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2011年にプラチナ文庫から出版された積木の恋。
2024年現在、残念ながらレーベルはなくなってしまいましたが、私は過去にプラチナ文庫で発表されてた凪良先生の作品が大好きでした。
その中でも特に心に残り、何度も読み返しているのがこちらの「積木の恋」と「お菓子の家」の2作。
どちらも世の中の当たり前や普通の幸せを知らず、生きづらさを感じながらもがき、懸命に呼吸をする主人公の姿が印象的です。
今回新装版が発売され、また新たな形で読めることが嬉しい。
旧版との変更点は、サイズが文庫から四六判になっていることと、カバーイラストが旧版の朝南かつみ先生からコミカライズを手掛けられた黒沢要先生へバトンタッチされていることと、加賀谷視点の短編「ありがとう」と、旧版のあとがきと共に新装版のあとがきが掲載されている点。
それから、あらすじが加賀谷視点になっています。
本編は蓮視点で進むというのにあらすじが加賀谷視点なところで、これはやられたー…!と思いました。
その他の変更点は特にないかと思います。挿絵はありません。
朝南先生についてあとがきで凪良先生が触れられていて、なんだか少しグッときてしまいました。旧版の挿画も大好きだったので。
黒沢先生による新装版は、あたたかみのある色使いが加賀谷視点の包容力溢れるあらすじとぴったり。
ああこのベランダから外を見ていたのかななんて思ったりして、2人の日々をより想像出来る素敵な挿画でした。
久しぶりに本編を読み、ああやっぱり好きだなと改めて実感しました。
世の中の普通も、あたたかい家庭も、恋や愛も、ほしいもののねだり方も知らずに生きてきた蓮。
時に真っ当な道から外れたり、初めての感情に戸惑ったり、罪悪感でいっぱいになりながらも、じわじわと変化していく彼の不器用で複雑な心情の動きが愛おしいです。
恋愛詐欺師として悪事を働いていたわけですから、決して褒められた人物ではないんですね。
なのだけれど、彼の背景にあるものや貯金の使い道を考えると必ずしも悪だとは言い切れず…どうにも肩入れしてしまいたくなる魅力があります。
ただの標的だったはずの加賀谷が、蓮の人生において出逢ったことがない心根の持ち主だったことが、彼にとっての最大の転機だったのでしょうね。
名前が分からない感情をぐるぐると持て余しながら、どこか人生に諦めを感じていた蓮が、触れたことがないあたたかさに触れて戸惑ったり、あちこちにぶつかったりしながら不器用に生きる様が本当に魅力的です。
どんどん蓮の本質が見えてくるに連れて、本来の彼はこんなにも愛らしい人だったんだと、見事に引き出してくれた加賀谷に心からのありがとうを言いたい。
何気ない極上の普通が描かれたエピソードにじわりとしつつ、それと同時に幸せばかりではない現実的な社会からの目も描かれているのも好きなポイントのひとつなのかもしれません。
感情を丁寧に拾い上げてひとつひとつ積み上げる。
救いも愛も苦みもしっかりとある素敵な作品です。
加賀谷視点の短編「ありがとう」がまた良くて、非常にぽかぽかとあたたかい読後感で包まれました。
(「お菓子の家」がお好きな方はにやりとしてしまうこと間違いなしです)
旧版読んでいましたが、要先生装画と聞いたので購入。(残念ながら中の挿絵は無かったですが、コミックと2冊並べて、満足してます)改めて読み返し、神だよねと再確認できました。忘れないんですよ、このお話。
お話を旧版と見比べていないですが、読んだ記憶あるものばかりなので、そのままだと思います。くっついた後の部分があるので、表紙も二人並ぶ絵になっているのかなと思います。コミック読んだ方、是非こちらで、二人が戸惑いながらも、より一層近づいていく様子を読んでほしいなあ。いいですよーほんとに。「お菓子の家~un petit nid~」もすっごくいいので是非。
++好きなところ
二人の思いが通じるところ(バス停)も凄く好きなのですが、その後続く二人のお話も沁みます。加賀谷、透と知り合う先生、万里さんもイキイキしていて嬉しい。透の世界が少しずつ広がって、彼の心も少しずつ開いていく様が嬉しいのです。最後の方で、大好きなお話「お菓子の家~un petit nid~」の舞台と少し絡むところも嬉しかったでした。
久しぶりに加賀谷、透に出会えて、やっぱりこのお話、良かったよなと再確認できた一冊でした。
今回は大学の研究室所属の医師と詐欺師の青年のお話です。
詐欺師の受様がカモとした攻様の恋人になるまでと
本編後日談短編3話を収録。
母子家庭で育った受様は9才の時に母に捨てられ
引取取られた親戚からも一線を引かれて
養護施設に入れられます。
中卒で施設を出て工場勤務となりますが
社長の娘に好意を持たれた事から
難癖をつけらて首を切られてしまいます。
その後も中卒、施設育ちのハンデが付いて回り、
どんな職場も長く続かない受様の今の職業は
男専門の恋愛詐欺師です。
受様にとって信じられるのは金だけで
偽名で金を持っている男達に近づいてカモにし
金を巻き上げていました。
そんな受様が次のターゲットとして目を付けたのが
実家が大病院の医師の攻様でした。
バーのカウンター席に並んで声をかけますが
口下手なのか、奥手なのか
受様がコナをかけても会話が続きません。
焦れた受様が次回の約束をして店を出ると
攻様が慌てたように追いかけてきて
そのままホテルへとなだれ込みます。
「夢みたいだ」と呟く攻様に違和感を感じますが
次の日から続いた毎日の電話と芸の無い口説き文句は
受様を退屈させるばかりです。
受様は頃合いを見て事実を織り交ぜた過去と
母の入院のための借金話によって2か月足らずで
400万もの金を巻き上げる事に成功します。
金持ちで、家柄もよくて、穏やかで品がある攻様ですが
受様には頭が悪い男にしか見えません。
しかしながら攻様との付き合いで
受様は攻様が受様とは違う痛みを持つ事を知っていき・・・
初出のプラチナ文庫のリメイク版になります♪
既刊既読ですが10年以上前に読んだ本で
朝南先生のイラストと相まって
とても切なく胸を打つ作という印象の強い1冊でした。
本作は書き下ろし短編を加えただけのようですが
時を越えて読者の胸を打つ人間の本質を鋭く突く本作は
素晴らしい作品だと思いました。
人は多面性を持つ生き物ですが
その人を判断するのは相手が見ている一面だけあり
それをもってその人を論ずることはできません。
攻様は受様が隠し続けた寂しさや辛さを
受様を知る事で知っていこうとしますが
受様には弱さを見せる事ができませんでした。
そんな2人の未来を変えたのは
皮肉にも受様の逮捕でしたが離れた事で
変わるもの、変らないものがあり
2人の再会シーンにはとても胸を熱くさせられました。
リンク作もリメイクされたら嬉しいです。
期待していた新装版。
イラスト以外は旧版の内容と同じ。
黒沢要先生の温かい表紙イラスト見た瞬間、
ほっこり幸せな気持ちになった。
中は挿絵がないのが少し残念だけどね。
この新装版の見どころは、
書き下ろし短編『ありがとう』だと思う。
『NEW YEAR'S BOOK』の後、
加賀谷視点での2人が一緒に暮らし始めて五ヶ月目のお話。
エロなしで、
2人の幸せな日常の一コマが垣間見える。
凪良ゆう先生の
旧版のあとがきがそのまま載っていて、
新装版のあとがきもある。
新装版小説とコミカライズ、
両方とも紙版を購入した。
セットで大切なコレクションに加えます。
2011年発売された「積木の恋」がコミカライズに合わせて新装版として蘇る!
私にとってこの作品は、とても大切な作品で、今でも切なさに浸りたい時や蓮に会いたくなる時に読み返す。
自分も誰かにここまで必要とされたいと願う。そして、蓮が救われて行く様子に私も一緒に救われる様な気がするのだ。
今回新装版ということで、新たな蓮達のその後が垣間見れるかなと少し期待をしていたのだが、凪良ゆう先生は今文芸でも有名になられて大変お忙しいのもあって、書き下ろしがなかったのは正直寂しい。
でも、『凪良ゆう10th Anniversary Book』に収録されていた、短編『ありがとう』が入っているので、まとめてくださって、それだけでも十分ありがたい。
あとがきでの先生の想いもまた熱く胸に来た。
蓮の愛情を知らない孤独さと不器用さを、加賀谷もまた違った意味で愛に飢えながら孤独と不器用さの中で包み込んで癒して行く。その過程がまさに積木を積み上げるように優しく暖かく描かれているこの作品が本当に大好き。
凪良ゆう先生の紡ぐ繊細な心理描写と、今も昔も変わらず先生の作品の主軸である、出来事の本質を見極めず、ただ表面だけを見て決めつける生きづらい世間の本質を問う力作。
コミカライズで作画を担当された黒沢要先生の表紙もまた素晴らしく、旧作と合わせて一生大切にしようと思う。
蓮から透のままでいられるようになったその後の二人の続編がまた読みたい。