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個人的な性癖を超えて砂原先生の筆力に圧倒されました。
正直なところ、萌度はそんなに高くはなかったんですよ。
で・も・ね!
文章の美しさ、透明感、表現の豊かさ、登場人物のこころを読ませる繊細な情景描写…軽く震えました。
とてもとても好きでした。
特に印象的な場面、星空にあるシリウスをエンゲージリングに仕立てる演出、あっま~~~い!!甘すぎる!でも、この恋人溺愛中のロマンチストなイケメンバイオリニストなら、しれっとやりかねない!っていう説得力がありすぎるんですよね。最高にロマンチックなプロポーズに痺れました。
館原の恩師や共演者の美人ピアニスト、吹野の家族、担当編集者などの周辺人物を通して、ふたりの関係性の変化が徐々に見えてきます。以前はそれぞれ異なる自分だけの世界をもって孤高に生きてきたふたりが出会い、一緒の時間を過ごし各々の世界を共有しながら愛情を深めていくプロセスを追体験できた気がして心が温もりました。恩師の死に対して傷心の館原に、”愛しい”という気持ちを募らせる吹野の心境の変化が描かれている一連の描写がとてもよかったです。
終盤、館原のコンサートで吹野と一緒になった菅井夫人の言葉、”聞こえてたって響かきゃ意味がないでしょ”って、さり気なく深すぎてじーんときました…。”本当に大切なことは目に見えないんだよ”っていう某名作の有名フレーズを連想させるものがあります。本当に美しい音色は心で聞いて心に響くのですよね。その場面から最後まで、テンポよく洗練された言葉に運ばれて心地よい余韻を残して読了しました。
砂原先生らしい(って勝手に認定してる)普段はデロ甘なのにスケベになるとちょっと意地悪く言葉責めしまくる攻めがぐいぐいなエロもキレッキレで、とてもバランスのよいBLだな~と思いました。こういう丁寧に描かれた現代もの、もっと読みたいな~な気持ちも込めての評価です。
前作の『バイオリニストの刺繍』は微ツンな響さんの感情が分かりにくい(これも今となっては、孤独な世界で生きる彼の処世術だったのだと分かる)ので一読目はさらっと読了した記憶があるのですが、砂原先生の巧みな表現力もあって、読み返すほどにズブズブとハマっていき…続編にあたる本作の単行本化をものすごーく心待ちにしていました!
収録内容は、響さんが東京に出てきて二人以外の人間と交わることで、恋人である新良との距離を感じてしまう『オリオンは恋を語る』と、すっかり盤石な関係を築いた二人が、人生としても次のステージへ歩もうとする『シリウスは愛を奏でる』。
聞こえない耳に伝える「好き」と「愛してる」が天才過ぎて、新良に令和の包容力年下攻アワードを受賞させたい…。
タイトルとモチーフである一等星のストーリーへの絡め方がもう、センスの塊ですよね。
シリウスを恋人の左手薬指に贈る新良、贈られたシリウスを見たくて夜更かししていた響さん、二人とも最高にロマンチックで可愛い~!
話が進むにつれて響さんが饒舌に、そして素直に自分の感情を伝えるようになっていくのですが、作中でも語られるようにそれがきっと本来の性格なんだろうなと思います。
恩師を亡くして弱った姿も、よれよれの口話もさらけ出せる関係になった二人が愛おしい…彼らの新たな旅路を祝福したい気持ちで、読後はうるっときてしまいました。
砂原先生が本当にバイオリンお好きなのが読んでいても伝わってくるのが、この作品を読む楽しみの一つです。
新良がソリストを務めるコンサートを見てみたいというのは前作から幾度となく思いましたが、彼が弾き振りしてる姿が一番見てみたいかも…!若い演奏家たちを生き生きと導く姿に、響さんはまた惚れ直すんだろうなあ。
もう一つ本作で印象的だったのは、響さんと母親との関係。
育つ環境の中で屈託を抱えてきた響さんが己の中の劣等感に向き合い、母親に刺繍を生業としていることを明かそうと思えるほどになったのはやっぱり新良の影響が大きいんだろうな。
新良は響さんの『心』に音楽を響かせることで、母親の深い愛情にも気付かせたんですよね。
ピアニストの瑠音さんや響さんの家族、二人の関係が二人だけで完結しないことにそれだけ絆が進展したのだと感じられて嬉しかったです。
新良が響さんの家族に対面するお話(母と姉がコンサート行くほどのファンなのですごい大荒れしそう)を絶対に読みたいので、続編希望です…!
ドラマチックな展開がなくとも、この二人の物語はいくらでも読めるし読みたい…砂原先生、どうかお願いします!
タイトルに「オリオン」を選んだのが肝
・・オリオンはギリシア神話に登場する巨人狩人の名前
赤い1等星ベテルギウスと白い1等星リゲル、
オリオンの帯を表す斜め一列に並んだ二等星は、遠い星
神話では、嘘を信じた恋人のアルテミスに矢で射抜かれてオリオンは死亡する。
小説に登場する三人は、
館原:バイオリニスト
瑠音:ピアニスト
響 :刺繍作家
響は、聴覚障害。唇読で読み切れない会話が館原との関係を歪ませていく。
BLは、世間が認めない障害をのりこえて成就する試練の恋愛がテーマだけど、
この物語は、更に聴覚障害と演奏家、という設定なので、波乱含み。
読み応えあった。
もう…読みながら切なさや憤りを感じて泣いたり、二人の愛の表現にじーんと来たりと感情が忙しく、夜中に顔がぐちゃぐちゃになりました。。夜中でよかった‥
こちら、『バイオリニストの刺繍』の続篇になります。
前作は二人の出会い〜恋人同士になるまでが、全編攻め視点で描かれていました。
こちらは恋人同士となった二人の”それから”が、受けの吹野視点で描かれています。
『バイオリニストの刺繍』を読み終わった時点で夜中12時を回っていたのですが、我慢しきれなくて続篇にも手を出し、読み終わって気付いたら3時半になってました。
「貪るように読む」とはこのことか、という衝撃。
砂原先生の紡ぐ言葉、文一つ一つがキラキラと星のように美しくて夢中になりました。
(以下内容に触れます)
オリオン座の星たちって、一列に並んで近くにあるように見えるのに、実際は互いに何百・何千光年も離れているんですね。知らなかった。
周囲に馴染んでいるように見えても、実は浮いた存在、「普通」の皆とは違う存在だと自らをオリオンの星に例える吹野の姿が切なくて、もう序盤からうるうるでした。
前作では二人の関係が「海」を介して表現されていましたが、今作では「星」と「空」。遠く見える二人を繋ぐもの。
夜、館原が吹野の手をとり、赤く光るシリウスの方向へ掲げてエンゲージリングにするシーンが本当に美しかった…挿絵も最高でした。
物語終盤、館原の恩師の夫人が吹野に語る言葉も印象的です。
「聞こえてたって、(心に)響かなきゃ意味がない」。
胸を打たれて、しばらくじいっとこの言葉に見入ってしまいました。
ラブ、の部分ももちろん官能的で素敵なんですが(キスで伝える二人の合言葉が素敵すぎて震えた)、それよりも何よりもヒューマンドラマとして堪能させていただきました。
すっかり砂原先生ワールドにハマってしまったので、これから先生の他の作品も読みまくりたいと思います。この冬は読むものに困らなさそう。素敵な本との出会いに感謝です✨
砂原さん作品の『バイオリニストの刺繍』の続編。
「バイオリニストの~」がとっても良かったので、発売を心待ちにしていました。前作も含めてのネタバレがあります。ご注意ください。
新進気鋭の天才バイオリニスト・新良×聴覚障害を抱える刺繍作家の響の恋のお話。前巻で紆余曲折を経て恋人同士になった二人のその後を描いた作品です。「バイオリニストの~」は攻めの新良視点のお話でしたが、今作品は響視点のお話です。
耳が聞こえない響は、人との関わりに疲れ、自然の多い軽井沢へと引っ越しそこで過ごしてきた。仕事でやってきた新良と出会い、恋をして、仕事が忙しく軽井沢に来れない新良の代わりに、彼の住まう東京に行くようになる響だったがー。
響の葛藤や苦しみ、家族との関わり。
そういった彼の精神面が緻密な文章でつづられていく。しかもそれが響視点であることもあってか、読んでいて彼に共鳴してしまうっていうのかな。まるで自分が響になったかのような、そんな錯覚を覚えつつ読み進めました。
自分にとって耳が聞こえないのは「普通のこと」。
けれど、健常者にとって、耳が聞こえることが「普通のこと」。
「普通」って何だろうな、としみじみ思いました。
耳が聞こえなくてもコミュニケーションをとる方法はたくさんあるのに、お互いに一歩引いてしまう。悪意がないことが響にもわかるだけに、彼の苦しみや葛藤はいかほどなのかと切なくなりました。
耳の聞こえない響の恋人は、バイオリニストの新良。
音を「聴かせる」ことが生業。お互いにもどかしさを感じながら、けれど二人はその壁を超えることができるのかー、という部分が軸だったように思いました。お互いに相手を大切に思うからこそ、自分は身を引いた方がいいのではないかー。
ハンディキャップは、それをサポートできるものがあればハンディキャップではないわけで、人は人それぞれだからこそ相手を思い遣り、相手の立場に立つことが大切なんだなあ、と。押しつけがましくない文章と内容で、多くの方の胸を打つ作品ではなかろうか。自分の中にある「常識」「普通」「思い込み」、それらを取っ払うことでもっと優しい世界になるんだなあ、と。
五感を使って新良のバイオリンを「聴く」響の姿にとっても心が温かくなりました。見る、聞く、それは心でも感じるし、叶うことなんだなあと。目で見えていること、耳で聞こえること。それがすべてではないし、ほかにもっと見るべき、聞くべきことがあるよね。
今シリーズはタイトルが秀逸だと思っていましてですね。
刺繍で、一針ごとに、少しずつ形を成していくように「恋人」という形を作った前作。
そして、オリオンを自分たちの形を表すツールにしている今作品。
素敵なタイトルだなあ、と。リングの件の部分は、もうまさに砂原さんといった感じ。ロマンティックだし甘くって優しい。
今作品は、新良、そして響、どちらも自分の足で立ち、自分の進む道を模索した。カッコいいです。己の境遇や状況を、諦めるのではなく受け入れ、必死でもがき立ち上がっていく二人の青年に心からのエールを送りたい。
金さんの優しい絵柄の挿絵の相乗効果もあって、読後心がほっこり温かくなる、そんな1冊でした。