めたと思いきや、またも不穏…!
突き放しながらも、依存していたのは高杉の方だったのかな…。
ハッピーエンドの鍵を握るのは高杉が一歩を踏み出せるかどうか、
というところなのかもしれません。
気になる下巻へ!

0

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(コミック)一覧を見る>>

PAGE TOP